Saturday, May 7, 2016

マームとジプシー 『てんとてんを,むすぶせん。からなる,立体。そのなかに,つまっている,いくつもの。ことなった,世界。および,ひかりについて。』

(ルミネ0公式webサイトより。上の画像が本作のもの。)

@ルミネ0

作・演出:藤田貴大
出演:荻原綾/尾野島慎太朗/成田亜佑美/波佐谷聡/召田実子/吉田聡子

昨年『cocoon』を観てから,私の中でマームとジプシーづいています。
12月には『書を捨てよ街へ出よう』を観に行き,金髪姿のじっこ先輩を拝んだのでした。笑
『書を捨てよ…』の終演後,じっこ先輩のところにお邪魔し次の舞台の予定を伺ったところ,この舞台のことを教えてもらいました。新宿駅の新南口に新しいビルができて,その中に劇場ができるのだと。その杮落とし公演をマームとジプシーがやるのだと。

杮落とし!
劇場にとってたった一度しかない舞台!
その劇場の歴史の一ページ目を,マームとジプシーが埋めるなんて!
知らない間に,マームとジプシーはとっても未来的で,おおきなカンパニーになっていたのでした。
学生の劇団だったカンパニーが杮落としなんて…。「続ける」って,やっぱり才能なのだと思います。


というわけで,私の中では2004年のまつもと市民芸術館以来の杮落とし公演というものに行ってきました。

新しい空間。新しいドア,新しい床,新しい客席,新しい照明,スピーカー,そして舞台。
その場にいるだけでワクワクしました。
何席くらいあっただろう。シアタートラムくらいかな。ちょうどいいサイズ感でした。
パタンと折りたたんでいる席と背もたれの間に,今回のパンフレットが絶妙な位置に挟まれていて,きっと丁寧に置いてくださったのだと思います。

パンフレットのシールをぺりっとはがして開くと,作・演出の藤田さんの言葉。

劇場は,約束の場所。約束をしたひとが,ここで出会って,また別れる。

出会って,別れたひとたちは,
またそれぞれの日々になにを持って帰るのだろうか。

約束の場所かぁ。そうかぁ。それって素敵だなぁ。

じっこ先輩によると,今回の作品は海外でよく上演するものらしく,日本で上演するのはレアなんだとか。

…海外でよく上演って…規模がグローバルすぎます。はい。笑

そして私,青柳さんがいないマーム作品を初めて観たのだけど,そうすると吉田さんが青柳さんポジションになるのだなぁとしみじみしながら観ました。
吉田さんと尾野島さんは『cocoon』の役者さん!という感じがすごく強くて,特に目が奪われてしまいました。

演劇の宿命として,「座った位置からでしか見えない」というものがあると思うのだけど,今回のお芝居はとてもびっくり。見えないはずのものが,見えてしまう。カメラ越しに,スクリーンに投映されて。
最初の,兵隊のミニチュアの攻防も,映像だと思っていたんです。録画された映像の再生。
と,思ったら,リアルタイムで舞台上のカメラから見えている映像で。びっくりしました。そういえば『書を捨てよ…』の冒頭も,そんな感じだったな。
とにかく,見えないはずのものが見えるというところが,なんというか新しいのだけどどこか怖くて,現代的すぎて。うまく言えないのだけど,現代の私達のなんでも見たい欲を具現化しているように思えました。ほんと,うまく言えないのだけど。一線越えた感。

あやちゃんの「わたしはなりたくないわたしになっていく」とか「家族でも好きな人でも私以外他人」みたいなやつとか,じっこ先輩の「友達なんていないけどみんなもそうなんじゃないか」みたいなやつとか,中学生女子というか,女子に限らず思春期の子であればみんな触れるようなところをツンツンつついていて…,それが春だから,もうなんというかチューンと鋭いニードルでつつかれたような気持ちになりました。
あとなんで2001年の秋なんだろう。今(2016年)から逆算すればそうするしかないのか。2001年の秋にあったあの事故というかテロのことを語る部分がありましたが,私もお風呂上りにテレビをつけたらその映像が流れてたって感じだったので,案外あの時期の中学生はみんなおんなじようなこと経験してるんだと思いました。笑 ワールドトレードセンターをジェンガに見立てていたやつは,おぉっと思いました。

タイトルの,『てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、 つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。』って,最初読んだときものすごく難解で,わけわかんなくて,そのまんま劇場に来てしまったのだけど,舞台から何度も何度もそのタイトルが聞こえてくると,段々イメージすることができてきました。「ここで点とは何のことを指すのだろう」みたいなせりふがありましたが,その立体は学校なのかもしれないし,「こんな町」なのかもしれない。ことなった世界は,中学生の子ども達そのものかもしれないし,住人ひとりひとりかもしれない。私達は存在そのものが世界。なのかもしれない。ひかりは,希望なのかもしれないし,思い出なのかもしれない。

あとはじっこ先輩がとってもキュートだった…。高校時代から含めて,あんなアクティブなじっこ先輩初めて見ましたよ…。踊るし側転するしその直後せりふあるし鹿に飲まれて森に行っちゃうし。なんなのじっこ先輩。かわいすぎる。笑

かわいいと言えば舞台もとっても素敵だった!舞台中央にどーんと置かれているテントがかわいいなぁとは思っていて,なんかテントのメーカーのタグみたいなのついてる~と思っていたのですが,そのタグっぽいやつには「mum & gypsy」とプリントされていて,読み取れた瞬間「!!!」ってなりました。終演後舞台側からロビーに出たのですが,よくよく見ると舞台のはじっこに木製のアルファベットの置物があったのですが,それも M U M A N D G Y P S Y って並んでて,きゅーんときました。かわいい~。かわいすぎる~~~。

知り合いの方が所属されているカンパニーということを差っ引いても,私藤田さんの作品や演出が好きなのだと思います。抑えられた表出から滲み出る感情,抑えられていた表出を取っぱらったときの力強さ。この,泣きそうになってしまいそうな感覚。消えてしまいそうな感覚。生きることにも死ぬことにも精一杯なこの感覚。あの言葉はこの言葉に繋がっていて,別の意味合いを持つと感覚的にわかる瞬間。たまらない気持ちになるのです。

音楽と映像も素敵で,音はほぼ常に存在して,先月観た映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』を思い出しました。映像もカメラと元々用意されている映像とのリンクがどうなってるんだこりゃ!って感じで。あとイチロージローサブローのアップ具合とかたまらなかった…。

新しい春,新しい劇場にふさわしい,キラキラしてヒリヒリする,大切にしたい舞台を観ることができました。
ルミネ0が素敵な空間に育ちますよう。そしてこれからもマームを観ていこうと思えた,そんな作品でした。

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