Saturday, November 1, 2014

第31回長野県高校演劇合同発表会 飯田女子高校演劇クラブ『犬の神』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:伊藤瑞苗・桑原かすみ
出演:飯田女子高校演劇クラブ

初,飯田女子…!飯女と略されることは存じておりました!(無駄なアピール)
いつからかわかりませんが,県大会のパンフレットがだいぶご丁寧なつくりになっており,各校写真や学年構成などが載ってまして,その中で飯女は人数多い感がすごーくありました。(これだけいたら,いろんなことができるんだろうなぁ)と思ったり。

クラブ員さんおふたりの共作のようです。私は自分で創作したことがないのでよくわかりませんが,ずぇったい(絶対)大変な作業だと思います。意見食い違ったり。暴走しちゃったり。だからまず,一本の作品として世に出たということがすばらしいと思います。

それから,「思い込み」がテーマとのこと。うんうん,素敵なテーマ!
人のこころの動きっぷりが見られると,個人的に芝居として満足です。
がっ!ホンの問題なのか,演技の問題なのか,迷走している感じもしちゃったんです。なんでかな。気になったことをピックアップしていきたいと思います。

①間合い
講師の先生も仰っていましたが,間が!!!!!!
ふふふ,普段,あんなふうに喋らない…!
せりふとせりふの間がやたらあって,高校演劇によくあるパターンだな…と率直に思いました。多分もっと詰められて,40分くらいでいけるお芝居だと思います。書いてみて,「あ,60分弱にならない」といった理由でああいった演出をしているなら,それは40分なりなんなりで収めてよかったと思いますし,講師の先生の仰るように「病気」なら治るので,先生が仰っていた方法をぜひ試されてください…。
教祖さま的なひとは,せりふを立たせるために間を置いても良いだろうけど,みんながみんなそれなので,とってものっぺりした印象になってしまいました。

②ことばに対しての反応が見えない…。
①の間合いとも関係するのですが,もう少し自然体な演技ができるともっと観やすくなるだろうな~と思って拝見していました。何か相手から言葉が飛んできたら,それに対して何らかの反応ってあると思うんです。目なり,肩なり,表情なり。
しかし…!せりふとせりふの間が空いてるので,せりふが飛んできたときにすかさず反応しちゃうと,多分間のバランスが崩れると思うんです。ゆっくりテンポのお芝居に,スピードがついちゃうから。だからもしかしたら,出したかったリアクションが出せていなかったのかな?とも思いました。
でもやっぱり観客(特に私)が見たいのは人のこころの動きっぷりなので,出せるよう演出やトレーニングを再検討したり,良質なお芝居に触れると良いのだと思います…。えらそうでごめんなさい…。

③ひととの距離はこころの距離…
という言葉をたまに耳にするかと思うのですが,すんごい違和感を感じたところが一ヵ所ありました。
レオとインが再会して抱き合うシーン。
…え!まだ出会って2日目くらいですよね!
そそそ,そこまでぎゅぎゅっと抱きしめ合う間柄だったのですか!?(゜ ゜)

…と。笑

世の中にはひととの距離感を上手に図れない方もいらっしゃいますが(笑),この場合は,ト書きの指定なら脚本,演出家の指定なら演出に異議アリでした。

④川を超える必然性
冒頭で,超えますよね,レオが。
もちろんそこを超えないと物語が転がっていかないのですが,超える必然性が,なーんだかいまいち見えなかったです。その場の興味本位?ずっと前から気になってた?「仲間に咎められる危険性を感じながらも超えるリスクを優先したこと」の背景がもう少し見えるとよかったです。

⑤泥棒猫さん
OPの曲がなかなか良い…と思ったら,泥棒猫さんのテーマソングだったんですね(笑)。
でもなんか,なんていうんでしょう…。泥棒猫さんはとても素敵だったのですが,なんか,岡本夏生を連想しちゃったんですよね…。ああいうお笑い芸人とか,いますよね…。コブラナッツとか…。小手先のお芝居というか,パターンで動いている感じが,そう思わせたのかなと思います。なので地は素敵なのに,なんだか損している気がしました。これは演出の話。

⑥下手側の新興宗教的なひとびと
預言者。服装はあっち,髪型はこっちの新興宗教をもとにしてるんだろうな~というのがわかって,考えてるんだなーと思いました(笑)。それに対して長の方は原始的で,対立感が見た目でもわかってよかったです。

⑦どこからどうみても女のシーン
レオさんとインさんて…なんか,似てますよね。まさか双子さん…!?
さて,レオがインを男だと思っちゃうシーンのところですが,レオ的には「どこから見ても男」,イン的には「誰が見たって女」と,かなり食い違ってるわけです。それは二人に思想の差・文化の差があって,そういう思考・思い込みになってると思うのだけど,ゲンジツの私達からしたら,あの衣装と髪型だと,インはまぁ男に見られるだろうなと思ってしまうのです…。でもその思い込みを引き立たせたいのだろうから,インの文化的にはどのあたりが女の子要素だったのかを,ただポーズをとって立つだけでなく,実際もう少し言葉で補足がほしかったなと思いました。

⑧ようやく後半になってテーマが見えてくる感じ。
事前にパンフレットを読んでいるから,(あぁこういうところに焦点を当てたのね。こういう部分を観ればいいのね)とこちらも準備ができるのですが,作品全体としてあまり扱えていないような気がしました。泥棒猫さんが「神も悪魔もどっちも同じなのにね」みたいなことを言ってくれていますが,もう少し各民族(?)で同じ話題を取り上げられたらよかったのかなーと思います。解釈の仕方が思い込みにつながっている気がするので,それを比較するには同じものを扱わないとなのかなと思います。泥棒猫さんのような説明的なものではなく,各民族の調理の仕方から,対比が見えるといいのかなーなんて思いました。

なんとなく,『赤鬼』に似てる感じだなという印象です。野田秀樹さんの。勝手なイメージかもしれないですが,飯田って長野県の端っこで,長野県の他の地域に行くにも他県に行くにも少し移動しづらい,どちらかといえば閉鎖的な地域なのかなと思います。その地域性が,作品にも盛り込まれていたように思いました。
あとはヒトラーの思想だとか。ああいうものにも通じる気がします。
でもなんだか,思い込みについてあまり触れられていなかったり,じゃあその摩擦を減らすことについてどうすれば?というところまで深く盛り込めていない感じがしてしまいました。

あと余談ですが,ラストの久石譲の曲で,なんだか『もののけ姫』を連想してしまった私です。
大自然を連想…。

本当に,面白いテーマを選んでいるとは思うので,もう少し何に焦点を当てたり,どうアプローチしていくのかを練られると良い本・作品になるだろうなという印象です。

飯女のみなさん,お疲れさまでしたー。

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