Thursday, December 31, 2015

東急ジルベスターコンサート シルヴィ・ギエム『ボレロ』

@Bunkamura オーチャードホール

出演:シルヴィ・ギエム/東京バレエ団

指揮:大友直人

(2015.12.31 BS JAPANの放送を鑑賞)

私が彼女の存在を知ったのは大学生のとき。劇場でバイトするようになってから。私はストレートプレイやコンテンポラリーダンスは好きだけど,バレエとかオペラはそこまで興味がなくて。多分身体表現やせりふは好きでも,型のある様式美や声楽はあまり心にフィットしないのだと思います。
でもダンス雑誌がバイト先にあるので彼女が踊っている写真は観ていて,“100年に1人の逸材”とまで評されていたからどんな人なんだろうと気になっていたのでした。

ギエムが引退すると夏に知り,じゃあもう実際に観られる機会はないのかー。と思っていたのですが!
ある日!東急線に乗っていると!BS JAPANで12月31日に生放送という広告が目に入ってきたのです!

観るしかない!と思って観ました。年末の実家,弟とチャンネル戦争をしながら…。笑


長い肢体。
50歳とは思えない力強さ。
無駄な動きのなさ。
びっくりするくらいしなやかな身体。
曲の盛り上がりと共にダイナミックになっていく動き。

そして東京バレエ団のお兄さんのマッチョな身体。笑←これバレエやってる人達なの!?って本気で思ってしまった。初めてバレエにセクシーさを感じてしまった…。笑


ギエムにしか出せない世界観があって,全く目が離せませんでした。
開始が23時50分過ぎくらいだったので,途中から(これ0時0分までに終わるのかなぁ~)と不安になってきたんですが,23時59分というか0時0分ぴったりに終わったのには驚きました!すごすぎて,思わずテレビの前で拍手しちゃいました。指揮者の大友さんすごい…。

あと,感動しまくっている宮本亜門さんをテレビ越しに見られたのもよかった。笑


世界のバレリーナが一番最後に踊る場所として東京の地を選んでくれたのは,非常に嬉しかったです。
例年はどこかの音楽番組とかをつけてましたが,非常にリッチな年越しになりました。生放送ありがとう…。

Saturday, December 26, 2015

RooTS Vol.03 寺山修司生誕80年記念『書を捨てよ町へ出よう』

(東京芸術劇場公式webサイトより)

@東京芸術劇場シアターイースト

作:寺山修司
上演台本・演出:藤田貴大
衣装:ミナ ペルホネン
宣伝美術:名久井直子
宣伝写真:江森康之

出演:村上虹郎/青柳いづみ/川崎ゆり子/斎藤章子/召田実子/吉田聡子/石井亮介/尾野島慎太朗/中島広隆/波佐谷聡/船津健太/山本達久(ドラマー)
映像出演:穂村弘(歌人)/又吉直樹(芸人)

2015年最後の観劇はマームとジプシー。(と言っていいのかしら…)
他のお芝居を観に行ったときにこの公演のフライヤーが入っていて,私の高校の部活の先輩・じっこ先輩がキャストさんで出演される!とわかり,観に行こうと思ったのでした。

テラヤマと言えば,2012年に演劇実験室◎万有引力『奴婢訓』を観たことがあったのですが,他は観たことも本を読んだこともなく,なんとなーく経歴を知っているだけでした。ということでほぼ予備知識なし。
あとでじっこ先輩に伺ったところ,本から脚本にというよりは,本から出来た映画のエッセンスを抽出して作ったお芝居なのだそう。『cocoon』も観劇後に原作の漫画を読んだのだけど,あの抽象的な世界を具現化してしまうんだから,藤田さんってやっぱりスゴイ。

今回のこの公演は,東京芸術劇場の開館25周年芸劇フェスティバルの一環として組まれた公演のようで,作・演出の藤田さんがいろーんなジャンルの方とコラボしまくっている作品なんだそうな。多分今回は衣装とか,穂村さんとか,又吉さんとか?なのかな??若くていろんな才能が集まると,こんなエネルギッシュな舞台になるんですね。

そう。エネルギッシュなのだけど,話を追うというよりはそのチャプターとか瞬間を味わうというような感じでした。
というのも,そうでないと情報量が多くて多くて,アタマの中で処理できなくなってしまうから。

席に着いてびっくりしたのが,舞台にびっしり置かれている金属のパーツ。なんだあれ!と思っていたら,開演してすぐにお兄さん達がガションガションとそれを組み立てていって,3台の…何あれ?足場?工事現場とか仮設の何かにありそうな,3階建ての足場?みたいなものを作ってしまうからびっくり。あれ自体がパフォーマンスに見えました。かっちょよかった。しかも組み立てたらおしまいではなく,シーンごとに向きや構造を作り変えていて,最後はまたバラバラになっていく。目が離せませんでした。あんな高いところから客席を見たら,どんなふうなんだろう。動かす時にはキャスターがあるし,頑丈だし,無機質なのがまた良くて,舞台で使うのって面白いなーと思いました。なんか本当に『cocoon』と同じ会場には見えませんでした。(この公演を観てから『cocoon』のWOWOW放送を観たのですが,沖縄公演でもこの足場?使ってたんですね!マルチー!)

『cocoon』に出ていた女優さんも何人かいらして,今回お顔とお名前がばっちり一致しました。
特に川崎ゆり子さんは,声もパーンと通って特徴的で,くるんとした前髪や細い体がお綺麗だなーと思って,うっとりうっとりしちゃいました。笑

あ。そう。髪の毛!そうそう。どびっくりだったのですよ!だってキャストの皆さんが赤髪とか緑髪とか金髪になっているんだもの~!じっこ先輩は金髪ショート!びっくり!びっくり!今回は特にビジュアルに釘付け!
若者っぽい感じ,現代的な感じ,「個」な感じ,いろいろ感じ取りました。

衣装やメイクなんかもおおっと思ったのだけど,映像も緻密に作られていてスタイリッシュでした…。下手から上手に向かってパネルをスライドさせていくところ。ドンとパネルがくっつくところで映像が切り替わるところとか,面白かったなぁ。

そして魚の眼の解剖とかナトリウムランプとかの説明?が組み込まれているのだけど,そこもまさに瞬間!という感じ。
魚の眼のことは,観に行く数日前に読んだ夕刊の劇評で知っていたのだけど,こんなに一番最初から出てくるなんて。笑 あれ,本物…?すごくリアルに見えてびっくりでした。一応生理心理学を軽く触っているので,映像を映像として捉えるまでの過程とか,(そうそう。うん。)って思いながら聞いていました。笑 でも,吉田さんが言っていたみたいに,「それそのもので映像を見ているんじゃなくて,私たちのココ(脳)で見ている」と改めて聞くと,認識次第なのかもなぁなんて感じました。
あとナトリウムランプは,ひたすら(へぇぇ~)って感じ。笑 完全に点くまでに2分くらいかかるからお芝居では好まれなかったとか,でも舞台で一番最初に使ったのが寺山修司らしいとか。じわじわ点いていって,実際にここでもナトリウムランプのみになって世界が灰色になったから,まんまとやられたなと思いました。笑 本当にセピア色になっちゃった。あれ,高速道路のトンネルのランプなのね。

あとは『cocoon』でたっぷり感じた尾野島さんの不気味な感じが今回も健在で超よかったのと(ほめてる),青柳さんがパンフで書いていた「演じるって感覚を持ったことがない」みたいな文章にどびっくりしたのと,又吉の映像が面白かったのと。なんか実際に出演しても馴染みそうなひとだなと思いました。

すっごいバラバラした感想になっちゃったけど,お芝居がお芝居だし,まぁ致し方ないかと思うことにします。
とにかく演劇部の先輩が今もこうして素敵な舞台でご活躍されている姿を見られたことが個人的にものすごーいパワーになりました。次の出演を伺ったら,春に新宿駅の南口向かいにできるでっかいバスターミナル(ルミネ0)の中にできる劇場の杮落とし公演があるのだとか。すごい!杮落としとかなかなか携われないもの!
また舞台の先輩を観に行って,生きていこうと思います。

Wednesday, December 23, 2015

ナイロン100℃ 43rd SESSION 『消失』

(ナイロン100℃公式webサイトより)

@下北沢本多劇場

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:みのすけ/大倉孝二/犬山イヌコ/三宅弘城/松永玲子/八嶋智人

10年前にまつもと市民芸術館で観た『消失』。当時は周りが観るからじゃあ私もって感じで,モチベーションとしてはそんなに高くないまま観ていたんです。チケットの確保も他の人に任せていて,フラフラ~っと行った感じ。今思えばとてももったいない観劇だった。ケラさんのお芝居はその前の年に高校の部活でやっていたのを観ていたし,当時小学館から季刊で出ていた「せりふの時代」で『スラップスティックス』なんかも読んでいたけれど,ナイロンのお芝居を観るのは初めてで。あのポケモンのニャースの声を出している犬山犬子さん(当時の表記)がいる!というのは知っていたけど,でもそれくらいでした。しかも平日公演だったから,休憩なしの2時間45分のお芝居は疲れてしまって。案の定意識を飛ばしてしまい,この10年間ずっと後悔していました。

お芝居でオリジナルキャストがもう一度集まるということが,どれだけ大変なことか。
しかも昨年のものならともかく,11年前の作品だから,本当に奇跡と言っても良いのではないかと思います。
私が人生レベルで影響を受けた作品,世田谷パブリックシアター制作の『春琴』も,初演の2008年から最後の公演があった2013年まで4回公演があったけれど,それだって初演キャストの再結成はもうできない。お芝居は一回一回がいかに貴重で刹那的なものであるかを感じさせられました。
ケラさんのTwitterを追っていると,今回の『消失』は録画もしないしDVDにもしない。この公演が終わったら,ナイロンの活動自体が2年はなくなると言っていたから,これを観なかったら10年どころじゃなく一生後悔するわと思い,チケットを確保したのでした。

東京にやってきてもうすぐ10年になるのだけど,なぜか初めての本多劇場。この作品がデビューになってよかった…。しかも当日超寝坊をしてしまって,駅から走らねば!という感じだったんです。昔スズナリに行ったときは見事に迷ったので今回も不安でしたが,本多劇場って井の頭線から見えるからね。なんとかたどり着くことができました。

私のバイト時代の先輩も今回の公演を観ていて,ブログにそれをまとめているのですが,
「どんどん壊れていくのに、新しく生まれてはこないんですよね」

という台詞が秀逸で、絶望を串刺しにして一皿にまとめたみたい。

と評しているのが印象的でした。読んでから出かけたので,このせりふが出てきたときは(あぁぁ出たーーーー)ってなりました。その通りすぎて,もう何も言えなくなってしまう。

一人ひとりに正義とか「正しい」「良い」みたいなものがあるとして,その塊がこれなのかと思うと,とても苦しい。


この年になって,他のナイロンの公演も観たり,最近だと三宅さんは朝ドラなんかにも出演されていて,ケラさんの作品感というか空気感になじめたり…。そう,SFをちゃんとSFとして観られたから,すーっと世界に入ることができました。思えば高校生の頃って,あまりSFを舞台では観ていなかったなぁ。

最後の蓄光パネルは,初演時も強烈なインパクトがあって,そこはちゃーんと覚えていました。まつ芸のときは本気の蓄光パネルだったと記憶しているのだけど,今回はどうするのかなぁと思って観ていたら,段ボール製でした。でもやっぱ,あの焼き付けから影だけ残るのは,衝撃です。

今年は『お話の森』とか『グッドバイ』とか,ケラさん演出の舞台を3本も観ちゃいました。私の中ではかなり多い方です。3本あわせて,映像も音楽も,ケラさんのこだわりを感じられたなぁ~と思います。今回は(“も”なのかもしれないけど)映像と音楽のシンクロっぷりに特にぐっときちゃいました。単純にカッコイイ。

10年の時を経てようやく感じられた,絶望に溢れた濃密な時間と空間でした。
これだけでも十分満足ですが,ミラクルなことに中学時代の同級生に劇場で会うことができました。(この前の週に会おうと思っていたけど果たせなかったひと。)この日の朝地元からバスで東京に来たとな…。
私は自分の大切なひとに会える場所は,結婚式場・葬式場・劇場+学会会場だと思っているんですが,改めてこれを実感しました。この前の日だったら,中高の部活の同期が観に来ていたみたい。やっぱみんな同じもの気になるよね。笑 お芝居の力ってすごいわ…!

Friday, December 18, 2015

文学座 12月アトリエの会『 白鯨-Moby-Dick- 』

(文学座公式webサイトより)

@信濃町文学座アトリエ

作:ハーマン・メルヴィル 
脚本:セバスチャン・アーメスト 
訳:小田島恒志 
演出:高橋正徳 

出演:小林勝也/中村彰男/沢田冬樹/櫻井章喜/石橋徹郎/川辺邦弘/上川路啓志/藤側宏大/釆澤靖起/鈴木亜希子

昔々,私が高校生のとき。当時の顧問の先生がこの作品をやりたいと言っていたのを覚えています。(とか言って全然違ったらどうしよう。笑)あと,高校生のときよく観に行っていた燐光群がかつてこの作品をやっていたというのも,うっすーら記憶にあったのでした。

なのであの文学座が『白鯨』を上演すると知り,これは観に行かなくては!と思ったのでした。

初の文学座。信濃町からてってけ走っていったのですが,慶応の病院があったり大きな建物が多くて,新宿の歴史を感じるようなエリアでした…。アトリエが会場だったのですが,入ってびっくり!げ,下駄箱がある!中学校にあったやつみたいな,木の扉がついた,下から上にぱかって開けるタイプの下駄箱!があって,とっても素敵な場所でした。笑 劇団員や研究員の方の下駄箱なのかなー。

せっかくなので高校の部活の同期と一緒に行ったのだけど,終演後,「ねぇねぇ,私達がやりたかったのってこういうことじゃなかった?」って切り出してみたら,『あ!わかるー!』って言ってもらえました。プロの劇団のレベルになんて到底届かないけど,なんとなく私達が現役に追っていたのってこういうものだったなぁ~と,超おこがましいのですが再認しました。こんな重みと厚みのある作品,高校生がやるなんてとてもじゃないけど無理!ということも実感したけれど,顧問がこれをやりたいと言っていた意味がわかるような気がしました。

やっぱりアトリエ公演…というか,自分達のホームでお芝居できるっていいなぁ!と思いました。舞台の使い方とか,たっぷりの照明とか,吊りものとか。そう。照明とかいろーんな種類があってびっくりしました。真下を向いてる謎の機械もあって,「あれ何?」と連れと話していたら,劇中ウィィーンって動いて活躍してました。照明でした。笑

そしてお芝居の中身。歴史ある正統派な劇団のお芝居を堪能することができました。最近は高校演劇を観ることが多かったですが,プロの発声で耳が酔いました。力強くてクリアで,スパーンと通る声。歌も多めだったので,本当に魅了されました。そう。歌とか超かっこよかったです。鮮やかとか,スマートなお芝居とかって,ああいう舞台のことを言うんだろうな。基本的にさら舞台なのだけど,布とか光とかで空間を仕切ったり場を作ったりしていて,シンプルだからこそ俳優さん達の力に圧倒されました。声で効果音を出すのとか,私すごい好き!

さっき“高校生がやるなんてとてもじゃないけど…”って書きましたが,エイハブ船長,ですよね…。やっぱり。これは本当に年を重ねて奥深さを出せる俳優さんじゃないとできない!夜に船の乗組員が雑魚寝していて,エイハブが上をコツーンコツーンと歩いているところとか,静寂が舞台のごちそうというか,私達も思わず息を殺さないといけないような気持ちになりました。そして彼の語り口から,大きさも見た目も想像できない存在のモビィ・ディックが想像できた気も。船長さん,怖すごかったー!

マジメまじめだけではなくて,「くじらクン」が出てきたときは(まじか!)って思いました。笑 あの短時間で鯨に詳しくなれたような気がします。笑
この公演のあとにはポストトークもあったのだけど,それによると原作の『白鯨』にも「鯨学」という章があるようです。こんなにポップに仕立て上げちゃうなんて!脚本の力?演出の力??どっちかかもしれないし両方かもしれないけど,面白かったです。

このお芝居を観ながら,もちろん坂手洋二作の『くじらの墓標』を思い出したし,触れてはいけないところへ踏み込もうとする人間のスレスレのところを感じたような気がしました。『もののけ姫』のシシ神退治(夫の敵を討ちに行くエボシ様)もこんな感じなのかな。

軽やかに展開していくのに濃密で重厚な舞台でした。同期と観られたことも含めて,かなり満足な観劇になりました。この作品をモチーフにした映画が1月に公開されるようなので,観てみたいななんて思います。

Sunday, December 13, 2015

映画『orange』

◇STAFF
監督:橋本光二郎
原作:高野苺
音楽:大友良英

◇CAST
土屋太鳳/山崎賢人/竜星涼/山崎紘菜/桜田通/清水くるみ/鶴見辰吾/真野恵里菜/森口瑤子/草村礼子

製作国:日本
公開:2015年
上映時間:139分

(2015.12.13 劇場で鑑賞)

もともとこの日は地元(松本)の友達と3人で会う予定だったのですが,そのうちの1人の都合が悪くなってしまって。でもせっかく仕事の予定をつけて空けた日なので,地元にまつわることを!と思い,もう1人と一緒に『orange』を観ることにしました。

映画化が発表になる少し前にこの作品を知りました。ある日普通に東京の本屋さんをぷらぷらしていると,明らかに松本城がバックになっている表紙の少女漫画の単行本を見つけまして。それが『orange』4巻でした。1~3巻も買って,一気に読みました。この物語の舞台は松本で,中でも蟻ヶ崎とか沢村とかの地名が出てくるのだけど,私は松本に住んでいた頃まさにそのエリアにいたので,うきゃーっと思って読んでしまいました。

あと,もう一つうきゃーっとなったのは,現在の菜穂が26歳だということ。
読んだ当時ドンピシャリで私も26だったので,(これ私のための漫画!?)と思っちゃうくらいでした。笑
地元が舞台の映画なら,『日本の黒い夏 冤罪』とか『神様のカルテ』とか観たことあったり,『さよなら,クロ』とか知ってたのですが,そういえば漫画ってなかったかもなぁ。そもそもこの3作ってときめききゅーん!というとは全然違うジャンルなのでね…。「なかよし」と「りぼん」で大人になった私なので,やっぱり少女漫画は好きなようです。

そして何よりオール長野県ロケだというではありませんか!
松本でロケもやってるとは知っていたけど,本当に100%長野県だなんて!すごーい。
城山とかアルプス公園とか,私が小さい頃から慣れ親しんでいる場所はもちろん,女鳥羽川とか縄手とか,あがたの森とか弘法山とか田川とか明科とか!(旧飯田工業高校?は遠くて縁なく…。)あのあたりを綺麗に撮ってくれて,ありがとうございますという感じです。笑
田川を出るとあがたの森に通じたり,明科のグラウンドを出ると田川の中庭に通じたり…というところは軽く違和感でしたが。笑 ほんと,綺麗に撮ってもらえてよかったねぇ…。親心です。もはや。

キャストが発表されて,朝ドラの『まれ』を観ていた私としては土屋太鳳×山﨑賢人のカップル再び…と知り,安堵安堵でした…。菜穂は誰がやるんだ!適当なひとはだめだ!と思っていたので,この二人ならOKかなと。主役はこの女優ではないか…みたいな情報もネットでいろいろ出ていたけど,高校生役も26歳の姿も演じるとなると,若くてかわいいだけじゃだめなのでね…。太鳳ちゃんだと少しほんわりしすぎている気もしたけど,映画が始まると全然気にならなかったです。内気な女の子が丁寧に描かれていてよかったなぁ。
ちなみにアズは,私の中では高畑充希ちゃんが良かった!と思ったのだけど,観てみると清水くるみちゃんが原作ぴったりでびっくり!太鳳ちゃん賢人くん以外ほぼ知らないキャストさんだったので,逆に先入観なしで観られてよかったです。あと今回の収穫として,須和役の竜星涼くんが超絶カッコイイということがわかりました!(役柄も含めてだけど!)今後彼に注目していきたいと思います☆

翔のママは情緒不安定なひとだけど,そこに森口さん持ってくるのもドンピシャリだったー…。『八日目の蝉』でも恵理菜ちゃんのママとして良い味出してたのが印象的だったので,わーきたきた!って思いながら観てました。笑
翔母のムービーのシーンは静かに号泣でしたよウフフ…。

なんかもう話としては切なくて,救えたけれど結局救えてなくて,最後の5人の弘法山のシーンとかもぼたぼた泣いてしまいました。あぁぁ。(ほら私,叶わなかったことが叶った風の場面に弱いから…。笑)
もううまく言葉にはできないけど,切なくて胸をくすぐる映画でした。

はっ!あともう一つ切ないポイントとしては,非常に個人的な話ですが,(こんな青春なかった…!)ということ。笑
私も約10年前は高校生だったはずなのに!クラスの友達と一緒に帰るとか一度もなかったんだけど!!!
朝は1時間目の授業の50分前から朝練だったし,朝練係だったから授業が始まる2,3分前に教室に滑り込んでたし,放課後も18時に部活が終わって1時間とか4時間とか平気で居残ってたからーーーーー!!!!!だから昇降口で「おはよう」とか「バイバイ」とかあいさつなんてまともにしたことないよこんな青春なかったようわぁぁぁぁあああんヽ(;∇;)ノ←そしてこれを高1から高3の12月まで続ける。そして1月から始まる自由登校。
放課後縄手で「ふるさと」のたい焼きをはふはふしたい人生だった…。笑
高校生って本当にキラキラした素敵な時間ですね…。あ。でも,私は,私の高校3年間は,とても満足です。念のため。笑

という,キュンキュンしたりしゅんしゅんしたり,心がとても搔き乱される,素敵な映画でした。(ほめてる)
DVDとかほしくなっちゃいますね。かなしくなった時に観返したくなるような。そんな,そんな映画でした。

Thursday, December 10, 2015

KAKUTA 第26回公演『痕跡〈あとあと〉』

(KAKUTA公式webサイトより)

@シアタートラム

作・演出:桑原裕子
出演:成清正紀/若狭勝也/高山奈央子/佐賀野雅和/四浦麻希/異儀田夏葉/多田香織/桑原裕子/斉藤とも子/川隅美慎/辰巳智秋/大神拓哉/松村武

人生2度目のKAKUTA。この作品は初演時,青山円形劇場でやっていて,人気のある公演だということはTwitterでひっそり知っていました。なぜ観に行かなかったのか…。もう二度と上演できない場所なのに。悔やまれます。悔やんでました。

で!も!

再演!再演!!気になっていた作品の,再演!!!劇団20周年の記念公演にこれを持ってくるということは,間違いない作品に間違いない!

ということで,チケットを確保して観に行ってきました。ストーリーも含めてほっとんど知識がないまま観ました。挟み込まれているパンフレットもぱらっと見て登場人物は押さえておきたいと思ったけど,意外とたくさんいるしついていけるかなぁ~と思っていたんですが,この世界にぐいぐい引き込まれました。

家族がほしいひと達の,家族を維持したいひと達の,家族を取り戻したいひと達の,日常と非日常の物語。

様々な関係の人達がわさわさ出てくるのだけど,これがどう関わって,絡んでいくんだろうとドキドキしながら観ていました。途中からもしやもしやと思ったものが的中したときは,何とも言えない気持ちに。

永住権を求めて偽装の結婚をする中国籍の女の子とか,偽名を使って内縁の妻と共にさらってきた子どもを育てるとか,とってもぞわぞわしました。その設定にぞわぞわしたというよりは,「それ」が彼・彼女の日常であることにぞわぞわしました。
私は昔から,(実は私は両親の本当の子どもじゃないのかもしれない)と空想することがよくありました。別に両親に怪しいところがあるとかそういうことではないけど,なんとなく考えることがあるのです。最近自分の顔が母親や伯母や祖父(!)に似てきたな~と感じることが多々あるので,おそらくちゃんと実子だとは思うんですが,それでも「もしかしたら」という可能性はあるのであって。もし,そのもしかしたらが真実であっても,両親がその真実を教えてくれない限り,私の日常は日常として在り続けるのだと思います。生きていくとは,ぞわぞわをぞわぞわとして感じさせないくらい,日常を日常として生活していくこと。そういうことなのかなと,この作品を通して思いました。

だからその日常が壊れる瞬間は,とても胸が痛みました。今まで育ててきた息子を家から追い出す桑原さんとか,戸籍上の旦那にめちゃめちゃにされた中国の女の子(役名がわからない!)とか,すっごいヒリヒリしました。お芝居としては過度じゃないのに感情を揺さぶられて揺さぶられて,桑原さんの力を実感しました。多分その日常が壊れる瞬間を表す究極のせりふとしては,「どうして黙っててくれなかったの。」みたいなせりふ。あれかな…。

あと,舞台セットが軽やかで素敵でした!キャスター付きの台×2(二つ合わせると机になったり椅子になったり)とか,おおおってなりました。円形劇場で上演したことを思わせるような装置は,登場人物の思い出の品で埋め尽くされているようで,過ぎた時間を物を通して感じさせてくれるみたいでした。下手は下に階段がつながってるし,高低差のある舞台ってそれだけで見応えあるなぁ。
でもってオープニングの映像とかタイトルロールとか,床に投映するのがカッコイイ!タイトルの『痕跡』が出てきた時とか,いいな!って思いました。笑

重苦しいことを描いているのに,最後の軽やかな感じは斉藤とも子さんの魅力だなーと思います。息子に気づいた母は,あの後どうするんだろう。想像すると決してハッピーエンドではないのかもしれないけど,この先も物語が続くような気がしてしまいました。あと黄色いカッパの男の子が,表情見えない感じがもどかしくてよかった!

チラシのイラストも素敵だったので,終演後クリアファイルを買っちゃいました♡若狭さんのサイン入りでした♡大切に使いたいと思います!そして私,『秘を以て成立とす』の時から薄々感じてましたけど,多分おそらく確実に,KAKUTAにハマりました。これから観劇ペースを上げていけたらと思います!

Sunday, December 6, 2015

第9回塩尻市民演劇フェスティバル 長野県塩尻志学館高校演劇部『ひさしの星』

(第9回塩尻市民演劇フェスティバルチラシより)

@塩尻市レザンホール

作:たかのけんじ
出演:長野県塩尻志学館高校演劇部

今回もわざわざ東京からレザンまでおでかけしてしまった私ですが,行こうと思った理由の一つがたかの先生の新作を拝めるということでした~。私が高校生で現役バリバリだった頃の顧問の先生達といえば,今は他の地区に異動されているか管理職になられているか,中信にいらしても顧問はされていないのかな?みたいな感じで,私の中ではたかの先生もそういった先生のお一人だったのです。昨年までは。
しかし!どうやら志学館に異動されたようで!久々に「たかのけんじ」の作品を今年の地区で拝めたのです!短めのお芝居だけど,生徒さん達もたかの作品についていこうと奮闘しているところが観られて良かったなーと思っていたのです。しかも地区大会の時点で,1ヵ月後に同じ作品で自主公演をやると決めてチラシも作っていたから,超精力的。
その自主公演から1ヵ月で新しい作品作っちゃうって,どんだけやる気があるんですか…。

そう。先生も部員の皆さんもやる気があることはすごーく伝わってきました。
観ていて,かつて美須々で(豊科?でもかな?)上演されていた水前寺清子をモチーフにした『民子のマーチ』を思い出しました。コンパクトな舞台のつくり(星のモチーフがある水色の布がどこかの国旗のようだった…。あとそこに一枚布をぴらってやるだけでパリになるとか面白かった。)で,ご年配の方が集まる場所なんかで巡回して公演しそうだな~って。(坂本九が題材な時点で,私より上の年齢の方を狙っている舞台だよなって思います。笑)でもって,このレザンの公演だけで終わるのは絶対もったいない!ぜひ作り込んでもらって,もう一度観てみたいなと思います。

ストーリーとしては坂本九の生涯を追う…という感じ。ストーリーテラーがいて,それとともに舞台を回していく感じ。初めて知る情報も多くて,なんだか勉強になりました。笑
出演しているのは全員女の子なのですが,カツラをつけて九を演じたというところがまずすごい!本気さが見えました。九役の方はタッパもあるし舞台映えする方だな~。ただ生歌となると,ひゃーどきどき!となってしまうところも多くて,これからのトレーニングに期待したいです。九役の方に限らず,志学館の皆さん全体の発声は気になったかもです。会場も大きかったけど,もともとの大きさがもう少し…というところで,体の芯から出せるようになると安定するし音域も多少広がるんだろうなと思います。

あとあと。坂本九を語る上で御巣鷹山の事故は外せないと思うんですが,そのシーンが燐光群『CVR』を連想させました。あぁー。ドキドキするシーンだった。

やっぱり前回の『ホッカイロ女』で活躍していた女役のお二人が今回も舞台を引っ張っているな~と感じました。力のある役者さんですね。何年生の方かわかりませんが,伸びしろもありそうで今後が楽しみです。

思ったことぽぽぽーんって書いちゃったので,まとまりがなくてすみません。
たかの先生体制の志学館が予想以上にモチベーション高くて,良いな良いなー。松本の高校のいけいけごーごー感とは違う感じで,志学館や田川も存在感を出していってほしいなと個人的に思ってます。笑
志学館のみなさん,お疲れ様でしたー。

第9回塩尻市民演劇フェスティバル 長野県田川高校演劇部『TDC』

(第9回塩尻市民演劇フェスティバルチラシより。)(このチラシデザイン,素敵だと思ったのにイベントが終わったら早々に塩尻市のwebサイトから消されてしまった…。ので手持ちのチラシをスキャン。)

@塩尻市レザンホール

作:如月ジロー
出演:長野県田川高校演劇部

高校演劇の発表の舞台といえば主に文化祭と地区大会。あとはカンパニー側が積極的に外に出ていかないと一般のひとが観られる機会ってあまり多くないと思うんですが,田川や志学館は毎年頑張ってこの枠に出ていて,大会みたいに必要以上に肩肘張らずに,でもホールで公演できるっていいなぁ~と観ている側としては思っています。
あとお隣の松本と比べたら学校の数も演劇やってるカンパニーも少ないとは思うんですが,塩尻市がこの企画をやっていることに意義があると思っています!笑

今回の田川はなんとお芝居仲間(?)の方から脚本をプレゼントされたみたいです。すごーい。大人と高校の演劇部って,ただ活動してたら接点持つのってなかなか難しいと思うので,このコラボにはびっくりしました。現代の田川の皆さんは「TDC」って称してるみたいで(部のTシャツ?パーカーとか?がそういう表記),今回のタイトルはそのまんま!という感じなので,作者の方の愛がこもっているタイトルだなーと思います。

弱小の演劇同好会が地区大会優勝を目指すという,ストーリーとしてはとってもとってもベタな内容なのですが,思い返すと田川が高校生をやっているお芝居って全ッ然観たことがなくて,それこそ私の中では2002年くらいまで遡るんじゃという感じで,かなり新鮮でした。

あと副顧問の先生が顧問役で出てきたり,田川の一個前のカンパニーが一瞬出演するあたりなんかは,自主公演というか大会じゃない公演ならではという感じで,観ていて楽しかったです。(確か大会も顧問の先生出ていいと思うんですけど,あんなにがっつり出るのか!って。笑)

でも観ていて惜しいなーと思ったり,うーんと感じるところもあったので,そこの話を。

惜しいなーと思ったのは舞台の使い方。場面が屋上だったり部室だったりどこかの道で,そのたび結構しっかり暗転して場面転換してたんですが,あそこはもうちょっとすっきりコンパクトにできたように思います。特に道のところ。勧誘のチラシを配ったり不良に絡まれるところは紗幕?かな?あれを下してその手前をアクティングエリアにしていたと思うんですが,あそこまでしなくてもサイドからSSで照らして道っぽくしてもいいんじゃないかなーと個人的には思いました。後ろの転換が見えてしまうといえば見えてしまうけど,光の外だから許容範囲では…とか。でも,紗幕とか舞台のものを使おうという意欲が感じられたのは(おぉっ!)と思いました。

うーんと感じたのは,脚本のこと。なんか,部員達がわちゃわちゃ話していて都合が悪くなるとその場を離れることしか対処スキルがない人達になっていたように見えたのは私だけですか!?同じ人が繰り返す行動ならともかく,結構みんなそれやってたので,途中から(またか!このひともか!)って思うようになってきました。笑
状況がマズくなっても,ここにいたくないわーって思っても,普段の日常ってそんなにホイホイ退室しないと思うので,踏みとどまる勇気というか,もう少し違う対処も見えたらよかったなと思います。(逃げることしか対処できない集団の話だとしたら,それまでなのだけど…。←多分違いますよね…。)
あと,ゴンザレスは何だったんだという単純な疑問も残りました。笑

あっ,でもでも,ここ最近(昨年とか今年とか)は演出がいるのかなと感じるような仕上がりの舞台が多かった田川なのですが,今回のパンフレットにはついに演出さんのクレジットがあったので安心しましたー。やっぱり客観的に引いて観たり,全体の舵の方針を決めるひとがいないとお芝居って進まないと思うので。演出専門でなくてももちろん良いと思うので,毎回ぜひ演出さんをつけてほしいなぁと思います。

そしてそして私服校なのに女子のスカートがちゃんと揃っていたのも頑張ったとこなんだろうなと思いました。衣装にこだわる部分は『もっと泣いてよフラッパー』あたりで感じられたので,今回も続いていて良かったです。

夏に拝見した方々がこの舞台ではいらっしゃらないのを改めて確認して,世代交代ってこういうことか~としみじみ思いました。(今回の発見だと,ストレートロングでSNSのいやがらせを受けてる女の子が素敵でした~。ああいう気だるそうに見える子がちゃんと部活やりたいって,個人的に素敵。笑)
またきっと春に向けて新しい体制になっていくのだろうと思いますが,遠くから見守っていけたらと思います。
田川のみなさん,お疲れさまでした。ありがとうございましたー。

Saturday, December 5, 2015

フェスティバル/トーキョー15『ブルーシート』

(フェスティバル/トーキョー15公式webサイトより)

@豊島区 旧第十中学校 グラウンド

作・演出:飴屋法水
出演:福島県立いわき総合高校卒業生 他

今年の1月,千葉県は八千代市。高校演劇の関東大会で,私はこの作品と出会いました。
静岡理工科大学星陵高校演劇部の皆さんが上演していた『ブルーシート』。うまく言語化できないのだけれど,一言で表すなら,「とんでもないものを観てしまった」。そう思いました。終演してからしばらくは,席を立つことができませんでした。(その時の感想はこちら。)

この作品は,福島にある県立いわき総合高校の芸術表現系列を専攻している生徒10人によるもので,2013年に高校のグラウンドで上演されたものだということを,後になって知りました。どうやら登場人物名は全て,実際の生徒さんのお名前。
授業に演劇の科目があって,授業でお芝居をつくる。総合学科ならではの学びだなぁと思いました。飴屋法水さんが一緒に作っていたなんて。すごいなぁ。そんなことも思っていました。

星陵の『ブルーシート』を観て約半年後。今年のフェスティバル/トーキョーのラインナップを知って,衝撃でした。まさかの,再演。しかも,当時の,オリジナルキャストで。
これは絶対に絶対に,絶対に行かなきゃいけない!
ということで,ばしっとチケットを取り,豊島区の廃校へお出かけしてきたのでした。


なんかもう,入場する時点で泣きそうでした。笑
席に着いたら,背景のイチョウがとてもきれいでした。12月なのにびっくりするくらい暑くて。そう,肌が焼けそうなくらい太陽が輝いて,どかっと晴れていました。パーフェクトブルーってこういう空のことなんでしょうか。東京でこんなに空が広い場所,久々に来たかもしれません。

校庭に並べられた椅子,美術室にありそうな額縁,転がっているボール,奥には廃車になった青い車。彼・彼女が見ていたかもしれない風景。
その地続きに座っていると,なんだか不思議な感覚。

どう始まるのかなって思っていたら,2013年初演の,当時のいわき総合高校の校長先生のあいさつ映像からでした。改めて,この学校がどんなものだったのか,このお芝居がどんな生徒達によってつくられたのか,確かめてからお芝居に入ることができたなと思います。

私は,芝居は嘘の塊だと思っていて,例外があるなら串田和美さんのつくる作品だって思っているのです。脚本から芝居を立ち上げるんじゃなく,その場にいるそのひとそのものから感情が出て,心の動きが生まれて,芝居として立ち上がってくる。それが串田さんの芝居。
今回の『ブルーシート』も,これと似た感覚がありました。「芝居」の語源は,地べたに座って演じ手を見ることって言われているけど,もしそうなのだとしたら,グラウンドに置かれた席から見つめるこの作品こそ,私にとって生まれて初めて観た「芝居」なのかもしれない。そんなふうに思いました。
でもって,せりふもト書きもあるけれど,このお芝居は行間が埋まっている感じがすごくして。その行間を埋めているものは,テキストとして書かれているせりふやト書きによる身体の動きに反応する生身の人間なのだということがとってもよく感じられました。椅子取りゲームとか,「選挙に行ったひとー,お酒飲んでるひとー」とか当てはまる人探しのところとか…。笑

終演してから戯曲を買って,読みました。
ほぼ戯曲に役名として名前が載っているオリジナルキャストさんが出演されていましたが,今回は出られなかったひと,今回新しく出演しているひとがいて,時の流れを感じました。
ヒッチーの妹さん…なのかな?まさかのきょうだいで出演されている方もいらして,新鮮でした。

彼らが見ていたもの,感じていたこと,考えていたこと,が,言葉や,表情や,体の症状や,動きから,苦しいほど生々しく,苦しいほど生き生きと伝わってきて,なんでもないシーンで泣いてしまいました。3回くらい。感動したとか,切ないとか,そういうふうに名付けられるものじゃなくて,圧で。静かに打ち寄せる,圧で,私の涙腺が圧迫されたのだと思います。

あと,自由で。舞台がグラウンドだから,びっくりするくらい自由で。
途中,あんなに奥のところでキャッチボールとか始めちゃうし。ラストも,私達観客が絶対に届かないところまで,彼らは自由に行けてしまう。最後,下手(と呼んで良いのだろうか。)から全員で叫んでいた,「おーい!おーい!お前は人間か?」がとても愛おしくて,絶望を少し上回る希望が見えたような気がしました。


飴屋さんの携わっている作品で,今年の夏にマームとジプシーの『cocoon』を観ていました。少女たちの,戦争のお話。
飴屋さんは,戦争も,津波も,災害も,すべて包みこんでくれる。『cocoon』と今回の作品を合わせて,そう思いました。

私は,私の見たものを忘れることができるけど,私は,私の見たものを覚えておきたい。
観ることができて,ほんとうに良かった。きっとこの先,ふとした瞬間に思い出す。そんな舞台でした。