Friday, December 18, 2015

文学座 12月アトリエの会『 白鯨-Moby-Dick- 』

(文学座公式webサイトより)

@信濃町文学座アトリエ

作:ハーマン・メルヴィル 
脚本:セバスチャン・アーメスト 
訳:小田島恒志 
演出:高橋正徳 

出演:小林勝也/中村彰男/沢田冬樹/櫻井章喜/石橋徹郎/川辺邦弘/上川路啓志/藤側宏大/釆澤靖起/鈴木亜希子

昔々,私が高校生のとき。当時の顧問の先生がこの作品をやりたいと言っていたのを覚えています。(とか言って全然違ったらどうしよう。笑)あと,高校生のときよく観に行っていた燐光群がかつてこの作品をやっていたというのも,うっすーら記憶にあったのでした。

なのであの文学座が『白鯨』を上演すると知り,これは観に行かなくては!と思ったのでした。

初の文学座。信濃町からてってけ走っていったのですが,慶応の病院があったり大きな建物が多くて,新宿の歴史を感じるようなエリアでした…。アトリエが会場だったのですが,入ってびっくり!げ,下駄箱がある!中学校にあったやつみたいな,木の扉がついた,下から上にぱかって開けるタイプの下駄箱!があって,とっても素敵な場所でした。笑 劇団員や研究員の方の下駄箱なのかなー。

せっかくなので高校の部活の同期と一緒に行ったのだけど,終演後,「ねぇねぇ,私達がやりたかったのってこういうことじゃなかった?」って切り出してみたら,『あ!わかるー!』って言ってもらえました。プロの劇団のレベルになんて到底届かないけど,なんとなく私達が現役に追っていたのってこういうものだったなぁ~と,超おこがましいのですが再認しました。こんな重みと厚みのある作品,高校生がやるなんてとてもじゃないけど無理!ということも実感したけれど,顧問がこれをやりたいと言っていた意味がわかるような気がしました。

やっぱりアトリエ公演…というか,自分達のホームでお芝居できるっていいなぁ!と思いました。舞台の使い方とか,たっぷりの照明とか,吊りものとか。そう。照明とかいろーんな種類があってびっくりしました。真下を向いてる謎の機械もあって,「あれ何?」と連れと話していたら,劇中ウィィーンって動いて活躍してました。照明でした。笑

そしてお芝居の中身。歴史ある正統派な劇団のお芝居を堪能することができました。最近は高校演劇を観ることが多かったですが,プロの発声で耳が酔いました。力強くてクリアで,スパーンと通る声。歌も多めだったので,本当に魅了されました。そう。歌とか超かっこよかったです。鮮やかとか,スマートなお芝居とかって,ああいう舞台のことを言うんだろうな。基本的にさら舞台なのだけど,布とか光とかで空間を仕切ったり場を作ったりしていて,シンプルだからこそ俳優さん達の力に圧倒されました。声で効果音を出すのとか,私すごい好き!

さっき“高校生がやるなんてとてもじゃないけど…”って書きましたが,エイハブ船長,ですよね…。やっぱり。これは本当に年を重ねて奥深さを出せる俳優さんじゃないとできない!夜に船の乗組員が雑魚寝していて,エイハブが上をコツーンコツーンと歩いているところとか,静寂が舞台のごちそうというか,私達も思わず息を殺さないといけないような気持ちになりました。そして彼の語り口から,大きさも見た目も想像できない存在のモビィ・ディックが想像できた気も。船長さん,怖すごかったー!

マジメまじめだけではなくて,「くじらクン」が出てきたときは(まじか!)って思いました。笑 あの短時間で鯨に詳しくなれたような気がします。笑
この公演のあとにはポストトークもあったのだけど,それによると原作の『白鯨』にも「鯨学」という章があるようです。こんなにポップに仕立て上げちゃうなんて!脚本の力?演出の力??どっちかかもしれないし両方かもしれないけど,面白かったです。

このお芝居を観ながら,もちろん坂手洋二作の『くじらの墓標』を思い出したし,触れてはいけないところへ踏み込もうとする人間のスレスレのところを感じたような気がしました。『もののけ姫』のシシ神退治(夫の敵を討ちに行くエボシ様)もこんな感じなのかな。

軽やかに展開していくのに濃密で重厚な舞台でした。同期と観られたことも含めて,かなり満足な観劇になりました。この作品をモチーフにした映画が1月に公開されるようなので,観てみたいななんて思います。

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