Saturday, April 30, 2016

テレビドラマ『わたしを離さないで』(全10話)

◇STAFF
原作:カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
脚本:森下佳子
音楽:やまだ豊
劇中歌:ジュリア・ショートリード「Never Let Me Go」

◇CAST
綾瀬はるか・鈴木梨央/三浦春馬・中川翼/水川あさみ・瑞城さくら/真飛聖/伊藤歩/甲本雅裕/麻生祐未

2016年1~3月にTBS系列で放送,1~4月に鑑賞

2016年のこのクールで,特に楽しみにしていた作品。作品自体を読んだことはなかったのだけど,『天皇の料理番』の脚本家だったし,多部未華子主演で蜷川幸雄が舞台化していたのもなんとなく覚えていたので,絶対当たりだと思っていました。

初回は気合いを入れてリアルタイムで観ていたのだけど,翌週から徐々に放送時間と私の生活時間がずれ始め,今日ようやく全話観ました…。

どどど,どシリアス…。
わかっていたけどどシリアス…。全然笑えなかったし,全然泣けなかった。久々に感情移入できなかったけど,それでも観たい欲求にかられるドラマでした。

登場人物の幼少期から青年期まで描かれる作品で,1,2話は子どもがメインで出てくる回なのですが…
子役が!すごいぞ!

私の好きな鈴木梨央ちゃんは安定感ばつぐんだし,この作品で初めて見た中川翼くんはちょっと無理して笑ってる感じがとてもよかった。瑞城さくらちゃんは飯豊まりえに似てる感じの子で,いじわるそうな目とか表情が印象的でしたー。
あと珠ちゃん役の本間日陽和ちゃんも,ふくふくしてる感じが良かったなぁ。大人になったらアジアンの馬場園梓さんになっているのもすんごい自然でした。
おそらく大人のメインキャスト(綾瀬はるか,三浦春馬,水川あさみ…)から逆算してこの子役達だとは思うのだけど,すごい自然に成長してる感じで,子役の力量を感じるドラマでした。
(鈴木梨央ちゃん→綾瀬はるかのパターンは『八重の桜』でもそうだったから,なんかこの二人の相性っていいんだろうな~。)

回が進むにつれて,鈴木梨央の無邪気な笑顔と綾瀬はるかの表出を抑えた表情の対比が強くなっていって,胸が苦しくなりました。学習性無力感という言葉が合うドラマですね…。

そうそう。私結構食わず嫌いなところがあるので,三浦春馬のお芝居ってあまり好きではなかったのですよね…。いやちゃんと食ってて,2006年に観たドラマ『十四才の母』の演技がびっくりするくらい棒っぽかったので,(なんてへたなんだ!)と思って,以来そんなに観てなかったのです。(ひどい。笑)
久しぶりにまともに演技を観たのが映画『永遠の0』で,そして今回…という感じなのだけど,純粋でやや受け身で,そんなに多角的に物事を捉え(られ)ない今回の役柄は悪くなかった…気がする…。なんかこれだけ読むと悪口のように聞こえてしまいますが,友の役柄の話をしているのであって,三浦春馬くんの悪口ではありません。断じて。
あとやっぱり目力強い役者さんだなと再認。顔の他のパーツにあんまり変化がない分,目で訴えているシーンはついつい見入ってしまいました。

でもって美和よ…。この作品の中では,ある意味一番人間らしいなぁと思います。もちろん嘘つくし,騙すし,陥れようとするし,こんな人が私のそばにいたらたまったもんじゃないのだけど,生きることに貪欲で,欲求のままに生きるあたりは恭子と正反対で,ちょっと病的で,見てる分には良かったです。笑 ほんと,いるよね,ああいう子。最期の最期まで生に対する欲求に溢れてて,このひとのエネルギーってどこから出てくるんだろうと思いました。

そして気づいたら柄本佑がちょいちょい出ていたのですが,登場回数は多くないのにすごく素敵なスパイスになっていますね…。あの悟りを開いたような,一段階上にいるような雰囲気はなんなんだろう。必死にもがいている恭子達を上からお兄さん的に見ている感じで,恭子はあの人に救われた部分が結構あるんじゃないかな。そんな気がします。


素敵だったせりふやシーンを,忘れないために書いておきたいので,ここでつらつら並べてみます。

作中何度か出てきた,
「芸術は魂をさらけ出す」。
→さらけ出すという表現がいいよね。丸裸にされる感じで。

#8
「連れてきてくれた。みんなが私を。ここへ。」
→友達を何人も失った恭子が,運命に対してこう表現しているあたりが素敵だった。

#10
「私達は私達の作ったものに逆襲されるんですよ。」
→これはクローンに限らず,科学や技術が発展すると自ずと出てくる問題なんだろうなと,ふと思い。近年AIとかが人間の思考を超えてるあたりも,ちょっと怖いななんて思います。

「俺生まれてきてよかったよ。この世に,恭子がいてよかったよ。会えてよかった。こんな,終わり方ができてよかったよ。」
→このせりふを聞いている恭子の表情がたまらない。表出を抑えまくってる大人になった恭子の,一番素直な表情だと思うのです。

「友。もし…もし今日,今日…三度目で友が終わらなかったら,私,終わりにしてあげてもいいよ。」
「ほんとに?」
「友がそっちの方がいいんだったら,それくらいだったらできるよ。」
「じゃあ…できるだけ,ちゃんと終わるよ。そんなことしたくないでしょ。」
「平気よ。慣れてるから。」
→これはナレーションみたく声だけ挿入されてる会話なのですが,“死ぬ”ことを“終わり”という表現にしていたり,「してあげてもいいよ」みたいに軽い表現にしていたり,そしてこれをさらっと言っていたり,とにかくまともに死に直面できない2人の精一杯を感じられて,軽く聞こえる分苦しい気持ちになった部分でした。慣れてるからって…慣れてるからってなんなのー。って。


なんか,深い話すぎて全然追い付けないのですが,やはり生きることは私達の原点で,生によって自分自身が支配されているのだなということを感じる作品でした。
ちょうど,私自身も健康面でおや?って箇所が見つかったところで,生きることについて向き合ったり先延ばしにしたりしていますが,やはり生命の自由がないと心の自由もなんもないなということを再認しました。当たり前すぎて考える機会自体無くしていたけど,根本の根本について触れられたような,そんなドラマだったなと思います。

No comments :

Post a Comment