Tuesday, March 29, 2016

東京都立桜町高校演劇部 桜演祭3年演目『ラインダンス』

(東京都立桜町高校演劇部Twitterより)

@日本工学院専門学校 蒲田キャンパス6号館

作:福島美羽
出演:東京都立桜町高校演劇部

桜演祭の後半は卒業生の演目。パンフレットには「私たちが最後にやりたいことを色々詰め込んだ舞台になっております」と書かれていて,(じゃあ踊るんですね!タイトルにも入ってるし!)と思ってはいたんですが,幕開きから本当に踊ってたのでびっくりしました。笑 ジュリが指ぱっちんして始まるのがかっこよかったー☆

“そのお芝居に対する本気”って,演技とかそういうものでもちろんわかるんですが,この作品の場合ビジュアルが攻め攻めで,そのあたりから皆さんの本気がびしばし伝わってきました。
特に髪の毛いじるって結構大変なことだと思うんですよね。その日限りで原状復帰(?)できるものでもないし。まさかの赤髪金髪茶髪紫髪…!金髪茶髪はまだしも,紫って…!と,非常にびっくりしました。ヘアチョーク?とかなのかしら…。色もそうだし,メガネくんの髪の短さとかは明らかに役のためだと思うと,覚悟がすごいです卒業生の皆さま…。
登場人物の皆さんには一人一カラー担当色があって,「よくあるやつ」と言えばよくあるやつなのだろうけど,服の色はもちろん靴やネクタイなんかの小物の色も結構細かいところまで統一されてて,いいなーって思いました。(個人的にメガネくんのおリボンの色が好き)

あと登場人物もそこそこいたので見分けられるのだろうかと思ったのだけど,ビジュアル+名前で個が確立しまくってました。キャンディとかピコピコとか,素敵…。あとめっちゃ悪いひとなのに「ユメシマ」というのも素敵。

そうそう。そのユメシマがやばいやつだとわかったメガネくんの行動に,ものっすごい裏切られました。裏切られたというか,(そっちか!)みたいな感じ。私はてっきりユメシマに毒を盛った飲み物でおもてなししてやっつけるのかと思ってました。親にも謝ってたし…。なんか,追い詰められて子どもを殺害したあと無理心中しちゃう親子ってこんな感じなのかもしれない。大切だから,守るために殺してしまう。そんな感じ。ガスの音が,彼や彼女達の夢や希望を吸いとる音のようで,つらかったです。
ジュリ達は自分達がステージに立てること,つまり自分達がそこに存在していることを他者に知ってもらうことを心待ちにしていることをメガネくんは十分わかっていて,仮にユメシマを殺めてしまったら,そのステージ自体なくなってしまうから。仲間の夢を壊すことになると思うと,真実を知らないまま仲間を守り抜くにはそれしかなかったのかと思うと,とても切ない話です…。

子どもが子どもだけで生きている感があったのも,この作品の世界観が見えて良かったです。例えばメガネくんには保護者がいるけど家のシーンでは声だけだったり。声があるということは実体があるということではあるのだけど,出てきた時点でこの世界観はちょっと崩れちゃうんだろうなと。パンをくれるお店のひとも,いることにはなっているけど,実際出てきちゃだめなんだろうなと。このあたりの演出も,さすが卒業される方々だなぁと思います。

タイトルの「ラインダンス」はどこで出てくるのだろう~。そもそも関係あるのかな~と思いながら観ていたのですが,最後はしっかり出てきたので安心しました。笑 きっとこれが,あの子達がやりたかった,見せたかったものだと思うとこれまた切なかったですが…。私も余興でやったことありますが(←え),あれホントにタイミング合わせなきゃキレイじゃないし,はじっこの人が前とか後ろになっちゃって斜めになってもだめだし…チームワークを要するパフォーマンスですよね。ラストはみんなで一緒に生きてく感というか,そういうものを感じたような気がします。

そして何を隠そうカーテンコールにやられました。涙ポロポロの状態で挨拶されている卒業生さんが「ありがとうございました」で締めて,幕も閉じる~かと思いきやあとちょっとのところで閉じなくて,「え?」ってなってる卒業生さんのところに『酒呑の女』のテーマソングが流れちゃうとか。歌えないはずの1年生さんも歌って,作品のラストみたいに桜吹雪がぶわぶわとか。見ているこっちまでびっくりするし感動するし,涙なしには見られないカーテンコールでした。桜町の1,2年生の皆さんには見えなかった(と思われる)卒業生さんのサプライズに対する素の表情は,観客だけのお楽しみです。いいもの見せていただきました。

ほんとに,3月末に卒業生さんが出演される舞台ができちゃうのも,東京ならではですね。長野県みたいに地方だったら,こうはいかないです。
きっとお芝居から離れる方もいれば続けられる方もいらっしゃるのでしょうが,桜町高校生としての皆さんのお芝居をもう一度拝見することができて満足です。今後の皆さんのご活躍をお祈りしております。
桜町の卒業生の皆さん,改めてご卒業おめでとうございます。そして素敵な舞台,ありがとうございました。

東京都立桜町高校演劇部 桜演祭1・2年演目『宙へ』

(東京都立桜町高校演劇部Twitterより)

@日本工学院専門学校 蒲田キャンパス6号館

作:知念環といのさん
出演:東京都立桜町高校演劇部

昨年度の南関東大会で『死刑囚のπ』を観て,なんてすごい学校なんだー!と衝撃を受け早1年。このひとたちのお芝居をもっと観たいと思って,昨年は六本木まで『酒呑の女』を観に出かけたり,200人しか入れない地区大会に出かけて『新竹取物語』を涙しながら観劇したのでした。
東京の高校のお芝居はそんなに観たことないですが,東京らしいというか,2010年代に観るお芝居としてはちょっと一歩踏み込んでるというか。「そこ避けても生きていけるよね,どっちかって言うとみんな避けたいところだよね」ってところにあえて突っ込んでいるようなお芝居を桜町は作っていて,このひとたちの覚悟に私は魅了されているのかもしれません。

とにかく『死刑囚のπ』で主力だった(と思われる)3年生の皆さんの卒業公演!すごい!これは観に行かなくては!と思い,出かけてきました。私は千穐楽が好きなので(いやみんな好きか),ソワレで。

桜演祭の前半は1・2年生による演目。2年生の方の創作なのかな…?イマイチわからず…。

開演前の挨拶がカタいな~と思って聞いていたんですが,わざととわかった瞬間は(やられた!)って思いました。ここが自由にできるのも,自主公演の良いところですね。

キャストさんの話をすると…。昨年『新竹取物語』の社長さんを見て,(あの人まじすっごいわー。桜町の幅が広がるわー。)と思っていたのですが,今回はまさかの主役♡主役♡♡♡(大事なことは2回。)
いやまじで,びっくりするくらい美しいから!星の精って言われても納得しちゃうから!笑
ほんと,モデルさんか何かのお仕事されてますかってくらい,びっくり美しい1年生さんが主役だったので,もうすんごいすんごいすんごい,目の保養になりました。はぁぁぁ…。(ため息)
ということで終始カノンちゃんにくぎ付けでした。
やっぱり美しいって正義で,目がいっちゃうんですよね。うっとり。でもそれだけなら別に,ホントにモデルさんで十分だと思うんですけど,ちゃんとお芝居もできる方なので総合的に強かったです…。
カノンが身の周りのものに興味を示して学習していくところとか,初めて金平糖を食べたときのピコーンという感じとか,文字が書けたときの嬉しさ,誰にも触れられないように気を張ってるところ…なんかがちゃんと見えて,新鮮なんですよね。特に新鮮さって稽古を重ねていくとキャストさんご自身が慣れてしまうから薄れてしまいがちだと思うんですが,カノンちゃんからそういう空気感がちゃんと伝わって来たのでびっくりしました。人生のときめきを一緒に味わえた感じです。

カノンちゃんがぐいぐい物語を回すひとだったので,宙くんのへなちょこ男子っぷりが映えてて素敵でした。(ほめてる)
ていうかあれですね。今回は男性キャストのみなさんが全体的に穏やかだったり空振りしまくってたり…という感じでしたね。女のひとって怖いなァなんてこともうっすら感じました。笑

あと,『竹取』で小松さんだった方や明菜ちゃんだった方は見てぱっとわかったのですが,芳野さん役だった方は途中で気づきました。いやびっくり。芳野さん,本当に主婦感があったので(ほめてる),髪型とメイクでこんなにも人は変わるのかということを再認しました。
天野さん的には先生のことが大好きだし,尊敬してるし,多分ちょっと男性としても好きで(だから結婚もできないというかしない),私が支えなきゃ感があると思うんですが,そう思えばそう思うほど宇くんには嫌われるんでしょうね…。笑 あるあるというか,構図としてはわかる気がして,微笑ましかったです。老年期の天野さんはビジュアルにとっても質感があって,でもカーディガンは当時のものを使いまわしていて,なんだか素敵でした。

宇くんの単語を出したのでそのまま宇くんのことを言うと,かわいかったなー。キャストさん,色素が薄い方で,瞳の色がキレイで見入っちゃいました。(へんたいではありません。念のため。)
高校演劇で小学生男児をやれるひとって,サイズもそうだけど体型もやっぱりあって,特に棒っぽい脚が男児らしさの鍵だなということを先週の長野県長野東高校の公演でも感じたので,誰にでもできるものじゃないと思うとこのキャストさんの武器だなーと思います。

そう!先週ちょっと似たような舞台を観て,そこで出てきた星球がものすごーくきれいだったので,桜町のイルミネーション感たっぷりの星はちょっと残念だったかもしれない…。ピカピカチカチカ一定の間合いで光るので,そこと登場人物の心のスピードが合っていなかったかなと。ものすごい凝っているわけではないのに魅せる舞台美術を創れるカンパニーさんだと思うので,今後期待です。あ。でもホリゾントっぽく使っていた布に当てている光が素敵だったな!オーロラ色っぽいやつ。あれはカノンちゃんが出てくるところで使われているのかな?

作品のことですが,私も高2の時は地学を履修していたくせに天体のことは詳しくなくて,カノープスとか爆発とかよくわからず,そもそもなぜカノンちゃんは星から落っこちてきたんだとか途中で思ってしまったり,「罪を犯した」ってせりふは聞こえてくるけど実感がわかないなとか思ったところもありましたが,この世界を楽しめたので良かったかなと思います。

でもってなんとなくですが,『新竹取物語』と似ている要素があるように感じたんですよね。作っているひとたちがその時のメンバーなのでそう感じたかもしれないんですが,なんだろう。2人だけの世界というか。守りたかった世界というか。それを守ろうと必死で,でも壊されちゃう儚さ…みたいなものなのかな。うまく言えないけど。『新竹取物語』だったら明菜ちゃんとかぐや,今回だったら宙とカノンとか,宇と光とか。それは時の流れからするとある意味当然なのだけど,そこを維持したいと思う純粋さとかすがりたい気持ちが切なくて,胸がチューンと痛みました。
(何気にかぐやが出てきてびっくり。こういうことできるのも自主公演のいいところ。笑)

歌っちゃうし踊っちゃうし小道具細かいし(おじいちゃんの本の装丁が良い),星の精の衣装が細かいし(裾の形がみんな違う),丁寧に作られているお芝居だったので近くで観られて本当に良かったですー。地区大会の会場と思うと元長野県民からするとホントびっくりなんですが,自主公演にはぴったりの場所ですね。

『死刑囚のπ』をやられた2年生さんがこれでほぼ引退とのことで,時の流れを目の当たりにしてつらいです。笑 でも!皆さんの引退公演を拝見できて満足です!また来年日程が合えば卒業公演にお邪魔したいです!
ただの感想の羅列になってしまってすみません…!1,2年生の皆さん,お疲れ様でした。パワフルな舞台をありがとうございました。

Thursday, March 24, 2016

長野県長野東高校演劇部・サプライズ発表会☆『銀河鉄道の夜~吉里吉里国ものがたり~』

(公演パンフレットより。生徒さん・卒業生さんのお名前が載っているため一部加工しています)

@ホクト文化ホール

作:清水信一
出演:長野県長野東高校演劇部現役生・卒業生の皆さん

昨年度の長野県大会で長野東高校を知り,早1年半…。(いやでもまだ1年半なのか。)
まさかこんな公演にも足を運んじゃうとは。人生って何が起きるかわからんといろんなところで言ってますが,やっぱりわからないものですね。

とにかく,昨年度の県大会でこの『銀河鉄道の夜~吉里吉里国ものがたり~』を観て,このカンパニーだから創れる世界観にじんわりじんわりやられてしまったのでした。
それをきっかけに「この人達のホーム(文化祭公演)に行きたい!」「3年生の引退になってしまうかもしれない地区大会に行きたい!」「1・2年の新体制になった公演に行きたい!」と思いおでかけを重ねていったところ,気づいたら今年度の長野東さんの一般向け公演をコンプリートしてしまいました。これはもしやストーカーと言うのではないだろうかと若干自分で自分に引いています。←

そして追いかけまくったご縁(←勝手に言ってみる)で,今回の公演のお誘いをいただいたのでした。
なんと作者で長野東の顧問である清水先生が今年度で異動されるとのことで,卒業生と現役の皆さんでまたこの作品を上演されるとのこと。昨年度の県大会作品の中でも特に心を動かされた作品をもう一度観られるなんて!しかもホクト文化ホールを借りちゃうなんて!と思い,仕事を早退して平日夜におでかけしてきたのでした。笑

し か し 。

早退する直前にうっかり上司につかまってしまい→職場を出るのが遅くなり→よりにもよって通勤で使う路線のダイヤが乱れており→予定の新幹線に超ギリギリで間に合うかどうか!
という状況に…。
駅の構内で走れるところは走ったのですが20秒くらい間に合わず,最終的に開演して5分くらいで会場に着席できたのでした。無念…。東京駅のホームに着いた時の絶望感は,多分ちょっとの間トラウマになると思います。笑

私の事情は置いといて…。
あ,でもまた私の話になってしまうんですが(あれ),私も高校を出てから高校でお芝居を作ったことがあったんです。修士1年の時に。半年くらいかけて稽古してたから,もうM1の秋までは何しに大学行ってたんですか?って言われても仕方ないくらいのスケジュールでした。何を言いたいかというと,超超超大変だということ。普段の生活もあるのに,それに加えて公演の準備や稽古もあるなんて。だけどパンフレットを拝見すると卒業生の方のお名前がたくさんあって,ものすごい覚悟の上でこの公演を迎えたと思うと長野東の皆さんの意気込みの強さが感じられました。

でもって,会場のセレクトも素敵。
2014年度のオリジナル版を上演したホクト文化ホールをチョイスするところも,リベンジしたいというか思い出を更新したいというか,きっとそういう意味合いもあるんだろうなと思って。
個人的に私もこのホールはすごーくすごーく悔しい思いをした場所で,昨年度来た時も非常にフクザツな気持ちでした。当時の悔しい気持ち,昨年度や今回のような切ないけど満ちた気持ち,いろいろ抱えて生きていくのだわ…なんてこともしみじみ思いました。笑

やたらいろいろ書いてますが,ようやく本題に…。
2014年度のオリジナル版と同じ役の方,当時とは違う役で出演されていた方,今回新たに役に就いた方,いろいろでしたが,特に同じ役の方のお芝居を見られた時は,もうなんとも言えない感動みたいなものがありました。2003年に観た長野県田川高校演劇部『神々の国の首都』でも思ったのですが,高校演劇の年度を越えた再演で,オリジナルキャストがそのまま続投って奇跡に近いと思うのです…!今回だとセイコとジョバンニ,ケンジと車掌,ふたばちゃん,王子役の方がそうで,(その声でそのせりふ,聞いたことありますーーーーー!)って感じになりました。時の流れとか,目の前のキャストさんの1年前より深いお芝居とか,そういうものを感じて,もう序盤で涙出そうになってました。本当にこの4役の方は安定感があって,もう一度皆さんのお芝居を観られるなんて夢のようでした。(特になみえちゃん役の方とケンジと車掌さん役の方は今年度の大会作品では裏方さんだったので,このお二人のお芝居を拝めたのは本当に嬉しかったですー。)
前回も出演されていたけど今回別の役…という方のお芝居も,登場人物のキャラクターが広がった気がして,新しい感覚で観ることができました。そして新しい役でも特に違和感なくすすすっと観られちゃったあたりに,そのキャストさんの力を感じました…。特に社長さんとなみえちゃん…!

そう。前回は,例えばなみえちゃんとザネリと王子が同じキャストさん,ふたばちゃんと社長と誘導員が同じキャストさんであることに意味があるように思っていたのですが,今回は一人ひとりの人格がよりはっきり見えたように思います。

あと,この作品がホールでないとだめな最大の理由は,ホリゾント。
初めてこの『銀河鉄道』を観た時はホリゾントの色の深さにただただびっくりだったのですが,今回も当時の感動を味わうことができました。あの青,好きです…。そしてキラッキラの星がたまらんです。
流れ星も,流れるかな流れるかなーと期待していたら,ちゃんと流れたので安心しました。オリジナル版は上手から流れた気がしてたのですが,下手からだったので(おぉっ)と思いました。もうちょっと高いところからシャーッと流しても良いのかなとも思いましたが,以前あの仕組みを伺ったところかなりアナログなことがわかったので大変なのかとも思いますが…。(でも肝心の先生はお気づきになられなかったようで,残念!笑)

作品はもちろん,終演後の卒業生&現役の皆さんのメッセージと,先生ご自身による作品&長野東の皆さんの解説がたまらなく素敵でした。本当に部外者120%ですが,皆さんと同じ空間にいられて心から満足でした。


やたら長くなってしまった割によかったよかったしか書いていない気が…。笑
でも本当に,この公演は実際に上演できたことに大きな意義があると思うのと,その空間にいることができてとっても幸せでした。あと以前から私のTwitterをフォローしてくださっていた方とも直接お話できたことも嬉しかったです。もう無理だと思っていたことができちゃったので,不思議な気持ちになりました。

この公演に携わった長野東の皆さん,素敵な舞台をありがとうございました。
そして清水先生,長い間本当にお疲れ様でした。