Friday, July 31, 2015

第61回全国高等学校演劇大会(滋賀大会) 北海道札幌琴似工業高校定時制演劇部『北極星の見つけかた』

(全国高等学校演劇協議会公式webサイトより)

@ひこね市文化プラザ グランドホール

作:鷲頭環
出演:北海道札幌琴似工業高校定時制演劇部

2004年度に,長野県下伊那農業高校演劇班の「『1+2+3』の答え」という舞台を観ました。農業高校の日常を創作でまとめた舞台で,関東大会まで出場していました。当時同じ長野県民だった私にとって,それはとっても新鮮で,そして(なんかずるい…)と感じていました。今思えばずるいというより,自分達の持っているものがはっきりしていたことがうらやましかったのかもしれません。

昨年度は,関東大会で神奈川県立湘南高校(定時制)演劇部『さよなら小宮くん』を観ました。これは既成作品だけど,(私のバイアスも多少かかっているのかもしれませんが,)定時制のひとたちだから作れた空気感のようにも見えました。なんとなく人との距離感が掴みづらいひとたち。そんなふうに見えたのです。

何の迷いもなく全日制普通科をのほほんと過ごした私にとって,専門の課程だったり特定の時間での学びを選ぶひとたちは強みがあるように思います。専門の科に進んだり特定の時間で学ぶひとたちには何かしらの理由があって,それは全日制普通科とは違う世界で,それだけで“個性”。その個性をうまく生かしてお芝居を作れたら,本当に強い舞台が作れるんだろうなぁなんて思います。

だから工業高校×定時制って,それだけでかなりインパクトあるカンパニーだと思うんです。ひとくちに高校生と言っても,いろんな生き方があるんだなぁとしみじみ思いました。
そのひとたちが,工業高校が舞台のお芝居を作る!彼らにとっての日常と,私の非日常が出会えた気がして,なんだかとっても心踊るひとときでした。

この記事を書くために改めて速報に目を通したのですが,超衝撃…!当て書きのメインキャスト9人のうち7人が昨年度で卒業してしまったようで,今年度は自分達のものにできるかで努力されてきたそう!私は初見だったので,この公演から得られる情報が全てで,前のキャストさんとの比較などはできないのですが,すんなーり観られたので特に違和感などは感じなかったです。いやー…。むしろこんなに入れ替えがあったのに,よくここまでの質に持ってこられたなぁと…。定時制ですから,毎回全員がきちっと集まれたわけではないと思うと,一回にかける集中力というか…出すべきときにきちんと力が出せるカンパニーだったんだろうなと思います。すごいなぁ。

さて中身のお話に…。私,工業高校には未だかつて足を踏み入れたことがないのですが,雰囲気がたっぷり伝わってきて,とても素敵なセットでした!広すぎず狭すぎず,必要なものがちゃんと揃っているのにシンプル!舞台美術賞と知って納得です…。

特に私がぐっときたのは,「定時制」について定時制の生徒さん自らが触れていたこと。私自身も高校生のときにそういった偏見を持っていなかったと言えば嘘になるので,ここに切り込む強さというか覚悟を全国の舞台で示したことに大きな意味があるように感じました。舞台でそういうものを観たことがなかったので,本当に新鮮というかリスペクトというか…。うまく言えないけど,このひとたちすごいなと思いました。(あぁ…。“すごい”とかってなんてぺらっぺらした薄い言葉なんだろう!でも私の辞書からは換わりの言葉がすぐ出てこないよー!)

障害を持っている生徒さんも役としていらして,本人の受け止めと周りの理解とフォローのバランスって,ムズカシイなぁなんてこともちょっぴり思ったり。私は不登校とかいじめよりは,そういったものをお持ちの方にお会いすることが多いので,ついつい気になって意識を向けてしまいました。がんばりたいのにがんばれないもどかしさが夏希ちゃんから痛いくらい伝わって来て,なんだかとっても切ない気持ちに。適切にフォローされることの大切さも感じられました…。

あと何といっても山田さんが素敵でした。笑
あんなにベクトルが違うひとだから,ちょっとしたアクセントなのかと思いきや…最後はまさかのまさかの,山田さんに持っていかれるオチ…!すごい楽しそうに踊っちゃうし,緞帳キワキワまでアピールしてくるし,なんなの山田さん!ずるいぞ!笑

優秀賞,おめでとうございます。
小さな光の羅列が意味づけされていく過程を追えて,琴工定時さんだからこそ作れた世界をたっぷり味わえて,とっても素敵な1時間でした!お疲れ様でしたー。東京公演も楽しんできてください!

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