Friday, November 3, 2017

第34回長野県高校演劇合同発表会 長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部『M夫人の回想』

@サントミューゼ 上田市交流文化芸術センター 大ホール

原作:W. シェイクスピア
翻案:郷原玲
出演:長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部

地区大会(感想はこちら)の終演後,周りが『M夫人』の衝撃を受けてざわついていました。一方私は「このもやっとしたものはなんだろう~」と気持ち悪さが残っており,その解消のため作品解釈に励んでいたのです。その時は女性性で解釈していたので途中でどん詰まりになってしまい,どーゆーこっちゃ~と思っていたのですが…
改めて冷静に観てみて,今回だいぶ私の中では腑に落ちました!!!自分の普段の仕事のような見方になったので若干引かれそうな気もしますが,腑に落ちました!!!

夫人って何者?って考えた時に,この人は知的に高いけれど凸凹があって,ベースに発達がある強迫神経症さんなんだと思うと,すごい納得できました。(前回は摂食障害の人のようだ…って私言ってますけど,強迫という点では通じている…のかな?)

この人,“こうあるべきだ”とか“こうせねば”がかなり強いんですよね。その傾向は幼少の頃からあって,「男の子なんだから泣いちゃだめ」とか小さいマクベスくんに言ってるし。だから大人になって結婚したら,「良い妻にならねばならない」「家庭を守らねばならない」という“~せねばならない思考・~すべき思考”がだいぶゴリゴリになっちゃう。でも頭の中はだいぶとっちらかっていて,転導性が激しくて目の前の刺激に引っ張られやすいから,やかんをかけてる…と思ったらふとお花のことが気になっちゃって,ギュン!とそっちに意識が移ったと思ったらお隣の奥様が視界に入っちゃったから今度はそっちにギュン!!!ってなっちゃって,やかんのことはどこへやら~ってなっちゃう。頭の中で優先順位をつけるのがへたっぴなので,そこを激しく求められるハウスキーピングという職業は彼女にとってだいぶハードルが高い仕事だった。だけど「良い妻にならねば(良い妻でいなければ)」という意識はあるので,理想と現実のギャップにやられてしまう。
恐らく自分のキャパとか自分の特性を夫人自身が掴めていないので,他者(マクダフ夫人)の価値観・規範である「女の幸せは自分の子どもを抱くこと」というところに自分の価値基準を置いてしまって。だけど子どもを産めなかったもんだから,またもや理想と現実に距離ができてしまって苦しむ…という話なのではないかと思いました。適切な自己理解ができていないが故にハードルが高くなってしまい,それそのものに自分がやられてしまう,切ない成人女性の話。自分に合わないものをがむしゃらにやってしまうことで必要以上に傷ついてしまうし自己肯定感も下がってしまう。逆にちゃんと自己理解ができていて,「自分ってこんなもんかー」がわかっていたら,もっと合う生き方があったはず。理想と現実の間で葛藤する女性の話と思うと,時代や国を越える普遍的なものがあるんじゃないかと思います。←最初の方で敢えて『知的に高い』と書きましたが,それは葛藤できる力があるということを強調したかったのです。
(劇団☆新感線の『メタルマクベス』では松たか子が「私達は小さいから,小さい箱を選べばよかった」って言ってるシーンがあったんですよね。まさにこれ…!葛藤して遠回りして自己理解っぽいものに至れた松たか子!)

ただ,そう切り取ると,別にマクベスじゃなくてもいいんじゃ…ってなっちゃうんですよね。夫人に対する新しい視点の提供と思うと,それはそれで面白いと思うのですが。「(結婚して)名前を失った」というせりふもありましたが,元々マクベス夫人ってマクベス夫人だしなぁ…と思ったり。もっと別の誰かでも表現できたのかな…と。(高村智恵子とか…?)
でも,作者の郷原先生はそこまで特性として意識してマクベス夫人を描いているかというと,ちょっと違いそうな気もするんです。なので作者の意図に沿った解釈ができたかどうかは別として(そもそも演劇の楽しみ方は作者の意図当てゲームではないし),私なりに解釈するとマクベス夫人ってこういう人なんです。ラストの「帰ってこないじゃないの~(いないじゃないの~)」も,一般的にはそれくらいの日数不在にしてても問題ないのでは…って日数も,この人だから耐えられなかった可能性はあるのかな,と思いました。

そうそう。なんかTwitterでこの作品の感想を目にすると,最初から夫人の妄想だった説があるんですけど…。え。そうなの?ここまで読んでいただくと伝わっているかと思いますが,私はそうではないだろうと思っております…。だとしたら,もっとあの登場人物が,自分自身がマクベス夫人だと思ってしまうくらいの何かが必要だと思うのですが…。あ。ここは郷原先生に直撃してみたいところですね。笑

あと前回の地区と比べて,スクリーンというか壁の使い方がいいな~と思いました!ラストのMの字で埋め尽くされるところとか。地区は壁の一部しか使っていなかったと記憶しているんですが,全面で使用していたり,あの出し方も今回の方が個人的に好みでした。
マクドナルドのくだりのところも,ミニチュアを使ってカメラ映像を投影するなんて!思わずマームとジプシーの公演を連想しちゃいました。現代的…。あれ,いいですね。ただ,一人芝居は不在の人達をいかに想像させられるかというものでもあるかなと思うと,具象化した人形が出てくるのはどうなのか…とも思ったりしたんですけど,あれは説明シーンだと割り切ればいいのかな。お人形かわいかったし。笑

あとあと,地区大会ではキャストさんがへばってきているのが伝わってきて,必要以上に観るエネルギーを要したのですが,今回は安心して観ることができました。ようやく作品を楽しめたかなと思います。

中信地区が関東大会に出場するのって実は2010年代に入ってから初めてだし,美須々が関東大会に出場するのって21世紀に入ってから初めてだし,県大会の結果で上位2校を中信が占めるのも2003・2004年度以来だし,なんかもう中信の人間としては今回とてもとてもとてもうれしい結果です。美須々もおめでとうございますなのですが,郷原先生にもおめでとうございますとお伝えしたいです。私の感覚では,長野県大会よりも関東大会で評価されそうな作品だと思うので,他県にとって“噂の学校・噂の作者”だったものを関東の舞台で存分に魅せつけてきてほしいです!

Saturday, September 23, 2017

第32回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2017~ 長野県松本深志高校演劇部『最終初期設定』

@まつもと市民芸術館主ホール

作:日高詩
出演:長野県松本深志高校演劇部


  • 「デートに行く」というせりふから始まって出てきた女の子が全身グレーだったので,大丈夫かなぁと若干心配な気持ちで拝見したのですが,なかなか面白かったです。恐らく“影”の役割だからグレーだったと思うんですけど,普通に普通の格好で良いように思いました。他の登場人物が真っ白だったり真っ黒だったり,“主人公”も色味が鮮やかな人物でもなかったので…。あと舞台セットもモノトーンだったので,紅一点だし…。と,女性目線では思いました。笑
  • テーマとしてはなかなか面白かったです!自分をどう設定して生きていくか。私は普段さまざまな設定(という表現が適切かどうかわかりませんが)がなされている方にお会いすることが多い仕事に就いているので,それを選べるなら…とか,つい考えてしまいました。性別や障害など,一部分で選択はできる世の中ですが。
  • ここ最近の深志は表現が若干単調な気がしてしまって,もったいなく思います。例えば残念なときは頭を垂らしているだけになってしまっていて。私は残念がっている表情が見たいので,顔を隠さない表現もあるといいなと思いました。それからここ数年シリーズとして…恐らく男性キャストに多いのですが,早口になりやすいのかなと思います。日常会話では許容でも,舞台上だと聞き取りづらくなる場合もあるので,練習時に録画などして確認できると良いのかなと思いました。

第32回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2017~ 長野県梓川高校演劇部『(急遽演目を変更いたしました)』

@まつもと市民芸術館主ホール

作:臼井遊
脚色:長野県梓川高校演劇部
出演:長野県梓川高校演劇部

  • 作品の構造?構成が,一番はじめに解説があるのになぜか途中からよくわからなくなってくる不思議な脚本でした…。箱の外の話から中の話に移ったんだとわかるまでにちょっと時間がかかりました。
  • 会話のテンポが良くて,すすすーっと観られちゃいました。みなさん声量のバランスも良くて,聞きやすかったです。ただ,聞きやすかったんですが聞き取りづらいところがちょこちょこあったのは残念…。滑舌に力を入れたり,せりふのスピードを調整するだけでずいぶん変わるだろうなと思いました。(個人的に鮫島さんじゃない鮫島さんが素敵でした…。)
  • 舞台の転換も,場を変えるためにドアの置き位置を調整していたと思うのですが,もう少し簡単かつスピーディーにやれる方法もありそうだなと思いました。ドアの位置は同じでも,家具の配置を変えるとか。何か色味のあるものを奥とか(女の子っぽいもの,男の子っぽいもの)。
  • ドアは新しい人が行き来する大事な道具だと思うのですが,意外とあっさり出入りしてしまって残念…。私としては新たに場に入ってきた人物の,特に顔が見たい!と思うので,見える工夫を入る側も入られる側もできるとメリハリがつきそうだなと思いました。あ。あと部屋自体をもう少し狭くしてもいいのかな。その方が良い意味でわちゃわちゃできそう。
  • 力のあるカンパニーだと思うので,作品選びにこだわればもっといい舞台を作ってくれるんじゃないかと思いました。お疲れさまでした。



Friday, September 22, 2017

第32回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2017~ 長野県大町岳陽高校演劇部『アンジェリーナ殺害事件』

@まつもと市民芸術館主ホール

作:いざ蚊帳
脚色:長野県大町岳陽高校演劇部
出演:長野県大町岳陽高校演劇部


  • 大町高校の舞台を最後に観たのが12年前。遂に大町岳陽の舞台を拝むことができました!しかも気づいたら同好会から部に!おめでとうございます!応援してます!
  • 「いざ蚊帳」とか若干ふざけたお名前だったのでネット台本かと思ってました。失礼しました…。
  • このメンバーで楽しくつくろう&やろうというのが感じられた60分でした。作品の世界は「家族の家」でしたが,きょうだいの仲の良さはこのカンパニーのメンバー間の良さなんだろうなと感じました。殺人事件が起きてもその後の反応がみんなさっぱりしていたり,天才と言われているのに妙なところが英語のせりふで不自然だったり,暗転が無音になってしまっていあり,台所が奥にあってせりふが聞き取りづらくなっていたり,惜しい…と思うポイントはちょこちょこあったんですが,カンパニーとしてはまだまだ試行錯誤している最中だと思うので,これからの伸びが楽しみです。大町岳陽の皆さん,お疲れさまでした!

第32回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2017~ 長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部『M夫人の回想』

@まつもと市民芸術館主ホール

原作:W. シェイクスピア
作:郷原玲
出演:長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部


  • 美須々が金曜に上演っていうから有休取りましたよ…。文化祭公演の時にこのタイトルを知り,(シェイクスピアでM夫人と言ったらマクベスさんかな)と思っていたら,当たりましたよ~。わーい。なんというか郷原先生ってあんまり原作とか下に敷くものがない印象だったので新鮮でした。そして文化祭の様子から部員の人数がピンチということは伝わってきていたので,一体どんな作品になるんだーと思っていたら…SNS経由で一人芝居と知って,だいぶ勝負に出たな…と正直思いました。
  • 現代で純粋に『マクベス』をお芝居でやってるのって,そんなにないですよね…。私は新感線の『メタルマクベス』,世田谷パブリックシアターの『マクベス』(5人芝居),Bunkamuraの『マクベス』(長塚圭史さん演出,常盤貴子主演の組み合わせ♡),佐々木蔵之介一人芝居の『マクベス』を観てるのですが,数年前に映画化したやつを観てなくて。ちゃんと予習しておけばよかった。なのでどこまでシェイクスピアでどこから美須々の解釈なのかわからんとこがある上で書きます!
  • 『マクベス』を夫人の視点から切り取る試みが面白い。私も確かに(この夫婦子どもは?)(でも自分のお乳あげたことがあるって夫人のせりふにあったなー)とかってずっと謎だったんですけど,「望んでも実現しなかった(良い母になれなかった)」「(だから)良い妻になるべく夫をサポートしまくる女になる」となると,一気に現代に寄ってくるというか。これまでたくさんの『マクベス』を観てきて,夫人のガッツというかモチベーションというかエネルギーはどこから出てくるんだろうと思っていたんです。で、今回観てて,子どもを持つことの喪失という穴を政治的活動で埋めるのはすごいしっくりきて。夫人は自己に対する不全感があるから,夫の出世が支えになるのですな…。そのために度を越した行動もしちゃう。マクベスのこともマクベス夫人のことも,私は欲で動いている人達だと思っていたので,新鮮な感覚です。そうじゃなくて,不全感を埋めていっただけ。でも子どもを産めないという本質的な部分は解消されないから,どこまでやっても終わりがない。なんか摂食障害の方の心理に似ているとこがあるなーと思いました。
  • そうそう。なので女性性で回していくのかと思ったんです。でもそう観るとそこと夫人の発症がちょっと繋がってない気がして。あれ。気づいたら夫が帰ってこない話になってる…という感じで,私はうまい具合に回路がバチッと繋がらなかったです。うーん。もう一度観たいな。
  • 日下部先生が「見えないものをドラマティックに表現したい人」だと(個人的に)発見して,じゃあ郷原先生は?って考えたんです。で,(個人的に)発見したのが「見えないものをビジュアルで表現したい人」。まぁ平たく言うと舞台装置にこだわりまくる方だと思うのですが,今回もすごかったですね…。揺れましたね…。あそこまで潔くやってくれると清々しいです。いいなぁ。映像も,もうなんか長野県のケラさんですね。(キャストさんのお名前も使ってM3つだったり章のタイトルもみんなMで素敵だった)
  • でもでもメリーゴーランドのことがよくわからなかったの…。
  • 何より1年生1人で60分を背負ったところに拍手を送りたいです。昨年度の神奈川県大会でも『ひととせ』を観てはいましたが,すごいですね…。本当にお疲れさまでした。部員さんが入りますよう…。

第32回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2017~ 長野県木曽青峰高校演劇部『Another Life が座る場所』

@まつもと市民芸術館主ホール

作:日下部英司 藤澤明穂 手塚万桜
出演:長野県木曽青峰高校演劇部


  • 文化祭に続いて観劇。道具や衣装が揃った分,作品の世界観がダイレクトに伝わってきて見易くなっていたように思います。荒削りだったところにちゃんとお肉がついてきた感じ。棚とパネルのように使える大道具がよかったな~。
  • 選曲のセンスと照明の使い方はさすが…。安定ですね。私は青転が好きなので,あるとうれしくなりますね。赤照明から場転するときも,まずちゃんと青がキレイに入っていて良かった。
  • パンフレットのあらすじに,「還ってきた息子を見つめる,家族の物語です」と書いてあったのが良かった…。こちらもそのつもりで観られるので。作品の舞台設定というか物語の環境はこれまでの日下部先生作品を思い返すとめっちゃ既視感なのですが,夏に2作品を続けて観て,(あー。日下部先生は見えないものをドラマティックに表現したい人なんだ~)と個人的には腑に落ちたので,この話は別に戦争の悲惨さとか,そういうのじゃないのよね。だからこれまでの作品と似てると言えば似てるのかもだけど,全く違うと言えば違う。なんとなくの印象ですが,今回はあったかい感じがしました。なんなんでしょう。
  • ものすごく緻密に作り込もうとしているのはビシバシ伝わってくるのに,個人的にもったいないとこが襲撃の再現シーン。からのジェフリーが亡くなった後のシーン。首にロープぐるぐる→父登場まで,もう少し時間をかけても…それこそ曲を聴かせて場転をあえて長くしてもよかったのかな?と思いました。他のシーンでしっかりアイコンタクト1つに時間をかけている割に,あそこは急いでいる印象でした。
  • 大会の出だしから安定したお芝居が観られてよかったです。お疲れさまでした。

Sunday, July 9, 2017

長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部 第70回双蝶祭公演『机上の球論』

@長野県松本美須々ヶ丘高校教育会館

作:郷原 玲
出演:長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部


  • 初双蝶祭!今のメンバーの文化祭公演が観たいと思ってお邪魔しました!
  • 教育会館コンパクトでちょうどよかった…。受付~誘導までまるまる部員さんだったら素敵だったな…と思うのだけど,人手不足だったようで残念。照明が14個くらい吊ってある~と思ったらさらに2個直置きされててびっくり。噂通り照明がいっぱい!時代はLED!(でも私はフィルムかぶせる照明が好きだよ。)
  • 決して広くない舞台の中央に卓球台どーんの潔さがスゴイ。しかも後半の回転がアナログだけどすごかった!台の下のロープぐるぐるは何だろうと思っていたけど…。美須々は紐やロープをうまく使えている印象。
  • 今回巡った高校の中では一番安定していて,(大丈夫かな~)と思う瞬間は全くなく,のめり込んでしまいました。美須々クオリティを実感…。
  • うまい!のに違和感。そして昔渋谷で観た,くちびるの会『旅人と門』を連想。箱に対して声量が大きすぎたお芝居。美須々もそんな印象。目の前にいるお客さんと対話しながら完成していくのがお芝居だとしたら,私はちょっと置いてきぼり感。
  • 小道具のビールが銀のアサヒなのが良かった。華やかさや爽やかさがあるサントリーやキリンじゃなくて,ガツンと辛いアサヒなのが,やさぐれ感あって良かった。