Sunday, July 12, 2015

長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部 第67回ぎんが祭公演『南洋記』

(ぎんが祭公演パンフレットより)

@長野県松本蟻ヶ崎高校231教室

作:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部
出演:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部

昨年は特にがっつりお邪魔して蟻高のお芝居を拝見していたのですが,もう今年は文化祭までは頑張らなくていいかな~なんて思っていました。

ですがとあることをきっかけに,どうしても今年の3年生の引退公演を観たい!と思い,母校の千穐楽よりも優先させて足を運んでしまいました…。


「なんよーき」とタイトルは知っていたのですが,本当に事前情報がそれだけで…。教室に着いて,パンフレット(和綴じ風で素敵☆)をもらって,席に着いてぱらり。

あらま!なんと!中島敦の話ではありませんか!(゜ ゜)

中島敦といえば,先月10年越しの観劇を果たした世田谷パブリックシアター『敦-山月記・名人伝-』を観たばかり!そしてそこで何度も出てきた“人生は何事をも為さぬには余りに長いが,何事かを為すには余りに短い。”という言葉を思い返しながら,開演を待ちました。

今年お邪魔した9校を思い返すと,0からの創作ってこの学校だけだったなーということに気づきました。過去に上演歴があるものを除けば,この学校だけ。そして感じたものは,蟻高の創作意欲の高さと,ベースの力の高さでした。

『山月記』って高校生にとっては特に身近な題材だと思うので,背伸びの無い感じというか…無理なく,でも実直に作品や作者に向き合って歩み寄ろうとしているあたりはとっても好感が持てました。
それから,出演されている方のほとんどが3年生というだけあって,本当に見応えがありました。蟻高の文化祭はちゃっかり3年連続お邪魔してしまったので,今年の3年生が文化祭デビューした年も拝見していたのでした。(1年生のときにあの役をやってたな…)と覚えている人もいて,時の流れをしみじみと感じました。特に昨年,今の3年生が2年生の時にきっちりと基礎を押さえたお芝居を作ってこられたと思うので,その力が今回きちんと出ていたなぁと思いました。お芝居にも,演出にも。
(カーテンコールで部長さんが「今回は時間がなく…」って仰っていましたが,そんなふうには全く見えなくて,よくここまでまとめたなぁというのが正直な感想です。力のあるひとたちの本当の力を体感することができました。)

お芝居が始まってすぐ(わぁぁ♡)と思ったのは,李徴役の方…♡
昨年の作品でもすんごく印象に残ってた方なんですが,今回はまさかの李徴…!えっ,女性ですよねどーするんですか!と思っていたんですが(←先月もさもさした李徴の萬斎さんを観ていたこともあり。笑),超絶キレイでびっくりしました。映画『女帝』のチャン・ツィイーを彷彿とさせる佇まいで,めっちゃアジアンビューティーな香りがしました…。また衣装の赤が良いですね…。

あと,のぼる役の方が素敵でした!初めて拝見する方だったので無意識で注目してしまったというのもあるんですが,思えば蟻高で子どもらしい子どもって今まで出てこなかったと思うので,そこがあったのかな…。高校演劇のキャスティングって身長や体格で選べないところもあると思うんですが,他のキャストとの身長差も自然で雰囲気もとってもキュートな方だったので,良いポジション持ってる方だな…なんて思いました。笑←例えば,背が高いひとはどう頑張っても子ども役は無理があるので…。

あとあと土方さん役の方も,昨年とはガラッと…でもないけど,表現の幅が広い方だなー!と再認しました。昨年はちょっと中性的というか,男子とも分け隔てなく接する女子高生という感じだったのですが,土方さんは本当に男装じゃなく男性に見えたので力のある方だなぁー…。と感じました。懐が広そうで,どっしり構えている感が素敵ですね。


中身のことで言うと,袁傪と李徴がバッタリしちゃうところは,もう少し丁寧に観たかったなーという気持ちがありました。李徴は人間を襲う気100パーでいて,(いざ獲物ー!)と思ってよく見たら(うわ袁傪じゃんまじか!)ってなると思うんですが,バッと出て2人の目が合ってバッと散る…みたいな流れになってしまっていて,李徴のハッとする瞬間…みたいなところがもう少し見えるとよかったなーなんて思いました。

李徴がたくさんの「声」を聞いて発狂するところも…。私が先月『敦』で似たシーンを観ていたことももちろん影響していると思うんですが,ちょっとワンパターンかな,と思いました。呼ばれて呼ばれて,でもそれがなぜ彼にとって耐え難いものだったかをこちらが感じる前に,わぁぁーってはけていってしまった気がしました。もう少しじっくり見せたりいろんな「声」があったら,徐々にのしかかってくる感が出たのかも…。


昨年と比較したい訳じゃないのですが,シーン数が多かったり一人複数の役…という構成は,昨年の影響が少なからずあるんじゃないかなと思いました。それが良いとか悪いとかではなくて…良いお芝居はもちろん良いと思うのだけど,「いつも同じ(ような)芝居しかできない」みたいになっちゃうのはもったいないかなと思います。ちょっと構成や作風が違う蟻高も,いつか観てみたいです。

あとやっぱり暗転の数は気になるところで,そしてどうせ完全暗転にならない文化祭公演ならば,例えば青転とかにしたらきれいじゃないかなーなんて思いました。一人何役もあるから,シーンを変えるために黒にしたいのかもしれないですが,南洋感というか,ちょっと幻想的な感じがしてきれいだろうなって。←これは単にカサハラさんが青転好きなだけ。笑


はっ。そうそう。文化祭公演は舞台と客席が至近距離!というのが醍醐味だと思うんですが,蟻高の良かったところをもうひとつ挙げると衣装と小道具のこだわり!これが見えましたー。特に敦のカバンが素敵!何だあの使い込んだ感!
高校演劇だとどうしても低予算になってしまうと思うんですが,ここまで統一感があって味があると,もう何も言えないというか…。あぁ良かった。


そして引退公演を観たかった最大の理由は,お芝居ももちろんですがカーテンコールに立ち会いたかった!これです。
本当に,本当に私部外者なんですが,思わずもらい泣きしちゃいました。部長さんの言葉,2年生の方の言葉が本当にしっかりしていらして,きちんと考えてこの場に臨んでいるのだということもよくわかりました。
人生の短さ,儚さ,“高校生”という貴重な時間,たった1公演や2公演のために何ヵ月も準備して臨む高校演劇の尊さ。いろんなものを感じました。

あの子が出ていた舞台,あの子のお芝居に心が動いたことを,私はきっと忘れない。

16番目の部員さん。この3年生の最後のお芝居を観ることができて,私はとても幸せでした。



情熱とか,本気とか,そんな,口にしたらぺらぺらした響きになってしまう言葉でしか表現できず悔しいのですが,蟻高のそんな気持ちが見えた舞台でした。
無理とはわかっているけれど,このお芝居を大会で観たかったなぁ。
でも,それが高校演劇だから。そっと自分の胸にしまっておきます。

蟻高のみなさん,お邪魔しました。
特に3年生の皆さんは,今まで本当にお疲れ様でした。とても温かい時間でした。皆さんの引退に立ち会うことができ,本当に胸がいっぱいです。ありがとうございました。

+++

2015.7.20追記
そうそう。おそらく昨年12月の『Nippon, cha cha cha!』自主公演でポスターを描かれていた方の作品だと思うのですが,今回もポスターを担当されており,校内のあちこちに貼られていました。


首になんて書いてあるんだろう~。
右上のレタリングとかも味があって素敵でした。

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