Sunday, September 18, 2016

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部『イティテンディア』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:郷原玲
出演:長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部

観劇直後,私が思ったことはただ一つ。(どうぞ関東へ行ってらっしゃいまし…。) でした。笑

私の,美須々で上演されている郷原先生作品の感想を過去にお読みくださった方はお気づきになられているかと思いますが,私どの作品もストレートにはフィットしなかったんです。それがストーリーなのか設定なのか作品選びなのかは毎回違いましたが,なんか (んん?) と感じるところが必ずあって。でも今回そういうのが全くなかったんです。なぜか。もうやりたいことをご自由にどうぞと思ってスルーしてる訳でもなく。シンプルなものにシンプルな方法で迫れば,案外ストンと落ちるんだなと思いました。(哲学の先生がアイデンティティを扱う時点で興味深かった…。) 2014年から観た美須々の作品の中では,一番よかったなぁ。 

幕が上がった瞬間,ぱっと舞台を観て, (あっ,りょーこちゃんだ) って思いました。衣装も立ち位置も,なんとなくりょーこちゃんを思い出すような感じでした。でも,もちろん『B面』ではなくて。そして1時間。2014年に当時1年生だった彼女達が,2年経って演技の幅を広げ,たくさんの後輩に囲まれ,凝ったセットを組んで大きく動いている姿を見ていると,時の流れや「高校生」という時間の短さを感じました。なんとも言葉に表しがたい,親戚のおばちゃんのような気持ちです。彼女達と郷原先生の美須々での3年間の集大成を観られたなと思います。同時に,郷原先生お芝居もこの子達のこと大好きなんだなーと実感しました。
以前は, (あの子達ああいう演技以外できなくなっちゃうんじゃないかな~) と思いながら観ていたこともあったんです。役柄も,見せ方も。そりゃ同じ役者さんがやるのだから,そう見えるのはある意味当然なのかもしれないけど,それにしても別作品なのにお芝居の仕方としては同系すぎるところがあって。でも今回の作品を観ていて, (あぁ,もうそこを徹底的に伸ばすのもアリなんだなぁ) と思いました。どの部員さんも5教科を万遍なくできるのも大事かもしれないけれど,得意な3教科をみんなが持ち寄れば,結果強いカンパニーになるんだなと。得意なものを得意ですと見せつけられるのも,やられた感があっていいですね。笑

そう。幕が上がった瞬間, (りょーこちゃんだー) とも思ったんですけど,やっぱあの舞台装置にはびっくりでした。すごいぞあれ。どーやって作ってるんだろう~。木曽青峰の『深い河』もおおっと思ったんですけど,美須々はそれ以上の傾斜だった…。しかもあれがぐわっと開いちゃうから,面白かった~。魅せる舞台装置としてかなり成功してる気がする!
あと,後ろに2本幕があるなーとは思っていたんですが,まさかの投映に使われるとは…。文字が出てきた時,昨年観たKERA・MAPの『グッドバイ』を思い出しました。いいですね…。私はあのフォントも好きです…。ああいうことする学校って,長野県でいつ出てきてくれるんだろうと思ってたんですが,やっぱここでしたね…。
装置関係で言うと,おばあちゃんがひっくり返すちゃぶ台がたまらん。なんだあれ。愉快ですね。

あとあと,お芝居観てて, (彗星×入れ替わりって,最近そういう映画観たな~) って途中で気づきました。笑 いや絶対偶然なんでしょうけど。でもタイムリーだったんで面白かったです(´ω`)

あとあとあと,これで郷原先生の作品は『B面』と『木の葉に書いた歌』と『話半分』『あくしょん!』に続いて5作目になるのですが,徐々に郷原作品あるあるが掴めてきた気がします。笑
不思議な力を持ってるおじいちゃんおばあちゃんとか,親とうまく意思疎通が図れない主人公とか。コミュニケーションとディスコミュニケーションが常に作品のどこかにある気がして,でもそれって私達の人生そのものだよねと思うと,普遍的なことをエンターテインメントに仕立て上げて伝えられるこの人の力ってすごいなーなんて感じます。←コミュニケーションとディスコミュニケーションなんてお芝居では当然じゃんと言えばそうなんですけど,ストーリーの中にそれがあるというよりはそれそのものが題材というか。うまく言えない…。

でもって,この作品の中で言うと「オシャレしようと思ったけどやめました」「私はいつでも私から遠い」みたいなシーンが印象的でした~。女の子だからこそああいうせりふだと思うんですけど,なんとなく作者の性別と登場人物の性別が違うから書けたような部分な気もして。ああいうところって誰もが通るけど,どっぷり振り返るってちょっと厳しい気もするから。そこがアイデンティティを確立する時期ともどんかぶりな訳なので,避けて通れないとは思うのだけど。もしあそこに出てくるメインの子が男の子だったら,郷原先生はどんなせりふを書くんだろう。なんてことも思いました。

いろいろ書きましたが,久しぶりに高校演劇界でエンターテインメントだと感じるお芝居を観た気がします。
夏に『話半分』をやると知った時は,なんで茅野がやった半年後にこれ持ってくるんだろう。すごい思い入れがあるのかなーと思っていたんですが,観た直後は正直とりあえず感を感じてしまったのですね。ちょっとがっかりした瞬間もあったのが事実で。でも,このためだったんですね。県大会でもこの作品ではじけてきてほしいです。笑

美須々のみなさん,お疲れさまでしたー。

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県松本県ヶ丘高校演劇部『WITHOUT 保護者!』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:ろくみつるた
潤色:長野県松本県ヶ丘高校演劇部
出演:長野県松本県ヶ丘高校演劇部

  • 一言で表すなら,健気な舞台。保護者に置いてきぼりにされたネグレクト4人きょうだいって言うと,映画『誰も知らない』を連想したんですが,全然違いました。セクシャルマイノリティと思春期の子の揺らぎが見られて,そういうものを題材に扱おうと思った県の皆さんがすごいなと純粋に思いました。
  • 健気と言うのは,4人で必死に場転してるあたりとか,日向と山浦先生の両立とか。笑  すごいがんばってましたね。でももう少し物理的に,使う間口を狭くしても良かったのかなと思います。去年の『三人そろえば』でも思ったかも…。
  • ただセクシャルマイノリティに対して音響さんが過剰に反応しすぎてるような気がしたのと,セキ先生は私と同業なだけに(うぐぐ…)となりました。そして超現実的なことというか重箱の隅をつつくようなことでアレですが,多分お父さんの帰宅日を今日にしたかったから逆算して個人面談が8月なのだと思いましたが,一般的には夏休み前が多いかなと。でもそれぞれのキャラが素敵な60分だった!練り直してもう一回観たい!

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県田川高校演劇部『トランプする?』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:幸撫弘子
出演:長野県田川高校演劇部

  • パンフレットに"物語もおもしろく目が離せない"って書いてあるから,もっとポップな話なのかと思いました。タイトルとかからしても。…が!タイトルとストーリー,内容と演出のギャップが激しすぎて,どう味わっていいかすんごい困った!というのが率直な感想です。結構しっかりどシリアス(の比重が大きい。)なのに衣装なんかはファンタジックで,うそうそーん!という感じでした。
  • でも巨大な本に挟まれるとか,最後に積むレンガが光るとか,やりたいことや見せたいことはわりかし明確なんですよね。だけどそこに行くまでがぼやっとしてしまった気がするのと,脚本に演じさせられている感が否めませんでした。悪い意味でせりふしか出してなくて,もっと…お父さんが帰ってきたら娘は声を上げて歓迎するだろうし,その他のシーンでも自然と出しちゃう声ってあると思うんですよね。そういうのがきれいに無くて,演じさせられている感。
  • メンバーをはじめとする資源にはものすごく恵まれている環境だと思うんです。ただ,プランが感じられない。責任持って舞台を客観的に見るひとがいないなと近年の田川を観ていると感じます。いい味持ってる部員さんが多そうなだけに,超もったいないです。今後に期待です。
  • また後日まとめ直します。

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県松本深志高校演劇部『杯中蛇影』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:九国光
出演:長野県松本深志高校演劇部

  • 昨年観客の私としては切ない思いで深志を観ていて,その後も『あくしょん!』と文化祭公演を拝見し,深志のお芝居への向き合い方やメンバーが少なくなることがなんとなくわかったので,地区大会はどうなるかな~と思っていたのです。「普通」に,「普通」に公演が打てていて,安心でした。
  • もしかしたら地区大会でオール男子のお芝居って初めてかもしれない!先月の全国大会とか,今年の1月に観た駒場高校の『ガンジス川を下る』以来かな。なんとなく学校のレベルも似てるので,『ガンジス川』の彼らのことを思い出しました。笑  でも彼らと今回の何が違うって,今回は既成ということ。男の子3人で60分ってそもそも既成脚本の数自体が厳しいのかな。彼らだったらなんとなく創作もアリな気がしたのだけど,あえての既成だったのかな。
  • 男子3人という,下手したらキャラ被りまくりになってしまうけど,タッパとか声でみんな独立していたので良かったかな。個人的には野田秀樹系ボイスの彼・レイクくんが気になりました。
  • また後日まとめ直します。

Saturday, September 17, 2016

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部『月華』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:高山拓海・長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部
出演:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部

  • 発声が抜群に良かった!所作や身体表現なんかも,おそらく今日一番。ちゃんとトレーニングしてる身体ってこういうもの…というところがきちんと感じられました。さすが蟻高という感じ。
  • 作品は,なんとなく日下部先生の『砂漠の情熱』を読み込みまくってるんだろうなと思いました。構成や展開共に,先生へのリスペクトを存分に感じられました。言い回しとかほんとに,似てる感じ。作者の高山くんがどこまで意識しているかは別として。
  • しかし!役者さんがうまいことはすごく伝わってくるのに,二人の距離感(関係性)の変化とか,情緒の揺れみたいなものがじっくり味わえなくて残念…!カグヤが2つの次元にいて,ついていくのがちょっと大変でした。んー。もう少しすっきり観られるとよかったなぁ。それでも,文化祭~地区大会で別作品を書いて仕上げちゃうあたりはすごい!
  • また後日まとめ直します。

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県穂高商業高校演劇部『志望理由書』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:いぐりんとその仲間達
潤色:長野県穂高商業高校演劇部
出演:長野県穂高商業高校演劇部

  • 昨年の『青春舞台2015』で本家のドキュメンタリーを観ていて,ストーリーも粗方把握していたので楽しみにしていました。そして下手にネット台本ではなく,きちんと作られた既成を選んでいるあたりにも穂商の力を感じました。
  • 大半は1年生さんみたいですが,逆にどなたが2年生さんなのかわかりませんでした。登場人物のキャラクターとキャストさん達がものすごく自然で,脚が痛いのは設定なのかキャストさんご自身の都合なのかわからないくらいでした。あとほめてるんですが,事務の室田さんは体型が良かった。リアリティありました。←見回りのところとかインパクトあった!おいしい!!
  • 裏表と前後のニット事件はご愛嬌。まさかの二人とも。笑
  • また後日まとめ直します。

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県明科高校演劇部『オレンジ色の世界』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:九国光
出演:長野県明科高校演劇部

  • おかえりなさい明科さん!一度出なくなってしまうと復帰って大変だと思うんですが,またお目にかかれて嬉しいです!一昨年の作品でも思いましたが,明科は男性役をきちんと男の方がやられているので,それだけで雰囲気が全然違いますよね。素敵です。
  • 下手の喫茶店パネルがオシャレでした~。色味とか好みでした。が,舞台セットの向きがとても残念!!!私はあれを180度回したところから観たかったです!みかこの表情,こうきの表情をもっと見たかった!あずさは自由に動けるひとなので,接客するときだけ背中向けるような配置でも良かったのかな~。
  • 時間軸が単純でないので,後半ちょっとついてくのが大変でした。いきなりファンタジーになってしまった感じ。そしてみかこの口調的に,こうきは死んでしまったのかと…。失恋どんべこみの話だったんですね…。
  • また後日まとめ直します。

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県豊科高校演劇部『夏の詩』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:遠野尚
潤色:長野県豊科高校演劇部
出演:長野県豊科高校演劇部

  • パンフレットに場転が多いと書いてあったけど,本当に多くてびっくり。そしてそれが全部必要な場転かと言うとそうじゃなかったと思います。多分がんばれば豊科が暗くした回数の1/4に押さえられる!遊んで→場転→遊び終わり…のシーンとか,普通に遊んでそのまま続けちゃえばいいのに!と思いました。もったいなかった…!
  • 衣装が良かったです。冬の重い感じと,夏の裸足のコントラストが。名前とリンクしているような夏の衣装の色も素敵だったな。←黒のキャミワンピは少し重かった気もするけど。 そして田舎の小学生の無垢な感じがキラキラしてて,懐かしい感じがしました。あの子達小2,3くらいかなー…。
  • 童の最後は,なんで降りてきてしまったんだー!(>_<)という感じ…。ラストなのに急いでる雰囲気で,あそこはたっぷり時間を取ってほしかったなと個人的に思いました。
  • また後日まとめ直します。

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県塩尻志学館高校演劇部『海の時代』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:たかのけんじ
出演:長野県塩尻志学館高校演劇部

  • 『海に流れる河』のオマージュかと思いきや2010年代版のそれでした。たかの先生が2004年に提出した卒論を,12年かけてジャーナルに載る論文に仕上げてきたような感覚です。21世紀に生きる私達にとって,9.11も3.11も避けては通れない歴史なのだとしみじみ。当時は若干眠くなって,ラストシーンとか「はて?」ってちょっとなったんですが,今回はカオリの絶望も悲しみも苦しみも,愛も,あそこに全部詰まっているのが感じられました。私も大人になりました。
  • 再演や練り直しの公演を観ると,私はオリジナル版がやっぱいいと思うタイプなのですが,今回の志学館のメンバーでのこの芝居の方が,04年度の美須々より断然良かったです。キャストに恵まれた感じ。
  • 今年の志学館の文化祭公演でも思いましたが,ビジュアルにこだわるのってやっぱり大事です。衣装も舞台装置も本当に丁寧でした。強いて言うのであれば,移植コーディネーターで赤のゴツいヒールはアウトだと思うのと,看護師さんの髪の毛はポニーテールではなくお団子が良いかと。
  • また後日まとめ直します。

Sunday, July 17, 2016

長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部『話半分』


@松本市ピカデリーホール

作:郷原玲
出演:長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部

高校演劇にお金を出したのは久しぶりです。
私にとって『話半分』は,長野県茅野高校演劇部が関東に持って行った作品。あれは結構衝撃だったのです。コンパクトなのに丁寧に作られていて,舞台装置なんかもハッとする瞬間があって。
それが昨年度のことだったので,そのすぐ後に本家本元というか作者の郷原先生がいる高校が手を出すとは。ご自分の作品ではあるけれど,すごい茅野に挑戦してきてるな~という印象が強かったです。なのでどうしても気になって気になって,観に行っちゃいました。お金出して。笑

ピカデリーという比較的小さなハコで,美須々はどう世界を立ち上げるんだろう。
と思っていたら,2月に同じ会場でやった『あくしょん!』を思わせるような演出でした。基本サラ舞台で,“場”を思わせるようなものは椅子,椅子,椅子。私も昔銃を使うシーンを作って,そりゃもう難しかったのですが,椅子のガタガタガタッてやつは感動しました。その手があったかーって!笑

でもやっぱり戦争モノって,いやこれは私が思うだけかもしれませんが,抽象的なセットだとちょっとインパクトに欠けるのかな。と。役者の演技だけでイマジネーションを刺激するには,戦争は少し大きな素材なのかも。なんて思いました。センターから椅子ガシャーンは衝撃的でしたが。

そして,一番大きく思ってしまったのは,地区大会のためのつなぎ感。うーん。なんだろう。作品自体はとってもしっかりしてるし,キャストさんも訓練を積んでいるのだけれど。舞台装置が派手だったら気合いが入ってるとか,派手じゃなかったら入ってないとか,そんなんでは決してないのだけど。
でもどこか,キャスティングも含めてそんなふうに仕上がっているように見えてしまったのです。そうでないとは思うのですが,すみません…。

でもって下ネタは躊躇なくやれる人でないと,そして男性役を男性がやらないと,なかなか盛り上がらないものですな…。勢いよくやってほしかったなぁ~と,大人としては思いました。笑

あと全然余談なのですが,前日の木曽青峰でも「弦楽のためのアダージョ」を聴いたばっかなので,デジャヴュ感満載でした。どっちの先生も音楽のご趣味が良いですよね。笑

Saturday, July 16, 2016

長野県木曽青峰高校演劇部 第8回蒼陵祭公演 遠藤周作『深い河』より

@長野県木曽青峰高校同窓会館

原作:遠藤周作
脚本:日下部英司
出演:長野県木曽青峰高校演劇部

パンフレットがないので記憶を頼りに書きたいと思います。そもそもタイトルやクレジットがこれでいいのかもよくわからない…。もし違ったらきっと誰かが教えてくれると思うので,それまでそのままにしておきたいと思いますー。

中信地区の文化祭2週目はこちらにお邪魔しました。だって演目がこれなんだもの。
私も高3の冬とかに,政経の時間に堂々と読んでたな,『深い河』…。←ダメ生徒
もうウィキペディアのアタマに書いてあるような,そんなことしか覚えてないけど。

(ちなみに私が宇多田ヒカルの曲の中で一番好きなのは,3rdアルバムの表題曲にもなっている『Deep River』。読んで聴くとじりじりくるよね。)

さて今回の話を…。
あ。そうそう。私木曽青峰に行くのは3回目なのですが,今までずっと体育館公演だったのに,初めての同窓会館公演!趣のある,とっても素敵な建物でした!が,「エアコンがある」って情報だったのに,開演すると切られてしまったので,途中から暑かった…。笑

木曽青峰に来ると思い出すのはやっぱり2014年に起きた南木曽の土砂災害。なのでこうしてきちんと公演が打てていることが素晴らしい!…と,改めて思います。音響もあるし!

そう。開演前の話になるんですが,じっと開演を待っていると,まるで演劇部の友達の鑑と言うべき生徒さんの会話が私の隣から聞こえてきました。

生徒さん1「まつもと市民芸術館って知ってる?」
生徒さん2「え。どこそこ。」
生徒さん1「松本駅からまっすぐ行ったところにあるんだけど。地区大会がそこであるの。プロの劇団とかもそこでお芝居やるんだよ。」
生徒さん2「へぇ~」
生徒さん1「私去年観に行ったんだけど,すごかったの~。今年も予定が合えば行こうかなーって思ってて。」
生徒さん2「そうなんだー」

…みたいな。生徒さん1…。なんていいこなの…。わざわざ木曽から芸術館に行くなんて…。そういう友達がいる木曽青峰,素敵…。

この日のお客さんとして,高校生の皆さんはもちろん,木曽青峰の先生かなって方が結構いらしていて,開演直前に部長さんがあいさつしているのを温かい雰囲気で聞いていました。この地域の人達というかこの空間というか,それがとっても受容的で,なんかすごいな…と思っちゃいました。うー,文章にすると全然うまく伝えられないな。でもなんか,地域性みたいなものを感じたのです!

さて今度こそお芝居の話を。
舞台を観てまず驚いたのが,八百屋舞台。でかいぞ!ただの黒じゃなくて,光沢のある黒で仕上げてたのでかなりインパクトある舞台でした。これ,まつ芸に持っていけるのかな…。(ついそういう現実的なこと考えてしまう。笑)そう,まつ芸の床も黒いから,まっくろくろな舞台になりそうだなぁ~。
じゃあ舞台セットの話をしてしまったので,この斜めが一番活きた&私のレーダーが反応したところを挙げると…そりゃもちろん,お金ぶちまけるところだよね!もうあれくらいやってほしい。硬貨が銀色だったので,舞台に映えたな。個人的に1円より50円とか100円くらいの音の方が好きだけど。笑
あー。もう一度ぶちまけるの見たかったな。(この記事,中信地区大会の日程確定後に書いてます…。)
でも逆に,斜めゆえに大変そうだな~と思ったのは,妻の病床のシーン。寝て起きてがあるから動きにくそうだった…。地区に向けて美しい所作が見られるといいなーと思いました。

あと今回面白いなーと思ったのが,冒頭やラスト,中盤で身体表現が入ること。日下部先生の作品(演出含む)では珍しい…って書こうとしたんですが,そうでもないか。でも久々に観た気がするな。冒頭とラストのあれ,私は嫌いじゃないです。全員ぴっちり揃えるんじゃなくて,あえてちょっとバラバラしてる感じが良かった。冒頭の方では気づいたら右手から左手に移っていたので,ラストでもう一回見えてよかったです。でも今回の文化祭公演では客席と舞台が近かったから5人一直線でよかったのかなと思ったのだけど,まつ芸に持って行ったらどう見えるのかな~。立ち位置とか変えてみてもいいのかなぁとも思ったり。
でもって中盤のブリッジや開脚は(おぉぉ…)と思いました。開脚で舞台がずれちゃったのが残念…。柔軟さは伝わって来たので,その前後も含めて滑らかにいけるとするする観られそうな気がしました。

役者さんのことについて書くと,やっぱり去年の『南吉』に出ていたメンバーが,強い!強いっていうか,なんだろう。伸びたし安定してるー!というのが,ものすごく伝わってきました。去年兵十をやっていた生徒さんなんか,すごく素敵な雰囲気。あの子の磯辺,引き込まれました。あと髪の毛が伸びてたというのもあるんだけど,去年祖母をやってた子がいることに気づくのにかなり時間がかかりました。笑 すいません…。こちらの生徒さんも安定感を感じました。高校生の1年って本当にあっという間だな…。(しみじみ)
あとは私からすると初めてのキャストさんだったんですが,妻役の方の雰囲気が良かったなぁ。付き過ぎない表情が何考えてるかわからなくて良かったです。(ほめてる。) 正直『深い河』を高校生にできるのか?とも思ったんですが,心の温度が落ち着いてるキャストさんだったので,なんか観れちゃいました。(ほめてる!)

そうそう。音楽のこと。「弦楽のためのアダージョ」を多用していて,昨年観た蜷川さんの舞台『NINAGAWA・マクベス』を思い出しました。私もこれ好きなのだけど,若干重い気もして。私だったらMax Richterの“On The Nature of Daylight”を流したい舞台だなと個人的に思いました。笑 (←ちなみにこの曲はアンドリュー・ゴールドバーグ演出の佐々木蔵之介主演『マクベス』で多用されてた曲。)

あとは衣装かな。今回は完成系の衣装ではなかったので,今後詰めると思うのですが…舞台が黒なので,何をどう合わせてくるのかな。作品的にコットンとか麻とかで攻めてくるのかな。しっかりめの素材で質感が出るといいなーなんて思いながら観てました。

あ。それ以上に脚本かな。こう,元の原作があってもゼロから何かを組み立てるにしても,起承転結というのはやっぱり意識する必要はあるだろうと思うのです。かっちりしてなくても,お芝居の中の物語が転がっていく様を追いかけたい。でもどこかこの話は…磯辺と妻に絞って書いている本だからというところもあると思うのですが,なんだか淡々と進み過ぎている感もあって,どこをどう味わえばいいか途中で迷ってしまう瞬間がありました。とりあえずその世界観に浸れたら,それはそれでいいのかもしれないけど。開演前の部長さんのあいさつでは,せりふ浸透率が7割くらい?という申告があったのでこちらもそのつもりで観たのですが,きちんと入ったバージョンで,脚本も少し手直しが入った状態で,もう一回観て味わいたいなと思った舞台でした。

本当に,高校生がこれやるってすごいわ…。私ももう一度原作読み直したくなりました。
中年の空虚感というか退廃的な感じとか,アラサーの傷つきとか,そういうものを高校生が出すってとってもムズカシイとは思うのだけど…でも,その挑戦作を観てみたいなと思うし,もう一度一緒に味わいたいなって気持ちもあります。地区までにどう深化するのかな。
木曽青峰の皆さん,お疲れさまでしたー。お邪魔しました!

Monday, July 11, 2016

パルコ・プロデュース公演『BENT』

@世田谷パブリックシアター

作:マーティン・シャーマン
翻訳:徐賀世子
演出:森新太郎
出演:佐々木蔵之介/北村有起哉/新納慎也/中島歩/小柳友/石井英明/三輪学/駒井健介/藤木孝

「佐々木蔵之介が出る」「同性愛者の役」「ナチス政権下の話」という,非常にざっくりした情報のみで観たーいと思って,高校の部活の同期と同じ日に合わせてチケットを取った『BENT』。他に観たかった舞台のチケットが取れなくて,浮いた分こっちを観るかーという感じで本当にふわっと決めた観劇だったのだけど,今のところ2016年に観た舞台でぶっちぎりの作品になりました。

私の中で佐々木蔵之介といえば,昨年観た『マクベス』(これもパルコプロデュースだわ!)。あの超大人数の登場人物がいるマクベスを,まさかの一人舞台でやっちゃうのが衝撃的でした。マクベスのリビドーが痛いほど伝わってきて,舞台上には一人なのにものすごいエネルギーを感じた作品でした。

今回の『BENT』もまた,このひとのエネルギーがぐわーっと伝わってくる舞台でした。パンフレットを買うかどうかは終演後に決めよう~と思っていたのだけど,休憩の時点で買おうと思いました。笑

演劇の魅力のひとつが「見えないものを感じること」なのだとしたら,このお芝居はそれがものすごく伝わってきました。
収容所に送り込まれたマックスは何の役にも立たない石運びの仕事(というか作業)に就かされて,そこにホルストを呼び寄せるのだけど…仕事の時間だから二人は話すこともできないし,目を合わせることもできない。当然触れることもできない。(まぁ実際は作業の傍ら,ぱっと見で話していないように話しているのだけど。)

相手を見つめることもできないのに,周囲を気にすることなく喋ることもできないのに,抱きしめることもできないのに,愛してるひとのことを感じたり,感じてもらえたりする。それって多分むずかしいこと。
でも,マックスとホルストがお互いのことを感じているということが,観客の私に感じられたのです。劇中の「3分間の休憩」でふたりは想像上のセックスをするのだけど,それがものすごくって。うまく言えないけど,そういう行為って心とか,魂とか,そういうものが繋がっているのを確かめることなんだなとじんわり思いました。身体的な触れあいだけじゃなくて。尊くて,愛おしいシーンでした。うろ覚えだけど,そのシーンの前後で出てきた「セックスだってできる。生きてるってことだろ。死んでたまるか。」みたいなせりふが胸に残りました。

そうそう。エグかったからか佐々木蔵之介の力かって言われたら,どっちかっていうと後者なんですけど,収容所に入って最初のあたりで,マックスとホルストが再会するシーンも印象的でした。二人は同性愛者だから本来どっちもピンクの星をつけさせられるはずなのだけど,マックスはどうして黄色の星なんだというところ。「取引き」についてマックスが語るところ。
なんていうか…佐々木蔵之介の語りから情景が浮かんでしまって,うぅぅ…と思ってしまいました。でもお芝居のせりふにあるっていうことは,実際にもあったことなんだろうな。同性愛者ではないと証明する方法。うぐぐ…。この俳優さん,すごいわ…。

すごいといえば北村有起哉も素敵で。“演劇馬鹿”の代表として佐々木蔵之介の相方に選ばれたらしいのだけど,本当にどストレートだよね!マックスへの思いも,何もかも。真顔で愛を語って,それがお客さんの笑いを誘ったと思いきやそこで泣かされるっていう。(泣かなかったけど。)ラストの左眉を撫でるシーンが,本当にたまらなかったなぁ。今回のこの役のために10キロ体重を落としたっていうエピソードも,真っ直ぐすぎです…。

あと私は一昨年の朝ドラ『花子とアン』で中島歩のことがお気に入りだったのだけど,こーんな役で舞台に出てる彼を拝めて楽しかったです!やだー。なにあれ超似合うー!笑 ああいうオネエいそうだよね。うん。感情的で,かまってちゃんで,でもマックスのことが大好きで。子犬のようなルディがとてもかわいらしかったなぁ。

あとあとグレタ役の新納慎也。キレイすぎてびっくり。そしてバトンで飛ばされててびっくり。歌声もキレイでびっくり。あんな使い方できるんですねバトンって。所作とかうっとり。女装している人のドロドロしたところが短時間でもちゃんと見えて,このひとの力を感じました…。まだ『真田丸』の17日放送分を観てないので,楽しみです…。

そして今回観ていて,ユダヤの人達がまるで高待遇のように見えてくる錯覚がありました。今回このお芝居を観るまで,同性愛者の人達がこんなにも虐げられていたなんて知らなくて,衝撃だったと同時になんだか恥かしい気分になりました…。
歴史の面でもお芝居の面でもとても刺激的で,森さんの演出で観られてよかったなーという思いです。今まで森さんの演出作品は観る機会があったはずなのに,パスしてきてしまった自分に激しく後悔…。今後は目を光らせて,情報をキャッチしていきたいと思います!

とにかく久しぶりに演劇の醍醐味を味わえる舞台に出会えました。満足!回転舞台もすきだった!充実した時間になりましたー!

Saturday, July 9, 2016

長野県塩尻志学館高校演劇部 第67回桔梗祭公演 『Another Alice Story』

@長野県塩尻志学館大教室

作:清沢由
出演:長野県塩尻志学館高校演劇部

実は私,地味にここ最近の志学館の作品を観ているのです。2014年・2015年は地区大会と塩尻市民演劇フェスティバルに足を運んでおりまして,それぞれ別作品だったので,ここ3年ではこれで5作目。うん。そこそこ観てる。笑 …ので,これで3年生の皆さんは引退かと思うと感慨深かったです。

予定がちょうど合ったのと,たかの先生がいらっしゃるからどんな舞台なのかな!って感じで,お邪魔してみました。志学館は12年前に第55回の桔梗祭に行ったっきり。久しぶりすぎてどこが何なのかよくわかりませんでしたが,会場が良かったです…。
総合学科なのでいろんなタイプの教室があるようで,演劇部の会場の大教室はメインの教室棟とは離れてて,外部の音が全然入ってこない!その立地条件もすごいなーと思ったんですが,教室ですよ教室。まるで大学のよう!高校からしたら大教室なのだろうけど,大学の,後ろが段になってる講義室のちっちゃい版というようなところでした。なのでまさかの,机付きの観劇…。面白い。面白かったです。笑

そしてパンフレットをぱらりとめくってみたら,たかの先生作品ではありませんでした!それはそれで衝撃だったのですが,なんとびっくり。作者の方が志学館の卒業生!で,かつ今志学館の先生!!!!!
嘘!そんなことってあるの!?出身校に配属されることなんてあるの!?(゜ ゜)なんか,メンバーがALL志学館って感じで,しかも志学館で上演してて,本気のホーム公演に来てしまったー!という気持ちになりました。
(調べてみたら,2013年の中信地区大会で上演されていましたー。これを観た当時中3の子が今の高3ってことかぁ…。)

固定された机がある教室での公演なので,アクティングエリアは決して広いとは言えないところ。それでも大教室ならではの使い方がなされていて,本当に面白かったですー!
冒頭のストーリーテラーが話し終えて,本編!というところで,まさかのパネルが絵本のようにめくれたり,まさかのホワイトボードが稼働して舞台セットになったり!(大教室は黒板じゃなくてホワイトボードでした。そしてどうやらスイッチひとつで電動で動くっぽい。最初は2枚とも下に下りてたのだと思うのだけど,パネル転換時にこのホワイトボードもうぃーんと上に上がって,舞台セットの仲間入り。すごかった。)
いや考えましたね。会場を味方にしているってこういうことだなーと思いました。

さてはて中身ですが,私はもともと志学館に対してふわふわドリーミンなカンパニーという感じを持っていて,最近はたかの先生節でそれが抑えられているように感じていたのです(あくまで個人の感想)。やっぱり皆さんこういう感じお好きですね!という世界観のお話でした。アリスがモチーフなんていかにも…という感じがしますが,オタクが投入されているから拍車がかかってました。笑

観ててびっくりしたのは,登場人物達のビジュアル!最近ここまで詰め詰めの高校演劇って観てなかったので,すっごい!って思っちゃいました。高校生の定めとして髪の毛をいじるのに限界がある…というのがあると思うんですが,今回出てきた人達の中でウィッグ使ってないのは誰ですか?というくらいの使用率。アリスは金髪,チェシャ猫は紫のセミロング(?),帽子屋さんは茶髪ロング,ハートの女王は真っ赤な巻き巻きロング。主人公リョウくんも色は暗めだったけど,男の子に見えるようなやつをかぶってて(この役者さんって『ボクのじゆうちょう』で主役だった子かな…?),ともかくビジュアルで魅せることにこだわってました。今この感想自体は7月下旬に書いてますが,今年観に行った高校の文化祭やホール公演に行った5校のうちダントツだったなぁーと思います。演技や舞台美術にこだわるのももちろんですが,それと同じくらいビジュアルにもこだわるべき…と今回5校を通して思いました。ここまでがんばった志学館に拍手です。

ビジュアルがものすごくよかった分,お芝居はあと一歩…!という印象でした。ホールとは違って,せっかく間近で観られるのだから,私達観客としては登場人物の心の動きが見たいなと思うのです。そしてそれがどういうところから見えるかというと,目だったり表情だったり,瞬間的な身体の反応だと思うのですが,あんまり見えなかったかなという感じ。せりふは出ているけど,感情が伴っているかとなるとちょっと別だったかなと思います。なんとなく,登場人物ではなく役者さん自身が戸惑っているようにも見えて,(あぁ~,がんばってー!)と,余計な気持ちも起きてる状態で観てました。笑 今回初舞台だった方もいらっしゃるようだったので,今後に期待です。個人的には帽子屋さんのほわーっとしたキャラが好きでした。

あとあと,パンフレットには昨年から始まった『ひさしの星』の巡回公演の実績とか今後の予定なんかが載ってて,単にこの公演のためだけのパンフレットで終わっていなかったのがとても良かったです。『ひさしの星』のレザン公演の人数には,私も含まれていると思うと嬉しいなーと思ったり,その次の公演では観客数2という数字を見てひょえーと思ったり。一つの作品で14回も公演することが高校演劇の枠ではいかに難しいことか…。それで延べ500人集めるって,なかなか簡単に他校で真似できることじゃないよね。いやー。いい経験されてるんでしょうね。志学館の皆さん。

3年生の皆さんはこれで引退なのでしょうか。3年間ひっそり拝見しておりました…。お疲れ様でした!新生志学館がどう成長していくのか,引き続きひっそり見守っていたいと思います!

Sunday, July 3, 2016

『大和和紀 画業50周年記念原画展』

@東武百貨店池袋店

私,20代。 大和和紀が,好きです。

……というと,同い年の人には「誰?」って言われます。へたすると30代40代の男性とかにも「誰?」って言われます。

「『はいからさんが通る』とか『あさきゆめみし』の作者です!!!!!!!!!!!!!」

と言って,画像を見せると,「あぁ~……?」と言ってもらえたりもらえなかったり。笑


私と大和和紀の出会いは中学生の頃。なんでか忘れちゃったけど,ある日実家に行った時,母方の叔母から『はいからさんが通る』の単行本をもらったのです。もらった直後は昔の漫画の絵が受けつけなくてすぐに読めなかったけど,読み始めたらがーっとハマってしまったのでした。夫が亡くなった時に白い喪服を着る文化もこれで知ったし,小石川という地名を知ったのもこの漫画でした。

そして数年後,高1の春休み。これもなんでか忘れちゃったけど,顧問を訪ねに高校の国語科研究室にいたら,それまで一回も話をしたことがなかった異動する女の先生が,『あさきゆめみし』の単行本を全巻あげると言い出したのでした。「えっ?」とうろたえていたら,顧問が1巻の底?の部分に「カサハラ」と私の名前をマジックで書いてしまったので,譲っていただくことに。とりあえず『源氏物語』の流れはこれで勉強しました。

その2作で大和和紀にハマったので,私が高校生の時に発行された1冊まるまる大和和紀の雑誌「大和和紀DREAM」全6巻を買い,そこで『ヨコハマ物語』に出会いました。あの和と西洋が入り混じるキラキラして大きく変動した時代がとても魅力的でした。

現代の漫画もいいけれど,このひとが描く華やかな世界観に,私はすっかりやられていたのでした。

その原画展とあらば!!行かねば!!!!!
ということで,エルサ先輩と出かけてきました!!!!!

もう,うっとり!!!!!
このアナログ感,たまらなかったです~~~~~。
今はもうデジタル全盛期で,この間行った『セーラームーン展』でもデジタル処理されてるものがいくつかありましたが,大和和紀は違う!今も昔もオール手塗り!!!塗り作業を映像で見られるコーナーもあったのですが,ほんっとーに細かい作業。特に『あさきゆめみし』はたっくさんの着物が出てくるのですが,それの柄とか。気が遠くなる細かさ。私だったら力の加減へたくそで,ぶしゃってしちゃいそう。本当に丁寧で,プロの仕事をのぞき見できたような気がします。カラー原画はもはや芸術の領域でした。
『はいからさんが通る』は,カラーの袴がかわいかったです~。私の大学院修了時の夢ははいからさんのような矢絣の着物と袴を着ることだったのですが,叶わず散りました。悲しかったですが,紅緒さんがかわいいので乗り越えて生きていきたいと思います…。笑
あと『ヨコハマ物語』のカラー原画は重厚な感じがよかった。最近の絵は,線が柔らかくなっていたり表情が豊かになっていて,大和和紀の作風の変化も感じられました。

そしてびっくりしたのが,大和和紀の作品年表。せんきゅーひゃく何年に何の作品を書いていたか…って年表なんですが,同じ時代に複数本描いてるんですね…。『あさきゆめみし』とか10年くらい描いてたんですね…。衝撃…。24時間漫画家だったこともあったようで。プロってすごい…。

華があって,キャラクターへの愛が感じられて,少女漫画なのに日本史の史料に出てきそうで,とにかく見惚れちゃう絵ばかりでした。大和和紀の作品がますます好きになりました。
一緒にわーわーきゃーきゃーしてくれた先輩,ありがとうございました…。また読み返したいです。大和和紀作品。


(余談ですが。『あさきゆめみし』の原画を見ながら,エルサ先輩は「源氏って相当な愛着障害だよねー」って言ってました。わぁ…。それすごい合点がいく…。そしてそれに巻き込まれた女達よ…。でもって玉鬘を見つけた時は,思わず「あー私ー」って思いました。笑)

Saturday, July 2, 2016

日本大学生物資源科学部演劇部 文化部連盟発表会兼一年生公演『結婚交渉人』

(演劇部公式Twitterより)

@日本大学湘南キャンパス157教室

作:別役慎司
出演:日本大学生物資源科学部演劇部1年生

知り合いの方が出演されるので観に行きました。私,日大は芸術学部に2回くらい行ったことがあったんですけど,他の学部は初めて。2キャンパス以上お邪魔したことがある大学がまた一つ増えました…。笑

びっくりしたのはキャンパス。1号館は新しい建物だったらしくて,数年前に建て替えられたばかりなのだそう。なので教室公演でも暗転にすると本気で暗転になったので感動でした。

1年生のみなさんのお披露目公演ということもあって,初々しい雰囲気たっぷりでした。大学での演劇デビュー,おめでとうございます(*^^*)みなさん10代後半だとかそれくらいだと思うのですが,高校生と比べて表現できる役の幅が広いなぁ~と思いました。

この作品の登場人物は,普通の家族と特殊な仕事の人に分けられると思うんですが,普通の家族の人達と特殊な人達のせりふの抑揚の違いが面白かったです。感情的になる家族のみなさんに対して,淡々と話を進める結び屋さんとか。良い意味で仕事を全うしてる人でした…。

作品が全体的にゆったりした感じだったり,特にほどき屋さんが芝居がかってる感じがあって,なんだろうなんだろう~と思っていたのですが,一番最後に演出さんがお話されてるときに(これかー!)ってなりました。笑 なんというか,演出さんの雰囲気が作品に滲み出てるなと。
きっと穏やかな演出さんなんだろうなーとも思ったのですが,暗転前後の間とか静寂が,カットできるところがもう少しあるのかなと感じました。きっともう少し,テンポが良くなるだろうなって。でもパンフレットを読むと初演出のようなので,今後に期待です。

あと,気になったところといえば衣装。特にお母さんかな。家にいる感じはとても伝わってきたのですが,ジャージの裾が長いような気がして。細かいところなのですが,そういうところに生活感が出るし,衣装へのこだわりが出る気がするので。そのキャストさんに合わせたサイズ選びって大事だなと思います。

そして個人的に,2年前に全国制覇した高校の生徒さんが大学生になって部にいらしたので,ハワワワ…ってなりました。本当に実在するのですね。←失礼。
今回は1年生公演だったので裏方さんだったみたいですが,また機会があったらキャストさんとして拝んでみたいです。

NUBSの皆さん,お疲れ様でした。フレッシュな舞台をありがとうございましたー。

Sunday, June 26, 2016

特別展示 HNコレクション『シリアルキラー展』

(公式webサイトより)

@ヴァニラ画廊

職場の後輩さんに「リカさんって犯罪心理学って興味ありますか?」と声を掛けられ,先輩と3人で行くことになったシリアルキラー展。私は大学でも大学院でも犯罪心理学は手をつけていなくて学問的にはさっぱりなのだけど,彼らの生む作品を見られるとなるとミーハー心に火がつき,銀座までおでかけすることにしたのでした。

ということで,この展覧会はシリアルキラーの皆様方の描いた絵とか,立体作品とか,聞いてたカセットテープのケースとか,外のひとに宛てた手紙とか,そういうものがだだだーっと展示されてました。

6月の午後。日曜の銀座。とても暑い場所(しかも地下)にこういうものに興味ある人達がすんごい集って来ていて,結構な熱量がありました。
しかも展示の仕方もまた圧がある感じで,作者の名前と解説と作品をどこで区切って見ていいかがぱっと見でわからなくて,ちょっと大変だったな…。


ちゃんとべんきょうしてないので,本当に主観になってしまうのですが…思ったこと。

①エネルギーがないと殺人はできない
②作品がみっちりしていて余白がない
③ディズニーは彼らの心を支えているかもしれない

はい。それでは①から順に…。

まず,壁にかかっている作品をばばばっと観た時に,むちゃくちゃ元気というか,エネルギッシュさを感じたのですね。それは作品のサイズ(結構でかい)だったり,色使い(かなり原色。チューブからそのまま出てきたような感じ)だったり。油絵というのもあるかもしれないのだけど,かなりゴテゴテしていて圧があるものが多かったのでした。
もうちょっと他の色と混ぜたり,徐々に色が変わっていくように塗る(グラデーションにする)こともできたはずなのに,それができないあたりに彼らの外界との交われなさというか,白黒はっきりしかできないというか,極端さみたいなものを感じました。そうでない人も多少いましたが,表面だけ見ると実にのっぺりした感じ。深みとか奥行きの前に,あの色使いと筆遣いをもって押してくるものを感じました。

そして自画像を描いてるひとが結構いたり。ピエロに扮して殺人してたひとはピエロに変身する過程を3部作で描いてるし(このフライヤーの絵がそう。この絵は変身完了後)。自己顕示欲の強さがひしひししてました。
これを獄中で描いていると思うと本当にびっくり。方向が正か負かはさておき,心にエネルギーがないと連続殺人ってできないんだなぁとしみじみ思いました。エネルギー有り余りすぎ。

②は①とも絡んできますが,一枚のキャンバスがあったら,余白がないんですよね。描きたいものがぎっしりで,画面がみちみちしてる。これをエネルギーと呼ぶこともできるし,加減をつけられないとも言えるだろうし。落ち着いて考える隙間がないというか。そういうわけでとにかく熱量の高い作品ばっかりでした。
しかも絵に限らず。作品の中には,アイスキャンディーの棒で作った時計(かなりの立体。多分重ねて重ねて重ねたやつを組み合わせて切断してる)があったのだけど,それも模様がぎっちりで,すごい圧がありました。強迫的というかなんというか…。苦しい感じがしました。

③は,彼らの手紙の中とか作品から感じました。七人の小人とかピノキオとかドナルドとか。そういうのを描いてる人がちょこちょこいたんですよね。面白いなーと思って。決して主役のミッキーではなく,サブキャラとか,作品中の主役でもどこか脆さがある子がセレクトされてるんだなと。
なんだろう。いたずら好きで,思ったままに行動して,しっかりした大人でも純粋な子どもでもないキャラクター達が,彼らの心のどんな部分を掴んでいるんだろう。よくわからないけど,彼らの心を支える何かにはなっているのだろうと思うと面白かったです。同時に,日本でこういうキャラクターっているのかなーって考えちゃいました。うーん。トトロがディズニー要素を持ってるかというと全然そうじゃないし,ドラえもんやアンパンマンはピンチを助けてくれる存在だし,ピカチュウやジバニャンも違うなと…。ディズニーって唯一無二で,存在感大きいなと,改めて感じました…。シリアルキラー展で。笑

壁からも満員の会場からも圧がものすごくて,3人で行ったのに私以外の2人が会場で体調を崩し,もうなんというかシリアルキラーの威力を実感する企画展でした…。
この企画展にはしっかりしたパンフレットが付いていて,彼らの生い立ちとかしでかしたあれこれについて解説がついていたのですが,まだあんまり読めてません。でも気にはなるので,改めて読み返してみたいと思います…。

Saturday, June 25, 2016

日本劇作家協会 6月の月いちリーディング『天と空のあいだ』

@座・高円寺

作:川名幸宏
コーディネーター:ハセガワアユム/山田裕幸
ファシリテーター:長谷基弘
ゲスト:詩森ろば/関美能留
出演:小沢道成/ハマカワフミエ/橋本昭博/都築香弥子

先月,Meeekaeの『天と空のあいだ』の本公演を観ていたのですが,それがリーディング公演になって上演されると聞いて,観に?聴きに?行ってきました。劇作家協会がこんな素敵な試みをしているなんて,初めて知りました。そしてその作品に選ばれた川名くん,スゴイ…。

そうそう。本公演ではバベルとフランクだけが出てきて,後にフランクが結婚することになる「エミー」は単語だけの存在というか,実際には出てこなかったのです。そのお陰もあって,丸山港都くんと川名くんが出演した本公演はとってもさわやかというか,男の友情っぽい作品…という仕上がりになっていたのでした。
が,今回はエミー出演!港都くんによると,元々川名くんは3人版で書いていて,エミーさんが見つからなかったために2人版に書き直したのだそう。川名くんが表現したかったものにより忠実なのが今回のバージョンのようです。

私は今までいろんなお芝居を観てきましたが,思えばリーディング公演はこれが初めて。どんなもんなんだろう~と思っていたのだけど,一回観ていた助けもあって,ものっすごい臨場感溢れるリーディングでした。何を隠そう私はハマカワフミエさんがすんごい好きで,ドラマのゲストとかで出演されてるとガン見しちゃうのですが,今回は生ハマカワさん…☆うっとりうっとりしながら聴いちゃいました。笑
フランクとバベルについては,同じ役を違うひとが演じているのを短期間で観られたので,面白かったです。そんなふうに表現することもできるんだなーって。新鮮でした。

そして3人版の感想…。
なんというか,エミーが実際に口挟むと,こんなドロドロした仕上がりになるんですね。笑
バベルがエミーを好きなことがより一層際立ってくる。フランクもバベルも,直接エミーと話ができることで。バベルが下界(?)に降りられないことで,下界では下界で世界が変化していって。2人しか舞台にいなければ空間は平等だけど,奇数になることで不均衡が生まれるものね。いいなぁ。3人。でもラストで「走っていった」みたいなことを都築さんが読み上げた時には,私も(んん!?そんなさわやかか!?)と思っていたのだけど,読み間違いだと後でわかって納得でした。うん。駆けていけるほどもう彼らは若くないし(←子どもがいるし…の意味で),さっぱりしてないよね…。

リーディングの後のディスカッションは,普段使わない私の脳みそをフル回転させる感じで,刺激的でした。うーん。確かにバベルが上った理由は必ずしも明確にならなくていいのかなとか,「ひきこもりがでかいこと言ってる」という表現がとてもしっくりくるなと思ったりとか。
あと個人的に,早稲田と明治の差みたいなところがツボでした。←そしてそれをぶった切るハマカワさん…。素敵…。笑

知人が書いたり同期が出演していた作品なので,あんまり客観的に見られなかった作品ですが,いろーんな角度からこの作品についてコメントがあり,いろんな面白い部分を見つけられたような気がします。ブラッシュアップした作品を,今度は劇場で観てみたい!(エミーも出る3人版で!)
そんなふうに思えたリーディング&ディスカッションでした。思わず脳内演出しちゃいました。
今後の川名くんの改稿に期待です。

ちなみに公開されている当日のリーディング公演の様子がこちら。(私も最初の方でちょっこし映っている…。)

Sunday, June 19, 2016

テレビドラマ『トットてれび』(全7話)

◇STAFF
原作:黒柳徹子『トットひとり』『トットチャンネル』
脚本:中園ミホ
演出:井上剛/川上剛/津田温子
音楽:大友良英/Sachiko M/江藤直子

◇CAST
満島ひかり・藤澤遥/中村獅童/錦戸亮/ミムラ/濱田岳/安田成美/松重豊/大森南朋/武田鉄矢/吉田栄作/岸本加世子/吉田鋼太郎/黒柳徹子/小泉今日子(語り・パンダ)

2016年4~6月にNHKで放送,同時期に鑑賞

放送開始前から密かに楽しみにしていた『トットてれび』。今年の3月に黒柳徹子さんの『窓際のトットちゃん』を買っていたのだけど,全然読めていなくってちょっと後ろめたいというか,本に対するうっすらした罪悪感みたいなものもあって,観たいなと思っていました。そうでなくても,満島ひかりに黒柳徹子役を2回もオファーしたという話題を耳にしていたり,とにかく出演者がすごいので気合いが入ったドラマであることに間違いないと思っていたのもあって。30分という短めの枠も見やすかったです。

これまで私の中でNHKの本気といえば,NHKスペシャルの『映像の世紀』だと思っていました。20世紀の世界各国の映像を集めてテーマごとに編集したドキュメンタリー。高校生の時に世界史で一通り見て,DVD全盛期の時代に,世界史の先生がVHSに録画したものを大事にとっていた理由がわかったような気がしていました。

がっ,『トットてれび』は『トットてれび』で別の角度の本気!テレビ放送が始まったレトロなあの時代を丁寧に再現していたり,ものまねではなく実在の人物の本質を表現しようという手法に胸が熱くなりました。確かにビジュアルは寄せていたのだろうけど,満島ひかりが本当に若かりし頃の徹子さんだった。いや,私が知っている徹子さんはおばさんとかおばあさんになってからの徹子さんなのだけど,若かったらきっとこうだったんだろうなという満島ひかりの徹子さんでした。

一番最初の回では,オーディションを受けたトットちゃんが「私は喋り方が変」みたいなことを自分で言ってます。確かに普段の満島ひかりの演じている喋りと比べたら明らかに「変」なのだけど,あのビジュアルでそういうふうに喋っていたら,すんごく普通というか,すんなり聞けちゃう。あれは何なんだろう。役作りとかそういうものではなくて,満島ひかりの見た目をした徹子さんが喋っているような感覚。このひとの,満島ひかりの女優としての幅の広さを今回改めて感じました。
どこまでが台本で,どこまでがアドリブなのかわからないのだけど,トットちゃんのちょっとした一言がものすごく生っぽくて,見ててうぉぉ~ってなりました(語彙力…)。例えば,オーディションが終わった時にぼそっと「まただめだった」みたいな呟きをしたりだとか。トットちゃんは今の診断基準と照らし合わせると,ADHDぽいとかLDぽいとかって言われてますが,そのADHDの素っぽさというか,そういう部分がぽろっとこぼれていて。そこがまた魅力的でした。

(あ。周りのひとも楽しいのでわちゃわちゃした感じで見られるのだけど,今全7話を振り返ると,トットちゃんの内省している部分,心で考えている部分ってドラマではあんまり扱われていなかったな…。いきなりNYに行っちゃったりとか。それは本を読めばわかるのだろうか。この夏の課題図書にしよう…。)

アタマの方でもちょろっと書きましたが,本当に贅沢なキャスティングですよね。これ。
上にばーっと書いたキャスト陣は主要人物で,他にも各回ゲストがいるのだけど…新井浩文,福田彩乃,小松和重,北村有起哉,木野花,田中要次,片桐はいり,松田龍平とか…これだけでもだいぶ豪華なのですが…。あと気づいたらモー娘。OGの高橋愛と田中れいなと久住小春がいるし,昨年夏に放送された『レッドクロス』で素敵な子役だった高村佳偉人くんもトットちゃんのクラスメイトとして出てきているし。す,すごすぎる…。あとFolderのデビュー当時を知っている私としては三浦大知との共演はたまらぬものがありました。(FolderとFolder5のベスト,私のウォークマンに入ってます…。笑)
こういうところからも,NHKの本気度合いが伝わってきました。

職場の先輩から聞いていた向田邦子さんの留守電のエピソードをはじめ,実在する著名人との交流,当時のテレビドラマの作り方なんかは「そうだったんだー!」という感じで,楽しく見られました。同時に,一人のひと(徹子さん)をいろんな角度からじっくり知るということがすんごく面白かったです。ドラマ自体ももちろん面白いのだけど,一人のひとが持っているドラマはものすごく面白いし魅力的だし,人生のべんきょうになる気がします。

ノンフィクションの要素も含んでいるけど,中園ミホの脚本ということも,このふわふわしたファンタジックな世界を作り出せていた要因なのだろうなーと思ったり。2年前の前期の朝ドラ『花子とアン』も私は全編観たのですが,実際とファンタジーをふわりと融合させていたなぁーと思っていたのです。今回だったらトットちゃんの夢とか,途中で商店街が真っ二つになったと思ったら楽しいテレビの世界に繋がってる…とか。最終話のラストシーンも,「今の徹子さん」が3人(子役の藤澤遥ちゃん。彼女も登場シーンは少ないけど徹子さんのエッセンスをちゃんと掴んでて良かった。)も出てきたり,あの世に行ってしまった向田さんとか森重さんとか渥美さんとかがわらわらセットから出てきたりして,私の涙腺がヤられていました。あぁぁ…。

徹子さんの半生,仕事への思い,大切な人達への思い,テレビとは何を伝えるものなのか,女優とは何を表現するものなのか…そういうものがよーく伝わってくる,レトロでキュートで充実したドラマでした。トットちゃんのことがますます好きになったので,本,読みます…!笑

Sunday, June 12, 2016

NHK BSプレミアム『ドキュメント 蜷川幸雄 最後の挑戦』

2016年6月4日放送,6月12日に観賞

蜷川さんの追悼番組。1時間なのに,蜷川さんの魅力たっぷりの番組でした。今までの功績というより,最後にどんな仕事をしていたかに焦点を当てていたのだけど,この人は本当に,最後の最後まで彗星のように燃えていたなぁということが伝わってきました。
弱々しい体で,やせ衰えた体で,車椅子に酸素チューブつけた体で,この人はどこにこんな情熱を持っているんだろうと思いました。

蜷川さんの言葉は胸を打つ。
番組の中でバシッと私の心を射た言葉を,ここに書いて,残しておきたいと思います

『いい演出家になりたいんだよもっと。なんだかわからないけど,心を打つね。誰もまだ見たことのない,こんな舞台を作った蜷川さん。というふうになりたい。』
→昨年12月頃のインタビュー映像…だったと思います。
ここまで来て「いい演出家になりたい」って言ってるこのひと。ほんとすごい。「なんだかわからないけど心を打つ」というのも素敵で,本当の感動ってあんまり言語化できないものなのかも…と思ったり。

『自分のうぬぼれている想像力なんて たかがしれていると思った。もうちょっと いい仕事ができるといい。』
→ストイックすぎて。本当にストイックすぎて。このひとにこんなこと言われたら,私は何もできなくなってしまうよ…。

『石橋蓮司や緑魔子さんたちもこれで苦労していた。「やつの機嫌は?」「至極上々」これ一発で朝から晩まで稽古していた。終わったら泣いたね。蓮司は泣いた。よし,それで良かったって。自分がうまくいかないからいい役がつかないんだとか,叱られるんだって考えて,すぐ逃げない。一番そういうときに勉強できるのに,悔しいから,みんなを納得させよう,納得してもっといい役を取れるようになろう。自分のためでもあるから,過酷な条件は自分で担わないとね。俺なんか世界中敵ばかりしかいないで,アジアの演出家がやるシェイクスピアをロンドンで成立させたいという,このくらいの悔しさががんばらせるんだから,悔しさをみんなに与えてるってとこもあるんだよな。そこから逃げちゃいけない。悔しいものを背負って,じゃあ蜷川あるいはみんなに「あぁ,いい俳優になったね」と言わせたい。これくらいの,つまんないような,思いが走らせる。そんなもんだぜ,人間,美しくなんかないんだって思いながら,俺はこんなロンドンで評価されたがってんだ,なんて思いながらさ,「ちゃっちい俺」と自己嫌悪と戦いながらがんばっていく。そういうものが走らせるという局面もあるんだよな。その悔しいことや辛いことを背負う。じゃないとうまくならない。』
→さいたま芸術劇場の専属カンパニー(って言っていいのかな。)ネクストシアターの稽古に付いた蜷川さんが,エチュードに対して指導してるところ。これを生で聞けたら,ものすごい厚みを感じられたんだろうな。
悔しいことや辛いことを背負ってこそ成長の余地があるというのはお芝居の稽古に限ったことではないなぁ~としみじみ思いました。
一番勉強できるときに逃げちゃいけないというのは,高校生くらいの自分に強く伝えてあげたい…。

『重苦しいのね,すごく。ここから他人の腕みたいな。これがある日,目が覚めたらすっきり何でもなく軽くなりたい。するとまた違うかも。軽やかにいい演出家になるかもなぁ。大きな声を出すと負担が多いから,ハアハアするのね。でハアハアすると呼吸が乱れるから,冷静に見てるものと違っちゃうんだよ,温度が。この間に…実感するものと,その上を覆っているものの間に距離があんだよ。それが埋まんないのね。それがピタっと来ないんだよ。それで朝目が覚めたらピタっと来てて,おお軽くなっちゃったって言う日が来ないかなぁーって思ってんだけど…。そうするとまた演出が変わるよ。と思いたい。』
→一番最初に引用したコメントと同じ時に撮ったインタビュー。体の状態と心の状態は切り離して考えられないなーと改めて思わせてくれる語り。"ピタっ"との感覚はきっと今の私にはわからないけど,いつか感じるときが来るのかもしれない。そしてやっぱり彼が考えてることは演出のことなんだなぁって。


このドキュメントの中には,蜷川さんご自身のことが作品になった『蜷の綿』についても触れられています。
(私,観に行く予定だったんだよなぁ。高校演劇の関東大会に行ったついでに発券する予定だった。公演延期になっちゃった連絡が入ったときは,本当に悲しかった。そして蜷川さんは星になってしまった。)

『蜷の綿』を書いた藤田貴大さんは,蜷川さんのことを後悔とか後ろめたさとかネガティブな感情を糧に生きてきたみたいな分析をしていて,彼の一貫性というか根底に流れるものが私にも伝わってきたような気がしました。アングラから商業演劇に転換したのも,とても人間らしいこと。でもそれまで芝居づくりを共にしてきた仲間をある意味裏切ったことについては落し前(この単語久々に聞いた)をつけなきゃけないから,そのエネルギーが彼を走らせていたんだろうなって。ネクストシアターのところでも,蜷川さんご自身が似たようなこと仰ってるけど。
あー。いつか観たいな。この作品。マームとジプシー版でも,蜷川さんのお弟子さん?の井上さん版でも。


蜷川さんの本気と蜷川さんの言葉にたっぷり浸かった1時間でした。
このひとはとても真っ直ぐで,このひとはとても優しくて,このひとはただただ「いいもの」について考えていたんだなということがよくわかる番組でした。

たった一本しか観られなかったけれど,私の人生の中で彼の演出作品を生で味わえたことは,大きな財産だと思います。

改めて,蜷川さん,今までお疲れさまでした。
あっちの世界でシェイクスピアに会って,「どうだ!」って言っててほしいです。笑

Thursday, June 2, 2016

テレビドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(全10話)

◇STAFF
脚本:坂元裕二
音楽:得田真裕

◇CAST
有村架純/高良健吾/高畑充希/西島隆弘/森川葵/坂口健太郎/浦井健治/福士誠治/安田顕/大谷直子/田中泯/柄本明/高橋一生/松田美由紀/小日向文世/八千草薫

2016年1~3月にフジテレビ系列で放送,1~5月に鑑賞

自分の意思で第一話から月9を観たのは生まれて初めてかもしれない…。
放送開始前から「月9に坂元裕二!」と知り合いと共に盛り上がっていたのだけど,徐々に録り溜め族になり,気づいたらGWに入っていました。笑
…ので,一気に観ました。きっと一話一話,一週間を待ちながらじわじわ観ていたら,ヒリヒリした感じで冬の季節を過ごすことになったと思います。作品のつめたい温度に私もやられていたと思うので,そういう意味ではちょっとあったかくなった時期にまとめて観て良かったです。

放送開始前から直後は,渋谷駅の山手線外回りの階段下に,この(↑)超巨大広告がどどーんと貼られていたのだけど,全話を視聴して改めて見ると,なんともいえない気持ちになります。だって作中,一度もこんな幸せそうな表情をすることがなかったのだもの。2人とも。きっと音ちゃんも練くんもこんなふうになりたかったんだろうなと思うと,なんだか苦しいです。

田舎を出て東京で生きていく,生きていこうとする音ちゃんは,苦しさの度合いは違えども,年齢も含めて私とかぶるところがちらほらあり,うぐぐぐ…と思いました。笑
特に,自分の部屋が欲しいの,すごーくわかる。本当はマイホームがいいけれど,せめて賃貸でも自分の力で手に入れたスペースで,安心したい。そんな感じとか。
地元から離れたところで生きていく作品って,地元に焦がれるパターンと捨ててきたパターンの二つに分けられると思うのですが,私は焦がれるパターンが好きじゃないので,この作品は…見てて苦しいところはもちろんあったのですが,冷たい冬の空気感と地元への思いが繋がっている感じで,良かったです。


では,ここで私のぐっときたシーンやせりふをどうぞ。(唐突)


#4
練くんと佐引さんが仕事先でぐちゃぐちゃ言い合い始めて,結構やばいかもとなってきたあたりで同僚にぐちゃぐちゃを見られた瞬間の,佐引さん(高橋一生)の
「愛し合ってたんだよ,ばか」。
→この切り替えがとんでもなく鮮やか。胸ぐら掴んでる勢いなのに,高橋一生が高良健吾をハグして彼の背中をぱふぱふしてる風味に見せてしまうところが,この人のアグレッションの出し方の怖さだなーとしみじみ。同時に高橋一生の演技力の高さにぐわっときました。笑


#5
「片想いなんて扁桃腺とおんなじだよ。何の役にも立たないのに,病気の元になる。僕を好きになりなよ。僕だったら,君に両思いをあげられるよ。」
→西島隆弘演じる井吹さんのせりふ。そうかぁ。扁桃腺なのかぁ。でも,なかったら病気になれないんだよなとか。両想いってもらえるもんなんですかって思ったりとか。

「私,一度人を好きになったら,なかなか好きじゃなくならないんです。好きになってほしくて好きになった訳じゃないから。たとえ片思いでも,同じだけ好きなままなんです。」
「はい。僕も同じ意見です。」
→こここここ,これ!!!!!!昨年同じ時期にTBSでやってた『問題のあるレストラン』と一緒のせりふなんですが!!!!!坂元さんがそんな人なのかな!!!!!「なかなか好きじゃなくならない」という表現が素敵すぎて苦しい。そして「同じ意見です」とか返されたらどうすればいいんだろうという感じになるじゃないの…。


#7
「どうして,何の用ですかなんて聞くの。何の用ですかぁなんて。用なんかあるわけないじゃないですか。用があって来てる訳ないじゃないですか。用があるぐらいじゃ来ないよ。用がないから来たんだよ。顔が,見たかっただけですよ。」
→音ちゃんのせりふ。その通りすぎて。笑 好きなひとにこんなの聞かれてしまったら,私もつらいなぁ。


#9
「練の好きは買えないよ。練の好きはお金で買えるようなものじゃないの。何かと交換できるようなものじゃないの。」
→練のことが好きな小夏ちゃんのせりふ。手切れ金を断る言葉選びが,まっすぐで刺さりました。一般的に「好きって気持ちは買えない」じゃなくて,「練の好きって気持ちは買えない」って,固有名詞出してるあたりもなんだか素敵。

「かっぱなんか作ったって楽しくないし。」
『何をするかじゃなくて誰とするかだと思うけどなぁ。』
「え?」
『楽しんでくれる人がいれば楽しくなると思う。僕はこなっちゃんとだったら何をしてても楽しい。』
「晴太ってさぁ,何で普通に好きって言わないの?」
『ん?』
→同じく小夏ちゃんと,小夏ちゃんのことが好きな晴太くんの会話。3つめの,『僕はこなっちゃんとだったら何をしてても楽しい』というせりふはとても説明的で,初めて聞いたときは坂口健太郎がせりふに喋らされている感がしたのだけど,小夏ちゃんの返しを聞いてそっかそっかとなりました。普段素直に表出を出せない晴太くんの,精一杯だったんだなぁと思って。

「会いたいです」と音ちゃんが練くんにメールを打つのだけど,そのあと
“私もあい”→“会えません”→“今はまだ会えません”
と打ち直して練くんに送るシーン。メールって温度が伝わりづらくて,相手に届く“結果”しか見えないものだけど,結果に至るまでもプロセスってちゃんとあるんだよなぁと改めて感じました。どんなことを考えてこの文章を作ってくれたのだろうって。考えたら楽しいんだろうなって。


#10
「私はもう決めて…」
『決めることじゃない。恋愛って決めることじゃない。いつの間にか始まってるものでしょう?決めさせた僕が言うことじゃないけど。』
→#9のかっぱのくだりもそうだけど,きっとこのあたりが坂元さんらしいんだよね。恋愛を改めて言語化して,気づきを促すようなこの感じ。しかもこの『決めさせた僕がいうことじゃないけど』ってせりふを,わりかし淡々とした口調で西島くんが言っちゃうのもなんだかずるい。笑


あとやっぱりいろんなキャストさんの中でも,高畑充希が良かったです~。早く舞台で拝みたい~。笑
この人の,無理してるあたりと素っぽいあたりの変化がとても丁寧で,素敵なのですー。
音ちゃんと仲良くなっていくあたりもホントに2010年代の20代女子がわちゃわちゃしてる感じで,好きでした。笑

でもって第一話に出てきた柄本明が怖すぎて怖すぎて,頭から離れない…。本当に一話しか出ていないのに,この作品の中でも結構なトラウマレベルです。コワイヨ~。大切なひとのお骨がトイレに流されるとか本気で恐怖です。これをやってのけてしまった養父の柄本さん,さすがです…。

作品の時代が結構前から始まっていて,東北も舞台で出てきたときに考えるのは2011年の3月11日で,これも関係するのかと思いきや…作品中では確か全く触れなかったので,世の中で重要なことと個人にとって重要なことってやっぱり全然違うんだなぁと改めて思いました。

月9の視聴率としてはあまりよろしくなかったみたいですが,私は春を待つ東京で生きていく彼女や彼をじんわり味わえて,満足なドラマでした。
坂元裕二作品を観るぞーと意気込んでいる割に,『私たちの教科書』でストップ状態なので,なんとかしたいと思います…。

Sunday, May 22, 2016

Meeekae≪ミケ≫ presents 中央線ツアー “天と空のあいだ” - フランツ・カフカ「最初の苦悩」より -

(Meeekae公式tumblerより) 

@ヌイサンスギャラリー

脚本・演出:川名幸宏
出演:丸山港都/川名幸宏
音楽・演奏:大塚るるる/NaNa

2月末にヌイサンスギャラリーデビューを果たしたと思ったら,あれからもう3ヵ月経ってしまいました!時が流れるの,早すぎ。

みなとくんと川名くんが新作を打つというので,またまた観劇へ。
今回は水道橋と吉祥寺の中央線ツアーを企画していて,面白いな~と思っちゃいました。ツアーって…いい響きだよね(´ω` )

カフカというと,私は『変身』くらいしかまともに知らなくて,『審判』とか『アメリカ』とかはタイトル程度。ほんと,それくらいで。学がなくてすいませんとしか言えなくて。苦笑
カーテンコールの時にみなとくんが「青空文庫にあります」と言っていたので,さっき読みました。3分で読めるって言ってたけど,やっぱり翻訳物はちょっとムズカシイ…。

原作よりお芝居を先に観たのでまずそちらから。

か,かわいかった…!笑

バベルもフランクも,なんというかカワイイ。なんだかチャーミング。
多分それはやってたキャストさん自身の魅力がじわじわ出ていたからなのだと思います。

設定としては17歳の頃の出会いから27歳までを描いているのだけど,同年齢だからさ…なんか刺さったよね…。笑
ちょっとファンタジックでほっこりした,前回の『にせ医師物語』とは違う雰囲気のある作品でした。

作品が作品で,現実的にはありえないであろう設定なのだけど,バベルは地面に足をつけられないのはなんでかなーと思ったときに,今で言うところの強迫性障害なのかなーとかふと思ったり。地面に足をつけてしまうことで,自分の世界が全て壊れてしまうというか。そんなふうに思っていたのかなとか。考えたりして。
だったらフランクのために下に降りて,彼女(名前忘れちゃった!)を呼びに行くあたりとかはもんのすごい勇気だったよねとか。思ったりして。

終盤の方で,バベルが「ブランコ…」って言った時に,(辞めるのか!?辞めるのか!)と思っていたのですが,まさかの「増やしたい」だったので良い意味で裏切られました。
下の世界にはフランクがいるけど,同じ天と空のあいだのエリアでも,心許せる仲間ができるといいねぇ。バベル。


あとでみなとくんに聞いたのですが(そして本当に原作にも書いてあった),川名くん演じるバベルは,電車移動の時は上の網棚に乗って移動していたんだって。翌朝通勤電車に乗った時,お向かいの網棚の上に川名くんが小人のように横たわっているのを想像してしまい,なんだか微笑ましく思ってしまったのでした。←多分バベルは小人になる仕様じゃないと思うけど。笑

でもって,二人の衣装がおそろいでかわいかったなー。


そうそう。青空文庫掲載の原作『最初の苦悩』を読んでみたのだけど,これがあの1時間になるなんて純粋にすごい…。原作ではもっと登場人物は出てくるけど,この二者関係に絞ったのは素敵な選択なのだと思います。前回も思ったけど,いい掘り出し物してきますね,Meeekae…。

次回はどんな作品かな。楽しみにしたいと思います。

Saturday, May 7, 2016

マームとジプシー 『てんとてんを,むすぶせん。からなる,立体。そのなかに,つまっている,いくつもの。ことなった,世界。および,ひかりについて。』

(ルミネ0公式webサイトより。上の画像が本作のもの。)

@ルミネ0

作・演出:藤田貴大
出演:荻原綾/尾野島慎太朗/成田亜佑美/波佐谷聡/召田実子/吉田聡子

昨年『cocoon』を観てから,私の中でマームとジプシーづいています。
12月には『書を捨てよ街へ出よう』を観に行き,金髪姿のじっこ先輩を拝んだのでした。笑
『書を捨てよ…』の終演後,じっこ先輩のところにお邪魔し次の舞台の予定を伺ったところ,この舞台のことを教えてもらいました。新宿駅の新南口に新しいビルができて,その中に劇場ができるのだと。その杮落とし公演をマームとジプシーがやるのだと。

杮落とし!
劇場にとってたった一度しかない舞台!
その劇場の歴史の一ページ目を,マームとジプシーが埋めるなんて!
知らない間に,マームとジプシーはとっても未来的で,おおきなカンパニーになっていたのでした。
学生の劇団だったカンパニーが杮落としなんて…。「続ける」って,やっぱり才能なのだと思います。


というわけで,私の中では2004年のまつもと市民芸術館以来の杮落とし公演というものに行ってきました。

新しい空間。新しいドア,新しい床,新しい客席,新しい照明,スピーカー,そして舞台。
その場にいるだけでワクワクしました。
何席くらいあっただろう。シアタートラムくらいかな。ちょうどいいサイズ感でした。
パタンと折りたたんでいる席と背もたれの間に,今回のパンフレットが絶妙な位置に挟まれていて,きっと丁寧に置いてくださったのだと思います。

パンフレットのシールをぺりっとはがして開くと,作・演出の藤田さんの言葉。

劇場は,約束の場所。約束をしたひとが,ここで出会って,また別れる。

出会って,別れたひとたちは,
またそれぞれの日々になにを持って帰るのだろうか。

約束の場所かぁ。そうかぁ。それって素敵だなぁ。

じっこ先輩によると,今回の作品は海外でよく上演するものらしく,日本で上演するのはレアなんだとか。

…海外でよく上演って…規模がグローバルすぎます。はい。笑

そして私,青柳さんがいないマーム作品を初めて観たのだけど,そうすると吉田さんが青柳さんポジションになるのだなぁとしみじみしながら観ました。
吉田さんと尾野島さんは『cocoon』の役者さん!という感じがすごく強くて,特に目が奪われてしまいました。

演劇の宿命として,「座った位置からでしか見えない」というものがあると思うのだけど,今回のお芝居はとてもびっくり。見えないはずのものが,見えてしまう。カメラ越しに,スクリーンに投映されて。
最初の,兵隊のミニチュアの攻防も,映像だと思っていたんです。録画された映像の再生。
と,思ったら,リアルタイムで舞台上のカメラから見えている映像で。びっくりしました。そういえば『書を捨てよ…』の冒頭も,そんな感じだったな。
とにかく,見えないはずのものが見えるというところが,なんというか新しいのだけどどこか怖くて,現代的すぎて。うまく言えないのだけど,現代の私達のなんでも見たい欲を具現化しているように思えました。ほんと,うまく言えないのだけど。一線越えた感。

あやちゃんの「わたしはなりたくないわたしになっていく」とか「家族でも好きな人でも私以外他人」みたいなやつとか,じっこ先輩の「友達なんていないけどみんなもそうなんじゃないか」みたいなやつとか,中学生女子というか,女子に限らず思春期の子であればみんな触れるようなところをツンツンつついていて…,それが春だから,もうなんというかチューンと鋭いニードルでつつかれたような気持ちになりました。
あとなんで2001年の秋なんだろう。今(2016年)から逆算すればそうするしかないのか。2001年の秋にあったあの事故というかテロのことを語る部分がありましたが,私もお風呂上りにテレビをつけたらその映像が流れてたって感じだったので,案外あの時期の中学生はみんなおんなじようなこと経験してるんだと思いました。笑 ワールドトレードセンターをジェンガに見立てていたやつは,おぉっと思いました。

タイトルの,『てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、 つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。』って,最初読んだときものすごく難解で,わけわかんなくて,そのまんま劇場に来てしまったのだけど,舞台から何度も何度もそのタイトルが聞こえてくると,段々イメージすることができてきました。「ここで点とは何のことを指すのだろう」みたいなせりふがありましたが,その立体は学校なのかもしれないし,「こんな町」なのかもしれない。ことなった世界は,中学生の子ども達そのものかもしれないし,住人ひとりひとりかもしれない。私達は存在そのものが世界。なのかもしれない。ひかりは,希望なのかもしれないし,思い出なのかもしれない。

あとはじっこ先輩がとってもキュートだった…。高校時代から含めて,あんなアクティブなじっこ先輩初めて見ましたよ…。踊るし側転するしその直後せりふあるし鹿に飲まれて森に行っちゃうし。なんなのじっこ先輩。かわいすぎる。笑

かわいいと言えば舞台もとっても素敵だった!舞台中央にどーんと置かれているテントがかわいいなぁとは思っていて,なんかテントのメーカーのタグみたいなのついてる~と思っていたのですが,そのタグっぽいやつには「mum & gypsy」とプリントされていて,読み取れた瞬間「!!!」ってなりました。終演後舞台側からロビーに出たのですが,よくよく見ると舞台のはじっこに木製のアルファベットの置物があったのですが,それも M U M A N D G Y P S Y って並んでて,きゅーんときました。かわいい~。かわいすぎる~~~。

知り合いの方が所属されているカンパニーということを差っ引いても,私藤田さんの作品や演出が好きなのだと思います。抑えられた表出から滲み出る感情,抑えられていた表出を取っぱらったときの力強さ。この,泣きそうになってしまいそうな感覚。消えてしまいそうな感覚。生きることにも死ぬことにも精一杯なこの感覚。あの言葉はこの言葉に繋がっていて,別の意味合いを持つと感覚的にわかる瞬間。たまらない気持ちになるのです。

音楽と映像も素敵で,音はほぼ常に存在して,先月観た映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』を思い出しました。映像もカメラと元々用意されている映像とのリンクがどうなってるんだこりゃ!って感じで。あとイチロージローサブローのアップ具合とかたまらなかった…。

新しい春,新しい劇場にふさわしい,キラキラしてヒリヒリする,大切にしたい舞台を観ることができました。
ルミネ0が素敵な空間に育ちますよう。そしてこれからもマームを観ていこうと思えた,そんな作品でした。

Saturday, April 30, 2016

テレビドラマ『わたしを離さないで』(全10話)

◇STAFF
原作:カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
脚本:森下佳子
音楽:やまだ豊
劇中歌:ジュリア・ショートリード「Never Let Me Go」

◇CAST
綾瀬はるか・鈴木梨央/三浦春馬・中川翼/水川あさみ・瑞城さくら/真飛聖/伊藤歩/甲本雅裕/麻生祐未

2016年1~3月にTBS系列で放送,1~4月に鑑賞

2016年のこのクールで,特に楽しみにしていた作品。作品自体を読んだことはなかったのだけど,『天皇の料理番』の脚本家だったし,多部未華子主演で蜷川幸雄が舞台化していたのもなんとなく覚えていたので,絶対当たりだと思っていました。

初回は気合いを入れてリアルタイムで観ていたのだけど,翌週から徐々に放送時間と私の生活時間がずれ始め,今日ようやく全話観ました…。

どどど,どシリアス…。
わかっていたけどどシリアス…。全然笑えなかったし,全然泣けなかった。久々に感情移入できなかったけど,それでも観たい欲求にかられるドラマでした。

登場人物の幼少期から青年期まで描かれる作品で,1,2話は子どもがメインで出てくる回なのですが…
子役が!すごいぞ!

私の好きな鈴木梨央ちゃんは安定感ばつぐんだし,この作品で初めて見た中川翼くんはちょっと無理して笑ってる感じがとてもよかった。瑞城さくらちゃんは飯豊まりえに似てる感じの子で,いじわるそうな目とか表情が印象的でしたー。
あと珠ちゃん役の本間日陽和ちゃんも,ふくふくしてる感じが良かったなぁ。大人になったらアジアンの馬場園梓さんになっているのもすんごい自然でした。
おそらく大人のメインキャスト(綾瀬はるか,三浦春馬,水川あさみ…)から逆算してこの子役達だとは思うのだけど,すごい自然に成長してる感じで,子役の力量を感じるドラマでした。
(鈴木梨央ちゃん→綾瀬はるかのパターンは『八重の桜』でもそうだったから,なんかこの二人の相性っていいんだろうな~。)

回が進むにつれて,鈴木梨央の無邪気な笑顔と綾瀬はるかの表出を抑えた表情の対比が強くなっていって,胸が苦しくなりました。学習性無力感という言葉が合うドラマですね…。

そうそう。私結構食わず嫌いなところがあるので,三浦春馬のお芝居ってあまり好きではなかったのですよね…。いやちゃんと食ってて,2006年に観たドラマ『十四才の母』の演技がびっくりするくらい棒っぽかったので,(なんてへたなんだ!)と思って,以来そんなに観てなかったのです。(ひどい。笑)
久しぶりにまともに演技を観たのが映画『永遠の0』で,そして今回…という感じなのだけど,純粋でやや受け身で,そんなに多角的に物事を捉え(られ)ない今回の役柄は悪くなかった…気がする…。なんかこれだけ読むと悪口のように聞こえてしまいますが,友の役柄の話をしているのであって,三浦春馬くんの悪口ではありません。断じて。
あとやっぱり目力強い役者さんだなと再認。顔の他のパーツにあんまり変化がない分,目で訴えているシーンはついつい見入ってしまいました。

でもって美和よ…。この作品の中では,ある意味一番人間らしいなぁと思います。もちろん嘘つくし,騙すし,陥れようとするし,こんな人が私のそばにいたらたまったもんじゃないのだけど,生きることに貪欲で,欲求のままに生きるあたりは恭子と正反対で,ちょっと病的で,見てる分には良かったです。笑 ほんと,いるよね,ああいう子。最期の最期まで生に対する欲求に溢れてて,このひとのエネルギーってどこから出てくるんだろうと思いました。

そして気づいたら柄本佑がちょいちょい出ていたのですが,登場回数は多くないのにすごく素敵なスパイスになっていますね…。あの悟りを開いたような,一段階上にいるような雰囲気はなんなんだろう。必死にもがいている恭子達を上からお兄さん的に見ている感じで,恭子はあの人に救われた部分が結構あるんじゃないかな。そんな気がします。


素敵だったせりふやシーンを,忘れないために書いておきたいので,ここでつらつら並べてみます。

作中何度か出てきた,
「芸術は魂をさらけ出す」。
→さらけ出すという表現がいいよね。丸裸にされる感じで。

#8
「連れてきてくれた。みんなが私を。ここへ。」
→友達を何人も失った恭子が,運命に対してこう表現しているあたりが素敵だった。

#10
「私達は私達の作ったものに逆襲されるんですよ。」
→これはクローンに限らず,科学や技術が発展すると自ずと出てくる問題なんだろうなと,ふと思い。近年AIとかが人間の思考を超えてるあたりも,ちょっと怖いななんて思います。

「俺生まれてきてよかったよ。この世に,恭子がいてよかったよ。会えてよかった。こんな,終わり方ができてよかったよ。」
→このせりふを聞いている恭子の表情がたまらない。表出を抑えまくってる大人になった恭子の,一番素直な表情だと思うのです。

「友。もし…もし今日,今日…三度目で友が終わらなかったら,私,終わりにしてあげてもいいよ。」
「ほんとに?」
「友がそっちの方がいいんだったら,それくらいだったらできるよ。」
「じゃあ…できるだけ,ちゃんと終わるよ。そんなことしたくないでしょ。」
「平気よ。慣れてるから。」
→これはナレーションみたく声だけ挿入されてる会話なのですが,“死ぬ”ことを“終わり”という表現にしていたり,「してあげてもいいよ」みたいに軽い表現にしていたり,そしてこれをさらっと言っていたり,とにかくまともに死に直面できない2人の精一杯を感じられて,軽く聞こえる分苦しい気持ちになった部分でした。慣れてるからって…慣れてるからってなんなのー。って。


なんか,深い話すぎて全然追い付けないのですが,やはり生きることは私達の原点で,生によって自分自身が支配されているのだなということを感じる作品でした。
ちょうど,私自身も健康面でおや?って箇所が見つかったところで,生きることについて向き合ったり先延ばしにしたりしていますが,やはり生命の自由がないと心の自由もなんもないなということを再認しました。当たり前すぎて考える機会自体無くしていたけど,根本の根本について触れられたような,そんなドラマだったなと思います。

Friday, April 29, 2016

『美少女戦士セーラームーン展』

@六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー内 スカイギャラリー

未就学時から小学生の頃,本当にハマっていたセーラームーン。
小学3年生の頃は,「リカちゃんってまだ好きなの?」とからかわれていたものです。そこからひっそり好きで居続けたセーラームーン。
でも,大学院生の時に家庭教師で教えた中学生のお子さんが私以上に好きで,やっぱり私も好きだったなと再認していたのでした。

ので,行ってきましたセーラームーン展。

内容としては

  • 壮大な愛と戦いのストーリーをまとめた公式年表
  • 武内直子先生のカラー原画
  • 「なかよし」の付録・アニメ関係の資料・アニメ関係のグッズ・ミュージカル関連の衣装や台本など

といった感じなのですが,もう懐かしのあれこれが見られて非常に贅沢な時間を過ごせました。

今改めていろいろな資料や設定に目を通すと,うさぎちゃんたちってどセレブだなと実感…。
レイちゃんの通うTA女学院は東洋英和のことだし,うさぎちゃん達が通う区立十番中学校は麻布十番のことだし,原作とかではうさぎちゃんが「こんどのまこちゃんの誕生日,あたしはローラアシュレイの○○をプレゼントしようかな」とか言ってたコマが(確か)あったし…。これで中2ですからね。彼女。笑
本当に,女の子の憧れがいろいろ詰まってた作品なんだなーと思いました。

あと,武内先生のカラー原画がとにかく美しくてどびっくり。まるで絵画を観に行っている感じでした。とにかく線が細くて細くて細かくて。んもーうっとりしてしまいました。武内先生の原稿というか絵って,カラーページと本編でキャラクターの表情が全く違って。カラーページの大人っぽい表情は,当時見るとうう~んと思うこともあったけれど(←かわいいものが好きだったから),今見るととっても深い…!憂いとか威厳とか,そんなものを纏っている感じ。これが「なかよし」のカラーページだったと思うとすごいな…。

アニメのキャラクター設定やセル画も,アニメからセラムンの世界にハマった私としてはたまりませんでした。
特にキャラクター設定の絵なんかは,描いているひとの愛というか,好きでこういう仕事してます!という雰囲気がたーっぷり伝わってきました。表情とか,ちょっと書き添えている一言とか,そういうところからキャラクターへの思いが滲み出てくるようで。セル画も手描き感満載だし,初期の「セーラームーン」から「セーラームーンSS(スーパーズ)」あたりで絵がものすごく今っぽくなっていて,日本のアニメーション技術の変遷なんかも軽く感じられたり。笑

「なかよし」の現物とか付録とか,ゲームソフトとかパズルの「できるんです」とか,もう懐かしくて懐かしくて,好きなものを好きだと再認できるってとっても嬉しいことだなと思えました。
そして改めて,少女漫画でこんなにも長い間愛されて,日本にとどまらず世界各国で愛される作品ってこれくらいしかないのでは。私のセーラー服に対するあこがれも,この作品が原点なんだろうなとふと気づきました。もう着られないけど。笑

天空のミラクルロマンスにどっぷり浸かれた企画展でした。立地も,この場所でやることに意味があるんだろうなーと思います。もしもう一度行けるなら,今度は夜に出かけてみたいです。

Saturday, April 9, 2016

映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』

◇STAFF
監督・原作・脚本:岩井俊二
音楽:桑原まこ

◇CAST
黒木華/綾野剛/Cocco/原日出子/地曵豪/和田聰宏/毬谷友子/佐生有語/夏目ナナ/金田明夫/りりィ/野間口徹

製作国:日本
公開:2016年
上映時間:180分

(2016.4.9 劇場で鑑賞)

映画『四月物語』とか,テレビドラマ『謎の転校生』とか,正直岩井俊二監督作品はこれくらいしか観たことないのだけど,私はこのひとの作品が好きです。淡くて,ふわふわした世界観。春風みたいな,暖かいようなちょこっと鋭い冷たさがあるような,懐かしいにおいがするような。そんな世界観。

作品が180分と知ったときには(タイタニック…?(´⁻`)?)って思っちゃいました。私が初めて『タイタニック』を観たのはVHSでだったのですが,2本あったのがとっても印象的でした。テレビで放送するときも前編後編で分けて放送することが多いし,あれとほぼ同じボリュームか~と思うと若干重たい気も…。笑

でも,観終わったら結構あっという間な感じ。『タイタニック』は登場人物もエピソードも盛りだくさんだけど,この『リップヴァンウィンクルの花嫁』はじっくり話が進むので,情緒のゆらぎを感じたい私にとってはとても満足な映画でした。
なんだろう。ドラマも映画も,そして舞台も,キャストがその役を演じていて,そこにいるのは本来キャストではないはずなのに,この映画は普段観ているお芝居以上に,本当に,演じてる感じがしなくって。スクリーンにいるのは黒木華で,綾野剛で,Coccoなんだけど,なんかもうそのひと達はスクリーンにいなくて。同じ顔をした人達のドキュメントを観ているような。そんな気持ちになりました。

やっぱり黒木華が,とても良かった…。『花子とアン』とか『天皇の料理番』とか,ちょっと昔の役のお芝居を見ることが多かったので,このSNS全盛期の現代でどんな風に生きるんだろうと思ったら。核がないような,根を張れることなくここまで来てしまった感のある女性の雰囲気が本当に自然に出ていて,終始うっとりうっとりしていました。そう。七海の感情を本当に丁寧に描いていて,私もものすごーく揺さぶられました。七海が鶴岡家から追い出されて,安室さんに「ここどこでしょう」と電話するところとか。居場所がなくなったというか,もともとが浮遊してる存在だったことが自分でもわかってしまって,孤独というよりはただただ不安というところがぶわーっと伝わってきました。人生の迷子ってきっとああいうことを言うのだろうな…。
でも,真白さんと出会って,自分と全くタイプの違うひとと出会って,真白さんの感情に触れることで七海の感情や意思に七海自身が気づいて,根ができていく過程が追えたような気がします。映画の出だしの細々とした声から,ラストの引っ越しが終わって「ありがとうございました!」を安室さんに言った時の声の張りの違いにこのひとの成長が詰まってる気がして,心地よかったです。

綾野剛のあの掴みどころがない感じも,なんなんだろう…。笑
安室さんは,「役者もやってるけど今回は安室で」と名乗っていたけど,もしかしたら真白さんと以前共演とかしていたのだろうか。何でも屋といっても真白さんにはどこか私的感情が入ってる気がして,その頂点が真白さんの実家でのあれな気がして,そう思うとまた見方もちょっと変わるかなーなんて思ったり。
そうそう。映画に出てくるLINEぽいやつの「アムロいきまーす!」のスタンプがたまらんかったです。笑 何あれ。自作したんですか安室さん。笑

「まるでドキュメントみたい」とさっき言いましたが,特にそう錯覚させられたのは冴子さん役の夏目ナナの演技。キレイな女優さんだなーと思っていたのですが,後で調べたら元AV女優さんなのですね。AV女優さんから女優さんに転身したひとってあんまり知らないので,そんなルートもあるのか~と思いました。今回の役柄も含めていろいろ納得です。私の今後も気になるひとリストに追加しておきます…。

そうそう。原日出子怖かった。笑
私と原日出子の出会い(?)はNHKの朝ドラ『天うらら』だったのでそのイメージが強かったのですが,今回はやたらリアルで恐怖でした!表情とか視線とか。こんな姑イヤだな。化粧が濃い原日出子は怖いんだなと思いました。笑 ほんと,リアルで,こんなひとに責められたら私もしゃっくり出ちゃうな…。

カメラワークと画面に収まってるひとたちの心の距離というのかな。そういうのがリンクしてるように見えて,そこも私がぐっときたポイントのひとつなのだと思います。画面に出てきているひとたちの心的距離が遠いとカメラも遠いし,心的距離が近いとカメラも近いし(七海と真白のウェディングドレス姿のシーンとか),画面から関係性が溢れてくる感じでした。
ほぼ絶えず流れる音楽も,春とか幸福を思わせるような曲ばかりで,だから全体的に画面が明るいように見えたのかな。とにかくふんわりふんわりしている,そして力動がしっかり丁寧に描かれている,とても私好みの作品でした。

あと,「七海」とか「真白」とかって名前も素敵だよね。「真白」はまんまなのだけど,ナナミって響きはいろんな字で当てられるのに,七海。広い世界に行けるはずなのにどこにも行けなかったひとから,小さなアパートに引っ越して出発地点に立てた。港にたどり着いた。そんな感じがする,素敵な名前だなぁー。

でも一ヵ所よくわからなかったのは,七海が五反田のホテルに閉じ込められて安室さんにヘルプ出して迎えに来てもらうところ。高嶋さんと安室さんがすれ違うところで,(あれ?この二人ってどういう関係?)と思って。もう一回観ればわかるのかな?うーん。

やっぱり岩井俊二作品が好きだ。と思った一作でした。私も生きていこう。本当は幸せだらけのはずの世界で生きていこう。
実家にいろいろ録りためてるので,お盆に帰省したら他の作品もじっくり観たいと思います。

Tuesday, March 29, 2016

東京都立桜町高校演劇部 桜演祭3年演目『ラインダンス』

(東京都立桜町高校演劇部Twitterより)

@日本工学院専門学校 蒲田キャンパス6号館

作:福島美羽
出演:東京都立桜町高校演劇部

桜演祭の後半は卒業生の演目。パンフレットには「私たちが最後にやりたいことを色々詰め込んだ舞台になっております」と書かれていて,(じゃあ踊るんですね!タイトルにも入ってるし!)と思ってはいたんですが,幕開きから本当に踊ってたのでびっくりしました。笑 ジュリが指ぱっちんして始まるのがかっこよかったー☆

“そのお芝居に対する本気”って,演技とかそういうものでもちろんわかるんですが,この作品の場合ビジュアルが攻め攻めで,そのあたりから皆さんの本気がびしばし伝わってきました。
特に髪の毛いじるって結構大変なことだと思うんですよね。その日限りで原状復帰(?)できるものでもないし。まさかの赤髪金髪茶髪紫髪…!金髪茶髪はまだしも,紫って…!と,非常にびっくりしました。ヘアチョーク?とかなのかしら…。色もそうだし,メガネくんの髪の短さとかは明らかに役のためだと思うと,覚悟がすごいです卒業生の皆さま…。
登場人物の皆さんには一人一カラー担当色があって,「よくあるやつ」と言えばよくあるやつなのだろうけど,服の色はもちろん靴やネクタイなんかの小物の色も結構細かいところまで統一されてて,いいなーって思いました。(個人的にメガネくんのおリボンの色が好き)

あと登場人物もそこそこいたので見分けられるのだろうかと思ったのだけど,ビジュアル+名前で個が確立しまくってました。キャンディとかピコピコとか,素敵…。あとめっちゃ悪いひとなのに「ユメシマ」というのも素敵。

そうそう。そのユメシマがやばいやつだとわかったメガネくんの行動に,ものっすごい裏切られました。裏切られたというか,(そっちか!)みたいな感じ。私はてっきりユメシマに毒を盛った飲み物でおもてなししてやっつけるのかと思ってました。親にも謝ってたし…。なんか,追い詰められて子どもを殺害したあと無理心中しちゃう親子ってこんな感じなのかもしれない。大切だから,守るために殺してしまう。そんな感じ。ガスの音が,彼や彼女達の夢や希望を吸いとる音のようで,つらかったです。
ジュリ達は自分達がステージに立てること,つまり自分達がそこに存在していることを他者に知ってもらうことを心待ちにしていることをメガネくんは十分わかっていて,仮にユメシマを殺めてしまったら,そのステージ自体なくなってしまうから。仲間の夢を壊すことになると思うと,真実を知らないまま仲間を守り抜くにはそれしかなかったのかと思うと,とても切ない話です…。

子どもが子どもだけで生きている感があったのも,この作品の世界観が見えて良かったです。例えばメガネくんには保護者がいるけど家のシーンでは声だけだったり。声があるということは実体があるということではあるのだけど,出てきた時点でこの世界観はちょっと崩れちゃうんだろうなと。パンをくれるお店のひとも,いることにはなっているけど,実際出てきちゃだめなんだろうなと。このあたりの演出も,さすが卒業される方々だなぁと思います。

タイトルの「ラインダンス」はどこで出てくるのだろう~。そもそも関係あるのかな~と思いながら観ていたのですが,最後はしっかり出てきたので安心しました。笑 きっとこれが,あの子達がやりたかった,見せたかったものだと思うとこれまた切なかったですが…。私も余興でやったことありますが(←え),あれホントにタイミング合わせなきゃキレイじゃないし,はじっこの人が前とか後ろになっちゃって斜めになってもだめだし…チームワークを要するパフォーマンスですよね。ラストはみんなで一緒に生きてく感というか,そういうものを感じたような気がします。

そして何を隠そうカーテンコールにやられました。涙ポロポロの状態で挨拶されている卒業生さんが「ありがとうございました」で締めて,幕も閉じる~かと思いきやあとちょっとのところで閉じなくて,「え?」ってなってる卒業生さんのところに『酒呑の女』のテーマソングが流れちゃうとか。歌えないはずの1年生さんも歌って,作品のラストみたいに桜吹雪がぶわぶわとか。見ているこっちまでびっくりするし感動するし,涙なしには見られないカーテンコールでした。桜町の1,2年生の皆さんには見えなかった(と思われる)卒業生さんのサプライズに対する素の表情は,観客だけのお楽しみです。いいもの見せていただきました。

ほんとに,3月末に卒業生さんが出演される舞台ができちゃうのも,東京ならではですね。長野県みたいに地方だったら,こうはいかないです。
きっとお芝居から離れる方もいれば続けられる方もいらっしゃるのでしょうが,桜町高校生としての皆さんのお芝居をもう一度拝見することができて満足です。今後の皆さんのご活躍をお祈りしております。
桜町の卒業生の皆さん,改めてご卒業おめでとうございます。そして素敵な舞台,ありがとうございました。

東京都立桜町高校演劇部 桜演祭1・2年演目『宙へ』

(東京都立桜町高校演劇部Twitterより)

@日本工学院専門学校 蒲田キャンパス6号館

作:知念環といのさん
出演:東京都立桜町高校演劇部

昨年度の南関東大会で『死刑囚のπ』を観て,なんてすごい学校なんだー!と衝撃を受け早1年。このひとたちのお芝居をもっと観たいと思って,昨年は六本木まで『酒呑の女』を観に出かけたり,200人しか入れない地区大会に出かけて『新竹取物語』を涙しながら観劇したのでした。
東京の高校のお芝居はそんなに観たことないですが,東京らしいというか,2010年代に観るお芝居としてはちょっと一歩踏み込んでるというか。「そこ避けても生きていけるよね,どっちかって言うとみんな避けたいところだよね」ってところにあえて突っ込んでいるようなお芝居を桜町は作っていて,このひとたちの覚悟に私は魅了されているのかもしれません。

とにかく『死刑囚のπ』で主力だった(と思われる)3年生の皆さんの卒業公演!すごい!これは観に行かなくては!と思い,出かけてきました。私は千穐楽が好きなので(いやみんな好きか),ソワレで。

桜演祭の前半は1・2年生による演目。2年生の方の創作なのかな…?イマイチわからず…。

開演前の挨拶がカタいな~と思って聞いていたんですが,わざととわかった瞬間は(やられた!)って思いました。ここが自由にできるのも,自主公演の良いところですね。

キャストさんの話をすると…。昨年『新竹取物語』の社長さんを見て,(あの人まじすっごいわー。桜町の幅が広がるわー。)と思っていたのですが,今回はまさかの主役♡主役♡♡♡(大事なことは2回。)
いやまじで,びっくりするくらい美しいから!星の精って言われても納得しちゃうから!笑
ほんと,モデルさんか何かのお仕事されてますかってくらい,びっくり美しい1年生さんが主役だったので,もうすんごいすんごいすんごい,目の保養になりました。はぁぁぁ…。(ため息)
ということで終始カノンちゃんにくぎ付けでした。
やっぱり美しいって正義で,目がいっちゃうんですよね。うっとり。でもそれだけなら別に,ホントにモデルさんで十分だと思うんですけど,ちゃんとお芝居もできる方なので総合的に強かったです…。
カノンが身の周りのものに興味を示して学習していくところとか,初めて金平糖を食べたときのピコーンという感じとか,文字が書けたときの嬉しさ,誰にも触れられないように気を張ってるところ…なんかがちゃんと見えて,新鮮なんですよね。特に新鮮さって稽古を重ねていくとキャストさんご自身が慣れてしまうから薄れてしまいがちだと思うんですが,カノンちゃんからそういう空気感がちゃんと伝わって来たのでびっくりしました。人生のときめきを一緒に味わえた感じです。

カノンちゃんがぐいぐい物語を回すひとだったので,宙くんのへなちょこ男子っぷりが映えてて素敵でした。(ほめてる)
ていうかあれですね。今回は男性キャストのみなさんが全体的に穏やかだったり空振りしまくってたり…という感じでしたね。女のひとって怖いなァなんてこともうっすら感じました。笑

あと,『竹取』で小松さんだった方や明菜ちゃんだった方は見てぱっとわかったのですが,芳野さん役だった方は途中で気づきました。いやびっくり。芳野さん,本当に主婦感があったので(ほめてる),髪型とメイクでこんなにも人は変わるのかということを再認しました。
天野さん的には先生のことが大好きだし,尊敬してるし,多分ちょっと男性としても好きで(だから結婚もできないというかしない),私が支えなきゃ感があると思うんですが,そう思えばそう思うほど宇くんには嫌われるんでしょうね…。笑 あるあるというか,構図としてはわかる気がして,微笑ましかったです。老年期の天野さんはビジュアルにとっても質感があって,でもカーディガンは当時のものを使いまわしていて,なんだか素敵でした。

宇くんの単語を出したのでそのまま宇くんのことを言うと,かわいかったなー。キャストさん,色素が薄い方で,瞳の色がキレイで見入っちゃいました。(へんたいではありません。念のため。)
高校演劇で小学生男児をやれるひとって,サイズもそうだけど体型もやっぱりあって,特に棒っぽい脚が男児らしさの鍵だなということを先週の長野県長野東高校の公演でも感じたので,誰にでもできるものじゃないと思うとこのキャストさんの武器だなーと思います。

そう!先週ちょっと似たような舞台を観て,そこで出てきた星球がものすごーくきれいだったので,桜町のイルミネーション感たっぷりの星はちょっと残念だったかもしれない…。ピカピカチカチカ一定の間合いで光るので,そこと登場人物の心のスピードが合っていなかったかなと。ものすごい凝っているわけではないのに魅せる舞台美術を創れるカンパニーさんだと思うので,今後期待です。あ。でもホリゾントっぽく使っていた布に当てている光が素敵だったな!オーロラ色っぽいやつ。あれはカノンちゃんが出てくるところで使われているのかな?

作品のことですが,私も高2の時は地学を履修していたくせに天体のことは詳しくなくて,カノープスとか爆発とかよくわからず,そもそもなぜカノンちゃんは星から落っこちてきたんだとか途中で思ってしまったり,「罪を犯した」ってせりふは聞こえてくるけど実感がわかないなとか思ったところもありましたが,この世界を楽しめたので良かったかなと思います。

でもってなんとなくですが,『新竹取物語』と似ている要素があるように感じたんですよね。作っているひとたちがその時のメンバーなのでそう感じたかもしれないんですが,なんだろう。2人だけの世界というか。守りたかった世界というか。それを守ろうと必死で,でも壊されちゃう儚さ…みたいなものなのかな。うまく言えないけど。『新竹取物語』だったら明菜ちゃんとかぐや,今回だったら宙とカノンとか,宇と光とか。それは時の流れからするとある意味当然なのだけど,そこを維持したいと思う純粋さとかすがりたい気持ちが切なくて,胸がチューンと痛みました。
(何気にかぐやが出てきてびっくり。こういうことできるのも自主公演のいいところ。笑)

歌っちゃうし踊っちゃうし小道具細かいし(おじいちゃんの本の装丁が良い),星の精の衣装が細かいし(裾の形がみんな違う),丁寧に作られているお芝居だったので近くで観られて本当に良かったですー。地区大会の会場と思うと元長野県民からするとホントびっくりなんですが,自主公演にはぴったりの場所ですね。

『死刑囚のπ』をやられた2年生さんがこれでほぼ引退とのことで,時の流れを目の当たりにしてつらいです。笑 でも!皆さんの引退公演を拝見できて満足です!また来年日程が合えば卒業公演にお邪魔したいです!
ただの感想の羅列になってしまってすみません…!1,2年生の皆さん,お疲れ様でした。パワフルな舞台をありがとうございました。

Thursday, March 24, 2016

長野県長野東高校演劇部・サプライズ発表会☆『銀河鉄道の夜~吉里吉里国ものがたり~』

(公演パンフレットより。生徒さん・卒業生さんのお名前が載っているため一部加工しています)

@ホクト文化ホール

作:清水信一
出演:長野県長野東高校演劇部現役生・卒業生の皆さん

昨年度の長野県大会で長野東高校を知り,早1年半…。(いやでもまだ1年半なのか。)
まさかこんな公演にも足を運んじゃうとは。人生って何が起きるかわからんといろんなところで言ってますが,やっぱりわからないものですね。

とにかく,昨年度の県大会でこの『銀河鉄道の夜~吉里吉里国ものがたり~』を観て,このカンパニーだから創れる世界観にじんわりじんわりやられてしまったのでした。
それをきっかけに「この人達のホーム(文化祭公演)に行きたい!」「3年生の引退になってしまうかもしれない地区大会に行きたい!」「1・2年の新体制になった公演に行きたい!」と思いおでかけを重ねていったところ,気づいたら今年度の長野東さんの一般向け公演をコンプリートしてしまいました。これはもしやストーカーと言うのではないだろうかと若干自分で自分に引いています。←

そして追いかけまくったご縁(←勝手に言ってみる)で,今回の公演のお誘いをいただいたのでした。
なんと作者で長野東の顧問である清水先生が今年度で異動されるとのことで,卒業生と現役の皆さんでまたこの作品を上演されるとのこと。昨年度の県大会作品の中でも特に心を動かされた作品をもう一度観られるなんて!しかもホクト文化ホールを借りちゃうなんて!と思い,仕事を早退して平日夜におでかけしてきたのでした。笑

し か し 。

早退する直前にうっかり上司につかまってしまい→職場を出るのが遅くなり→よりにもよって通勤で使う路線のダイヤが乱れており→予定の新幹線に超ギリギリで間に合うかどうか!
という状況に…。
駅の構内で走れるところは走ったのですが20秒くらい間に合わず,最終的に開演して5分くらいで会場に着席できたのでした。無念…。東京駅のホームに着いた時の絶望感は,多分ちょっとの間トラウマになると思います。笑

私の事情は置いといて…。
あ,でもまた私の話になってしまうんですが(あれ),私も高校を出てから高校でお芝居を作ったことがあったんです。修士1年の時に。半年くらいかけて稽古してたから,もうM1の秋までは何しに大学行ってたんですか?って言われても仕方ないくらいのスケジュールでした。何を言いたいかというと,超超超大変だということ。普段の生活もあるのに,それに加えて公演の準備や稽古もあるなんて。だけどパンフレットを拝見すると卒業生の方のお名前がたくさんあって,ものすごい覚悟の上でこの公演を迎えたと思うと長野東の皆さんの意気込みの強さが感じられました。

でもって,会場のセレクトも素敵。
2014年度のオリジナル版を上演したホクト文化ホールをチョイスするところも,リベンジしたいというか思い出を更新したいというか,きっとそういう意味合いもあるんだろうなと思って。
個人的に私もこのホールはすごーくすごーく悔しい思いをした場所で,昨年度来た時も非常にフクザツな気持ちでした。当時の悔しい気持ち,昨年度や今回のような切ないけど満ちた気持ち,いろいろ抱えて生きていくのだわ…なんてこともしみじみ思いました。笑

やたらいろいろ書いてますが,ようやく本題に…。
2014年度のオリジナル版と同じ役の方,当時とは違う役で出演されていた方,今回新たに役に就いた方,いろいろでしたが,特に同じ役の方のお芝居を見られた時は,もうなんとも言えない感動みたいなものがありました。2003年に観た長野県田川高校演劇部『神々の国の首都』でも思ったのですが,高校演劇の年度を越えた再演で,オリジナルキャストがそのまま続投って奇跡に近いと思うのです…!今回だとセイコとジョバンニ,ケンジと車掌,ふたばちゃん,王子役の方がそうで,(その声でそのせりふ,聞いたことありますーーーーー!)って感じになりました。時の流れとか,目の前のキャストさんの1年前より深いお芝居とか,そういうものを感じて,もう序盤で涙出そうになってました。本当にこの4役の方は安定感があって,もう一度皆さんのお芝居を観られるなんて夢のようでした。(特になみえちゃん役の方とケンジと車掌さん役の方は今年度の大会作品では裏方さんだったので,このお二人のお芝居を拝めたのは本当に嬉しかったですー。)
前回も出演されていたけど今回別の役…という方のお芝居も,登場人物のキャラクターが広がった気がして,新しい感覚で観ることができました。そして新しい役でも特に違和感なくすすすっと観られちゃったあたりに,そのキャストさんの力を感じました…。特に社長さんとなみえちゃん…!

そう。前回は,例えばなみえちゃんとザネリと王子が同じキャストさん,ふたばちゃんと社長と誘導員が同じキャストさんであることに意味があるように思っていたのですが,今回は一人ひとりの人格がよりはっきり見えたように思います。

あと,この作品がホールでないとだめな最大の理由は,ホリゾント。
初めてこの『銀河鉄道』を観た時はホリゾントの色の深さにただただびっくりだったのですが,今回も当時の感動を味わうことができました。あの青,好きです…。そしてキラッキラの星がたまらんです。
流れ星も,流れるかな流れるかなーと期待していたら,ちゃんと流れたので安心しました。オリジナル版は上手から流れた気がしてたのですが,下手からだったので(おぉっ)と思いました。もうちょっと高いところからシャーッと流しても良いのかなとも思いましたが,以前あの仕組みを伺ったところかなりアナログなことがわかったので大変なのかとも思いますが…。(でも肝心の先生はお気づきになられなかったようで,残念!笑)

作品はもちろん,終演後の卒業生&現役の皆さんのメッセージと,先生ご自身による作品&長野東の皆さんの解説がたまらなく素敵でした。本当に部外者120%ですが,皆さんと同じ空間にいられて心から満足でした。


やたら長くなってしまった割によかったよかったしか書いていない気が…。笑
でも本当に,この公演は実際に上演できたことに大きな意義があると思うのと,その空間にいることができてとっても幸せでした。あと以前から私のTwitterをフォローしてくださっていた方とも直接お話できたことも嬉しかったです。もう無理だと思っていたことができちゃったので,不思議な気持ちになりました。

この公演に携わった長野東の皆さん,素敵な舞台をありがとうございました。
そして清水先生,長い間本当にお疲れ様でした。

Sunday, February 28, 2016

Meeekae≪ミケ≫ O・Henry’s “Jeff Peters as a Personal Magnet” - O・ヘンリーの「にせ医師物語(邦題)」-

(Meeekae公式tumblerより)

@ヌイサンスギャラリー

脚本・演出:川名幸宏
出演:丸山港都/川名幸宏
音楽・演奏:大塚るるる

まさか私のブログにみなとくんの写真が載る日が来るとは…。笑

昨年は劇団→ヤコウバスの公演を初めて観に行ったり,きせかえできるねこちゃんとヤコウバスのコラボ作品を観に行ったり,私の中ではかなり彼らの世界に浸かっていた感がありました。

がっ!もともと昨年のねこちゃんは久しぶりに集まって公演を打っていたし,気づいたらヤコウバスも活動休止になっていて,あのひとたちはこの先どうしていくのかしら~(-ω-)と思っていたのです。

すると!みなとくんと川名くんがチームを組んでお芝居をつくるというではありませんか!(・ω・)安心!彼らは彼らの道を貫くという意思がビシバシ伝わってくる!

しかもこのチームのコンセプトが…

Meeekaeは「盗作の何が悪い。作品は模倣の連続。だって良いものは良いんだから。」というちょっぴり不謹慎な理念を持ち、敬意と愛を持って再創作する演劇トリビュートチームです。
(公式tumblerより)

つ,つよい…。強気だ…。笑
第一文目が良いですね…。

もともとこの日は友達と別のお芝居を観に行く予定があったのですが,日曜の19時開演というギャラリーならではの時間設定に助けられ,ハシゴして行ってきました水道橋。

会場はヌイサンスギャラリー。カフェとしてお茶やお酒も飲めるようです。ヌイサンスってフランス語?って思ったので調べてみたら,英語でやっかい者とか困ったものとかそういう意味があるようで。語源はやっぱりフランス語で,害とか危害とか。若干予想外…。笑
でも,誰でもふらっと立ち寄るというよりはちょっとしたこだわりがある人とか,そんな人が利用しそうな感じは確かにしました。笑

さてさて肝心のお芝居。

一言で表現するならば,「場所を遊びつくすってこんな感じ!」

20人ちょっとしか座れない,この小さな空間で,横も奥も下も使って,見るし聞くし感じる。お客さんとして観ているはずなのに,なんだか能動的な50分間でした。
建物の入り口は一階。ギャラリーは階段を上がって二階。客席と,カフェ用のカウンターと,お手洗い。それが空間の全てなのだけど,例えばみなとくんが水をゲットするシーンでは本当に蛇口から水が出てる(音がする。実際栓をひねって音だけ聞かせている)し,みなとくんと川名くんでバーにやってくるシーンは本当にカランコロンと音が鳴って下から階段をトントン上がってやってくるし,なんか川名くんは鉄製の…なんだあれ?間仕切り?にいてうふふーってしてるし,お手洗いの扉の向こうは市長の部屋とかいろんな空間に繋がっているし,自由!横も奥も下も使って,いろんなところからホンモノの音が聞こえて,なんとも贅沢な時間でした。
せりふがいっぱいだし,外国が舞台だし,抽象的だし,私はついていけるのだろうか…と思っていたのですが,大丈夫でした。よかった。あと川名くんは数えきれないくらいの役を演じていたのだけど,そこもちゃんとついていけました。よかった。

そうそう。今回の『にせ医師物語』は日本語のテキストがあったわけではなくて,原文を元に川名くんが書いたんだとか。川名くんすごい…。元のボリュームとかわからないけど,50分というコンパクトな時間がとってもちょうど良かったです。個人的には外郎売入ってるのが好きでした。
どんでん返しのお芝居ってたまに出会うけど,さらにどんでん返ししたのを最後にもう一回返す!みたいな感じで,鮮やか~(´ω`)☆って思いました。なんだあのひとたち仲良しじゃないか…。っていうようなまとめ方。笑
元々のオリジナルテキストを探し出すのってセンスが問われると思うのだけど,面白い作品に出会えたなーと思います。あと原題の“Personal Magnet”ってなんだか素敵。「人はお金じゃなくて,心と○○と思いやり(○○忘れた。心かどうかも怪しい。笑)」みたいなせりふも素敵。

あとは,みなとくんのおひげすがたが見慣れなさすぎて新鮮だったのと,川名くんのああいう格好(スカートっぽいの)似合うなぁというのと,るるるさんの電車?汽車?のタタタンッって効果音が素敵だったのと,まさかの隣の部屋だか建物だかからバンドの音が超聞こえてきてコラボってたのと(でも肝心のシーンでは音が止まったからスゴイ)…,もろもろ含めて愉快な舞台でした。

そしてなぜだか同じ回に中高の先輩や同期が大集合していてもはや同窓会状態でした。個人的には満足満足でしたが,このMeeekaeの世界がもっと外に広がっていけるといいな~なんて思います。
来月は早くもリバイバル公演(再演)が同じくヌイサンスギャラリーで催されるようなので,精力的で良いですね。「ふたり」って社会集団の最少人数で,いろいろな経験を経て敢えてこのふたりでチームを組むのだから,きっと今後もあれこれ見せてくれるのだろうと思います。Meeekae。

そんなこんなで,みなとくんと川名くん,お疲れ様でしたー。
ギャラリーにも,ひっそり落ち着きたいときなんかにおでかけしてみたいなと思いましたー。(ちょっと変わった植物?木がお出迎え!)

Friday, February 26, 2016

開幕ペナントレース 『ROMEO and TOILET』


@シアタートラム

脚本・演出・美術:村井雄
出演:高崎拓郎/G.K.Masayuki/岩☆ロック/ささの翔太/竹尾一真/針金信輔/山森大輔

知り合いの方に誘っていただき,観に行きました。
シアタートラムには何度も足を運んだことがあるけど,オールスタンディングの舞台って初めて。
そしていろいろ衝撃的なパフォーマンスでした。

わりかし近めのところにいたので,キャストの方に絡まれました。嬉しかったです。笑

なんとも言葉にしがたい,けれどなんだか切なくて温かい。そんな時間でした。

舞台セットの大量のトイレットペーパーが,ほんとすごかった…。

Sunday, February 14, 2016

長野県高校演劇リーダーズシアター team昆虫図鑑公演『あくしょん!』

@ピカデリーホール

作:郷原玲
出演:team昆虫図鑑

長野市民演劇祭におでかけしてきた1週間後,今度は中信地区に行ってきました。
例えば諏訪地区とか,長野県の他のエリアでは合同チームで作品を作り上げる機会は既にあったようなのだけど,中信地区は今回が初めてとのこと。中信出身のニンゲンとしては非常に新鮮というか,新しい時代になったのだなぁーと思いました。そういう企画が好きな先生が中信にやって来たからなのかと思っていたのですがおそらくそれだけではなく,2018年にやってくる信州総文のベース作りの意味合いもあるのだとか。
もし私が現役のときにこんな話があっても,おそらくどこもこういう企画には乗らなかっただろうと思います…。当時はとてもバチバチしていて,皆自校に対するプライドが高くて(←多分),自分達の作品レベルがどうであれ他校とやるなんてまっぴらごめんだ!と思っていただろうから(←多分)。そういう意味では,今全国総文が長野県に回って来てよかったなーと思います。笑

パンフレットをぺらりとめくり,作者の郷原先生の言葉を読み,私の中で「そうかも」と思っていたものが「やっぱそうだわ」に変わりました。美須々の『B面』や『木の葉…』なんかを観ていると,郷原先生ってご自身が演劇やりたい方なのかなーと思っていたんですが,やっぱそうなんだな,と。それが良い悪いとかではなくて,熱いな…って。しみじみ。笑 多分そういった精神的な若さがないと演劇部の顧問って生徒についていけなくなる気がするので,中信はしばらく大丈夫かなと思いました。←
ちなみに先生は劇団を解散させることの寂しさについて書かれていましたが,解散によって寂しくなるのは当事者の方だけではないなぁなんてことも今回の公演を通して感じました。

この公演をわざわざ!わざわざ!(強調)観に行った最大の理由としては,現2年生の皆さんの舞台を観たかったから。
私は昨年度から再び高校演劇を観るようになり,この2年で今回参加している3校は最低限地区大会を観ていて,プラス県大会とか文化祭公演なんかにも足を運んでおりまして。なので今の2年生の皆さんのことは,1年生のときからがっつり観ていたのですよね(なんかストーカーっぽいな…。焦)。だから私の中で今の深志とか蟻高,美須々なんて言ったら,現2年生の皆さんのイメージ。なんとなく,また次も地区大会なんかに出かけたら彼・彼女に会えそうな気がしちゃうのだけど,もうそんなことないんだなということにふと気づきまして。来年度は文化祭に足を運べない可能性大なので,今の2年生の舞台を拝むのはこれが最後になるのでは!という結論に達し,日帰りで東京からびゅびゅーんと観に行ってしまったのでした。


感想です。

実に充実した1時間でした。

ピカデリーは中3の時にまつもと演劇祭のお手伝いとかでよく通っていたと,私が自分の意思で初めてプロのお芝居を観たのがここだったので単純に懐かしかったし,いろんなところから想像力を持ち寄るとこーんなに面白い空間ができちゃうのか!という思いです。
3校が一緒になっていろんなところでお稽古していたみたいなので,(舞台セットとかどんななのだろうか…)とか気になっていたんですが,舞台上で出てくるのは2,3脚のパイプ椅子のみ。あとはぜーんぶサラ舞台でやってのけちゃう。でもちゃんと,そこがどこであるかがわかる。高校生のパワフルなエネルギーで押し通す,超超アツイ舞台でした。
でもって,ぱっとキャストさんを見ただけでどこ高校のだいたい何年生の方かわかってしまう自分がすごい気持ち悪かったです。←

今回一番新鮮だったというか,(おぉぉ♡)と思ったのは,リオ役の方!
地区や県大会では蟻高のどシリアスなお芝居を観ていて,どちらかというと感情を統制したしっとりしたひと(男性・女の子)を演じていらした印象が強かったのですが,めっちゃイライラしている!そして表情がついている!!!このひとこんなお芝居もできるんですねー!という感じで,ぐいぐい見てしまいました。すんごいイキイキしていて,とっても魅力的でした。
(…という文章を書いていて,全体的に蟻高の方は“なんだこの人達ここまでできるじゃん感”を感じたなということに気づきました。良くも悪くも蟻高の皆さんって感情をコントロールしすぎているお芝居が多い気がするので。素の皆さんが“イイコ”なのか演出で抑制されているのか何なのか謎だったんですが,後者だったんだなと。)

パンフレットを見ると演出は生徒さんということになっていますが,脚本のテンションに全体のピッチがちゃんと合っているので,なんかほんと…アドレナリン全開ってこういうことだよねって舞台に仕上げられていたと思います。わちゃわちゃしてる感じとか,キャストさんご自身が本当に楽しくお芝居してる雰囲気がたっぷり伝わってきて,パワーもらえました。

だからというかなんというか,普段もそういうピッチでやっているからだとは思いますが,マユちゃんは『B面』の涼子ちゃんに見えたりアヤカ様は晶ちゃんに見えたりしましたよね。蟻高や深志の皆さんが「いつも」とは違った分,美須々は安定と表現すれば安定,全部一緒と表現すれば全部一緒だったように思います。
うん。蟻高は表情で演じているのだとしたら,美須々は声で演じているなーというのも,他校同士が同じ空間にいればいるほど感じました。どっちがいいとかそういうものではなく,やっぱり普段の環境から滲み出るものってあるよなぁと再認できた感じ。情動からお芝居をつくるのか,ビジュアルからつくるのか,そのアプローチの違いなのでしょう…。

あとあと,個人的には蟻高のヒロインさん(イケメン吉野の生徒さん)と美須々のヒロインさん(葉子さん)が睨み合ってるシーンなんかは贅沢すぎてぶはってなりましたし,冒頭の各部のユニフォームの集めっぷりが本気すぎてすごく素敵でしたし,チャーリーさんはおいしいとこ持っていきすぎだし,靴紐がほどけちゃうとどこで直すのかドキドキしちゃうし,もう皆さんやりたい放題なのにまとまってるから,もう好きにしてください…という感じでした。←ほめてる

今回上演した3校であってもそうでなくても,中信,いや長野県の演劇部に入ってくる新1年生が増えたらこの企画は本当の意味で成功なのだと思います。4月が楽しみですね。
これだけで終わってしまったら本当にもったいない企画なので,ぜひまた来年度も公演を打ってほしいなーと思います。今回の3校でもいいですし,もっと他とも組んでいいだろうし。中信全体のボトムアップになれば,元地元のひととしては嬉しい限りです。

あ。そうそう。結果論になっちゃうかもですが,県大会が終わった時,中信の学校が関東に行けなくて,私めちゃくちゃ悔しかったんですよ。本当に。なんですけど,もし蟻高か美須々のどちらか一校でも関東に進んでいたらこの企画は成立しなかったと思うので,ある意味県大会の結果は今回のこの企画のためだったのかもなんて勝手に意味づけしています。
本当に,このメンバーが揃っているこのお芝居を観ることができて,とっても満足でした。チョコ以上にいいものもらいました。笑

team昆虫図鑑の皆さま&各校の顧問の先生方,スペシャルな企画をありがとうございました~。お疲れ様でした!

Saturday, February 13, 2016

映画『キャロル』

◇STAFF
監督:トッド・ヘインズ
脚本:フィリス・ナジー
原作:パトリシア・ハイスミス『The Price of Salt』
音楽:カーター・バーウェル

◇CAST
ケイト・ブランシェット/ルーニー・マーラ/サラ・ポールソン/カイル・チャンドラー

製作国:アメリカ
公開:2016年(日本)
上映時間:118分

(2016.2.13 劇場で鑑賞)

友人に誘われ観に行ってきましたー。いつ公開されたかわからぬまま行ったのですが,まだ3日目くらいで観たのですごい満員でした…。

本当に,誘われてはいはーいとOKして出かけたので,(なんとなく同性愛の話だったような…)くらいの情報しかなく,予備知識も何もないままで観ました。

が,よかったー。とても美しい時間を過ごした!(気がする!)

画がとてもきれいでした。画が。そりゃ映画なんだから,当然なのだろうけど,テレ―ズが乗っているタクシーからの車窓とか,カメラのファインダー越しの風景とか,キャロルが運転する車から見える風景とか。車に乗っているテレーズのぼんやりした表情も,何考えてるかわからなくて良かった。
あと,テレーズが車に乗ってる時に街をゆくキャロルを見かけて目で追うシーンが2回くらいあったと思うのだけど,あそこがなんとも言えず。見えているのに,手が届かないあの感じが切なかったなぁ。

作品を観ていて,すんごいレトロな感じが素敵だなーと思ってました。あとで友人に聞いたら1950年代だと教えてもらったのだけど,いいな,50年代…。お洋服とか,小物とかの落ち着いたかわいさ。素敵。何か連絡を取るにもデパートの売り場とか,アパートメント全体の電話に掛けるあたりとかも,もどかしくていいよね。

「心に従って生きる」とか,よく言うけど,歌の歌詞なんかにもあるけど,それがどれだけ難しいことか。

なんとなく薄々わかっていることと,決定的にわかることは,大きく違うよね。大きく違うけど,そこがはっきりする瞬間って,とても怖い。キャロルもテレーズも,すれすれのところで家庭生活なり恋人との関係なりを続けていくけど,やっぱり形式とか表向きとかそういうところで繋がり続けるのは虚しいし,何より満たされない。2010年代になった日本もようやく,渋谷区だとか世田谷区でもパートナーシップ証明書を出してくれるような自治体が出てきたけど,それでもまだまだだよね。50年代で思うように生きていくことがどれだけ難しかったか。チリチリと胸が焼けるような感覚がありました。

だから映画の冒頭のレストランのシーンに戻って来たときに,「もう私達は戻らない」みたいなことをテレーズが言っておきながら,キャロルとは別のパーティーに出かけて,やっぱ違うわと気づいてキャロルの元に戻ったときは,すごい救われた感がありました。作品のいっちばん最後の,キャロルのあの表情を観るために,118分があると思える感じ。
そうそう。二人が再会したレストランのシーンを,二人の紆余曲折を経てから観ると,テレーズすごいおしゃれさんになったよね。ぱっつりした前髪も素敵だけど,カールした髪も似合う。大人っぽくなってて,きっとキャロルは嬉しかったんじゃないかな。でもちょっと,自分のかわいい子が大人になっていく切なさも感じていたと思うから,切な苦しいシーンです。あぁ,戻ってくれてよかった。テレーズ。笑

あとあと,登場人物のお洋服とか髪型もすごい素敵なのだけど,音楽!音楽がとても印象的でした!最初から,あのメインテーマっぽい曲が耳に残って,作品の世界観に引き込まれました。サウンドトラックをレンタルしようと思ったのですが,某TSUTAYA(←全然某じゃない)は来年の2月からレンタル開始とな…。う,嘘でしょ…。もう買っちゃおうかしら。

テレーズを演じたルーニー・マーラの瞳や表情がとても素敵だったな。きれいなものに惹かれているあの瞳が,吸い込まれそう。他の作品も観てみたいです。ケイト・ブランシェットも,『エリザベス』が公開されたときから気になっていたのだけどまともに観たことなかったなぁ。実家で『エリザベス』シリーズが録画されっぱなしで眠っているので,帰省したらゆっくり鑑賞したいと思います。

普段は邦画を観ることが多いので,良い刺激になりましたー。美しいものって正義。

Saturday, January 23, 2016

第51回関東高等学校演劇研究大会(さいたま会場) 埼玉県立芸術総合高校演劇部『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』

(関東高等学校演劇研究大会さいたま会場パンフレットより)

@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

作:オノマリコ
出演:埼玉県立芸術総合高校演劇部

11校中,私が一番期待していた学校はここでした。だってだってだって,この作品をやるなんて!!!!!

この作品,昨年シアタートラムでやっていて,駅でポスターを見かけるたび素敵~と思っていたのに機会を逃してしまっていたのです…。

ちなみに素敵だったフライヤー兼ポスターがこちら。
印象的ー。

それを!高校の演劇部がやるなんて!しかも芸術系の高校がやるなんて!…と,激しく期待していたのです。

観てみて→
オリジナルを観なかったことを,激しく後悔しました。

もちろんオリジナルはオリジナル,芸術総合は芸術総合なんだけど,芸術総合がハイレベルすぎて。このオリジナルって一体どんななの,と…。
SNSで,「芸術総合が仮にオリジナルの完コピでも,それでもいい」みたいなコメントを書いてるひとがいましたが,私も同感です。いやー,なんか。ほんと。専門学校の卒業公演と思って観ても全然違和感なかったです。(ほめてる。)
私は大学生になってちゃんと(といっても年に数本)コンポラを観るようになったのですが,なんかそんな要素もあって。ふわふわした羽のような,でもきちんとしなやかさがある彼女達の身体はとっても身軽で。私の好きな身体表現でした。うっとり。

そうそう。この作品も,講評が印象的でしたよね。(誰かへの同意を求めてみる。)
「敬虔」なのに「神を信じてない」とか,
「奔放」なのに「まじめで乙女」とか,
「癇癪」なのに「静か」とか。
“たった一人であり,全体である”という先生の表現が,とても印象に残りました。
さっきのフライヤー画像を探すためにググっていたのですが,他でもいろいろと上演されているのですね。中にはオリジナルや芸術総合みたいに白っぽい衣装でやっているところもあれば,一人ひとり有彩色の個性的な服に身を包んでいたり。でもやっぱ,あの講評を聞いてしまうと白以外は選択肢としてなくなってしまうなぁなんて思いもあります。

なんか本当に,女子大生として素敵な大学でスタートを切って,社会化していく一人ひとりと全体のキラキラ感が衣装や照明から伝わって来て,良かったなぁ。大人になってしまった今だから,余計キラキラ見えてしまう…。もし私も東女に入れたなら,あんな瑞々しくて素敵な時間が過ごせたのかしらと,ふわ~っと妄想を広げてしまいます。笑
余談ですが,私は東女のひとでもなんでもないけど,実は修士とか受けたことがあるのよね…。もうその頃にはこの体育館はなかったはずなんだけど。でもあの敷地の,他の大学とは違う特別感というか,厳かであり開放的であり東女というステータスのあるあの場所の空気感には,あこがれのようなものを感じました。

そう。照明が美しくてついつい見てしまいましたー。あの,冒頭とかラストらへんに組み込まれている,全員が舞台の下手上を見上げて光が降り注いでいるあのシーンとか。たまらないですね。
でもなんか,○○が「飴玉!」とか「息吹!」とか預言めいた言葉を言ってSSが入るあのシーンは,繰り返せば繰り返す程,なんだか変な意味で面白く感じてしまって,(ぬぬ…!?)と思ったりしたけど。なんだろう。あれ…。

あとパンフレットが素敵ですよね。大会のパンフレット。写真の仲良し感も素敵だし,「上演にあたって」の言葉もビビッときました。センスが素敵…。そしてスタッフさんの中に制作さんがいるのが素敵…。大事ですね,制作。

なんか作品のことは全然書いてない気がするけど,私の言葉の表現ではうまく伝えられないということです…。でも本当に拝見できてよかったー。ここが最優秀という結果も納得です。ハイレベルでスタイリッシュ。部員さんは多少の入れ替えが発生してしまうと思いますが,全国大会も観られたらいいなーと思っています。
芸術総合の皆さん,お疲れさまでしたー。そして全国大会出場おめでとうございます!広島でこの鮮やかさを魅せつけてきてほしいと思います!笑

第51回関東高等学校演劇研究大会(さいたま会場) 作新学院高校演劇部『ここにいること』

(関東高等学校演劇研究大会さいたま会場パンフレットより)

@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

作:野口夏実
出演:作新学院高校演劇部

昨年の関東大会に続いて作新のお芝居を拝見しました。あれですね。昨年の『発足!復興委員会』と同じ学校だと思うと,人と人との繋がりへの関心が大きいカンパニーさんなのかなって気がしますね。

タイトルをぱっと見て,思わずAKB48の3枚目のアルバムのジャケット写真が思い浮かびましたが,全く違いました。全く。笑

この作品を観てというより,「合唱が好きなのか,合唱部が好きなのか,この違いに気づけるか」という講師の先生の講評を聞いて,この話の“そもそも”はここかー。とようやく気づきました。同時に自分自身に対する理解も深まりました。笑
私ももちろんお芝居は好きだったけど,演劇か演劇部かというとどちらかというと演劇部が好きだったのかもしれません。だから自分の進路を考えるときに,お芝居の道なんて一切考えたことがなく,高3の授業も,大学で日本文学をやるなら日本史を6時間取るべきだし,教育学をやるなら世界史を6時間取りたい…で悩んでいました。なんか,そういう悩み方。
あと現役時代,私が朝練係だったこともあって,「7時50分までには部室からタンバリンとラジカセを持って格技室にいなければ!」みたいな思いが強かったなーということも思い出しました。朝練なんてお芝居の稽古をするわけでもなんでもなくて体を動かすことがメインだったから,正直出なくてもお芝居を作ることそのものには何ら影響なかったな…と今思えばわかるんですけど,当時の私は(朝練に来ないなんて!)と先輩同期後輩に対して内心ぐつぐつ思っていたのでした。「部活の枠」を守ることに必死だったのだろうと思います。

そう思うと,マコちゃんはまさに「部活の枠」を守ろうと孤軍奮闘していて,次第に合唱が好きな子達と対立してしまう。お互いに正しいと思うことが衝突するってこういうことだろうなーと思うと,お互いが大事にしたい信念(みたいなもの)と,そのために取っている行動が何なのかということをわかろうとしなければ,平行線のままになってしまうのだろうと思います。

なのでマコちゃんがキーキーしている姿を見ると,(あぁぁぁ…!)とアワアワしてしまいました。多分マコちゃん的には合唱を楽しくやりたいひとたちは「部員」として見るとたるんでいるように見えて,合唱を楽しくやりたいひとたち的にはマコ先輩超ヒステリーなんだけど…みたいに見えちゃうんだろうと思います。
できればお互いのズレに当事者達が気づけて修復していけたらお話的にも優秀(あえてこの表現)なんでしょうけど,そこは一歩引いた3年の先輩が助け舟を出してくれたと言う感じなのかな。でも,メール一通で解決に向かえるくらい単純なものなのかなとか,一通でそのキーキーと楽しくやりたいが和解できると思うと,この芝居は何だったんだ感も若干あって,メールならメールを踏まえて本人達の思いを聞きたかったなぁという感じもしました。言葉なしで繋がり合えるのが合唱と言われたらそこまでなのだけど…。

あと私はあの舞台セットの箱は面白いなぁと思って見てました。いろんなものに使える・見えるって,多分私も好きな使い方です。でもその箱一個だからこそ,何色にするかって結構重要なんだろうなと思います。多分どの色にしてもつっこまれるし,正解はないと思うんですけど,あの水色は単純にキレイだったなぁと思います。台所に行く(はずな)のに階段を下っていくのは「アレ?」って感じもしましたけど。笑 でもってもう少し,上手でもお芝居が生まれるといいなぁと思いました。全体的に下手に寄っている気がしたので。

今どきの言葉で表現すると講師の先生が仰っていた「部活あるある」なお話だと思うのですが,もっといろんな考えのひとがいていいだろうし,部長の思いを汲もうとするひとが内部にいてもいいだろうし,人の数だけ力動があると思うともっと細やかな描写ができそうなお芝居だろうなー!と思いました。稽古を重ねていくとリアルな自分達と重なってくるところもあってイヤになりそうな気がしなくもないですが,練り直せたらもっと分厚い作品になるんだろうなと思いました。

はっ。そして最後にタイトル…!タイトルはやはり全体を集約したり中身を表現するようなものであってほしいなと思うのですが,ちょっとぼんやりしすぎていて,うぅーんという印象がしなくもなかったです。AKBなら「“ここ”って秋葉原の劇場ね!」とかって想像がつくのですが,作新の場合「“部活”にいること」と置き換えると…。うううーん…という気持ちです。タイトルって難しいけど,センスが試されるなぁと常々思います。

この作品を通して,この年になって改めて自分への理解が深まりました。笑
作新学院の皆さん,お疲れさまでしたー!

第51回関東高等学校演劇研究大会(さいたま会場) 栃木県立宇都宮女子高校演劇部『去年を抱きしめてニューイヤー』

(関東高等学校演劇研究大会さいたま会場パンフレットより)

@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

作:小池志織
出演:栃木県立宇都宮女子高校演劇部

初!宇都宮女子!この記事を書くために,演劇部なのか演劇クラブなのか確かめるべく高校のwebサイトを確認したのですが,宇都宮女子高校って公立高校では最も歴史が古いんだとか…。おぉぉ…。また一つ賢くなりました。笑

さてこのお芝居。すんごい主観なのですが,今年度全国大会で最優秀を取った,大分県立大分豊府高校演劇部の『うさみくんのお姉ちゃん』を連想させるようなわちゃわちゃ感がありました。場転なしで話が進んで,60分経ったときに登場人物達の気持ちがなんだかちょっと変わっていて,観ている側としてはほっこり出来る感じ。そこが。観てて楽しかったですー。

とりあえず年越し系(?)のお芝居ということはわかっていたのですが,幕が開いてびっくり!
私,プロアマ高校演劇問わず,舞台でエレベーターが出てきたの,初めて観ました!!!!!
すっごい!しかも,めっちゃ手動!!!(多分エレベーター扉の横でスライドさせている人がいる!笑)この質感に,まずやられました。笑

そう。このお芝居,質感がとても好きでした。緑のたぬきとか,ちゃんと中身入ってる(ように見える)し。配管とか。門松の竹とか。本物があるだけで,舞台が本当に落ち着いて見えました。マンションも今どきの…というよりは,90年代くらいに建ったんだろうなーと適度にくたびれてる感じがあって,そこがまた栃木っぽくて(←失礼だったらスミマセン。良い意味で都会っぽくないという意味です)素敵でした。
ただ,講評のときに舞台美術の伊藤先生から「配管はパネルとパネルのつなぎ目に配置すればよかったのに」という一言は目から鱗というか(そんなやり方があるのかー!)と,非常に新鮮な情報でした。いやー。今後使えそうな知識です…。使える場所があるかは別として。笑

平田オリザさんの『わかりあえないことから』を読んで以来,私はマイクロスリップ(えっと,あの,その,あれだよね…みたいなやつ。必要な情報の他に出てくる,人間らしい音声。)というものを意識してせりふを聞くようになったのだけど,宇都宮女子のお芝居は心地良いスリップがたくさんあって,なんというか,人間の温度が感じられるようなお芝居でした。特に作者さんが演じていらっしゃったタカジョウさんが私は魅力的だなーと思って,この方すんごいマルチだなと感じました…。お芝居作れて演じられるひとって,ホントにいるんだなと…。

観ていて,栃木も十分関東だよと上京当時は思っていたのですが,なんとなくそうでもないのかなという気もしてきたここ数年。私は長野県から東京に憧れ上京した田舎者ですが,栃木もそんな感じがあるのかな。
「東京じゃなきゃだめなの?」みたいなせりふはすごーい,ものすごーーーーーい,しみました…。カサハラさんも人生の迷子の一人です。笑
私も高校の先輩と地元で飲み会を開くたびに,「カサハラにはまだ東京で頑張っていてほしい」と言われます。やっぱり自分にとって大切な人が期待してくれるのは嬉しいし,その期待に応えたいと思うし,再会したときに相手にとって“会って嬉しいひと”でいたいと思う。だからきっと,夢が破れて地元に帰るというのは,自分の夢を諦めると同時に周りの大切なひとの期待を裏切ってしまう気持ちになるというか,そういう意味合いもある気がして。そしてその状況を自分自身で受け入れるのが難しくてアリサちゃんは嘘をついてしまったんだろうと思うと切ない限りです…。「東京じゃ…」という場所の問題というより,そういうものなんだろうと思います。なんとなく,2014年に観た映画の『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を思い出しました。

あれだけ時間かけてるのに,門松ができないのは本当に歯がゆかったです。出来途中の門松がボロッと崩れるたび,何度(あぁーっ!)と思ったことか。笑
出来上がったらお芝居が終わっちゃうことはわかっているんだけども,またか!またか!と,若干心が挫けそうになりました。でもこのうまくいかなさこそ人生なのだと思います…(壮大)

あと細かいところとして,携帯の着信音が中島みゆきの「時代」だったり,エレベーターの閉まろうとする(けどタカジョウさんの荷物が邪魔で閉まれない)やつがいいなーと思いました。そう。あえての「時代」,良いですね…。笑
でも除夜の鐘は途中で鳴り終わった感じで,また鳴り始めちゃったように聞こえたのでちょっと残念でした。聞かせたいところで流してるのかなと思ったのだけど,聞かせたいところ2箇所の間もバックでうっすら聞きたかったなぁ。

講評にもありましたが,最初から安心して観ることができました。どう観て良いかわからない高校演劇も少なくないですが,はっきりルールが明示されるのってありがたいですね…。
宇都宮女子の皆さん,お疲れさまでしたー。

第51回関東高等学校演劇研究大会(さいたま会場) 新潟県立長岡大手高校演劇部『震える風』

(関東高等学校演劇研究大会さいたま会場パンフレットより)

@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

作:田村和也
出演:新潟県立長岡大手高校演劇部

なんかこの高校の名前聞いたことある,聞いたことある…と思っていたのですが,自分のブログ内を自分で検索してわかりました。どうやら11年前にこの高校の関東大会公演を観ていたようです,私!

がっ,申し訳ないことに内容とかは全然思い出せず…。この年度に新潟では中越地震が起きたのだけど,十日町と長岡大手高校(震源地に近いらしい)が関東への切符を手にしたのはそういうバイアスがかかってる訳じゃなくて,実力で出てきたんだよという話を聞いたことがあります。そういうエピソード記憶なら覚えやすいのにな…。でも,干支がほぼ一周しても,また同じ学校のお芝居を観られるのは嬉しいことです。

ががっ!パンフレットには,
地区大会でも県大会でもアンケートの感想はほぼ100%「何が言いたいのかわからない」でした。反省。
と書かれていて,それでも関東まで来るってどんな舞台なのだろうか~と思っていたのでした。

結果…

抽象ってムズカシイ!!!!!

ということを再認致しました。

さらにすみません。私はこの一個前の学校(長野清泉)の上演が無事に終わった安堵感もあり,若干意識が飛びました…。本当にすみません…。

一度意識が飛んだらストーリーには言及できないと思っているので,思うところだけ。

とにかく舞台が抽象的で,ほぼ真四角(だと思う)のシートの上にキャストさんがスタンバってて,入れ代わり立ち代わりいろんな役を演じていくしくみ。ときどきノートとかランドセルとか,小道具が出てくるしくみ。
あれ。なんかこういうの,観たことあるぞ…と思いまして…。
私は長野県のニンゲンなのでそこの話になってしまって申し訳ないのですが,例えば日下部英司先生が書かれるホンってこんな感じかもと,思いまして…。

今回の舞台は状況説明的なせりふがあんまりなくて(ないように感じて),もうその空間が始まればその場にいる人間関係が成立しているのだけど,それがいつで,どこで,あなたが誰なのか,わかるまでにすんごいすんごい時間がかかってしまって,ついていこうとすればするほど頭使って,意識がぽーっとおでかけしてしまったのだと思います…。衣装も似た感じだった(と記憶している…)ので,余計に誰が誰だろう感出ちゃいました。

抽象的な舞台って,なんにでも化けられるけどある意味いじわるなので,情報提供のさじ加減によって「抽象的だからこそ面白い」になるか「わからん」に分かれるのかななんて思いました。

書けば書くほど言い訳がましく思えちゃうのでこの辺で…。
あ。でも,キャストさんの待機が美しくて,いいなーって思いました。最近だと長野県屋代高校『A・R~芥川龍之介素描~』でこういうパターン(屋代は上下で椅子を用意して待機)のお芝居を観たのですが,着席の前後で(よっこらしょっと)みたいな素の感じが漂う舞台だったので,だったらもういっそ隠した方がキレイ…と思っていたので…。見せる以上,美しさって大事だなと思います。

噛めば噛むほどわかるスルメ系舞台だと思うので,何度か観てみたい舞台でした。(あとお客さんを舞台に乗せて四方向から観られる作品ですよね,これ。文化祭とか校内公演でできたら面白そう!)
長岡大手高校の皆さん,お疲れ様でした。

第51回関東高等学校演劇研究大会(さいたま会場) 長野清泉女学院高校演劇部『宇宙の子供たち2015』

(関東高等学校演劇研究大会さいたま会場パンフレットより)

@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

作:クリアウォーター
出演:長野清泉女学院高校演劇部

北関東大会2校目にしてようやく北関東の高校が出場…!笑

地区から追いかけてきた長野清泉。高校演劇を観るようになって15年くらいになりますが,地区→関東と観てきた作品はこの学校が初めて!ということに気づきました。昨年の長野県松川高校関東全国と拝見しましたが,途中で年度が替わりメンバーが変更になったので,地区から変わらず…というところはここだけ。嬉しいーと思う気持ちが半分と,なんだかこれはストーカーでは?という気持ちが半分で,なんともビミョウな思いです。笑
(「地区」とか「県」とかクリックしていただければ,その大会公演の感想に飛びます)

でも,地区を観た時には「地区じゃ終わらないぞこの高校!」と思っていたので,それが本当に関東まで行って,関東の舞台を私も共有できたことは,とっても嬉しいのです。

なんか,なんだろう。地区から関東まで通して思ったこと。
私全然長野清泉事情に詳しくないし,2004年とか2006年とかの県大会以来全く観ていなかったから比較の仕方が悪いなとわかっていて書くのだけど,昔の清泉には私立の女子校特有のやらしさがあるなーと思っていたんです。やらしさというか…癖っぽさって言い換えても良いかも。いかにも演技してます!という癖っぽさが私が昔観た清泉にはあって,観ていると引いてしまう感じが個人的にはあったんです。(スミマセン…。あくまで主観です…。)
が,2015年に観たこの作品はそういうやらしさが抜けてて,とってもナチュラルなお芝居に仕上がっているように感じたんですよね。清泉が変わったのか,私の受け取り方が変わったのか,その両方なのかわからないのですが,とにかくこの作品で私の長野清泉に対する見方が変わったのは確かで,月日の流れってオソロシーと思ったのでした。←ほめてます。ほめているのです。

県大会が終わってから,この作品が映画『誰も知らない』のエッセンスを拾っている(らしい)ということを知り,私もこの映画を観てから関東に臨みました。いつか観たいと思っていた映画だったので,きっかけを作ってくれてありがとうという感じです。
本当にエッセンス…という程度で,ストーリーが似てるとかそういうものではないのですが,子どもにとって「遊び」というのはものすごい力があるなぁということは映画からも舞台からも感じられました。遊ぶことで,その世界に没頭することで,つらい現実から逃れることができる。空腹を忘れることができる。ケンジとタダシは,生きるために,本能的に遊んでいたのだろうなーなんてことをしみじみ思いました。
あと,『誰も知らない』でも,児相に保護されたら生活の質は確実に良くなるし,何より命の保障があることはわかるけれど,きょうだいが離れ離れになることは受け入れられない…という理由でコンビニ店員による通報を拒否するシーンがありました。『宇宙の子供たち』でも民生委員カグヤさんのお宅訪問をシャットアウトするシーンがあって,この,きょうだいの一心同体感というか運命共同体感って何なんだろうと思いました。ケンジはタダシだったし,タダシはケンジだったのかな。離れ離れになるのは,自分の一部を切り取られるような感覚なのかもしれない…。とか思ったり思わなかったり。あとやっぱどんなに劣悪でも,親を守るんだな,子どもって。だって親だからね。質としてはわるわるの絆に対して,外部がどう切り込んでいくかって難しいですね…。「難しい」という言葉でしか表現できない自分の力のなさに,大人としてがっくりきてしまいます。

そうそう。さすが関東大会だなーと思ったのは,お客さんの反応の仕方というか,着眼点というか。望遠鏡って実在したのかなとか,いつまであったのかなとか。あぁ…そんなの私考えたことなかった…。でも,あれだけ抽象的というか想像力を要する舞台なので,望遠鏡まで見えなくなってしまうのは私はつらいかもしれない…(メンタル的にも理解の面でも)。私達観客の目の前にあるものと,ケンジとタダシが実際に見ているものが一致していなくたって,それはそれで良いじゃないかと思っております…。

なんか,そういえばTwitterでフォローしているこちらの学校の部員さん情報によると,照明などのマイナーチェンジがあったようなのですが,私あんまり気づけませんでした。ゴメンナサイ…。人の痩せた太ったもイマイチ気づけないニンゲンなので…。スミマセン…。でも,ラストの星空は(あんなに光ってたっけ!?)と思ったのと,目つぶしライト(と私は勝手に呼んでいる。客席に向かって光るライト全般をそう呼んでいる…。)が印象的だったのですが,せりふとか変わってたかもしれません。が,気づけませんでしたスミマセン…。アワワワ…。

あ!気づけたのは,ロクスケとお姉さんの位置!ここは県の時すごーい気になってたから,(前に出てきてますように!)と思ってたのですね。なんとなく県の位置より前に出てきている感じがしたので,良かったです。キャストの皆さん全体の声量や滑舌も県の時よりクリアで聞きやすくなっていたので,安心して観ることができました。
そういえばロクスケのあの姿を北関東の皆様の前で披露してもらえて,部外者ながら私はとてもとても満足でした。笑 やっぱあれインパクトありますよね。笑

3回目の観劇なので話もわかっているし流れもだいたい掴んでいるのだけど,やっぱり最初からネグられていることがふんわり漂いすぎている気がしてしまうのは私だけでしょうか…。
パンフレットとか見てもそんな雰囲気全く出してないのであえて情報として伏せているのだと思うのですが,その割にいっちばん最初から仄かに,でも確実に要素は出しているので,いつどのタイミングでばばばーんと出すかは再考の余地があるように思うのですよね。出すというか,どう触れていくか・聞かせていくか…みたいな。(たとえばウサギマダム達の井戸端会議の「見ちゃったのよ,あ~ざ!」の「あざ」とか。)やはり同じ情報でもどう聞かせるかによって,その情報が重要かどうかを聞き手は瞬時に判断していくと思うので,よくよく聞いたらちゃんと布石あったじゃん!みたいな感じだと,もっと(やられた!)という気が後々するのかなぁ。んんんー。

そう。3回目なのにやっぱりラストシーンで涙出たのでふぐぐぐと思ってしまいました。泣かなかったけど。やっぱりケンジのあの表情に,あのきょうだいがほしかったもの全てが詰まっているような気がして,ぐわーってきました。あとその前の,タダシの「何が見える?」は,それまでのアドレナリンばしばしの状態から現実に打ちのめされた“落ち感”(うまく言えないけど)がすんごい出ていて,思わず(うっ…)ときました。胸にずしっと。落とすのがうまいというのは果たしてほめ言葉なのかよくわからないですが,あのキャストさんは力があるなと毎回思っております…。

はっ。そういえば講評で,ラストの暗転をかませない方法というか,「あのシーンは誰が観ているのか」という話はとっても勉強になりました。←別に私お芝居つくる予定もなんもないですが…。
講師の先生のお話を伺っていて,昨年観た世田谷パブリックシアター『道玄坂奇譚』のラストシーンを思い出しました。確かに,暗転をかませると私達が見たかった画になってしまう気が…。でもきっと本当にお父さんお母さんが起こしてしまったら私の涙腺が崩壊したかもしれないので,これはこれで良かったと思うことにします。笑


長野清泉の皆さん,優秀賞おめでとうございます。地区で終わらないと思っていた作品がこんなところにまで来てくれて,勝手に嬉しくなっています。女子高生のパワーおそるべし。ラストの曲も印象的なので,レンタルして聴いてみたいと思います。
地区~関東と,長期間お疲れ様でした!