Saturday, January 23, 2016

第51回関東高等学校演劇研究大会(さいたま会場) 東京都立町田高校演劇部『はなさかさん』

(関東高等学校演劇研究大会さいたま会場パンフレットより)

@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

作:松澤美奈子と町高演劇部
出演:東京都立町田高校演劇部

今年もやって参りました関東大会。北会場なのにトップバッターが南の東京代表校…!なんだか面白かったです。笑

昨年南も北も結構がっつり観て,各都県2校観ると特徴がわかるなーっという感覚があって,それがとても面白かったのです(そのときの日記がこちら)。
東京はいろんな刺激があってカオス☆そして基本創作☆というイメージをここ2年で確立したのですが,町田もそのイメージを裏切ることのない舞台を創っておられました…。(どうでもよくないですが,私の中で“町高”といえば都立桜町だったのですが,町田も町高なのですね。あぁ,呼び方に困るパターンだわ!)

昨年私は平田オリザの『わかりあえないことから-コミュニケーション能力とは何か』を読んだのですが,中でも「マイクロスリップ」の記述がとても印象に残っていました。これが立ち居振る舞いに人っぽさを出しているというか,人間らしくしているというか。この知識を持ってからは,例えばマームとジプシーなんてマイクロスリップだらけじゃないかということがわかり,メガネの度が上がって世界がクリアに見えるようになった感覚がありました。(マームはそこに感情表現を殺しているから表現としては不自然っぽいんだけど。せりふだけ取るとマイクロスリップと言っていい気がする)(近年の長野県の高校演劇事情で言うと,郷原玲先生の作品はスリップしまくってる気がする)

この『はなさかさん』が魅力的だったのは,ロボットがマイクロスリップしてるところ。うまく表現できないのだけど,石黒先生のアンドロイドがお芝居をしているよう。花坂さんがロボットに個性をつぎ込んでいるあたりに亡くなった家族を思う部分がすごーく表れていて,ロボ1号機~四郎がとても愛らしく見えました。ロボット達が体操するにしても,デフォルト(と言っていいのだろうか)は一緒なのだけど,細かいところで一人一人動きが違うから,味があって素敵でした。

あと,講評でもお話がありましたが,ロボット自身にもパーソナリティがあって,「私達は身代わりじゃない」という意思を持てているあたりも面白かったです。私もいろいろ空想するひとなので,(もし私の大切な人の死に際とかで,大切な人が私を私と認識せず,大切な人にとって大切な人として認識したら,私はどうするんだろう~)とか考えたりするんですが,まさしく花坂さんからしたらロボット達ってそんな感じなのでは!と思ったり。切ないですね,ロボット達…。

そうそう。ロボットは喋り方もフラットにしていて基本早口なのに,ちゃんと聞こえるから純粋にすごかったです。滑舌の良さを初日の一校目から感じるあたりが関東だな…と思いました。笑

幕が上がってすぐ視界に入るビールケースが山盛りなのも,(おおっ)と思いました。赤青黄白って,何でも生み出せる色ですよね。何にでもなれるというか。まだこの世に生まれて間もない四郎が白なのも,インストールしきれていない感というか,そんな感じがしていいなぁと思いました。あと,充電するときに4体が座るビールケースの色が,ちゃんとTシャツの色とリンクしてるから細かいなぁ。
そうそう。充電のチューブ?と,かぱってつけるやつがチープだけどそれっぽくて,楽しかったです。笑

あと。スクラップされちゃった四郎が入っている箱が,花坂さんの作ったロボットの箱になった瞬間は,なんとも言えない気持ちになりました。小道具の使い方としては自然で鮮やかで,だけど入っているものを思うと非常に切なくなりました。あぁぁ…。

タイトルがタイトルなのでラストシーンの画は若干読めてしまいましたが,それでも最後のハラハラ~ってところはとてもきれいでした。無機質なビールケースの世界の中で,人とロボットの生の感情が見えた気がしました。

いろんな要素を盛り込んで,渋谷の迷える若者とかも混ざり込んじゃって,まさにカオスな舞台。東京らしくて良かったです(ほめてる)。出だしから北関東にはないものを見せてくれたなという感じでした。町田高校の皆さん,お疲れ様でしたー。

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