Thursday, February 12, 2015

NODA・MAP第19回公演『エッグ』


(公式webサイトより)

@東京芸術劇場

作・演出:野田秀樹
音楽:椎名林檎
美術:堀尾幸男
照明:小川幾雄
衣裳:ひびのこづえ
音響・効果:高都幸男
振付:黒田育世
映像:奥秀太郎
美粧:柘植伊佐夫
舞台監督:瀬﨑将孝

出演:妻夫木聡/深津絵里/仲村トオル/秋山菜津子/大倉孝二/藤井隆/野田秀樹/橋爪功

3年前の初演も観ていた『エッグ』。そのときは“東京オリンピック”という言葉がとても遠くて,それよりも芸劇のリニューアルオープンの方が身近で,それを飾る最初の作品…というふうに観ていました。

お芝居の中には「未来を連れてくる作品」があると言います。
例えば私が最近観たお芝居だと,『トーキョー・スラム・エンジェルス』がいつかそれになるのだと思います。お芝居は決して預言ではないけれど,気づくと「あれ,今の世の中,あの作品の世界のようだ」ってなっているのだと思います。
そしてこの『エッグ』は間違いなく,未来を連れてきた作品だと思います。
もう“東京オリンピック”は遠い言葉ではないし,野田さんが描いている過去はいつか私達が見る未来なのだと感じます。

だから…2020年が来るのが絶望的に思えてくるよね(´▽`)☆

朝日新聞にこの作品のことが書かれていたのを,お芝居を観てから読みました。「スポーツに熱狂する現代の日本人の姿は,戦争に突き進んでいったあの頃の姿に似ている」…といった趣旨の記事だったと記憶しているのですが,本当にそんな感じ。本当にそんな感じ。
スポーツやたった一人のヒーロー・ヒロインが,私達を一つになるような気持ちにさせて,ある一定の方向に動かしていく。そういった世界の動きが見えて,とっても恐ろしかったです。でもそれは本人達が意図的にしているのかと言うとそうではなくて。だからこそ余計,怖い。
阿倍も苺イチエも,ただ好きなことや熱中できるものをやっていただけだったろうに。それがいつの間にか誰かに利用され,結果として誰かを利用する。気づくと「あれっ?」ってなってる。自分がしていることなのに。それがなんとも言えない気持ちになりました。

そうそう。初演のときに苺イチエちゃんのCDを買っていたので,そこから何度も何度も聴いていたし,この日も劇場に向かう間に全トラック2巡してました。笑
歌詞もメロディーも頭にしっかり入った状態で改めてこの作品を観ると,(ここでそれかーーーーーーっ)って曲がいくつもあって,ようやく歌詞の意味がわかったような気がします。
「あなたがいなくなった時間をこれからどうしよう」とか,なんて絶望的なの。きっと私も,人生で一番愛しているひとがこの世からいなくなったら,その日の晩はこの曲が頭の中でかかるんだろうと思いました。

そしてね,私はカーテンコールの曲が超すきなの。初演でこれ聴いて,CD買う決め手になったもん。超カッコイイよね。最近になって,よーーーーーーーーーやく「別れ」のメロディなんだと気づきました。遅すぎる。笑
林檎姉さんの才能を改めて感じます…。

初演のときも思ったけど,鮮やかだよね。
半透明のカーテンが行き交って場面が変わるたび,ロッカーから思いがけない何かが出てくるたび,(あぁ,やられた!)って思いました。鮮やか。どうなってるんだろうとか考える前に,魅了されます。さすが野田さんです。(としか言いようがない)


深津絵里は,やっぱ舞台女優だなと思いました。まぁそんなに映像作品も舞台作品も観たことありませんが…。でも声の艶っぽい感じは生で聞くに限るし,私は深津絵里のちょっと少女っぽい声が好きです。舞台でしか聞けない声だろうなと思います。

妻夫木くんはこの作品以外で舞台やってるのを観たことないので,第一声を聞いて(あれ。これ妻夫木くん!?)って思いました。でもやっぱいい声してるわ!ラストの「彼女は…~して,~~する」のところとか,「満州の夕陽はあまりにも赤い」みたいなせりふはすごく重みを感じました。野田さんも言ってたけど,“普通”ができる役者さんって大事なんだなぁとなんとなく思いました。

そういえば仲村トオルと妻夫木くんって,フィギュアスケートに例えたら髙橋大輔と羽生結弦みたいだなーとも思いました。


「中国」とか「満州」とか,具体的な地名を出して関係性をきっぱり言わなければならないほど,私達って鈍感になったのかな,とこの作品を観て思いました。野田さんの作品はいつもハッキリしているけど,ここまで具体的にハッキリしているのも,珍しいと言えるのかも…。これまであった「普遍的な何か」よりも「ピンポイントの何か」を意識しているのがよくわかりました。
それでもやっぱり噛みごたえのある作品なので,脚本を買おうと思います…。


久しぶりに良質な舞台を観られて幸せでした。秋にチケットが取れて以来,この作品を観るために生き延びてきました。これで2015年は3分の1くらい満足です。←早
再演自体難しいのに,メインキャストがオリジナルメンバーでまた揃うなんて夢のようです。観ることができてほんとーによかった!
まとまらないけどこんな感じ!

そうそう。「過去は逃げ切ったらノスタルジアになれるわよ~!」(みたいなの)が特に強烈に響いたせりふでした。
パリのお客さんはどんな反応するのだろう。気になる!

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