Sunday, November 30, 2014

映画『紙の月』



◇STAFF
監督:吉田大八
脚本:早船歌江子
音楽:緑川徹

◇CAST
宮沢りえ/池松壮亮/大島優子/田辺誠一/近藤芳正/石橋蓮司/小林聡美

(2014.11.30 劇場で鑑賞)

『アナ雪』『マーニー』か何かで予告を観て,びびびっと来ていた映画。
この年になってから,「映画は映画館で観るもの」とようやく思えるようになってきたので,おでかけしてみました。
この…ポスターの表情が良いですよね…。うっとり。

監督は『桐島,部活やめるってよ』の方らしいのですが,私まだこの作品チェックできてないのです…。観ます…。


んもーーーーーー,キャスティングが秀逸でした。


宮沢りえは,私にとっては映像より舞台のひとで,映画の中の彼女を初めて観ました。
顔の,表情だとか,しわとか,くすみとかが,恐ろしいほどはっきりばっちりわかって,やっぱり彼女も40代なんだとしみじみ思いました。

私は,顔はその人の人生をよく表しているものだと思ってます。電車に乗ってると本当にそう思います。もちろん人は見た目だけではないけど,それでも眉間に深いしわなんかがあると,(なんかムズカシイことが多いのかな)とか。そんなファンタジーがわくのです。

さて映画の宮沢りえは……う,うつくしいのだけど,幸せそうかと言われると,謎…!!!
仕事もソツなくこなすし,角が立たないように人と接しているのだけど,何のための仕事なのか,誰のための家事なのか,よくわからない。誰かと心が通っているように,見えない。
そこに色を与えてくれたのが,池松くんなんだろうなー。

宮沢りえは,与えたかったし与えられたかった人だと思うのです。中学時代の彼女は「シスターは与える方が幸せと仰いましたよね(みたいな感じのせりふ)」と言っていたけど,やっぱり彼女は与えた人に与えられたかったのかもしれないし,与えてくれた人に与えたかったのかもしれない。きっとあの“プログラム”も,ありがとうの手紙が来なければ,一度の支援で終わっていたんじゃないかなって思います。与えた人に何かを与えられたから,のめりこんでいったのではないかと…。
でも,大人になった宮沢りえのプライベートでは何かが一方的で,双方向にはなれなかった。きっと「夫婦とはこういうものだ」と思うようにしていたんだろうけど,透明な水の中にカラーインクが一滴落ちたら,もう透明には戻れない。そんな感じ。そのカラーインクが田辺さんではなくて,池松くんだった。
だけど,双方向のやりとりってごく当たり前に望むことだよね。

それにしても宮沢りえの考えることと技術がすごかった…。証書?をプリンターで複製したり,プリントゴッコで判をつくるあたりは(おぉぉ…!その手が…!)って思いました。この映画は中学生なら観られることになってますけど,今の子とかプリントゴッコ知らないでしょ…。って思いました。笑
(どうでもいいけど,私は大学1年の時にプリゴを買った。しかし1回しか使用せず,廃棄してしまった…。パソコンでは成し得ない手作り感と重ね技が好きだった…。)
中盤,ピンチハンガーに証書?が干されたりしてるのが映ってるあたりは主婦っぽくて面白かったです。笑


池松くんのことは『MOZU』で知り,以来ファンです♡
先日放送していた「情熱大陸」で,俳優とは思えないほどのフリートークの喋れなさに驚き,(きっとこの人は職人のようなひとなんだろうな~)と思うようになりました。言葉よりその技を見た方が,そのひとの人となりがわかる感じ。

目が…良いですよね…♡そしてすごくピュアなのに,やたら色気も感じる…。そして何より声がいい!怪物だわ,怪物!!笑

しかし,おじいちゃんちで一回会ったっきりなのに,なんで宮沢りえのこと気になっちゃったんだろう~。そのあたりがもう少し見れたらよかったんですが,同年代の女の子にちょっと飽きてた時期だったのかな。今回私と一緒に映画を観に行った人は,「ああいう大学生いるよね」って言ってましたが,なんかほんとにそうなんだろうな。お金を出してくれる年上の女の人と,ちょっと火遊びしたかったっていうか。もちろん,母親役割も兼ねてだと思うけど。
黄緑と黄色の棚があるマンション(池松くん用に借りたとこ)で,宮沢りえが「何か買ってきて作ろっか」って言ったのに対して「言われてみたかった」って言ってたのは,きっと本心なんだろうな。今までちゃんと料理作れるひとと付き合ってこなかったか,ちゃんと家事をしない(できない)母親で育ったか。だろうな。多分。
だからお金で用意したハード(家・パソコン)だけでは耐えられなくて,ソフト(同世代の女の人)を連れ込んだんだろうな。(「あの部屋にいるとときどきたまらなくなる」っていう池松くんのせりふの意味するところは,そういうところなのかと…)
だがしかし,徐々に金銭感覚が狂っていく池松くんも愚かしくて良いですね…。「これちょっとずらして」っていうのなんて,特に。
良い意味で今っぽい大学生で,とてもよかったです。池松くん。


そして私はAKB48で一番好きな子が大島優子でした。2年連続で部屋のカレンダーは大島優子です実は!(いらない情報)
彼女は元々女優志望なので,これから応援していきたいところです。
他の方のレビューにもありましたが,良い意味でAKBの大島優子っぽくてよかった。無邪気というか。周りから見られていることを常に意識して,梨花にとってはかなりの刺激だったんだろうなーと思います。無意識ではあるのだけど,梨花をそそのかすあたりの目が,とってもよかった。
あとは「ありがち」という言葉を使って自分の罪を薄めようとしたり,社会的な立場が危うくなる前に地元に帰るあたりとか,世渡りうまい…ですね…。


あとあと!このひとの存在感半端ない!小林聡美!!!
最後にまともにこの方のお芝居を観たのが,2009年のテレビドラマ『赤鼻のセンセイ』だったので,すんごい久しぶりでした。あぁ,すごいブレーキ。
またまた他の方のレビューにもありましたが,この人の感情を爆発させることはできないのでしょうね…。「一緒に来ますか?」と宮沢りえに言われて,多分すごく動揺しただろうけど,行くことができなかった。それがこの人なんだと思います。
宮沢りえがブラウスの中に書類を隠した瞬間にピシッと「何してるの?」って聞いてくるあたりとか,本当にスリリング。締めてくれるなぁ…。
ラストも,この人で締まってると思うんです。「お金なんてただの紙なんだから,お金で自由にはなれない(みたいなせりふ)」が,ぐっときました。あともっとびびびっときたせりふもあったと思うのだけど,忘れてしまった…。
嫌味なひとと言えば嫌味なひとなんだけど…,ねじれているというよりは…うーん,正論を真正面からぶつけてくるひと,なんだと思います。宮沢りえも真面目なのだけど,小林聡美はまっすぐなままの真面目なんだと思います。そうか。ねじれてる真面目は宮沢りえの方か。
パスコのCMも良いけど,女優としての小林聡美の力をじわじわと感じさせられました。


この作品のキーというか重要小物に,“腕時計”があると思います。
宮沢りえが契約社員記念にペアで買った腕時計
田辺誠一が免税店で買ってきたカルティエの腕時計
宮沢りえが池松壮亮に贈った腕時計…

自論ですが,腕時計は指輪よりも重いものだと思います。
だって時間を贈るんですよ。時間を知らせるもの。その人の腕を縛るもの。
しかも,伴侶でなくても相手に贈ることができる。着けるたび,見るたび,贈ってくれた相手のことを思い出す。

時計にこだわるひとそうでないひともいるけど,ある程度価値を示すものでもあるし…。田辺誠一が「ゴルフの時に着けるよ」と言ったあたりなんて,宮沢りえとの価値観の違いを徹底的に表している!
ペアで買った腕時計に対してカルティエの腕時計が来たときは,私もすんごく苦しくなりました。ペアの時計,いらないって返されるようなものでしょ。あぁつらかった。
だからもう一度,相手を変えて池松くんにプレゼントしたのかな。宮沢りえ。ストレートだけど象徴的な小物だったなと思います。


あとは音楽が効果的だった!
讃美歌が余計,罪深さを浮き立たせてたなって思います。
本来清められるような気持ちになるはずなのに。「今」を知っている分,強いギャップを感じました。
讃美歌以外でも,音楽が!良い!!
心のスイッチが入った時のノイズ音とか,大きなことをしでかしてるときの音楽とか,池松くんと遊んでるときの音楽とか。
宮沢りえの心のON・OFFが音からも直接的に伝わって来て,よかったです。
スローモーションの映像×バンド的な曲とか,もうよかったー。かっちょいいー。サントラが出たらレンタルしたいくらい!
非常に非常に,効果的でした。

効果的といえば,最後宮沢りえががしゃーんってやるときの音とか,びっくりした。画的にもとてもよかった。

最後といえば,青りんご?果物?をかじるとこ。なんでかじるんだと一瞬思いましたが,そうすることで現実を味わっていたんだと思います。夢なのか,そうじゃないのか,確かめるために。


はっ!書く順番が前後しまくって非常に申し訳ないのですが,以前この映画の特集をテレビで観た時に,電車を振り返るシーンが大変だったと宮沢りえが言っていたのですが,あのシーンが拝めてよかった。確かにタイミングがバチッと合っててキレイだった!
以上!(笑)


宮沢りえと池松壮亮の「今」を感じることができて,とても良い作品でした。
良い悪いというより,ただ与え与えられたかったために生きていた女の人の話だったなと思います。私は,これまた良いのか悪いのか,「悪いことはだめ!」っていう感覚があんまりないひとなので(ニュートラルってことです!笑),じっくり味わうことができました。

私も,与える幸せと与えられる幸せを人生の中で感じたいものです。横領以外の方法で。

Saturday, November 22, 2014

Théâtre des Annales vol.3『トーキョー・スラム・エンジェルス』



@青山円形劇場

作・演出:谷賢一

出演:南果歩/山本亨/古河耕史/山崎彬/加治将樹/一色洋平/井上裕朗

先週別件でこどもの城を訪れた際,このフライヤーを見て(あぁもう本当に閉まっちゃうんだな~)と思っていたのです。ご縁があって足を運べることになりました。

…久々に(お先真っ暗!)(゜∇゜)と思うようなお芝居に出会いました…。
「働け」というせりふがちょこちょこ出てきたので,昨年観ていたらよりぐっと私のみぞおちを刺激してきたことでしょう。社会人になってから観た作品で良かった…。

2012年にNODA・MAPの『エッグ』を観たときは,過去の話だと思っていました。
“あったかもしれない過去”を,未来という今から見つめている感じ。
でも2年経った今,『エッグ』は“未来を連れてきた作品”になった。
『トーキョー・スラム…』もまた,“未来を連れてくる作品”になるような気がしてなりません。

ムズカシーことは書けないのですが,この作品は東京に住む・働く我々が観るからこそ苦しくさせる要素があったように思います。きっと地方の方が観たら,なかなかピーンとこないのではないかと思います。
…と,思ってしまう自分になってしまいました。地方出身なのに,私…。かぶれてしまいました,私…。

あと,社会人になったと言っても,利益を追求したりだとかリストラされる危険性があったりだとか,そういうものと無縁のおしごとをしているので,世の中を回す仕事をしているひとってこういうひとたちなのかぁ…なんて思いました。近いようで遠いひとたち。ずいぶん狭いところで縮こまっているんだなぁ自分は。とか思ったりも。それが良いとか悪いとかではないけど。

ハッとすることがたくさんあったはずなのに,もう忘れてしまった…(焦)。
「埋没してしまうデモなんかより,事件を起こした方が君の意見が新聞に載る。世間に伝わる。」という発想は,なるほどなーなんて思って聞いてました。あと,「正当な努力」という言葉が印象に残りました。井上さんのせりふは刺さることばが多かったです。

そうそう。加治将樹さんは今回初めて拝見したのですが,つばシャワーを超えるつばの量がすごくてびびりました(笑)。あと私はGブロックにいたのですが,こっちへの圧力が半端じゃなかったです。途中本気で過呼吸になってんじゃないかと思ったり…。でも次のシーンでめちゃくちゃ静かに,そして変な格好で寝ているから,(あぁ演技だったんだー)と思って安心したり…。すげーパワフルな役者さんでした。目が素敵!

加治さんと古河さんと井上さんの早替えもすごかったです…。メイクまで含めて。
そしてスーツとのギャップもすごい…!一瞬同一人物なのか「???」ってなっちゃいました。

これから日本は確実に増税になるし,少子高齢化は進むし,年金はもらえなくなるだろうし,早く死んだ方が得なんじゃないかと思ったりするのだけど,それでもどうやら生きていかなきゃいけないらしいです。長期的なスパンで見通しを持つことも大事だけど,そればっかり考えてたら目の前の楽しいことをキャッチできなくなっちゃう気がするので,もう少し「here and now」を大事にしていけたらなと思います。
あと,いつもどこかでラーメンの温かみを忘れずにいたいなって思います。


やっぱり,円形劇場って素敵。
なんでもできるし,どこから観たって面白い。
向こうのお客さんの顔までよーく見える。
空間を共有していることが,よーくわかる。

ここに来られてよかった。
ありがとう,こどもの城。

Saturday, November 15, 2014

テレビドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(全11話)




◇STAFF
演出:西谷弘
脚本:井上由美子
音楽:菅野祐悟

◇CAST
上戸彩/吉瀬美智子/斎藤工/北村一輝/伊藤歩/木南晴夏 他

2014年7月~9月にフジテレビ系列で放送

『白い巨塔』コンビの作品ということで,放送前から気になっておりました…。

上戸彩が,とてもよかった…。

せりふがいいよね。上戸彩のモノローグが,じわじわと胸に迫ってきました。
私今までろくに上戸彩の演技を観たことがなかったのだけど,(あぁ,本当に力のある女優さんなんだなぁ)と思いました。


このドラマではいろいろメモっておきたいせりふがたくさんありました。笑
一番は,「喜ばない,期待しない,明日を見ない」でしょうか…。
いや別に,不倫に限らず,ひととつきあっていると知らず知らずのうちに他人に期待を持ったり,(こうならないかなぁ)なんて思ってしまう。と思うんです。
でも実際自分が作り上げた理想と現実にギャップがあると,勝手にかなしくなってしまう。勝手に舞い上がって,勝手に落ち込んでしまう。
だから私のアタマの中も,いつしか(○○じゃなくてあたりまえ)と思うようにしていました。
ひとから名前を覚えてもらえなくてあたりまえ。とか。
そこを基準にしていれば,その通りになっても傷つかずに済む。
反対に,覚えていてもらえたら,ものすごくうれしくなれる。そんな感じ。
でも不倫はもっと,刹那的で「今,ここ」しかないんだろうなと思いました。

「自分を大切にする」って,どういうことなんだろうとも,このドラマを観ていて思いました。
ちょうどプライベートでも,考える機会があって。
きっと自分を大切にするって,2種類あると思うんです。
ひとつは,社会的な地位を守ること。「○○の奥さん」とか「○○で働いてるひと」とか。
もうひとつは,自分のこころに正直になること。「○○したい」に素直になること。「好きな人に会いたい」とか。

どちらも大切にできたらいいのに。
それがどうにもならないから,上戸彩も吉瀬美智子もくるしかったんだろうなぁと思います。
バランスって,何を優先するかって,自分の素直な欲だけでは片づけられなくて,自分の力だけではどうにもできないこともあって,ムズカシイなぁなんて思いました。


上戸彩と斎藤工のきゅんきゅんしてしまうシーンがとてもよかった…。
30代という設定だけど,ああいう気持ちっていくつになっても味わえるんだなぁというか,味わえたらいいなぁと思いました。笑
それにしても,斎藤工ってちゃんと幸せになる役をやってるところを観たことないのだが!

でもって,子役の山口まゆちゃんがなんだか印象的でした。あのムズカシー年頃の子を,きちんと出していたなぁ。『聖女』でも広末涼子の子ども時代を演じていて,思わず見入っちゃいました。葛藤している表情が,とてもいいなって思います。

あと音楽!『MOZU』の菅野祐悟が担当しているとだけあって,インパクトがすごかったー!
OPのボーカル入りの曲とか,一青窈のEDのギター版とか。ギュインギュインいってるのが,パンチ効いてて好きでした。


回を経るごとにドラマドラマしたせりふや展開になってきてしまったところが残念だったけど,画がキレイなのと,カメラワークがよかったのと,せりふが…良かったです。やっぱりいい作品の6割は脚本の出来だと思います。
たとえばここがよかった。

  • オープニングの,上戸彩が夕陽に照らされて自転車を走らせているところがすごくキレイ。焦燥感もあり,切なさもあり。
  • 7話の終わりに,上戸彩と斎藤工がマンションの扉でぎゅっと手ぇつないでるところがたまらなく良かった。
  • 最終回のほんっとに最後のところで,「また不倫しちゃったらゴメンネ神様☆」みたいなモノローグは,エェェェ~ヽ(;▽;)ノと思っちゃいました。笑


もっといろいろ書きたかったけど,いざ書こうとすると11話って長い…。笑
ここまでにしておきたいと思います。
上戸彩の表情や声が,本当によかった…。

Monday, November 3, 2014

まつもと市民芸術館『K.テンペスト』


@まつもと市民芸術館 特設会場

作:W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出+潤色+美術:串田和美
照明:齋籐茂男
音響:市来邦比古
音楽監督:片岡正二郎
演出助手:木内宏昌
芸術監督:串田和美

出演:串田和美/高岡奏輔/門脇麦/大森博史/真那胡敬二/斉藤直樹/藤尾勘太郎/坂本慶介/飯塚直/近藤隼/佐藤卓/細川貴司/下地尚子

一昨年の『K.ファウスト』に引き続き,『K.テンペスト』…。串田さんは,そろそろ何かをまとめようとしていらっしゃるのかもしれないと思いました。
そして,これが今の串田さんの“やりたいこと”なんだろうなぁと思いました。

残ったひと,出ていったひと,出ていっても見守っているひと,いろんなひとがいて,いろんな思いがあって,生きている限り,ひとも思いも考えも,常に動いているんだなぁと思います。

私はもう,ワクワクした気持ちではこの世界にはいられないんだろうな。でも,それが生きてるってことなんだと思います。


芝居は嘘のかたまり。そう思ってます。だからその嘘で酔わせてほしい。

だけど唯一例外があるなら,串田さんのお芝居なんだと思います。

台本からお芝居をつくるのではなく,ニンゲンからお芝居をつくる。
だから嘘がない。そのひとそのものが存在しているように見えるから,嘘には見えない。


「コーカサスに似てる」という事前情報を得ていました。
劇場に入った途端,すごく懐かしい気持ちになりました。
ほんとうにそうだったから!

『コーカサスの白墨の輪』。高校生の時に観た音楽劇。部活帰りに観に行って,松たか子から直接赤い布を受け取った,忘れもしないあの舞台。
あのときめきを思い出させてくれるつくりの舞台でした。はぁ…。
黄緑と黄色の布がかかった椅子も,コーカサスにあった!(ていうかあれに私座った!)
ずいぶん大人になってしまいました。しゅん。


門脇麦の声が,部活の後輩の声にそっっっっっくりすぎてびびりました。
この方のお芝居は今まできちんと観たことなかったのだけど,これから注目してゆきたいです…。


しかし…この前日と前々日,私は長野市で高校演劇の県大会で12本を観ており,おそらく情報過多な状態だったのです…。
ので,聴覚刺激が激しくて激しくて,処理にちょっとたいへんでした。ふたりがちょっとずれたタイミングで同じことばを言ったりするとことか。元気な状態で観に行きたかった…。


そもそもこのお芝居は,タイトなスケジュールだったので観に行く予定がなかったのですが,制作担当の方が私の部活の先輩おふたりと知り,即行くことに決めました。わちゃわちゃ楽しく部活をやっていた時から10年。こうして地元でお芝居をつくることに携わっている先輩方が,なんだかうらやましいし,誇らしいです。
…って先輩に言うと「美化されてる」って言われるに違いないんですが。でもお芝居の世界で生きてくって,簡単じゃないから。すごいなって,思います。


串田さんと,まつもと市民芸術館の「今」を味わうことができた時間でした。

Sunday, November 2, 2014

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県茅野高校演劇部『夜長姫と耳男』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

原作:坂口安吾
構成:長野県茅野高校演劇部・郷原玲
出演:長野県茅野高校演劇部

茅野といえば,2010年代の長野県を引っ張っている学校。の,ようだ…。

というくらいしか情報がなく,何度も申しますように近年県大会と疎遠だったので長野県事情がさっぱりわからなかったのです。
ただ,今年美須々に郷原先生が異動されて,その先生の前任校ということは知ってました。

なので茅野と美須々が県に出場されると知ったときは,

(今年の県大会は郷原先生の軌跡がわかる大会になるんだな…!)と勝手に思ってました。

で,その結果,



よーーーーーーーーく,わかりました…。




いやー,金曜日の仕事帰りに直で東京駅に行き,あさまでぴゅーっと飛んできて,ここまで待った甲斐がありました…。

ほんとに,31日に渋谷駅で乗り換えたとき,街はハロウィンハロウィンで大変だったんですよ!山手線にナースが乗ってて,ホームには大量の白雪姫がいたんですよ!!(笑)



で,何がわかったかというと,


(3月まで郷原先生がいらしたんだな…)ということが…。笑


作というか構成が,演劇部のみなさんと郷原先生の連名なので,ホンからも演出からも,郷原先生の残り香をびびびっと感じ取りました。

時系列からしたら逆なのだけど,開始1分で(あ,美須々っぽーい!)と思いました。
演出は生徒さんが担当されているのだけど,きっと2年間郷原先生とおしごとを共にされているので,やっぱり少なからず影響を受けていらっしゃるのかなと思います。そういう意味で,美須々っぽい。郷原先生っぽい。

でも美須々と比べると,抜群の安定感。きちんと役者がせりふと世界をモノにしているなと思いました。特にアナマロさん…!愛らしい…!講師の先生がべた褒めしていたので,昨年・一昨年と拝見できなかったことが悔やまれます。

あと,耳男役の方,タッパがあるので映えますね!ちゃんと男子が男性役をやるって,世界観が出ていいですね。多分いくら男っぽくても,女子があの役をやってしまったら,ここまでの狂気って出なかったと思うので。
(作品とは全然関係ないですが,キャストの方の名字が素敵ですね。大糸線の駅名と同じ読み方でいいのかな?)

夜長姫も良いですね…。あの甲高い声,素敵です。このキャストさんが「耳男」って発音するのが気持ちよく聞こえたので,私の好きな声帯の持ち主なんだと思います(なんか気持ち悪い表現に聞こえたらごめんなさい。ほめているのです)。あと音としても,“mi mi o”って響きが良いよね。
きっと影アナのひとがアナウンスするまで,「みみおとこ」だと思ってたのは私だけじゃないはず。笑
ただ,(なぜそこへはけていくのだろう…)と思うことが度々ありました。神出鬼没な感じはとても良いのだけど,完全にはけるまでの時間がちょっと長いかなーと思ったり,お客さんの視界に入ってから赤い枠にたどり着くまでに時間がかかったり。もっと時短で登場したり,「出てきてますよ~」っていうのをこちらに見せず,気づいたら後ろにいて「耳男」とか言われたらゾッとするんだろうなぁなんて思いました。
あと,完全に後ろから(正面に顔を見せたまま)出入りできるところがあっても素敵そう…(怖い意味での“素敵”)。

小道具のことで言うと,ロープがへびになるあたりはふんふん!と思いました。
がっ,中盤に赤い枠にへびを数本つるしてから,箱に入ったひとの顔が見えにくくなっちゃうように感じることもあって,なんとかならないかなーとも思っちゃいました。吊るす場所の問題なのかな?ロープの長さの問題なのかな?なんか(邪魔だな~)って思っちゃったんですよね。

結構前の方で観たので,舞台の冒頭から周囲に置いてあった材木?木の棒が,鍬だとすぐ気づけなかったんです。舞台の道具になるとは…。面白かったー。でも人が亡くなるとしゅう~っと収納されていくのだけど,その収納が全部まっすぐすぎて,ちょっとつまらないなとも思ったり。
難しかもしれないですが,差し込む先の鉄パイプ(?)も斜めに設置して,鍬を差し込んでいくと本当にバラバラしたトゲのようになっていく見た目になったら,おどろおどろしさが上がるんじゃないかな!とか,勝手に想像しています。

そうそう。音響が素敵!「劇的ビフォーアフター」も含めて。笑(←音響で笑いが取れるって,すごいですね。)
太鼓とか鐘(?←実物で音出してたやつ。鐘??いや実物じゃないかも)も,世界観がうまく表れててよかったです。

これだけの舞台を,トータル6人で作ったようなので驚きです。
人数がいればやれることは増えるけど,人数が少ないからと言ってやれることが少ないという訳ではないことを,きちんと示してくれたカンパニーだと思います。
あとやっぱり,地の力があるカンパニーだということを実感。

関東大会出場,おめでとうございます。北関東の高校にも,思いっきり狂気をぶちまけてきてください!笑
茅野のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県長野東高校演劇部『銀河鉄道の夜~吉里吉里国ものがたり~』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:清水信一
出演:長野県長野東高校演劇部

伊那西のところでも書きましたが,2000年代の北信と言えば,長野日大か長野清泉が絶対出てました。北信=私立のイメージだったのです。中信地区で私立の演劇部といえば,当時の松本松南くらいしかなく,私立が充実している都会な地域だな…とも思ったものです…。カッチリした制服が,いかにも私立だなァって。

しかし…県大会のパンフレットをめくってみると,ある時期を境に長野東がじゃんじゃか県大会に出てきているじゃありませんか…!常連校ってやつじゃないですか…!私はすっかり時代に取り残されていました。
顧問の清水先生はいくつも創作を書かれているようなのですが,いかんせん私が県に全く足を運ばなくなってしまったので,拝見できる機会がなかったのです。どんな作風の先生なのかな~と,楽しみにしておりました。また,Twitterでこちらの学校の部員さんもフォローさせていただいており,どうやらタイムがギリギリだという情報を得ていたので,私もハラハラしながら60分過ごしました。


いやー…



きれいだったぁー…。




涙出ました。泣かなかったけど。こらえたけど。






暗転がものすごく美しい!


全参加校の中でダントツ美しい!!!!!!!!!


(と言っても,松川木曽青峰松本美須々ヶ丘なんかは暗転自体がなかったのだけど…)


いやでも,暗転がある場合,どう使うかってとっても重要!作品の出来を大きく左右すると思うの!


私はかつての長野県田川高校の“青転”が大好きでした。めっちゃキレイなの。
真っ暗にならないの。青なの。青。2001年・2003年の『神々の国の首都』や2003年の『くじらの墓標』なんかで見られてて,すっごい衝撃を受けたものです。それを思い出しました。

(はっ!!“~なの。”とか言って,取り乱してしまった…!)

青いランタンとか,「赤い目玉のサソリ…」とか…講師の先生方も仰っていたけど,汚れてしまった我々大人の心を浄化するには十分な効果でした…。うぅ…。

というか,「赤い目玉のサソリ…」を歌ってた方(ジョバンニ役の方ですよ…ね?),歌声がめっさキレイ!(また“めっさ”とか言って取り乱している。)
しかもアカペラだから,音を外さないのだろうか…とか心配しちゃったんですが,そんなこともなく。ちゃんと移動もされてて。良い腹筋と喉をお持ちの方ですね…。素敵です。


お芝居の話に移ると,みなさん基本的に一人複数の役をやられているんですが,早替えと演じ分けがものすごい!
ふたばの後に社長が出てきたところなんて(すげぇ…)と素で思っちゃいました。(言葉遣いが若いのは,それだけ心に正直だからです。ということにして。)
ちゃんと,一人ひとりのキャラクターが別モノに見えました。でも,あの役をこの人が兼ねているから意味があったり面白いのかなとも思います。

あとツボだったのが,車掌役の方…。
えっと…,あぁいう車掌さんて,いますよね!?カチカチっとした人。先生役の時は(あのひとカタいな…)と正直思っていたのですが,車掌さんになったとたんに本領発揮したなと思いました(笑)。タッパもあるし,非常にハマリ役でした。

これまで何度も何度も,いろんな形・いろんなモチーフの「銀河鉄道の夜」を観てきたんですが,今まであんまりしっくり…というか,安心して観れたためしがなかったんです。私。
高校生も年齢的には十分若いのだけど,もっと下の年齢の子の話だと思うので,“浮いてる感”がずっとあったんです。いくらハーフパンツをはいても,違和感があるというか。
でも,不思議なことに長野東のジョバンニとカムパネルラは,すごーく自然に観れたんです。私の中ではすごいことなのです。これ。
二人とも,身長差や服装含めて非常に自然で,全然嫌な感じがなかったんです。ふしぎー。

舞台装置の話をすると,(あのホーム下のあれは何なのだろうか…)と謎だったんですが,川だったんですね。
川とか水の塊(海・湖)って舞台で表現するにはホントに難しいことだと思うんですが,うまかったー。撤去もすばやくてよかった!思わず2006年に観たNYLON100℃の『カラフルメリィでオハヨ』の座布団撤去の部分を思い出しちゃいました。今回の長野東とだいたい同じ手法で撤去して,場面換えてたのです。

ホンの中身に移ると,星の王子様(というかサン=テグジュペリ)や小学生の姉妹,社長やお付きのひと…いろんな人生を抱えたひとびとが出てきたのが,素敵でした。キラキラした感じ。一人ひとりはなんでもない人たちかもしれないけど,その一人ひとりが集まると,ひとっていろんな立場があるし考えがあるし,そのひとだけの人生があるんだなぁということをしみじみと感じました。たわいもない会話から,それがかけがえのない時間であることを,なんとなく観ている側に伝えてくる。出会いと別れが本当に刹那的で,でもそれって(事故や震災に関わらず)私達の日常なんだよなぁと思うと,なんだか苦いような,くるしいような気持ちにもなりました。

ちなみに私の目から涙が出たのは,やっぱりラストです。お芝居に限らず,例えば映画『タイタニック』のラストのラストとか,絶対に叶わないことが叶ったり,集まるはずのないひとたちが集まったりすると,なんだか泣けてきちゃうのです。はわわわわ…。

そうそう。「私ホリゾントって薄っぺらくて好きじゃない」って,いろんな記事で書いてますが,これは本当に効果的だった…。“ただなんとなく青空”とかじゃなくて,ちゃんと時間の経過とかが追えてて。ラストの流れ星も,私はそんなに違和感なかったです。流れてくれてよかったです。

キラキラな時間をありがとうございました…。心が潤いました…。
長野東の皆さん,お疲れさまでしたー!関東の運営もよろしくお願いします!

第31回長野県高校演劇合同発表会 伊那西高校演劇クラブ『千年神社』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:伊那西高校演劇クラブ
出演:伊那西高校演劇クラブ

東海大三同様,こちらも2004年以来,10年ぶりの観劇でした。『π』という作品で,当時感想を書きかけのままになってしまいどんな舞台だったか覚えていないのですが,巨大階段とお風呂があったのはすっごい覚えていて,(私立,スケール,違う…!)と思ったものです。今回もそのスケールは健在でした。一体どこでどう保存して,どうバラして持ってくるのでしょう。気になります。

3年間,ずっと震災に関係した作品を上演されているみたいです。
なんか…すごいなぁの一言。
当事者でないと,どうしても記憶や気持ちって薄れていきがちだと思うんです。思い出したくない人や,忘れたい人もいるだろうし。私は東京でこの日を過ごしましたが,そこから3月いっぱいは結構非日常で,あんまり思い出したくないです。大学の卒業式があるのかわからない,バス停にいても,いつバスが来るか検討がつかない,電車も動く予定がない。一人暮らしだったので,友達の家に自主避難させてもらい,しばらく一緒に過ごしました。一人でマンションに戻る日は,怖かったなぁ。

「忘れちゃいけない」と言うけれど,忘れないためには痛みも伴う。
痛みを扱うのは,非常に勇気と覚悟がいることです。
それを3年間続けていることが,本当にすごいです。

しかも,このお芝居…全然若い人が出てこない…。
ほとんど出てこない…。
キャストはピチピチ(!)の女子高生のはずなのに!
高校生がおばあちゃんやおばちゃんやるのって,抵抗ありそうな気がするんですが,すごい…。本当におばあちゃんやおばちゃんになっている…。おみそれしました…。
ただ,おばちゃん役の方(役名がわからない。何かにつけてガハハハ~って笑う人)の笑い方がパターンで,本当に心から面白かったり笑いがこみあげてくるのかな?と,ちょっと疑問に思うときもありました。

ただ,私,いろんなところの感想でも言ってるんですが,シャウト系のお芝居が苦手なんです。(ひぃー!)ってなっちゃう。
伊那西は,決してシャウトはしてないんですが,それに近い感じで,ちょーーーーーっと(うぅ…)と弱ってしまいました。すみません…。

今年の県大会はライトカーテンで始まる舞台が少なくて,伊那西も緞帳が上がり切ってからぱっと照明がついていたのですが,この舞台ならそれで正解なんだろうなぁと思いました。
あれは一気に視界に入るから,より一層圧倒されると思うのです。
あ。でもでも,村人が柱を立てようとしている時の神様の動き?振り?がちょっと気になったんですよね…。
盛り立てようとする感じはわかったんですけど,柱が立とうとしているのを払いのけているようにも見えて。もっとこう…立てるのを応援するような動きだと良かったかなと,個人的に思いました。

あと,小道具にびっくり!野沢菜!布であんなにへなへな感が出せるんですね!
質感がよく出ていて,(おぉ~!)と思いました!
贅沢言うと,せっかく野沢菜が出てきたので,どら焼きもモノとしてほしかったなぁ…と思いました。
さらに贅沢言うと,せっかく水道とホースがあるので水が出てきたらさらに素敵だなぁ…と思いました。でもタクシーの運転手にぶちまけるのか。じゃあだめか…。笑

地域性を大事にする気持ちが素敵でした…。
伊那西のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 東海大学付属第三高校演劇部『桜井家の掟』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:阿部順
潤色:東海大学付属第三高校演劇部
出演:東海大学付属第三高校演劇部

2003年,2004年に続き,3度目の東海大三。顧問の先生のお名前が以前とお変わりなく,私立ってすごいなーと思いました。
私が現役だった頃は,「北信といえば私立」というイメージで,長野日大とか清泉が県大会の常連でした。でも今は顧問の先生が替わられたりして,どうやら公立の時代が来たみたい。きっと私立は,公立とは違う「継承の大変さ」みたいなものがあるんだろうと思います。

さて感想ですが…

狙っているところはわかるのだけど,なんだかでこぼこしている感じ。

特に気になったのは,蘭ちゃんのカツラと杏ちゃんの衣装…でしょうか。いや,衣装は個人の趣味がかなり関係してるかもです…。

ワルな印象を与えるために金髪というのはよくわかるんですが,もっさりというか…。それをヘアピンでぴしーっと落ち着けているので,もっさりなのです…。わざとらしいというか,不自然というか…。
地毛を染めるわけにはいかなかったと思うので致し方ないかなとも思うんですが,例えばスプレーでその日だけ金なり茶にするとか,もう少し長いカツラにするとか,あるいは地毛に金とかポイントのメッシュを付けるとか。ちゃらっちゃらしてるのを自然な見た目で出す工夫が,もう少しほしかったなーと思います。

あと,杏ちゃんの衣装…。
衣装というよりは,きゃぴっとした服(絶対領域出てるし…!)なのにメガネで落ち着いちゃってるので,なんだかイメージがちぐはぐしてしまってるんです。夏実ちゃんみたく,しっかりフレームならカジュアルなんですが,銀フレームのままだとまじめ過ぎに見えて,どちらかというと衣装というより役者さんの趣味なのかな?という印象を持ってしまいました。

お芝居の面だと,真希ちゃんが気になりました…。
どちらかというと真希ちゃんは,自分の思いをためてためてぷちっと来た時に一方的にばばばばーっと放出するタイプの子だと思うんですが,せりふの出が本当に一方的に聞こえてしまって,場で会話している感じが見えなかったのが残念です。せりふの出が一方的…というのは,相手がどんな反応をしているか見ていないというか。一本調子というか。なんだろう。「呼びかけ」に近い感じ…でしょうか。場と会話じゃなくて,投げかけでおしまいになっちゃって。でもまだ1年生の方のようなので,これからぐいぐい伸びることを期待しております…!

夏実ちゃんは3年生の方ということもあり,役柄がお姉ちゃんということもあり,なんとか家庭をまとめようとしているところが見ててかわいらしかったです。まとめようとして,うまくいかなくてテンパってるあたりとか。ただ終始せかせかしている印象も受けたので,落ち着くところは落ち着くとか,緩急があるとさらに良かったなぁなんて思います。

男性キャストは…もう少しリラックスしてお芝居しているところを観てみたいなぁと思います。
特にお父さんは奥さんに接するやな夫ぶりと,電話でのデレデレぶりがもっと極端だと面白くなりそうです。

小道具のことで言うと,最後に超特大ケーキが出てきますが,苺の色がいかにも!という感じでプラスチックプラスチックしてたので,もう少し濃い赤に塗りなおすなど,細かい手直しがほしかったなぁと思いました。
それから,靴下をはいてるひとはどうしてもつるつる床を滑ってる感じで,変に気になってしまいました。滑らない工夫を靴下か床に仕込めると,余計なところに視線が散らずにいいのかなと思います。

「すずらんの里」とか「原村」とか,東海大三のみなさんにとって身近な地名に変更されていて,脚本との距離を地理的(という表現で良いのだろうか…)に縮めようとするところは素敵だなぁと思いました。
ちなみに私もすずらんの里,好きです(笑)。6:14高尾発松本行きの電車に何度も乗ったことがあるのですが,夏にその電車に乗るとすずらんの里あたりの景色がとってもキラキラしていて素敵なのです…!降りたことないですが,降りてみたいといつも思ってます。長野県内で一番かわいい駅名だと思ってます。

肩の力を抜いて,ナチュラルなお芝居をしていくことを意識できたら,もっと良い作品になると思います!3年生の方が抜けても,まだまだ十分な人数がいらっしゃるので,今後に期待です。
東海大三のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県松川高校演劇部『べいべー』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:青山一也
出演:長野県松川高校演劇部

松川高校といえば,個人的に“小川幸司先生が松本深志高校から異動された学校”というイメージと,“松川って言っても,村じゃなくて町の方なのね…”という印象がある学校でした。(というかそれしかないのです…。ご縁がない土地で…。)
その後さらに小川先生は他校へ異動されていますが,今年度の全国大会にこの学校が出場されると知り,とっても驚きでした。(あー,繋がったんだなぁ)と,その時は思いました。

なので。

未知数だったのです。

長野県は,全国大会に出場した場合,その年度の地区大会は自動的にパスできるみたいで,松川は県大会からの参加だったのです。長野県高校演劇連盟のwebサイトには県大会の前に各校の紹介や写真が出てたのですが,松川は本当に情報がなく,謎のベールに包まれていたのです!(笑)

ただ,地区大会の記録を見ると以前にもやっていた演目のようで,松川的に気合いの入っている作品なのかなと思っていました。(Twitterでフォローさせていただいている,松川の現役の方によると,それを部員のみなさんが知ったのは演目を決めてからだったそうで…。偶然?のようです。)




いや…




なんていうか…






全部,持っていかれましたよね…。









はぁー…!本当に,すごかった。

「すごかった」なんて薄っぺらい言葉に集約したくはないけど,うまく表現できる言葉が見つからない。

じゃあ先に,幕間講評について書きたいと思います。

私はこの幕間講評が好きで。
やっぱり上演中は上演中なので,素のお顔が拝見できたり学校の思いが伝わってくるこの時間が,好きでした。
中信地区大会は2004年くらいまではこれがあって,しかも会場内の観客も何か言えたり聞けたりしたんですが,ある年を境に幕間自体がなくなっちゃったんです。いろいろ理由はあるんでしょうけど,ちょっとさびしかったのを覚えています。県大会も,その時期くらいまでは会場内から質問とかができました。確か。

なんですが,私が大人になってしまったのか…知らず知らず多くを求めてしまったのか…松川までの学校は…終演したことでいっぱいいっぱいになってしまい,本当に「今」の感想にとどまってしまうように聞こえることが多く(そうでない高校ももちろんあります),「えっ,これでおしまい!?」と思うことが多かったのです。

しかし!

松川のみなさんは,どんなことを意図してつくってきたのか,芝居の中身・舞台美術について各担当の方からお話しくださり,とっても満足でした…。おそらく昨年度から今年の夏にかけ,関東大会や全国大会を経て,各校の振る舞いや主張に触れて,きちんと伝える内容を精査してこの時間に臨んでくださったのだと思います。こういう面からも,全国に行った学校なんだなぁということをしみじみ感じました。
きちんと話せなければだめという訳ではないけれど,お客さんと素で時間を共有できる貴重な時間なので,有効に活用できたらお互い良いですよね。
ちなみに舞台監督の方からは,六角形のお話がありました。六角形は図形の中で一番強度があるそうで,それをたまごの形に利用しているそうです。(おぉ…!そうなのか…!)と感動しました…!

幕間から少し遡り,ラストの話をすると,舞台のアタマからずーっとあって利用されなかった球体や舞台奥の「何か」はそう使うのかーっと思いました。
私の好みですが,球体からの光もステンドグラスの光もそんなに遠くまで届かないので,ステンドグラスを見ている4人のべいべー達にも,うっすら照明が当たると良いなぁなんて思いました。彼女たちの視線の先を一緒に追いたいなぁと。

さて,お芝居の話をすると,なんかみなさん仰るように…当て書きのようですよね…。
というか,台本を使って自分達を見せる術を知ってますよね…。
コメディだけどせりふの出がものすごく自然で,本当に驚きました。
間とか,表情とか,目とか,そういうノンバーバルなところで笑いを取れるって,本気ですごいです…。

あと,役者の体(体型)の使い方も,ある意味捨て身で…。一番はオムツのところ。(えぇぇぇぇ!!!)と,度肝を抜かれました…。あとはたかしのプロポーションとか。失礼になっちゃうかもしれませんが,かりんちゃんの名前と体型のギャップとか…。そう。体型がちゃんとプラスになってるなぁと思いました。でも「未熟児ギリギリ」って言葉が,全然変に聞こえない。みんな実際の姿じゃなくて,心のイメージだということがよくわかりました。

私の職業柄,そのひとがどうお生まれになったのかを確認させていただくことが多いです。というよりも,それも仕事のうち。
どういう状態(予定日との差,促進剤の有無,正常分娩・帝王切開・吸引など,在胎期間,身長体重,仮死などの異常の有無…)だとか,どういう環境(母親がシングル,一人っ子,5人きょうだいの末っ子,上のきょうだいは異父…)とか,そういうものです。生まれてくるお子さんの数だけ,物語があるなぁと常々思います。
さくらちゃんのへその緒が首に巻き付いてたエピソードは,なんだか聞いていてつらくなりました。

親は選べないし,環境は自分の力ではどうにもできないことがある。小さいうちはなおさら。それでも希望を持ちたいし,この世は生きるに値すると思いたい。
そんなことを思わせてくれた作品です。

でもって,ベッドの装置と衣装が効果的でした!装置は,ちゃんと下の方に要らなくなった小道具を隠せるようになってて(おぉ~)と思いました。
衣装が,カワイイ…。繭のようなシルエット…。赤ちゃんのふくふくした感じが出てるし,色もカワイイ!ひざを見せた方が(おそらく)いい人,隠した方が(おそらく)いい人によって(多分)丈が若干違ったりして,配慮+効果的だな~と思いました。


脚本の選び方,キャスティング,演出,お芝居…。なんだか悔しくなっちゃうくらいうまくいっていて,充実した60分を過ごすことができました。
本当に,松川高校に全部持っていかれた感がして仕方ないです(笑)。
関東大会ものびのびとしたお芝居ができますように。

松川のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県上田東高校演劇班『平成二十六年度のカルメンシータ』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:東出彩伍
出演:長野県上田東高校演劇班

上田東さんは2006年の県大会以来。伊那西や東海大三もそうですが,昔県大会に参加されていた学校が今もこうして出場されているのって,本当にすごいことだなーと思います。学校事情はもちろんそれぞれだと思いますが,全体の生徒数が減ったり,ある学年は人数が極端に少なかったり,廃部になってしまうことって,いくらでもあることだと思うので。

大会中の速報によると,顧問の先生の作だそうです。美須々の『B面セレナーデ』(県大会)でもちょっと書きましたが,先生が書かれる場合,作品に生徒を合わせるのか,生徒に作品を合わせるのかに分けられると思うんです。言い換えれば,自分のために書くのか,生徒のために書くのか。もちろんどちらかだけなんてなくて,「しいて言えばどっち寄りか」みたいな表現になると思うんですが,この作品は「生徒のため」なのかなーと観劇中から思いました。作品を通して,班員のみなさんに“○○を考えるきっかけ”みたいなものを提示しているように感じました。

私も今,一応社会人として働いておりまして,学生時代にはブラックなバイトもしてたりしてなかったり…。
なので(わかる…訴えたい気持ちわかる…。)とか思いながら観てました。笑

自論ですが,中学や高校で一番役に立つ・立たせるべき教科は公民分野だと思っています。世の中のしくみ,お金のしくみ,公的サービスのこと…生きていくにあたり,特に生活に関わる教科・科目だと思うんです。
でも,私が高校生だったとき,現代社会の先生も政治経済の先生も,誰も「雇用先で不当な扱いをされたときどうしたらいいか」とか,「本当にお金がなくなったらどうすればいいのか」について教えてなんてくれなかった。高卒で働くひともいた学校だったのに。
「自分で調べろ」と言われたらそれまでですが,それでも,引き出しの中身まで教えてくれなくていいから,困った時にどの引き出しを開ければヒントが見つかるのかくらい知っておかなければ,社会に搾取されてしまう…!

…そんなことを,学部3年の時に履修した公民指導法を通して考えていました。はい。公民指導法,本当に面白くて,一瞬教職も良いなぁと惑わされたくらいです。笑

奨学金も,進学したい高校生にとってはかなり身近な話題ですよね。私の職場の同僚は,今学部と修士課程の奨学金をダブルで返していて,完済まであと28年かかるらしいので(うぉぉ…)と思いました。生きていくのって,たいへん…。

さてさて脱線したので戻します…。

あ,でもやっぱり,この話は,「長期的なスパンで見通しを立てづらく,優先順位を整理した上での状況判断をしづらい主人公と,その特性によって巻き込まれる周りの人々の話」に見えなくもないな…と思いました。主人公の布施くん,下手したらオレオレ詐欺の実行犯とかやっちゃいそうなタイプだな,と…。(自分で綿密な作戦を立てたり下っぱに命令するタイプではなく,深く考えず,言われたままに行動していくタイプ。)
会社人間というよりは,会社の目標と自分の目標が混同してしまう感じ。他人から「かっこいいね」って言われたら,自分のことを「かっこいい」って思ってしまう感じ…!?例えばルシータさんに対しても,「優しくされたから好き」とか。
なので不当だとわかっていても,じゃあそれに対して対処できるかと言われたらそこまでのスキルがないので,なかなか現状を打破できない人なのかなという印象を持ちました。


あと,これは脚本の問題かな?と思うのですが,キャラクターが揺らぐんですよね…。

美佳は布施くんのことを結局どう思っているの?周りに冷やかされてその気になってるだけなの?って。言葉(せりふ)は出ているけど,常にちょっと“困った顔”で情緒が伴ってない感じがして,その場その場で言葉だけ出ている印象でした。

ルシータさんはバリキャリな感じで,会社のために働くよりも自分のために働くような人(だから会社をすっと辞められる)だなーっという感じで素敵でした。でも最初,仕事じゃなくてダンス衣装で出てくるときはもう少し「いい人」感を見たかったなぁと思いました。店員さんから椅子を出してもらったときに「ありがとう」と言っていたけど,そういうことではなくて,立ち居振る舞いとか,表情とかから,親しみやすさだとか,布施くんが惚れた理由がわかるような何かを見たかったです。あのままだと,布施くんの言葉と実際の姿が解離してるなーという印象です。
また,ラストでルシータさんが布施くんにコロッとなってしまいますが,帳尻合わせというか,(なぜそうなった!?)という気持ちになってしまいました。コロッといくまでのプロセスが見えなくて…。私はひとの心の動きっぷりを見たい人間なので,ここをもう少し丁寧に見たかったなぁと思いました。
あ。そしてスーツのルシータさんが銀行員のように見えてしまったので,もっとおしゃれスーツとか黒ストッキングとか,そういう衣装でも良いのかなと思いました。


講師の先生も仰っていましたが,貧血で倒れたひとをなぜ冷たい床の上に…!
倒れたら動かしちゃまずい場合もありますが,貧血なのでどうか畳の上で休ませてあげてください…。ここらへんは高校生ゆえの生活経験のなさみたいなものも感じちゃいました(身の周りで倒れる人がいないに越したことはないですが…)。


いろいろ書きましたが,ほんとによく高校生が居酒屋を舞台に芝居したなぁ~と率直に思いました。みなさん…行ったこととかあるのでしょうか?以前,知り合いの40代の主婦の方とお話していたときに居酒屋の話になり,「最近息子がよく食べるようになってきたから,ファミレスに行くよりも安上がりなのよね」と聞かされ,ドヒャー!と思ったものです。
あと,これまた個人的な話で,先月居酒屋に行ったら,接客してくださった店員さんが高校生でした。日曜の夜に…。生活のためなのか自由なお金のためなのかはわからないけど,カサハラさんはかなり衝撃を受けました。ちなみに場所は新橋(笑)。
でも,高校生にはあまりなじみのない場所だし(あっちゃ困るし),役作りや動きも含めて大変だったと思います。居酒屋の店員さんってほんとに動きが止まることがないので,ぜひ二十歳になったら観察してみてください。

作りこんだ舞台セット,暗転中の光が素敵でした。みなさん,ブラックな大人や会社に惑わされない大人になってください…。
上田東のみなさん,お疲れ様でしたー!

Saturday, November 1, 2014

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部『B面セレナーデ純情奇譚』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:郷原玲
出演:長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部

木曽青峰に引き続き,こちらも地区大会に続いての観劇です。
(事前に地区大会の感想にもお目通しいただけると嬉しいです…。)

直前が木曽青峰の公演だったので,この時間の客席にいらした方の9割以上は初見の方だったのではと思います。初日のトリだったこともあり,会場ではかなり笑いが起きていて,(高校生に受けてる!今の高校生はこういうのが好きなのか!)とショーゲキでした。

一方私は,地区大会で涼子ちゃんのことが気になっていたので,その疑問に対する答えは見つかるだろうか?と考えていました。
気になっていたこととは,緞帳が上がって60分立ったとき,涼子ちゃんはどう自己理解をしているんだろう…ということ。

結論から言うと,なんだか悲しくなりました。
菅原さんに向かって「私も,女子高生を演じます(みたいなせりふ)」と言っていたのを聴いて。

涼子ちゃんの言う“女子高生”って,大人の顔色を窺って動くような“いい子ちゃん”だったり“損な役回りの子”という意味なのかな,と。だって自分がそういう子だと,涼子ちゃんはわかっているから。

今まで感情を抑圧して社会との関わりを断ってきた晶ちゃんが涼子ちゃんの手を借りて,感情に触れながら少しずつ他者と関わり,社会に適応していこうという成長っぷりを見せてくれたのに,涼子ちゃんは感情を抑圧しながら社会に適応し続ける道を選ぶのかぁ…と。

おうちでは「うっせーなぁ!」みたいなせりふがあって,(あ,こういう主張もできるのねやっぱ)と思ったのと,社会に適応できればいくら家で荒れても(その逆よりは)良しという考えもあるよな~と思いました。
がっ,やっぱり晶ちゃんの成長と比べると,涼子ちゃんはそうでもなくて,吊り合ってないのでは感が否めませんでした。晶ちゃんはどちらかというとポジティブになっていくのに,涼子ちゃんは諦めの方向に行く感じ。「人生って演じることでしょ(みたいなやつ)」ってせりふも,人生よくわかってるなこの子とも思うのだけど。演じ方の方向が,二人は逆方向なんだなーと感じました。

…というか,いつもいい子ちゃんだったら友達いそうなのに,涼子ちゃん。
いい子なのと自己主張できないのはちょっと違うからなぁ…。なんでいないんだろう。
(どうやら友達がいないらしい)ということで先生は涼子ちゃんにおつかいを頼んだらしいけど,不登校の子より,毎日登校しているクラスメイトと繋げてあげた方が涼子ちゃん的には良いのではと思うのですが,そこは新任の先生の優先順位のつけ方ミスだと思うことにします。笑


あと,涼子ちゃん涼子ちゃん言ってて申し訳ないのですが,地区より間近で見られたので,やっぱり皆さんのお顔・表情に注目してました。
そしたら!
涼子ちゃんを見ていたら,フィギュアスケートのはにゅーくんを連想してしまいました…。
先日,はにゅーくんの写真集をじっくり眺める機会があったのです。
ページをめくればすぐにおわかりいただけると思うのですが,彼の表情ってほとんどパターンなんですよね。静止画になるとよくわかります。動画だとそんなに気にならないのに,静止画になると損する(?)タイプ。別のシーズンの別のプログラムなのに,(あれ?この表情さっきもしてなかった?)って思う顔が出てくるんです。そしてあくまで私のとらえ方ですが,彼の笑顔の作り方は,目をくっと上げて口がにっとなる感じ(←わかりにくすぎる)で,まゆが動かないのが特徴だな~と思ってるんです。涼子ちゃんの笑顔は,それに似ていた…。気がする…。

それからやっぱり全体的に過剰な動きもパターンな感じがしてしまって,せっかくホンが面白いのに動きで笑いを取ろうとしていて,浅い感じに見えちゃったんですよね…。
なんかここまで書くと悪口になっちゃってる気がしてものすごく嫌なんですが,多分私にとっては何度も味わう作品というよりは,一度観れば満足なタイプの作品なのかもしれない…。
(私はどちらかと言うと,力動が見える作品が好きなので。ただの好みの問題です。)

そうそう。この作風は何かに似ている…と地区の頃からずっと思っていたんですが,わかりました。
三谷幸喜のコメディ映画に,似ている!!!(マジック・アワーとかTHE有頂天ホテルとか)言葉のしかけとか,シチュエーションで笑わせるところとか。
私,三谷幸喜の芝居は好きなんですけど,映画は一度観たらいっか☆という感じなので,それに似ているのかもなーとふと思いました。

あ!でも,地区大会の時はひやひやしてしまった扉上のパネルは60分間きちんと安定感があったり,涼子ちゃんがレコードを見つけたときに「聖子ちゃんじゃな~い」って言ってたあたりとか,よかったです(笑)。坂城の『158.9』でレコードがあったときは,私もハッ!!と思ってました(笑)。

地区大会の感想で書きそびれてしまったけど,晶ちゃんは着替え後にワンピースが見えないと良いなぁとか,きれいに制服着られると良いなぁとか思いました。
制服については,ブラウスをスカートにインしていないから,縫っていいものだったらドッキングワンピみたいに縫っちゃうとか,それが無理ならスカートにインした状態で何か所か安ピンで留めておいて一気に着られるようにしておくとかの工夫があるともっとスマートだろうなーと思いました。
(あと晶ちゃんの靴ぱかぱかが見ていて気になる…。猫背気味になってしまう原因かも…。)


なんかすごいピンポイントな話になってしまってすみません。
でも本当に,1年生のキャストだけで県大会に行けるってかなりスゴイと思います。伸びる時期ってまだまだこれからだと思うので,いろんな表現手段を吸収できると幅が広がって良いだろうなーと思います。

あとこの作品は,大会の速報によると1年生4人を見て郷原先生が当て書きされたそうで…,さらさら~っと作れてしまうあたりは脱帽です。
創作を書く先生って,作品に生徒を合わせる方と生徒に作品を合わせる方に大別できると思っているんですが,郷原先生は後者なのかな?と思いました。

サマーフェスティバルにも参加が決定しているので,新生美須々に期待していきたいです。
美須々のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県木曽青峰高校演劇部『砂漠の情熱』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:日下部英司
出演:長野県木曽青峰高校演劇部

地区大会に引き続いての観劇です。

文化祭:音響照明なし→地区大会:部員さん2人→県大会:部員さん6人!
…と,公演のたびに,作品や団体が成長していて,すごいなァと思います。
特に地区は3年生おふたりだったので,(この先どうなるんだろう…)と外野のニンゲンながら気になっていたのですが安心しました。
10回口説くより1度作品を観てもらう方が,部員の獲得って近道だったり,より深いところを揺さぶられて入部に至れるのではないかと…ふと思いました。

地区大会(感想はこちら。)では講師の先生より後ろのお席で観たので,どちらかというと全体を観ていたのですが,やっぱりエレーヌの表情が見たいなぁと思って,今回はわりかし近めで拝見しました。
一度観ているので,本当に,ミクロな部分を楽しんだ感じです。

ミクロなところの発見といえば,ラストの,男がエレーヌを撃った直後。
(あ…ふたりって目が合ってるんだ…!)と,感激しました…☆あぁ,切なかった…。

そして特に見たかったのが,赤い布がかかっているのを見つけた時のエレーヌの表情。
「不思議そうな顔」みたいなせりふがあったと思うのですが,本当に,言葉通りそんな感じの表情でした。もっと哀愁というか,不安というか,そういうものが見えるのかと思った…。せりふでまとまってました。

あとあと。身投げのところ。地区大会と違って見えたのですが,どうなのでしょう…。(地区は後ろ姿をこちらに,県は顔をこちらに見せて落ちてるように思いました)
私はこちらの方が好きかもしれない…。死ぬ直前の顔が見えてしまうなんて恐怖すぎるから。(←)

あとあとあと。豹が言葉を纏ってエレーヌになっていくところは相変わらず気持ち悪くて良かった!(ほめてます!ほめているのです!)私は仕事柄,構音が未熟な方にお会いするのですが,(うんうん,あの音って出しづらいよなー)とか納得して聞いてました(笑)。言葉を獲得していく過程が見えますよね…。気持ち悪くて怖くて,好きなシーンです。

…そういえば!冒頭と,緞帳が降り切る直前に,エレーヌ役の方の手がパネルからみょんっと出ちゃってたのがもったいなかったです!おそらくどちらも衣装に袖を通していたのかな?と思ったんですが,やっぱり見えちゃうのは残念でした…。

12本観た中でも,やっぱり異色でした。明らかに。
それが良いと言いたいわけでも,だめと言いたいわけでもないです。
言葉の通り。それだけ。

先月,私のもうひとつのブログで書いた日記「長野県の高校演劇県大会,個人的にここが気になる。の巻。」(←日記のタイトルなのでふざけてますゴメンナサイ…。)でもちょっと書きましたが,この作品を世に出すために,日下部先生は木曽青峰に異動されたんだろうなーと解釈しています。でも,中信地区だけに留めるには,あまりにももったいないホンだった。
ここまで来られてよかっただろうなーと思う反面,これを関東に持っていけたらどんな反応を得られたんだろうとも思ってしまいました。
大会中に発行されていた速報によると,今後の公演予定があるらしいのでよかったです…。

講師の先生も仰っていましたが,役者によってずいぶん変わる作品だと思うので,いろんなパターンで観てみたいなぁなんて妄想しちゃいます。笑
いつかまた別キャストで拝見してみたいと思う作品でした。

今年度の4月から11月で,ここまで来た木曽青峰に拍手です。
木曽青峰のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県上田千曲高校演劇班『ふぁみりあ!』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:吉野由理香+長野県上田千曲高校演劇班
出演:長野県上田千曲高校演劇班

中信地区の人間が最も足を運びづらいエリアは,上田方面だと勝手に思っています。
…のですみません…!上田千曲高校という学校,初めて聞きました。長野県がだだっ広いことを改めて実感しています…。

終演後,とっても温かい気持ちになりました。一緒に観に行ってた2つ年上の先輩も「俺こういうの嫌いじゃないよ」と仰っていました。私もです。

さて,中信地区もほぼ全ての作品を観たんですが,異色なキャラが出てきた学校がありました。南農の『オカマが来たりて笛を吹く』です。
異色なキャラとはマリさん(役名)。マリさんはオカマです。でも!それを!普通に(?)女性が演じていらしたのです!しかもその方,リアルに八頭身の方で,ほんっとにモデル体型だったのです。それで肩に肩パッド入れてるから,パッと見すごく不思議で!!!

…そのマリさんのことを,思い出しました。
それは睦未ねえちゃん…。開始3分くらいで(あれ?)って思って,上演中にも関わらずついパンフレットで確認してしまいました。
幕間講評で出てきた方はおそらく作・演出さんだと思うのですが,その方が「大事にしたかったことは“個性”」と仰っていたのが印象的でした。芝居のキャラクターは芝居のキャラクターであって,それを演じている方の実際はもちろんわかりませんが,もしかしたらGLBTの方なのかなとか考えちゃいました。それがもし,幕間の彼女が仰っていた“個性”だとしたら,そこも含めて本当に素敵な作品だなーと思いました。

ふと思ったんですが,たとえば戸籍上は女性だけど心は男性っていう演劇部のひとって,普通にいそうじゃないですか。でもそういう場合,結構あっさり男性役とかできるんじゃ(やってもお客さんは受け入れやすそう)って思うんですが,逆の場合ってなかなか良い役がないんじゃないでしょうか…。
「じゃあ演劇部に入らなきゃいいじゃん」って話になりますが,そんな単純なものじゃないし…。
…あ。久留米附設の『女子高生』をやれば…!(違う)
なんかそんなことを考えました。脱線しました。

さて,お話ですが,
同じ親から生まれてきたって,きょうだいだって別のニンゲンだよなーってことを改めて感じました。
いや,当然のことなんですが,自分の考え方の癖に気づけました。観劇中,(それにしてもきょうだいなのに興味の方向や性格が似ていなさすぎ!)と思っちゃったんですね。
でも,別なニンゲンなのだから当然じゃないか,と。そのあと思ったわけです。多分親子にも言えることで,「私がこうなのに,どうしてこの子はそうじゃないの」とか,「私がこんなふうだから,この子がこんなになってしまった」なんて必要以上に思わなくて良いんだろうな,とか。そんなことを考えました。

あと,舞台装置がシンプルで素敵。
箱をいくつも組み合わせて場を作るのは,例えば今年の中信地区では松本蟻ヶ崎の『Nippon, cha cha cha!』で見られたんですが,そちらはひとつひとつの箱に“個性”がほとんどなかったんですね。形は不揃いだけど,組み合わせればなんにでもなれる箱の集まり。無機質という言葉が合うでしょうか。
それに対して上田千曲は,形は同じでそれぞれの模様(←絶対,絶対日下部先生演出だったらああいうものは入らない…!と思う)という箱で,ここにも個性というか,高校生の皆さんらしい温かみを感じました。よかったなぁ。

そしてやっぱり睦未ねぇちゃんばっかり目がいってしまった…。
だってかなり身軽なんだもの…!飛び蹴り?みたいなのとか,ダイナミックで。でもドスン!ではなくてシュタッと着地していて。カッコイイ…。
あと包丁振り回しているところとか,目だけで演技ができるってとっても素敵!3年生の方というだけあって,安定しているな~と思いました。

そうそう。私も冒頭のモノローグ,好きです。
渡りたいのに渡れない,気づいてほしいのに気づかれない,透明人間というか空っぽというか,そんな空虚感が伝わってきて。しかも30分渡れない姿を想像すると,本当につらそう…。
きょうだいと比べたときに「自分には何もない」って思ってしまったときの劣等感とか,そういうものも伝わってきました。

本当に,カンパニーの力がある…というか,すんごい楽しそうに演技されているんです。みなさん。
ただの生徒の創作ではなくて,ひとつの作品づくりに一人ひとりがきちんと参加されて出来たものなんだろうなぁという印象を強く受けました。
へたすると,生徒の創作&演出って,そのひとの世界の押し付け!になっちゃうと思うんです。でもそうならず,協力的に創作されているであろう姿が,本番から伝わってきました。
でもやっぱり最終的にまとめたり名前を残すのは作・演出の方なので,その方のセンスが良いから出来たことなんだろうとも思います。

高校生自身がつくる創作とは…について考えさせられましたし,きっと私が同じ高校生だったらうらやましくなっちゃうくらいのカンパニーでした。
上田千曲のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県坂城高校演劇部『158.9』(原題「151.8」)

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:安部雅浩
出演:長野県坂城高校演劇部

タイトルはずいぶん大昔から知っていたのですが,作品自体を観るのはこれが初めてでした。こんな話だったのですね!
散り散りになっていく家族と,家族になろうとしているひとたちの対比が面白かったです。

ギャグをギャグとして演じられるのって,結構大変なことなんだろうと思います。思い切りがあって良かったです。

祥子ちゃん役の方の声が,とっても素敵でした…♡
クリアに通るとか,艶っぽいとかではないのですが,印象的なお声!
私は自分の声があまり好きではないので,良い声ってとっても憧れです。おそらく2日目には松川高校の開演前の影アナをされていて,素のお声が聞けたのも嬉しかったです。

お父さん役の方は,講師の先生も仰っていましたが若く見えて若く見えて。見た目も中身も。
ギャグでテンションは上がるものだと思うのですが,もう少し落ち着きがほしかったです。
お父さんのせいなのか脚本のせいなのかはわかりませんが,お芝居の前半はなんだか冗長に見えてしまいました…。爪切りとかそのあたり。

あと新婚夫婦は『クレヨンしんちゃん』のみっちーとよしりんみたいで良かった…(笑)。
知子さん役の方が棒読みぽかったのは気になりましたが,それもせりふの中身と…マグロ?カツオでカバーされていた気が…(笑)。

今時の子なら,写真撮るならデジカメじゃなくて携帯やスマホなのでは?とも思ったんですが,「お父さんとツーショットの写真がない」と聞き,(あぁー,ちゃんと残したかったからデジカメなのかな)と思えました。

はっ!ホリゾントがあるのは私も気になりました!
最後何かあるのかなーって。
でもなくて,期待していた気持ちがしぼみました…。見える・ある以上,意味があるというか,つけなきゃいけないし,それがないのなら隠す,消す作業が必要かなと思います。
あと気になったところつながりで,センターのふすまのすぐ右の…ベニヤ?と,確か下手の壁で使われていたベニヤ?のラインがガッタガタのが気になりました。特にセンターは一番視線が集中するところだと思うので,気を配れると良かったと思います。

でも最後の「158.9!」って壁にぐわぁ~って書くところは圧巻だったのと,ラストの柱にピンポイントで照明が当たるところが,とっても印象に残りました。

“高校演劇といったらこんな感じ!”を観られた気がします。
坂城のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 飯田女子高校演劇クラブ『犬の神』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:伊藤瑞苗・桑原かすみ
出演:飯田女子高校演劇クラブ

初,飯田女子…!飯女と略されることは存じておりました!(無駄なアピール)
いつからかわかりませんが,県大会のパンフレットがだいぶご丁寧なつくりになっており,各校写真や学年構成などが載ってまして,その中で飯女は人数多い感がすごーくありました。(これだけいたら,いろんなことができるんだろうなぁ)と思ったり。

クラブ員さんおふたりの共作のようです。私は自分で創作したことがないのでよくわかりませんが,ずぇったい(絶対)大変な作業だと思います。意見食い違ったり。暴走しちゃったり。だからまず,一本の作品として世に出たということがすばらしいと思います。

それから,「思い込み」がテーマとのこと。うんうん,素敵なテーマ!
人のこころの動きっぷりが見られると,個人的に芝居として満足です。
がっ!ホンの問題なのか,演技の問題なのか,迷走している感じもしちゃったんです。なんでかな。気になったことをピックアップしていきたいと思います。

①間合い
講師の先生も仰っていましたが,間が!!!!!!
ふふふ,普段,あんなふうに喋らない…!
せりふとせりふの間がやたらあって,高校演劇によくあるパターンだな…と率直に思いました。多分もっと詰められて,40分くらいでいけるお芝居だと思います。書いてみて,「あ,60分弱にならない」といった理由でああいった演出をしているなら,それは40分なりなんなりで収めてよかったと思いますし,講師の先生の仰るように「病気」なら治るので,先生が仰っていた方法をぜひ試されてください…。
教祖さま的なひとは,せりふを立たせるために間を置いても良いだろうけど,みんながみんなそれなので,とってものっぺりした印象になってしまいました。

②ことばに対しての反応が見えない…。
①の間合いとも関係するのですが,もう少し自然体な演技ができるともっと観やすくなるだろうな~と思って拝見していました。何か相手から言葉が飛んできたら,それに対して何らかの反応ってあると思うんです。目なり,肩なり,表情なり。
しかし…!せりふとせりふの間が空いてるので,せりふが飛んできたときにすかさず反応しちゃうと,多分間のバランスが崩れると思うんです。ゆっくりテンポのお芝居に,スピードがついちゃうから。だからもしかしたら,出したかったリアクションが出せていなかったのかな?とも思いました。
でもやっぱり観客(特に私)が見たいのは人のこころの動きっぷりなので,出せるよう演出やトレーニングを再検討したり,良質なお芝居に触れると良いのだと思います…。えらそうでごめんなさい…。

③ひととの距離はこころの距離…
という言葉をたまに耳にするかと思うのですが,すんごい違和感を感じたところが一ヵ所ありました。
レオとインが再会して抱き合うシーン。
…え!まだ出会って2日目くらいですよね!
そそそ,そこまでぎゅぎゅっと抱きしめ合う間柄だったのですか!?(゜ ゜)

…と。笑

世の中にはひととの距離感を上手に図れない方もいらっしゃいますが(笑),この場合は,ト書きの指定なら脚本,演出家の指定なら演出に異議アリでした。

④川を超える必然性
冒頭で,超えますよね,レオが。
もちろんそこを超えないと物語が転がっていかないのですが,超える必然性が,なーんだかいまいち見えなかったです。その場の興味本位?ずっと前から気になってた?「仲間に咎められる危険性を感じながらも超えるリスクを優先したこと」の背景がもう少し見えるとよかったです。

⑤泥棒猫さん
OPの曲がなかなか良い…と思ったら,泥棒猫さんのテーマソングだったんですね(笑)。
でもなんか,なんていうんでしょう…。泥棒猫さんはとても素敵だったのですが,なんか,岡本夏生を連想しちゃったんですよね…。ああいうお笑い芸人とか,いますよね…。コブラナッツとか…。小手先のお芝居というか,パターンで動いている感じが,そう思わせたのかなと思います。なので地は素敵なのに,なんだか損している気がしました。これは演出の話。

⑥下手側の新興宗教的なひとびと
預言者。服装はあっち,髪型はこっちの新興宗教をもとにしてるんだろうな~というのがわかって,考えてるんだなーと思いました(笑)。それに対して長の方は原始的で,対立感が見た目でもわかってよかったです。

⑦どこからどうみても女のシーン
レオさんとインさんて…なんか,似てますよね。まさか双子さん…!?
さて,レオがインを男だと思っちゃうシーンのところですが,レオ的には「どこから見ても男」,イン的には「誰が見たって女」と,かなり食い違ってるわけです。それは二人に思想の差・文化の差があって,そういう思考・思い込みになってると思うのだけど,ゲンジツの私達からしたら,あの衣装と髪型だと,インはまぁ男に見られるだろうなと思ってしまうのです…。でもその思い込みを引き立たせたいのだろうから,インの文化的にはどのあたりが女の子要素だったのかを,ただポーズをとって立つだけでなく,実際もう少し言葉で補足がほしかったなと思いました。

⑧ようやく後半になってテーマが見えてくる感じ。
事前にパンフレットを読んでいるから,(あぁこういうところに焦点を当てたのね。こういう部分を観ればいいのね)とこちらも準備ができるのですが,作品全体としてあまり扱えていないような気がしました。泥棒猫さんが「神も悪魔もどっちも同じなのにね」みたいなことを言ってくれていますが,もう少し各民族(?)で同じ話題を取り上げられたらよかったのかなーと思います。解釈の仕方が思い込みにつながっている気がするので,それを比較するには同じものを扱わないとなのかなと思います。泥棒猫さんのような説明的なものではなく,各民族の調理の仕方から,対比が見えるといいのかなーなんて思いました。

なんとなく,『赤鬼』に似てる感じだなという印象です。野田秀樹さんの。勝手なイメージかもしれないですが,飯田って長野県の端っこで,長野県の他の地域に行くにも他県に行くにも少し移動しづらい,どちらかといえば閉鎖的な地域なのかなと思います。その地域性が,作品にも盛り込まれていたように思いました。
あとはヒトラーの思想だとか。ああいうものにも通じる気がします。
でもなんだか,思い込みについてあまり触れられていなかったり,じゃあその摩擦を減らすことについてどうすれば?というところまで深く盛り込めていない感じがしてしまいました。

あと余談ですが,ラストの久石譲の曲で,なんだか『もののけ姫』を連想してしまった私です。
大自然を連想…。

本当に,面白いテーマを選んでいるとは思うので,もう少し何に焦点を当てたり,どうアプローチしていくのかを練られると良い本・作品になるだろうなという印象です。

飯女のみなさん,お疲れさまでしたー。

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県屋代高校演劇班『南京の早春賦』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:小川幸司
潤色:長野県屋代高校演劇班
出演:長野県屋代高校演劇班

2014年の県大会のトップバッター!

私が2週間前に書いた日記(こちら)で,この学校のこの作品への期待を述べさせていただきましたが,本当に観に行って良かったです。

何回も同じこと書いてて恐縮ですが,2003年に作者の小川幸司先生が書き下ろして,松本深志がやっているのを客として観ていたのです。私。
9月から12月まで,私の中では結構長い間追わせていただいた作品で,ホールでも拝見しましたし,小川先生にお招きいただき高校の教室でも拝見させていただきました。
地区大会で講師の先生から指摘されていた部分が県大会で変わっているのがわかったり,ホールでは気づけなかった細かな部分に教室公演で気づけたり…。あと主役の方が姉の中学校の同級生の方だったので,(あの先輩があんな演技を…!)と思いながら毎回観ていて,外部の人間でしたがかなり思い入れがあった作品なのです。
(ちなみに松本深志の『南京』の感想はこちら。)

小川先生の作品は,当て書き…というわけではないけれど,他の高校が上演することを想像するのが難しいくらい,作りこまれているんです。
その年の,その学校の公演で,完結しているものだと個人的に思っているんです。

だから単純に他の地区の学校が再演するのに驚きましたし,その学校である屋代高校の現顧問の先生は,2003年当時小川先生と同じ中信地区で演劇部の顧問としてご活躍されていた先生だったので,なぜこれを選ばれたのかがとても興味深かったのです。
世の中に戯曲は多くあるけれど,なぜそれなのか。それである必要があったのか。
仮に先生が作品の選考に携わっていなくても,部をマネジメントするのが顧問の仕事であるとするならば,最終的にGOサインを出す顧問がその選択を肯定しているはず…と思ったので。

でもって,何の作品でも,いちばん最初に観たインパクトは,強烈です。
やっぱり深志の舞台は本当によかったし,オリジナルに勝ることは難しいと私は思っています。その前提で,以下お読みください…。


とても…とても懐かしかったです。
(あぁ,このせりふ聞き覚えある~!)と思いながら拝見していました。本当に懐かしかった。
(この次のせりふはこれだわ)って思う瞬間がいくつかあって,本当にそうだったときのよっしゃーって感じは,きっと一緒に観に行ってくれた部活の先輩くらいにしか伝わらないでしょう…。

パンフレットには演出の方のお名前がありませんでしたが,きっと女性の方が演出されたんだろうなぁと思いました。
だってすごく女子女子してるんだもの!
例えば…

・ティーセットかわいい
・ソファーかわいい
・アデラかわいい(青い服)
・アデラ死なない

…そう,アデラ死なないんです!!!!!!!!!!

潤色されているということは知っていましたが,(11年前に観た作品だし,どこがどう変わったか気づけるかな~)と心配でした。が!最後の最後で(ここかーーーーー!)って。
希望を残すあたりが,女性目線な気がしました。
小川先生は,史実に基づくというか,とにかく絶望的なものは絶望的なので…。笑
屋代版は,誰が銃の弾を抜いたのか,考える楽しみも与えてくれたような気がします。

主人公たちは17歳。2003年当時,私は中学生。彼女たちの年齢を追い越し,20代半ばになった今改めて観てみると,(なんて意識高い系の女子たちなんだ…!)ってことに気づきました。現代の女子だったら,起業とかしてそう。というか,アデラの「学校作る!」っていうのもある意味企業か。

夢の,スケールが大きいよね。あと自分のためにというより,他者のためにという意識が強い。
それは本当にそれを目指してそう言っているのか,まだ世間をよく知らずにそう言っているのか,若さゆえの万能感なのか,よくわからないけど。
でもきっと全部,ちょびっとずつあるんだろうな。それが17歳っていう,キラキラした年と時間のことなんだとも思いました。


さて,細かいところ。
アデラさん…。かわいかった…。本当に,無邪気なアメリカンガールという感じ。
とっても魅力的な方で,憑依系の役者さんだなという印象を受けました。(ていうかまだ1年なのか!これからが楽しみ!)
でも滑舌というか,舌が長いの…かな?「ら行」とかが難しそうで,ちょっと聞き取れないせりふもちょこちょこありました。でも彼女の勢いと,私の記憶(笑)によってカバーされていた気がします。
あと,カツラ?カツラなのかな?前髪がすとんと落ちていて,目が見えづらかったです。やはりお客さんとしては役者の顔,特に目が見たいので。(←これは由美子にも言える。残念…。)

深志が知的で落ち着いたアデラさんだとしたら,こちらは元気はつらつ!な感じが全面に出ていて,それが後の精神的にやられていく感じにつながってよかったです。由美子が殺されてからの,机やソファーの方を行ったり来たりするあたりも,よかった。魂が彷徨う感じで。
でも最後の方はもっと感情がなくなってもいいのかな。「春が来ても喜びを感じないだろう(みたいなせりふ)」とか「悲しさも感じない(みたいなせりふ)」を話しているあたりが悲しそうだったので。個人的にはもっと,平坦ゆえにひたひたと迫るものを観たかったです。

スクリーン&字幕について…。
(こうきたか!)という感じです。赤のシルエットで虐殺されていく感じ,良いですね…!印象的!新しい!
ただ,字幕については出す場所が再考の余地ありなのでは…と思いました。
フォントがでかすぎる割に窓枠の向こうなので,おそらく上手下手の客席からは見えない字があって読み切ることができなかったり,やっぱり言葉も大事だけど演技も観たいと思ったときに上下の目の動きをしなければならなくて(私が近くで観すぎたのかもしれませんが…),ちょっと高度なテクが必要でした。
あとあと!せりふと字幕があってないところもおそらくあって,(ううーん…)と思ってしまいました。

そうそう。銃殺の音が…
弱い気がしたのは,私だけでしょうか…。
そのあとのドアのバタンと閉まる音の方が大きく聞こえたのは私だけでしょうか…。
アデラは銃声が忘れられないと言っていましたが,私はドアのバタンの方が忘れられません…。
そのついでに,目の前で友達が銃殺されたら,もっと,声にしろ,目にしろ,体にしろ,反応があるような気がするのですが,そのあたり,アデラさんやタオさんがうっすらだったので,(あれれ!)と思ってしまいました。

音といえば…!
まさかの!蟻高と使用曲がかぶっている…!
今年度文化祭や地区大会で松本蟻ヶ崎が発表されていた『Nippon, cha cha cha!』で使用されていた曲が,ここでも聴けるとは…!こここ,顧問の先生のセンスですか!?なんだか奇遇すぎて恐ろしかったです。(世の中には星の数ほど楽曲があるというのに!決してメジャーな曲じゃないと思うのに!)

他にも書きたいことがあった気が…。
あ,気になってた作品選びについてですが,大会中に配布されていた速報によると,顧問の先生が班のみなさんの様子を見て提案してくださったそうです。
いろいろもろもろをご存知の上で出してくる先生…。(チャレンジャーだわ…!)の一言です。


最後に,この作品を拝見する前,作者の小川幸司先生にもお会いでき,10年ぶりにお話することができました。感無量です…。ほんとうにこれだけで,冗談抜きで生きててよかったと思いました。
これからも,このブログの更新をがんばろうと思った2014年秋です。

屋代のみなさん,お疲れ様でした。そして,小川先生にも巡り会わせてくださいました…。本当に本当に,ありがとうございました。