Thursday, August 27, 2015

M&Oplaysプロデュース『虹とマーブル』

(『虹とマーブル』公式webサイトより)

@世田谷パブリックシアター

作・演出:倉持裕

出演:小出恵介/黒島結菜/木村了/小松和重/ともさかりえ/小林高鹿/ぼくもとさきこ/玉置孝匡

昨年ドラマ『Nのために』で小出恵介にめろめろしてしまった私。普段芸能人が出てくる夢とか見ないんですけど,この時は小出恵介が夢に出てきて(本当に好きなのだわ…)としみじみしたものです。ちなみに小出くんではなく,役名の西崎さんとして出てきました。笑

そんな西…いや,小出くんがお芝居に出るー!しかもともさかりえも出るー!観たい!!!と思って劇場へおでかけしました(´∇`)♪

パンフレットとか…上演台本とか…買わなくて…。事前にフライヤーの作品紹介をぱぱっと読んでから観に行ったんですが…
まるでジェットコースターみたいで,展開がちょっぱやで,ついていくのが大変でした…!電車に乗りそびれてしまった感じ。(ちょっと待ってーーーーー)って。笑

そしてまさかの45分×3幕でした。
一度休憩をはさむって,結構区切りとしては大きいと思うんですが,一幕が小学校の授業一コマ程度だったので,なんだかバランスが良いのか何なのかよくわかりませんでした…。
でも休憩しなきゃいけないくらいの場面転換があるだけあって,舞台セットがとても素敵でした!あの舞台の向こうに港やお庭があるのが見えました。一幕では奥のライト(自動車とか船とか)がすごく素敵で,三幕は窓を開けた時にふわ~って入ってくるそよ風に揺れるカーテンが素敵で,わぁぁ~って気持ちになりました。
そうそう。舞台の中央は大きく変わるのだけど,上下の壁は変わらなくて。必要に応じて壁の一部が(おそらく)取り外せて窓みたいになったり,二幕ではほぼ壁になったりして。このあたりは本当に舞台美術!って感じがしました。

私がこのお芝居を観る前に既に観劇した方から,「小出くんのせりふの語尾が消える…」という情報を耳にしていたのでどれくらい聞こえるのかしら…と思っていたのですが,予想していたよりちゃんと聞こえたので安心しました。笑
やっぱり小松さんとか小林さんとか他の舞台俳優さんの方が通りは良いなーと思ったのはありますが,聞こえて良かった…。

そうそう。私小出恵介くんも好きなんですが,小林高鹿さんも好きなのです…。昨年シアタートラムで観た現代能楽集『花子について』しかきちんと認識して拝見してはいないのですが,あの作品のインパクトが大きくて大きくて…。地デジカを彷彿とさせる(?)ビジュアルで,飄々としていて,たまらんのです…。60年代とか70年代のど派手な衣装が映えてました…。

でも小出恵介くんより小林高鹿さんよりどひゃーっとなったのがともさかりえでした。
なんなんだあの細長さ…!!!!!!
土曜の夜はドラマ『金田一少年の事件簿』(主演:堂本剛)や『FiVE』を観て育った私としては,生のともさかりえがまぶしくてまぶしくて仕方ありませんでした。長身な女優さんですが,それが一層強調される髪型や衣装だったのでさらに細長く見えました…。あぁきれいだった。声を張ってせりふを出しているわけではないのに,存在感がありすぎるってすごいなぁ。

高嶺の花に手を出しまくっていく小出恵介が愚かしくて愚かしくて。疾走して生きるってこういうことなんだろうなーと思いました。ストーリーが進むごとに着ているものからそのひとの意識とか,地位とか,そういうものがちゃんと見えました。まっしろしろの小出恵介とかガウンの小出恵介とか,すごいギラギラしてました。笑

小出恵介が疾走して生きすぎたんで,最後はあれれれー!って感じでした。
え!え!え!いつ血が出た!?撃たれた!?刺された!?よくわからんうちに幕が閉まっていったーーーーー!!!!!
一緒に観に行った方は「窓の向こうから撃たれたんじゃ。小松和重は犯人追って窓から出ていったんじゃ。」と仰ってたんですが,私はぱっと観た時小松和重は窓から逃げたように見えて。webサイトの作品の説明を改めて読むと,やっぱ小松さんがやったのか!?とか思ったり。なんか最後の最後までばばばーっと畳み込んできたので,全然目が離せない舞台でした。
誰か脚本読んだ方とか実際あれは何だったのかわかる方がいらしたら教えてください…。

あと。『虹とマーブル』ってタイトルも面白いなと思って。作中に虹は出てくるけど,マーブル要素は???って感じで。虹をつかみたかったけど,そしたら色がぐちゃぐちゃに混ざりましたって感じなのかな。フライヤーがそれを表してる感じなのかな。似ているようで,全然違う。そんな色の集まりのお話だったのかもと解釈してみます…。

Sunday, August 23, 2015

パルコ・プロデュース公演『マクベス』

(PARCO劇場公式webサイトより)

@KAAT神奈川芸術劇場 ホール

作:W. シェイクスピア
翻訳:松岡和子訳『マクベス』より
演出:アンドリュー・ゴールドバーグ

出演:佐々木蔵之介/大西多摩恵/由利昌也

思えば『マクベス』は,いろんな形で観てきました。

2006年には劇団☆新感線の『メタルマクベス』を観ました。マクベスの世界とヘヴィメタバンドの世界の二重構造になっている作品。宮藤官九郎が脚本を書いて,いのうえひでのりが演出というなんともゴテゴテのカッコイイお芝居。当時高校生だった私はこの世界に震えました。マクベスは内野聖陽。マクベス夫人は松たか子。

2010?年と2013年には世田谷パブリックシアター制作の『マクベス』を観ました。シェイクスピア作品を日本の伝統芸能とコラボさせる試みを野村萬斎はずーっとしていて,この作品も和を感じさせる舞台づくりをしていました。5人でマクベスって回せるんだ~と驚いたものです。マクベスは野村萬斎。マクベス夫人は秋山奈津子。

同じく2013年には長塚圭史演出の『マクベス』を観ました。思えば3作品中この演出が最も原作に忠実だったかも。観客がダンシネインの森として緑色の傘をふりふりする演出があったのですが,私は見事その傘の席に当たり,わーいと思って広げたのでした。マクベスは堤真一。マクベス夫人は常盤貴子。

そして思いました。
私,『マクベス』好きだわ。

この,なんとも愚かしい人間の話が,私好きだわ。
自分が小さいことを,思い知らされるわ。

だから今年,佐々木蔵之介がほぼ1人で『マクベス』の登場人物を演じきると知ったときもぴぴーっと反応してしまいました。
しかも設定よ。場所は精神病棟。佐々木蔵之介は患者だというではありませんか。
私の職業的にもものすごーく気になる設定でありまして,先行でチケットを確保してしまいました。
パルコのプロデュースだからホームのパルコ劇場で観るという手もあったのだけど,なんとKAATも会場に♡
未だKAATデビューできずにいた私は(これは運命!)と思ってこちらの公演に行くことに。無事デビューできました。わーいわーい。縦にどかーんと長くて,エスカレーターでぐんぐん上っていく劇場でした。座席もぱきっとした赤でカッコイイ!

うっかり関東圏の楽日に行ってしまったせいか,そうでなくてもこうなのかはイマイチわからなかったですが,物販の営業が恐ろしかったです…。
なんかアイドルのコンサートみたい。すんごい騒がしくてちょっとヒィーって思っちゃいました。笑

その物販の列に並び,パンフレットを買い,席に着いてぱらり。

おや!このお名前は!(  ·_·  )

なんと今回のお芝居は佐々木蔵之介の一人芝居ではなく「ほぼ一人芝居」で,女医役として大西多摩恵さんが出演されていました!←知るタイミングが遅すぎる。

この方,その昔私の部活が関東大会に出てたときに審査員だったよ!!(ぱっと思い出せた自分がちょっと怖い。)
なんか,ああいう大きい大会の審査員の先生って,「俳優」とか「舞台美術」とか肩書きがあっても,実際どんなお仕事されてる方なのかイマイチわからなくないですか…。私はよくわからんです。
10年以上経ってようやくそのひとのお仕事ぶりを拝見できたというか,こういう方だったのか~というところが体感できてよかったです。

さてさて中身のお話に…。
この作品はもともとスコットランド・ナショナル・シアターが制作したようで,2012年が初演なのだそう。
今回はオリジナル版の美術・衣裳・照明・映像・音響デザインで舞台がつくられていて,オリジナル版の演出家アンドリュー・ゴールドバーグもついている。つまりキャストとメインのスタッフは日本人でも,外枠がオリジナルそのまんまを観られるなんて!すごーい!

私は大学院生の頃精神科に実習に行ったことがあるのだけど,入院施設は持っていない病院だったからこういうところには行ったところがなくて。どこまでホンモノっぽいのかわからないけど,でもこの舞台セット,とっても好きです。無機質で,良い意味で温度が感じられなくて。タイルだけど角は丸っこいので,どこかソフトな感じもして。
あと,監視カメラが本当に動いたりモニターに写っちゃったりするからすごい…!
それ以上に本当にバスタブにお湯張ってるのがすごい…!本気で徹底的な舞台だな…と感じました。

そして蔵之介さん。
私舞台でちゃんと蔵之介さん観るのは初めてだったんですが…ぶっとんでる具合がすごーい!
あの,出だしの,スーツを少しずつ脱いでいくひっそり感と,監視カメラに視線ぶつけてくるあの姿が同じ人物だと思えない…!
やっぱりわかってはいたけど,目力がある役者さんだな…ということを目の当たりにしました。引き込まれるー。圧倒されるーーーー。

パンフレットの星野概念の言葉も読んだのですが,あんなにぶわーっと膨大な言葉が溢れてくるなんて,私も最初この人はサヴァンなのかと思ったんですが,(カメラを意識して視線送ることってできるのかなぁ)とか,そんな疑問が徐々にわいてきました。要所要所で女医と看護師が入室して必要な措置を取りに来るんですが,ちゃんと落ち着けるし何かを訴えるように後追いしてくるあたりも,なんとなく違うような気がして。
そうするとやっぱり統合失調症とか,そういうあたりになるのかなとか思ったり…。例えば,今目の前にいるのは英米文学が専門の大学教授とか,シェイクスピアの専門家か何かなのかなとか思ったり。

一人の男の口から二十数人もの人格の言葉が出てきて物語が進んでいるように見えるけれど,逸脱した瞬間はハッとしました。紙袋から出てきた子ども用の服を,バスタブに沈めるところ。おそらく患者の体験したことの,再現。
どうしたの。何があってそうしたの。
その子は誰なの。あなたは誰なの。
わからんけど,わからないけど,その場を共有することで,この患者の悲痛な心が垣間見えたように思いました。

なんかあと,マクベス夫人がマクベスに殺人を唆すところも,あぁここはそういうシーンだったんだって思いました。あれはマクベスを演じているのか,患者のリビドーが出たところなのかわからないけど,でもこのお芝居,本能というか欲求をものすごく出してくる。通風孔から鳥の死骸を出してきて,それを鏡の破片で解剖して中からいろいろ(めきょっとしたやつとかびろびろ長いやつとか)出してきたときは,うおおおお…と思ってしまいましたが…!
とにかくこのひと,欲求のコントロールが徐々に不能になっていって,怖かったです。それは本当にマクベスにも重なって。何か荒廃していく感じも見えて。それはマクベス夫人だったり。

最後のバスタブに浸かりまくるあたりは,あれどーなってんのと本気で思いました。あれ,蔵之介さん本気で潜ってます…よね!?1分近く死んだようになってました…よね!?あそこですっごいドキドキしちゃいました。蔵之介さん,生きててよかった…。笑

そうそう。最初の方の入浴シーンはまさかの完全に全裸だったのでぎゃわわ…!ってなりました。←
やばーい。蔵之介さん超キレイな身体してる…!うっとりしてしまいました。←

あとあと,音楽がすごいスタイリッシュでなんだこれ!オリジナルかな!って思ってたんですが,パンフレット観て納得。マックス・リヒターでした。2013年に風琴工房の『国語の時間』で使われていて,とってもインパクトがあったのです。以来私は彼のファンに…。どのアルバムから引っ張ってきた曲なのかわからないのですが,いつか探し当てたいと思います。

もう一回味わって観たら,また見えてくるものがありそうだな。何が彼にマクベスを語らせたのか。まだぴぴっと来なくて,自分の中で反芻しています。

シェイクスピアの『マクベス』の流れがわかっていることが前提になる舞台で,とっても現代的な作品でした。蔵之介さんの狂気じみてるお芝居にどっぷり浸かることができた,充実した時間でした…。

Saturday, August 15, 2015

映画『出口のない海』

◇STAFF
監督:佐々部清
脚本:山田洋次/冨川元文
原作:横山秀夫
音楽:加羽沢美濃

◇CAST
市川海老蔵/伊勢谷友介/上野樹里/塩谷瞬/柏原収史/伊崎充則/黒田勇樹/平山広行/尾高杏奈/永島敏行/田中実/高橋和也/平泉成/香川照之/古手川祐子/三浦友和

製作国:日本
公開:2006年
上映時間:121分

(2015.8.15 テレビで鑑賞)

夏休みに観た映画の感想を書こう第3弾。『出口のない海』!
高校生の時にこの映画のタイトルだけは知っていて,あと青の映像がとてもきれいで,観たいと思っていたのにそのまま大人になってしまいました。
昨年のお盆の時期にWOWOWか何かでやっていて,録画だけして今年ようやく鑑賞!

やー。今この年になってから観て正解だったかも。
映画『八日目の蝉』を観直した時にも,(ちょっと昔の映画っていいな~)と思ったのです。今人気の俳優さん女優さんがちょい役で出ていたりするから。
今回の発見は,桐谷健太!公式サイトにも作品のウィキペディアにも名前が出てないくらい端っこの役なんですが,ちゃんと喫茶店で存在感を残している!(あれ桐谷健太?)と思って観てて,最後エンドロールで名前を見つけた時はよっしゃ☆という感じがありました。笑

あと市川海老蔵は明大生の役なのだけど,もし高校生の時に観ててもあまり親近感なかったかも。私は明大卒でもなんでもないけど,“大学生”を経験したことがあるから,あのふっつーの毎日から“兵隊さん”になっていく目まぐるしさというか,アイデンティティの変容というか,自分が自分でなくなっていく感覚というか,そんなものはなんだかくみ取れるような気がして。

今でこそ市川海老蔵はギロッポンであわわわなことがあったり,今まで付き合った女性のまとめがネットに載ってたりと,いろんなイメージを世に放つひとですが,そのイメージを持った上でこの映画を観ると,なんだか…こそばゆくなるというか……。こんな,一人の女性に真摯に向き合えるんじゃないかと思わせてくれる映画です。笑 年齢的なことを差っ引いても,もう今の海老蔵にはできない役!!!笑

鑑賞する前にネットでどんな映画なのか調べたのですが(←本当にタイトルと戦争モノということしか知らなかったので),今まで観てきた戦争モノとは切り口が全然違って,面白かったです。ネットにも載っていたけど,戦争映画なのにほとんど戦闘シーンや血が出てこない…。異色だと,思います。

戦闘シーンや血の代わりに,“今は海軍だけど元々大学生”という気の弱さとか,自分の夢(オリンピックとか野球)を時代に奪われた怒りだとか,家族を思う気持ちだとか,そういうものが丁寧に描かれていたなーと思います。

NODA・MAP『エッグ』で,野田秀樹は二十世紀は戦争と音楽とスポーツが大衆を動かしていたみたいなことを言っているけど,本当にそうだったんだろうなということも,この映画から感じられました。伊勢谷友介なんて特にマラソンでオリンピックを目指していたし,そのオリンピックが無くなった今何を目指すのかと考えた時に,「戦争に行く」になるよねという…必然性が見える感じ。大学生って社会に出る一歩手前だから,そんなときに夢を叶えるとか仕事に就くなんて状況じゃなくなった時,どうやって世の中にコミットしていくか考えると,まぁそういう道に進むんだろうな(進まざるを得ないな)と思いました…。

「丁寧」ってさっき書きましたが,この映画は「戸惑い」がしっかり見えて,とても良かった!垣間見える一瞬の隙に,人間らしさが描かれていると思うのです。軍人でも,その前にパーソナリティーを持つ人間だということが伝わってくる。だからこの映画はちょっと温かい。そんな気がします。
例えば海老蔵が初めて回天に乗り込んで,海に出て練習します!っていうシーン。彼としてはちゃんと手順通りに操作して,さぁ発進!ってガコッと最後の手順を踏んでも,全く動かない。気合いが入った表情から一変して,(え?)とか(やべやべ!)みたいな表情になるところがたまらなく素敵でした。愛おしいよね。こんな海老蔵,2010年代じゃもう観られないよ…。笑

伊勢谷友介も,自分がコールされてこれから御国のために全て捧げてきますというところで,エンジンが不調で発進できない。今生の別れだと思って仲間に挨拶するのに,のこのこと回天から降りて戻って来てしまう。感情の高低差がものっすごい見えて,こうしたところでも精神ってすり減っていくんだなぁということがじっとりと伝わってきました。

あとあと,香川照之の中間管理職的な葛藤も見えてとても良かった…。香川照之的にはお仕事をしてるだけなんだけど,きっとその命令もスプリットした気持ちを経て下してるんだろうなと思うと,つらいだろうなと思います…。

海老蔵は敵艦にぶつかりに行く訳じゃなかったのに,あんなにあっけない死に方しちゃうなんて。
回天の授業中の「こうなると死んじゃうからなー」っていう“ダメな例”で命を落としてしまう。でもそれって戦争に限らなくて,「まさか」が起きるってこういうことだよねというか,人生の儚さというか,そんなものを感じました。そして出陣したいしたいと思っていたひと(伊勢谷友介)が生き残る。人生って矛盾だらけで思うようにいかない。そういうものだよねということも,感じました。

そういえば今回の映画を観てて,妹役の尾高杏奈ちゃんが素敵だなーと思いました。あどけなさがあって,お兄ちゃんの恋人や友達を慕ってて,かわいらしい妹ちゃんという感じ。今もドラマなんかに出演されているみたい。大人になった杏奈ちゃんのお芝居,観てみたいです(*´∇`*)
あと杏奈ちゃん繋がりで,今回この『出口のない海』を観ていたら,2008年の映画『ラストゲーム 最後の早慶戦』を思い出しました。いや観たことはないんだけど。でも状況がなんだか似てる気がして。杏奈ちゃん,これにも出てるし,いつか観たいなーと思います。


この映画を観るまで人間魚雷があるなんて知らず…。改めて,戦争って究極なことを人間に考えさせて,恐ろしいもの作らせちゃうなと思いました。そして登場人物達の見せる「隙」がたまらなく愛おしい,そして切ない作品。幻想的なタイトルも素敵だけど,絶望的。そんな映画でした。

映画『LOVERS』

◇STAFF
監督:チャン・イーモウ
原案:チャン・イーモウ/リー・フェン/ワン・ピン
脚本:リー・フェン/チャン・イーモウ/ワン・ピン
音楽:梅林茂

◇CAST
アンディ・ラウ(井上肇)/金城武(宮内敦士)/チャン・ツィイー(坂本真綾)/ソン・タンタン(藤田淑子)

制作国:中国
公開:2004年(日本)
上映時間:120分

(2015.8.15 テレビで鑑賞)

夏休みに観た映画の感想を書こう第2弾は『LOVERS』。チャン・ツィイーの作品を制覇しようと思っている私。ようやく4作目。この映画,昔テレビで放送してた気がするけど,その時は気が乗らず途中でやめちゃったのよね…。BSでやっていたので実家で録画してもらって,今回はちゃんと観ました。

さてチャン・イーモウ監督と言えば…『初恋のきた道』の監督!これも昨年テレビで観て,なんて純朴な作品なんだ!と思ったものです。温かいけどどこか寂しい画も素敵で,ひとの心の動きをじっくり追う作品。派手さはないけど印象的でした。

がっ!

びっくり!

『LOVERS』は『女帝』の時の衝撃が蘇る,バリバリの中国アクション映画でした!!!!!

つまり,(そんな動き絶対にありえーーーん)と思うものがありえちゃう映画!(;∇;)
チャン・イーモウもやっぱりこういう作品撮るんですね…。(確か『HERO』もこういう系の作品ですよね…。)
なんか,良い意味で監督の幅広さを実感できました…。笑

そうそう。あと今回はテレビ放送のものを観たので音声が選べず,字幕かなー吹き替えかなーと思っていたのですが,残念。吹き替えでした…。(原語がいちばんだと思ってるので!)
しかも金城武の役は違うひとが日本語当ててました。ぬぉぉ…。
ツィイーも魏涼子さんとかではなく坂本真綾さん。また私の中で別のツィイーのイメージができました…。

さて作品ですが,歴史モノでしかも他国なので(エッ,どういうこと!)と思ってるとどんどん話が進んじゃうところもあったのですが,シンプルに騙し騙しあいホントの気持ちに気づいちゃう金城武とチャン・ツィイーの話♥と思うことにします。←

金城武カッコイイですね。ていうか今回調べて初めて知ったんですが,ハーフなんですね。しかも活動拠点ほぼ台湾なのですね。でもカッコイイですね。竹野内豊みたいな,あの甘い目とかいいですね。←
落とそうと思ったら落ちてるなんて,カワイイというか単純というかなんというか。笑
ツィイーのお店でやらかすあたりはおいおいと思っちゃうのですが,その後の,わしっとツィイーの手を握って守ろうとするあたりはきゅんきゅんしますな…。あの竹攻撃を受けて(てかあれありえん。笑)動きを止められてしまうツィイーと金城武が手を取り合うところとか,たまらんでした。ひゃー。

ラストの方でツィイーにフラれて一人旅立つところなんかは,(待って金城武ー!)と本気で思いました。笑 きっと金城武としては一緒に来てくれると半分くらい思ってるだろうに,叶わなかったときにどう諦めるかでニンゲンの大きさがわかるというか…。そんな気がします。

ラストの話をしてしまったのでそのままそこの話をしちゃうと,美しい紅葉があったはずなのに気づいたら銀世界が画面に広がっててびびりました。(え,そんな長くアンディ・ラウと戦ってるの!?)って。笑
でもこの記事を書くためにウィキペディア見たら,納得というか…。あのラストシーンは本当は花畑で撮影するはずだったらしいのですが,花があんまり育たなかった&季節外れの大雪で,あんなことになってしまったらしいです。まじか…。ガチな雪だったのか…。そこは都合を合わせまくる(ように見える)中国映画の作り方ではないことがわかり,見方が変わりました…。

肝心のツィイーですが,いやー,このひとすごい!何がすごいって,目!!!
外斜視がある女優さんだけど……。だからか?はわからないけど,目が見えません!の演技がものっすごい。本当に焦点合ってない目をしてるのが,ちゃんと画面でわかるからすごい!なんだあれ!視覚的な刺激に対する反応が本当にないから,死んでる!ちゃんと目が死んでる!!!(ほめてる)すごいなー。
なので牡丹坊に着いて女将の接待シーンで視線が物体を追っているのが見えたときは私もハッとして,(このひとまさか!)ってなりました。そのまさかで見えていた…。コワイ女だわシャオメイ。金城武に襲われかけたときも素に戻って良いだろうに,そのときも目ぇ死んでたから…。やー。すごかったー。すごかったからこそ,やっぱり吹き替えじゃなくて肉体を動かしている本人から出てくる声・せりふを聞きたかったなーと思います…。(でも多分レンタルして観直したりはしないと思う。←)

アクション部分は中国!という感じでしたが,自然や四季の美しさはホンモノなので,そのあたりを味わえてよかったです。
今回も含めlツィイーの出てる4作中半分は切ない終わり方してるので,もうちょっとこのひと幸せになってほしいです。笑
そんな作品に出会えるよう,引き続き気が向いたときにツィイー作品を観ていきたいと思います。

映画『八日目の蝉』

◇STAFF
監督:成島出
脚本:奥寺佐渡子
音楽:安川午朗

◇CAST
井上真央/小池栄子/森口瑤子/田中哲司/渡邉このみ/吉本菜穂子/市川実和子/余貴美子/平田満/風吹ジュン/劇団ひとり/田中泯/永作博美

製作国:日本
公開:2011年
上演時間:147分

(2011年初夏 劇場で鑑賞,2015.8.15 テレビで鑑賞)

夏休みに観た映画の感想を書こう第1弾。『八日目の蝉』。映画館にもバンバン貼られていた↑のポスター写真が好きです。

2011年の公開当時,劇場で観て,ボロ泣きした作品…。
(カサハラさん,母子関係というか親子の愛というか,そういうテーマに弱いので…。)

翌年地上波で放送されたときは,確かカットが入ってて もきーっ(>д<) となったのでした。
NHKBSプレミアムでやったのを実家で撮っといてもらって,ようやく今年の夏に観ることができたのでした。

そう。公開当時は井上真央!永作博美!話が気になる!ということでほいさっさと観たのですが,今観直すと,この映画が改めてスゴイことに気づきました。


  • 子役が渡邉このみちゃんだった
    →良く考えたら『明日ママ』のジョリピの子じゃないですか!ひゃー。この子だったのかーーー。『八日目の蝉』の演技は本当にすごかった。当時3歳で新人賞取るのも納得です…。
  • 田中泯出てる
    →映画『永遠の0』でこのひとを知り,今やってる朝ドラ『まれ』でいい味出してる…と思ってたのですが!!映画観た時も写真館のおじいさんいいなーと思ってたんです。田中泯でした。
  • 吉田羊も出てる
    →エンドロールで名前があって(!!)ってなったのだけど,どこに出ているかよくわからない。

“ちょっと前の映画”って,キャスティングとかで面白い発見があって良いな~なんて思いました…。


さて,今回の発見はちょっと置いといて,本編のはなし。

やーーーーー。井上真央と小池栄子と永作博美が良すぎるーーーーー。

私,井上真央のお芝居はちゃんと観たことなくて。『花男』とか全然興味なかったので観てなくて。小学生の時にお姉ちゃんが『キッズウォー』を観てるのを後ろからチラリとみて,(ガサツな子…)と思った印象くらいしかなくて。←役柄がキャストさんご自身の性格に見える,小学生あるある。←だと思っている。
(そして映画観た後に『おひさま』を後半から観ました。今年の『花燃ゆ』は途中で諦めました。)

ほんっとすごい女優さんですね。目でお芝居できる女優さん。恵理菜ちゃんは大学生の役だけど,華やかなものとはまるでかけ離れていて,一人で生きてることが伝わってくる。きっともともと感情の振れ幅は大きくないひとだけど,じっとりと何かを押し殺して,恵理菜が地に足をつけて現実的に生きていることが冒頭で伝わってくる。

あと,岸田さんとかお父さんとかと接してる場面観てると(いや女のひとに対してもだけど),このひと本当に男のひとと一定の距離を保ってて,相手のラインには絶対に踏み込めないし,他人からも易々と踏み込まれたくないんだろうなぁと思いました。岸田さんに対しては,過剰適応的というか。「いい子」の自分だけ知っててほしいと言う感じ。夢を見たいけど,同時に見ちゃいけないともきっと思ってるだろうから,数年後まで待たずに恵理菜から別れを切り出すんだろうなーと。
そうそう。別れを切り出すゴハンのシーンも,最初は(ビール飲むの!?飲んじゃっていいの!?)って思ったんです。自分の体を粗雑に扱ってるというか。でも,ああいうお店で飲まないのはきっと変だし,飲まなかったら岸田さんに勘付かれちゃうからそうしたのかなと思うと,恵理菜ちゃん徹底的…。本当に何も残さずいなくなるんだな・なれるんだなと思いました。

そしてすごい女優さんといえば小池栄子…!私は彼女に対してグラビアアイドルのイメージが強くて,あとウリナリ!!の社交ダンス部のひとってイメージもあって,女優さんという感じが全然しなかったのです。
で・も!
やーーーーー。なんて存在感が大きい女優さんなの!もう,歩き方とか視線とか,食べ方とか,すごい癖のあるひとで,ノンバーバルなお芝居にすっごく引き込まれました!そう,歩き方ね歩き方!あの肩が斜めになってちょっと前傾になってるあたりとか,とっつきにくさたっぷりで良いよね…!
「見上げてごらん夜の星を」のエピソードが出てくるあたりのホテルのシーンも好き。最後恵理菜ちゃんが写真館からばーっと駆け出して→追いかけて→「二人なら母親になれるよ」と言っていたシーンも好き。
良いもの観ました…。

永作博美も,ちゃーんとお芝居観たのはこの映画が初めてかも。冒頭のシーンのインパクトがものすごいよね。
やっぱり永作博美も目というか表情がたまらなく素敵で,傘を差して不倫相手の家を見つめるあの画が好きです。
やっていることとしてはもちろん犯罪なのだけど,気づけばこの2人がどこまでも逃げられたら良いのになんて思ってしまうくらい,薫を愛して育てていることが伝わってきて…。だから冒頭の裁判のせりふはものすごくクレイジーなのだけど,でもそう言う希和子の気持ちもわからなくなくて。
愛してるひとが手に入らないならそのひとの子どもがほしいというのは私はわからないけど,でも本当は愛してるひととの子が生まれてくるはずで,その子がいなくなってしまったら…って思うと……,うーんという感じです。笑
しなやかで,強くて,ちゃんと母だったな…。永作博美…。

あとは不倫したどうしようもない父親が田中哲司なのが素敵なのと,
私の知り合いの女優さん松浦羽伽子さん(方言指導も担当されたらしい)が画面のどこをどう見ても見つからないのと,
小豆島の風景がとても素敵。
ほしかったものと求めてはいけないものが同じものだった希和子と恵理菜ちゃんの揺らぎが私の心の琴線にジャンジャカ触れました。笑


でもって,
映画館で観たあとにテレビでNHKのドラマ版(全6話)をやっていたのを観たのですが…
公開された時系列としてはドラマ→映画の順だけど,先に映画版を観ているのでやはりそちらがよく観えてしまって。笑
ボリュームがある分映画にはなかった部分が描かれていて(希和子と漁師のエピソードとか。岸谷五朗が「胸がちりちりする」みたいなせりふ言っててたまらなかった。笑),そういうあたりは作品が深くなってよかったのだけど…。檀れいがヒステリックに見えてしまったのと,北乃きいは健康的なイメージがあるのでそこまで深みを感じられなかったかなという感じ…。そして原作通りではあるらしいのだけど,希和子と恵理菜が小豆島ですれ違うところは個人的になくてよかったかなと言う感じ…。

ということで映画版が好きです。笑
また観返したいと思う作品でした。

Saturday, August 8, 2015

第42回北信地区高校演劇合同発表会 長野清泉女学院高校演劇部『宇宙の子供たち』

(北信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@千曲市更埴文化会館あんずホール

作:安樂怜・辻井大作

北信地区大会の大トリは清泉!清泉といえば私の現役時代は県大会常連校で,06年度の県大会以来の観劇でした。

このタイトルを見た時,あれって思いました。
そしてパンフレットの後ろ(過去の上演記録)をめくって,ですよねって思いました。

見覚えがあったのです。この単語。『宇宙の子供たち』。

2004年度の清泉の上演作も,『宇宙の子供たち―クリアウォーター号の場合』なんですよね。作:井上梓・辻井大作,潤色:長野清泉女学院高校演劇部で上演されてました。

私,04年度の県大会も行ってたんですけど…イマイチ観た記憶がなくて…。
なんでだろう~。しかも過去のブログにも何も書いてないから本当に謎すぎる。でも中抜けしてたとは思い難いので,やっぱ見てたのかな??

とりあえず過去の資料を引っ張り出してみると,04年度の『宇宙の子供たち』にもケンジくんやタダシくんが出てきているので,おそらくこの作品がベースで15年度版ができたのかな~なんて思ってます。11年の月日を経て作品の練り直しができるのも,私立ならではだなぁと感じます。

(というわけで04年度の下敷きがあって今回の作品ができたと思っているのですが,その場合クレジットには井上さんのお名前とかなくて良いのかしらと思ったり。よくわからないけど。)


さてお芝居です。幕が下りたときに,もし県大会に3校行けるのなら,ここは確実に通るんだろうなーと直感的に思いました。
昨年度から久しぶりにがっつり高校演劇の観劇を再開して,“2010年代っぽい”と感じる作品にいくつか出会ってきました。この作品もまた,2010年代らしいというか,この時代なのでヒリヒリと胸に迫るなと思います…。

創作で大事なもののひとつがタイトルだと思うんですが,「こども」が「供」の字表記な時点で,こどもには優しくない話なんだろうなぁなんて想像できました。それこそ04年くらいはまだまだこの字は使われていたけど,今ほとんど使われないですよね。そこであえて(04年度の練り直しでもそうでなくても)使っているので,大人目線というか,大人に振り回されるというか,こどもが弱者として描かれる作品なんだろうなぁと。実際そうでした。

先月,マームとジプシー『cocoon』を舞台で観て原作を読んだり,仲村トオルの読み聞かせ『お話の森』で太宰治の「御伽草紙」から「舌切雀」を聞きました。『cocoon』は思春期の少女から見た戦争の話で,空想することで現実に直面することから自分を守ってきた子が主人公。太宰治の「御伽草紙」は,WWⅡ真っ只中に書かれたお話。次元は少し違うけど,危機的状況に陥った時,空想はとても大きな力を持ち,その人を支えるのだろうということを2作から感じました。

『宇宙の子供たち』もまたそうで,ネグられているきょうだいの空想の世界。ワクワクするし,カワイイし,ドキドキする。でも,その分とても苦しくなる。そんな舞台でした。

作中,何度かこども電話相談のシーンが出てくるのも,時代を感じました。今年の3月末でTBSのこども電話相談室が終了したのも記憶に新しかったので,これを連想しました。多分意識して入れ込んでるんだと思うんですが。
(この記事書くために全国こども電話相談室・リアル!のサイト観てみたんですが,アクセスすると乃木坂の子がなんとも言えない表情してて若干つらくなるなぁ…。もうここでは受け止めてもらえないのね…。って。)
ロクスケとお姉さんが楽しくケンジとタダシのはてなに答えていたところから一変して現実味を帯びたやりとりになってしまった瞬間は,2人にとって最後の大人との繋がりが途絶えてしまったように見えて,ものすごーくつらくなりました…。あぁ…。

あと宇宙?でお父さんとお母さんが襲ってくるシーン(お母さんの衣装がスゴイ…!)も,デフォルメされているにせよ,実際こうだったんだろうなぁとか。思いました。

そうそう。「こうなりたかった」とか「こうしたかった」が全面に溢れてるあたりは,先月全国大会で観た佐賀県立佐賀東高校『ママ』に通じるところがありました。あと人数のわちゃわちゃ感は福島県立いわき総合高校演劇部『ちいさなセカイ』とか,そんな感じ。そういう雰囲気に似た作品が長野県の地区大会でも観られたことが,なんだか嬉しかったです。でも雰囲気が一緒だから嬉しいというわけじゃなくて……,なんていえばいいんだろうか…。なんとなく,地区だけじゃない場所でも通用しそうだなという作品が,長野県で観られた。あ。そうそう。そんな感じかな。そういう舞台に出会えたことが,嬉しかったです。はい。

だからこそいっちばん最後の音響さんのミス?(音の入り)がすっごいもったいなかったです…!あそこは2人の希望であり,2人が望遠鏡で一番見たかったものだったと思うんです。私の気持ちも結構ぐわわ~ってなってたんですが,ハタッと我に返ってしまいました。うぅぅ。
清泉に限らず,音響のオペミスがなんとなく大会全体で目立った気がします。というかやっぱり照明のミスと比べてかなり大きなミスになっちゃいますよね。音響って。当たり前のことがきちっとできるって大変なんだなと思いました…。

なんかまとまりのないことの羅列になっちゃってすみません。
あと,女子校の運命として,登場人物が男性であろうが女性であろうが全部女子高校生が演じる…というものがあると思うんですが,ケンジもタダシもとってもすんなり見られました!私結構ぎゃん!!って反応しちゃうこともあるんですけど,素敵なキャスティングでした…。すごいな…。そうそう。ロクスケとかお姉さんとか,主要なキャストさんの雰囲気が皆さん良かったです。脚本に使われるのではなく,脚本を使っていたのが見えた感じ!

大人が観るとグサリと胸に突き刺さる,かわいくて切なくて愛おしい作品でした。
清泉の皆さん,お疲れ様でしたー。

第42回北信地区高校演劇合同発表会 長野日本大学高校演劇部『友達』

(北信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@千曲市更埴文化会館あんずホール

作:宮坂舞花

第42回北信地区高校演劇合同発表会 長野県中野西高校演劇部『恋夏トリップ~Child→Adult~』

(北信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@千曲市更埴文化会館あんずホール

作:橘さくら

第42回北信地区高校演劇合同発表会 長野県長野東高校演劇部『カタイジ』

(北信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@千曲市更埴文化会館あんずホール

作:高場光春
潤色:長野県長野東高校演劇部
屋代と同じく,文化祭に続いての観劇です。北信は例年文化祭から地区まで1ヵ月あるようなないようななスケジュールなので,よく一度完成させたものを崩してまた次の本番までに編み直してこられるなぁって思います。

文化祭公演のパンフレットに「(大会では)いろいろパワーアップします!」みたいな宣言が書かれていたので,どうなってるのかな~と,とってもワクワクしていました。そう。私が今回北信の地区大会にお邪魔しちゃったのも,ここのお芝居が観たかったから!ほぼそれ!ちなみに文化祭公演の感想はこちら

幕が開いてびっくり。

(めっちゃ合宿所じゃん…!)(゜ ゜)

びっくりびっくり!すっごーく作り込まれてました!壁とか窓とか,襖の向こうの絵とか!文化祭では見えなかったものが,見える…!笑
そうそう。窓とか。ホントに窓で。もちろんガラスではないけど,シャッって開けたときの音とかすんごい良い!あと出入り口の襖の奥の壁に掛かってるちょっとした絵が,「合宿で使う宿感」をより一層出していて,とても素敵でした…。あと廊下が見えるよ…。一度観ていたからこそ,ここはどう使うのだろうかとワクワク…。階段は横向きになっちゃったけど,ワクワク…。(←文化祭公演は,背中向けて降りてくる間取りだった。舞台で背中から登場するってなかなかないから,先月観た時は私のレーダーが激しく反応したものです。)

二度目を観ての感想。
(あー!そっちに持ってったかぁ~。)の一言。
この一ヵ月間,作品をどう持っていくか葛藤したんだろうなぁということがすごーく伝わってきました。

久子ちゃん以外の登場人物のお名前がなんだかセーラームーンを連想させるわーと思っていたのですが,改めて見ると……これ発電なんですね…。火力とか風力とか水力とかソーラーとか。そして原子。なんか恥ずかしいわ…。笑
それだけ,はじけた女子高生達のエネルギーのぶつかり合いの話なんだろうな~と思います。目指すものとか目的とかそういったことは似てるけど,そこに至るまでの考え方やルートは全然違うなーみたいなことを,しみじみ感じました。

この作品はいつ書かれて原発のどのあたりを狙ったのか(そもそも狙ってるのか)はわからないのですが,もしかしたら,無理にそこまで詰めなくてもよかったかなーと思うのが正直なところです。もちろん放射能も目に見えないし,ビームっぽいし,怖いんだけど。気づいたら害がありそうだし。
でももっとこのお話は,シンプルに人と人との見えないエネルギー(力動)の駆け引きを味わう作品で終わらせてもよかったかもしれないなと思います。お化粧でもお洋服とかでもそうだけど,見せたいもの全部乗せしたら,結局全部埋もれちゃうしゴテゴテしちゃうから。程よい引き算メイクなりコーディネートができるように私もなりたいものです…。
…あ。話がずれた。でもそんな感じ。
(じいちゃんの農薬とかは,ネイルのラインストーン1個くらいのとらえでちょうど良いのかも。全部置いたらごつくなっちゃう。だけど1個あれば,一瞬でも目を引くことができる。)

あと私の密かなお気に入り陽菜ちゃん(笑)が,かなしい設定になっていたーーー(;∇;)!!!
陽菜ちゃーーーーん!!!なんて壮絶な過去!!!つらい!!!私も小さい頃ちょろっとスイミング行ってたけど,私だったらもう水恐怖になりそう!!!なんて背負うものが大きい子なの…!

なので…ほんとに…フルコースにデザートバイキングがついてきたような気持ちになりました。(たとえが化粧なのか服なのかおいしいものなのかよくわからなくてごめんなさい。笑)
既成脚本の解釈と,自分達のやりたいこととのすり合わせって難しいなぁと改めて思いました。もちろん正解なんてないのだけど,きっと絶妙なバランスで成り立つんだろうなぁ。
でもフルコースにバイキングがくっつくくらい,長野東の皆さんが考えて考えて考え抜いて,長野東のベストバランスを出してきたということは,激しく激しく伝わってきました。

お芝居自体は,今回観た全部の学校の中でダントツの安定感がありました。もちろん一度観たことがあるのもありますが,出てくるキャストさんみんなの声が(蚊帳に入ってても)きちんと聞こえるし,ちゃんと“今ここで起きてる”ということを,間とか,視線とか,そういうもので感じることができました。当たり前のことだけど,言葉がコミュニケーションの全てじゃないってこういうことだよなって思える。ベースの力が高いカンパニーさんだなーと感じることができる。そんなお芝居でした。

ちなみに私は,
陽菜ちゃんがアルパカで隠れるところと,冒頭の絶妙なタイミングで部屋に戻ってくる(×複数回)ところと,
風花ちゃんの超不器用で引き出しのない話題の替え方と,
久子ちゃんの「いること」で繋いできた使命感と,でも他人を攻撃することでしか自分を守れない不器用なところと,
澄香ちゃんのズレてる正義を振りかざしてくるあたりと,
茜ちゃんの空気全く読めてないふりしてちゃんと傷ついてる(けどやっぱりそれを出せない)あたりが,
とても好きです…。人間味溢れてて愛らしいです…。皆不器用だし空回ってるし,でも一人狙ってか素でかはわからないけどぶっとんでる人(陽菜ちゃん)(だと思ってる)がいるし。
それぞれの意図や本心が見えても,チームとしてまとまることができるのかな。わからんな。見えないはずのものが見えた瞬間って,怖いよね。ほんとに。

あぁぁー。やっぱりもう一度観てみたいな。この作品。長野東さんで。
でも,それが叶わないのが高校演劇だから。きっとしばらくは,私のアタマの中でいろんなパターンが浮かんでは消え,浮かんでは消える作品になると思います。笑

文化祭と地区大会,セットで観たからこそたっぷり味わえました。
長野東の皆さん,お疲れ様でした。ありがとうございました。

第42回北信地区高校演劇合同発表会 長野市立長野高校演劇部『私には夢がある~I WISH, もしも私が~』

(北信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@千曲市更埴文化会館あんずホール

作:網田明紘
潤色:長野市立長野高校演劇部

第42回北信地区高校演劇合同発表会 長野県坂城高校演劇部『TSUBASA』

(北信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@千曲市更埴文化会館あんずホール

作:大垣ヤスシ
出演:長野県坂城高校演劇部

大垣ヤスシといえば『ジャンバラヤ』とか『超正義の人』を書いた方というイメージで,この作品は初めて知りました。というか大垣ヤスシ作品自体初めてかも…。あれなんですね。今調べて知りましたが,2005年度に岡谷南と松本筑摩と一緒に作新の作品として関東に出てるんですね。

でもって坂城高校といえば,昨年の県大会出場校!マグロだったかカツオだったかで会場中を笑わせていた学校!(そして私は主人公・祥子ちゃん役の方の声がすごい好きだった。笑)
今年のパンフレットで見てみると部員さんが4人…!?メンバーも部の雰囲気も変わってしまったのかな~と思っていたのですが…
あれ!昨年の『158.9』で,クレヨンしんちゃんのミッチーみたいな暴走っぷりを発揮していた新妻をやってた方が出ている!声でわかりました…。役柄がガラッと変わっていたんですが,ぱっと聞いてピピっときました。一方的にでも知っている方が出ていると,なんとなく親近感…。

さてさて作品です。
幕が開いてしばらくは暗くて,どうやら人が入ってきて何か喋っているらしい。でもはっきりとは聞こえない…!ここはわざと聞かせなかったのかごにょごにょになっちゃったのかはわかりませんが,視覚が遮られているのに聴覚からの情報もイマイチクリアに入ってこなかったので,観客としてはなんだかストレスでした。

でも,照明がついてびっくり!狭ッ!!!(゜ ゜)舞台が,狭い…!

明らかに場転できなそうな舞台で,(これで60分やるんだ!)と正直思ってしまいました。昨年家の一室を舞台にしていただけあって,高い壁とかがすごーい閉塞感ありました。でもって部屋のゴチャゴチャ感がいかにも開かずの間という感じで,よかったです。ドアは締まっちゃったはずなのにちょっと開いちゃったときは(あっ…)ってドキドキしちゃいましたが…。

この舞台,主に女の子3人で回しているんですが,この3人のキャラクターが全く違って面白かったです。今どきっぽい子,じっとりしてる子,マイペースな子…。せりふから見えるキャラクターとパッと見の見た目が一致している感じがして,とってもすんなり見られました。あまりにもキャラがバラバラしているから友達なのだろうかとも思っちゃいましたが,思えば私も方向性が似てない子と仲が良かったので,そういうところはあまり問題ではないのだろうと思いました(それを問題にするひとやグループもあるけど)。

開かずの間に入って早々,ブルマ穿くあたりが面白かったです。ずーっと保管されていた,誰かが穿いたであろうものは,私は着たくないけど(笑)。でも同じもの身につけるとか,あと後半であんぱん食べてますが同じもの分け合って食べるとか,そういうところに連帯感というか,運命共同体というか,そういう雰囲気が感じられて面白かったです。(でもブルマは皆ぶかぶかというか途中でずるずる落ちてきちゃうというか前から見たらちゃんと穿けてるのに後ろはスカートが出ててあれれと思ったり。というかスカートをインしていて,あぁー,そう穿くのかーと思ったり。)

講師の先生も仰っていましたが,3人とコータローの関係がちゃんと見えました。あれだけ3人でわちゃわちゃ話していたコータローが実際に部屋に入ってくると,“表面上はああ言っていたけど実はこうだった”みたいなものがじわじわ見えた気がします。やっぱりひとつの空間から誰かがいなくなったり誰かが入ってくるとその場の空気って変わると思うのですが,ちゃんとギスギスした感じというか,私も居心地悪い感じになれました。やっぱりあの空間がもう少し広いとエネルギーが拡散しちゃうと思うので,狭いスペースに居心地の悪さを詰めるという意味で,あの舞台美術よかったなーと改めて思います。

あと,最後の最後に夕陽が差し込んでくるのですが,あの色はなんだかチープというか,なんだか単調に見えてしまったような…。そうでもないような…。
その,先月全国大会に行って美しい夕陽を舞台上で見てしまったもので,なんだかなというか…。うーん。なんだろう。何がそう見えてしまったのかな。窓の小ささかな。色合いの問題かな。あの作品だと,もう少しほんわりした色合いでもよかったのかも。なんだか,本当に燃えるような夕陽だったので。でも最後にちゃんと見せる照明をつくっているあたりは,さすがだなぁと思います。

きっと音響も照明も操作するひとがいるだろうから,このパンフレットにお名前が載っている皆さんに加えてお手伝いさん?がいるのかなーと思うのだけど,昨年人数がいた分大変だったところも多かったんじゃないかなと思います。ちゃんと自分達で収めてつくることができる作品を選べるのもそのカンパニーの力だと私は思うので,坂城のみなさんが今できるベストを観ることができたなと思います。
あと高校演劇は,2年以上同じカンパニーを観てこそ楽しみが増すなぁなんてことも,坂城高校を観て改めて感じました。
坂城のみなさん,お疲れ様でしたー。

第42回北信地区高校演劇合同発表会 長野県屋代高校演劇班『A・R-芥川龍之介素描-』

(北信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@千曲市更埴文化会館あんずホール

作:如月小春
潤色:長野県屋代高校演劇班
出演:長野県屋代高校演劇班

私は中信地区のニンゲン…。そんないくらなんでも他の地区大会にまで足を運ぶだなんて!(現役のときだってそんなことしたことないのに!)

…と思っていたのに行ってしまいましたあんずホール…。
今年の1月2月に関東大会があったあんずホール…。まさか,またおでかけする日が来るだなんて…。人生何が起きるかわからないものですね…。

今回北信地区大会の2日目にお邪魔しようー!と思った要因はいろいろありますが,そのうちのひとつはこちらの高校がこの日だったから。というところがあります。

先月文化祭公演を拝見したのですがとっても文化祭公演仕様だったので,どう大会仕様になったのかなーと気になり朝イチから観てしまいました。それにしても昨年の地区といい県といい,屋代の朝イチの引きっぷりがすごいですな…。
(文化祭公演の感想はこちら。)


幕が開いてびっくり。
文化祭ではなかった平台が…!奥には窓が…!(窓は昨年の『南京』っぽい)
かなりアレンジ加えてる…!というのが一瞬でわかりました。
そして上下に椅子が並べられていて,キャストはそこでスタンバイできるっぽい!←特にこのへんから,なんだか2001年の松本美須々ヶ丘高校演劇部『血のつながり』を思い出しました。何から何まで全部見せちゃうつくりにしてあるあたりが。

文化祭では特に①箱にあった声 ②役者の立ち位置 の2点が気になったので,なんとなくそこを意識して観てしまいました。

まず①の声ですが,前回は教室公演だったのにぜーんぶ張ってて超もったいないと思ったのです。でも今回は大きなホールなので逆に安心というか…。ちゃんと聞き取れて安心…。
(出だしのところの複数人でせりふを合わせるときや,キャストさんによってはやっぱり2000年代前半の深志っぽいなぁという感じもありましたが…。)

次に②の役者の立ち位置ですが,前回の対面式とは別の立ち位置問題(?)が…!
前述したように,今回は中央に舞台があって,上手下手は袖幕に近いところに椅子がそれぞれ4脚くらいあって,出番のない役者さんはそこでスタンバイするしくみ。つまり登場人物としてONになってる状態と,スタンバイのOFFというより黒子っぽい人としてのONの状態,どちらも私達からは丸見えになっているのですが,この黒子→登場人物の切り替えが…ど,どこから??といううにゃうにゃした感じになっている瞬間がたまにあって。(今あそこに立っている編集者はどこからこの作家の独語を聞いているのかしら…)と思ったりしちゃいました。そこの切り替えがきちっと視覚的にわかると見やすかったなぁと感じました。

あとこのスタンバイの椅子ついでに…。
せっかくこの椅子があるなら,全部舞台上でまとめたら良かったのでは…と思ったのですが,どうでしょう。見せるスタンバイなら,徹底的にやってほしかったなーというのが率直に思うところ…。衣装を変えるのも,小道具を用意するのも,見せちゃえばいいのにって。白衣に着替えたりろうそくを持ってくるのに袖にそそっと入って,準備できたらほわ~っとやってきて,着席!みたいな感じで,(見せているのに隠れるなんてずるく(?)ないか!)と思ってしまいました。笑
中途半端に出入りされては本編よりそちらが気になってしまうし,だったら椅子とか使わないで全て登場人物として袖から出てきてよかったんじゃ…なんて思います。もっと間口狭くして,ぱぱっと出入りできるようにして。
…とかとか,勝手に考えてます。

勝手に考えているといえば…。
文化祭では3年生の方が妻役だったので,(もしこれを大会に持っていくなら,妻は誰がやるのか…)という予想を一人で勝手に立ててました。笑
文化祭で目が素敵だなぁ~と思った役者さんがいらして,(私だったらあのひと一択。)と思っていたらドンピシャリで当たりでした(-ω-)b私の目もまだまだいけるようです。←
目でお芝居できるってかなりすごーいと思うんですが,今回いっぱいせりふを聞けたので,声の通りっぷりも体感できて満足です…。

そうそう。妻なので(また階段落ちが見られるのかな!)なんて思ってたんですが,このシーンは本当に本当にもったいなかったーーーーーー(;o;)
あそこって超クライマックスのシーンですが,何が見たいかって良秀の娘が見たいじゃないですか。
が,しかし!
なんということでしょう…。娘の顔は髪の毛に隠れて全然見えませんでした…。かなしい…。ああいう演出だったのかな…。いやでも娘の手前に3人の公家のうちのひとりがどんかぶりしていたのは演出じゃないと思うのでどうかな…。←これも娘が見えなかった原因のひとつ
とにかく(今すぐ上手の前の席に行きたい)と思ってしまいました。笑 できれば上手の前からでなくても,見える・魅せる方法があると良いなーと思いました。

“魅せる”に関して…。これはひとのポジションの問題なのか照明の問題なのかわからないのですが,「喋っているひと」と「照明が当たっているひと」が別な箇所がいくつかあったと思います。例えば,手前で作家が心中しようとしていて,下手で妻と子どもが父さんの仕事についての話をしているシーン。途中から徐々に妻の心的世界に入って,はっと気づいたら夫が知らない女の人と倒れてた…とかだったらわかる気もするのですが,結構シーンの最初の方から強い照明が親子3人に当たってる気もしたので,視線が散るというか…どこに注目したら良いのか迷っちゃうというか…。そんな感じでした。←途中で夏服の男が出てきたときも。(目立つな…)という感じがしました。ひとの立ち位置というか次元が,バラバラしちゃってる感じ。そういう混沌としたものを出してるのかもしれませんが。

あと平台はみんな上り下りのが大変そうだったのであの半分くらいの高さでも十分かなとか,文化祭のときも若干思ったけれど足音のドタドタ感はもう少し絞っても(聞かせるところを選んでも)良いかなと感じたりとか。そうそう。屋代さんに限らず,無意識でドタドタしてるのを聞くと「自分の出している音に敏感になれと(外のカンパニーで)言われた」と昔同期が言っていたのを思い出します。聞かせる足音,消した方がいい足音を使い分けられるようになると効果が増しそう…。

思いつくままにばーっと書いてしまいましたがこんな感じです。
はっ!書き忘れた。これも文化祭のときに思いましたが,やっぱり屋代は照明のこだわりが見えて良いですね。センターに直置きしてる2つとか。天井に投影してたプロジェクターはどうなったかなーと思っていたんですが,窓の方に写って安心しました。
先月全国大会に行って,どこも照明に力を入れてるなぁと改めて思いました。それはインパクトの強い使い方という意味だけではなくて,色合いの美しさとか,そういうものも含めて。あまり意図を考えず入れちゃう学校も中にはあるので,「ねらいがあること」がしっかり見えると嬉しくなります。
屋代のみなさん,お疲れ様でしたー。

Tuesday, August 4, 2015

NEWシネマ歌舞伎『三人吉三』

◇STAFF
監督:串田和美
作:河竹黙阿弥
演出・美術:串田和美

◇CAST
中村勘九郎:和尚吉三
中村七之助:お嬢吉三
尾上松也:お坊吉三
坂東新悟:十三郎
中村鶴松:おとせ
真那胡敬二:海老名軍蔵/八百屋久兵衛
大森博史:太郎右衛門/長沼六郎
笈田ヨシ:安森家来弥次兵衛/堂守源次坊
笹野高史:土左衛門伝吉
片岡亀蔵:研師与九兵衛

2015年/135分

(2015.8.4劇場で鑑賞)