Sunday, April 12, 2015

Eテレ「青春舞台2012」 青森県立青森中央高校演劇部『もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』

作:畑澤聖悟
出演:青森県立青森中央高校演劇部

(2015.4.12 Eテレ「青春舞台2012」再放送にて鑑賞)

『もしイタ』『もしイタ』と,タイトルだけは当時から「テアトロ」なんかで知っていて,この高校も『修学旅行』で全国一になったところ…とは知っていて,でもきちんと観たことなかった青森中央。
県立の演劇部なのに,青森から飛び出して東京やら高松やら全国各地で上演している…ということも知っていたけど,観たことなかった青森中央。
半年前に観たEテレの「青春舞台2014」でも『ロボむつ』がちょこっと取り上げられていた…けど観たことなかった青森中央。
全国にいる青森中央の『もしイタ』を観たいひとたちが今回の再放送を引き寄せてくださったのですね。ありがとうございます…。

私,あまのじゃくなので,舞台でも何でも,前評判があればあるほど(そんなこと言っても…)になるんです(笑)。だってそれはあなたの評価で,私は観ていないからわからない。というのが本音で。
この作品も「高校演劇界の伝説」とか「演劇界の事件」とかそんな評があって,(はぁ…)と思っていたのです…。スミマセン…先に謝っておきます…。笑


さて作品ですが,1時間テレビで観るのが全く苦痛じゃなかったです。(ただ,いろんなところで言っていますが,私はシャウト系のお芝居は苦手。でも苦痛ではなかった。)
お芝居って基本的に生で観るものなので,カメラを通した時点でそれはお芝居じゃなくて,ただの“記録”になってしまうと思うし,魅力も半減しちゃうと思うのです。
で・も!
テレビで観ても超面白い!(゜ ゜)正直びっくりしました!!!
もちろんマイクで拾いにくい音声もあったと思うんですが,それ以上にひとの体で魅せてくれる部分が大きくて,ぐわーっと観れちゃいました。開始直後から内容的にかなりボリュームがあったので,(え,まだ10分しか経ってないの?)とか思ったくらい濃密な時間が流れていました…。

今回私がいっちばん心奪われたのが,一人一人のベースの力の高さ…!
サラ舞台で始まって,照明も変わらなければスピーカーを使った音声もない,特別な衣装もない…。全身を使って表現する舞台なんですが,「今何をしているのか」がちゃんとわかる!動きが甘くない!!これが感動モノでした…。
グラウンドを整備するときの手,ボールを手渡しするときの手,槍投げの槍を持っている手……全部,何をしている手なのかわかったんです。それが本当にすごかった。
マイムのお芝居ってついつい甘くなってしまったり,稽古を重ねているうちにぼんやりした動きになってしまいがちになっちゃうと思うんですが…たとえば1年のマネージャーちゃんが重いカゴ持って上手から下手にはけていくところとか。体重の掛け方とか,観ていて感動しちゃいました。そういうリアルさが,特定のひとだけでなくて皆さん持っているものだったので,アンサンブルの完成度とか,かなり高かったです。普段ストレッチとかダンスとかやってるだけじゃ身に着かない力だと思うので,青森中央の皆さんの日々の稽古の質が見えた気がします。

ある意味オーバーな演技なのだけど,過剰に感じなかったり…そう,やっていることはオーバーなはずなのに自然に見えちゃうこの力って何なんだろう?すごい不思議でした。「こういう世界観です!」って,自分達の世界に巻き込む力が半端じゃないですね…。イタコ役の方のイタコと先生の演じ分けとか,カズシくん役の方のカズシくんとサワムラとか,幅が広いな~と思って観ていました…。
そうそう。カズシくん役の方がとても素敵だった!あの常に肩に緊張感持ってるあたりとか,今の彼の生き方(自分だけ野球やっていいのかとか苦悩する日々)がよく出ていたなぁと思います。この先少しずつ,緩くなって生きられたらいいなぁ。

どうやら「どこでもできるお芝居を目指して」この作品を作られたそうなのだけど,今回の会場では皆さん上履き(っぽいスニーカー)を履かれていて,そこもなんとなく好感度上がりました…。好感度っていうか,たまに床から出るキュッキュッて音が,高校らしいなぁって。上履きも,学校文化というか…懐かしい感じになりますね…(´∀`)大人になった私は,職場でクロックスを愛用しているのでスニーカー特有のキュッキュッとはちょっと無縁です…。←

あと素敵ポイントと言えば,時計…☆なにあれ!超愉快なんですが!きっと演じていらっしゃる方も楽しくカチコチしていたんでしょうな…。あの分針が動くときの効果音とか,たまらんです。演劇ならではの表現ですね。

あんなに大人数でわちゃわちゃしているから,なんとなーく誰か欠けたり交代してもわからないんじゃ…とも一瞬思ったんですが,きっとあのメンバーだから作り上げられて,誰か一人でも欠けたりしたらあのパフォーマンスって違ってくるんだろうな~と,やっぱり思いました。計算づくなのにそれが見えないのってかなりやりこまなきゃだと思うので…何も言えないというか,しっかり完成形を見せられたなーというのが正直なところです。全国大会って年度をまたぐから,キャストの入れ替えが少なからずあると思うんですが,今いるキャストの一番良いエッセンスの配合で,ベストが出せているのがすごいです。すごいすごいしか言ってない気もしますが,でもそれしか言えないです。笑


きっと外側の私達から見たら,「あれは青森中央だからできたんだろう」とついつい思ってしまうかもしれないけど,それだとただのうらやましがりで終わってしまうと思うので,それはもったいないことだなって思います。
昨年の久留米附設の『女子高生』の感想でも書きましたが,自分達の強みは何かを掴んだり,自分達の規模でできることをすり合わせたりして,カンパニーの現状に合う作品作りをするのも戦略なのかなと最近は思います。「すごーい!」止まりじゃなく,そこから自分達は何ができるのか,したいことをするために何が必要なのか考えることで,次に繋がっていくんじゃないかなと思いました。

つまり何が言いたいかと言うと,とっても刺激的な舞台でした。『もしイタ』。お芝居作る側と縁がなくなってしまったひとに,こういうことを書かせてしまうくらいだから。笑

2012年度の青森中央の皆さん,お疲れ様でした。良作は色褪せないことがよくわかりました。
再放送のリクエストをしてくださった方々&Eテレの編集長さんも,ありがとうございました。素敵な番組でした!

No comments :

Post a Comment