Sunday, June 19, 2016

テレビドラマ『トットてれび』(全7話)

◇STAFF
原作:黒柳徹子『トットひとり』『トットチャンネル』
脚本:中園ミホ
演出:井上剛/川上剛/津田温子
音楽:大友良英/Sachiko M/江藤直子

◇CAST
満島ひかり・藤澤遥/中村獅童/錦戸亮/ミムラ/濱田岳/安田成美/松重豊/大森南朋/武田鉄矢/吉田栄作/岸本加世子/吉田鋼太郎/黒柳徹子/小泉今日子(語り・パンダ)

2016年4~6月にNHKで放送,同時期に鑑賞

放送開始前から密かに楽しみにしていた『トットてれび』。今年の3月に黒柳徹子さんの『窓際のトットちゃん』を買っていたのだけど,全然読めていなくってちょっと後ろめたいというか,本に対するうっすらした罪悪感みたいなものもあって,観たいなと思っていました。そうでなくても,満島ひかりに黒柳徹子役を2回もオファーしたという話題を耳にしていたり,とにかく出演者がすごいので気合いが入ったドラマであることに間違いないと思っていたのもあって。30分という短めの枠も見やすかったです。

これまで私の中でNHKの本気といえば,NHKスペシャルの『映像の世紀』だと思っていました。20世紀の世界各国の映像を集めてテーマごとに編集したドキュメンタリー。高校生の時に世界史で一通り見て,DVD全盛期の時代に,世界史の先生がVHSに録画したものを大事にとっていた理由がわかったような気がしていました。

がっ,『トットてれび』は『トットてれび』で別の角度の本気!テレビ放送が始まったレトロなあの時代を丁寧に再現していたり,ものまねではなく実在の人物の本質を表現しようという手法に胸が熱くなりました。確かにビジュアルは寄せていたのだろうけど,満島ひかりが本当に若かりし頃の徹子さんだった。いや,私が知っている徹子さんはおばさんとかおばあさんになってからの徹子さんなのだけど,若かったらきっとこうだったんだろうなという満島ひかりの徹子さんでした。

一番最初の回では,オーディションを受けたトットちゃんが「私は喋り方が変」みたいなことを自分で言ってます。確かに普段の満島ひかりの演じている喋りと比べたら明らかに「変」なのだけど,あのビジュアルでそういうふうに喋っていたら,すんごく普通というか,すんなり聞けちゃう。あれは何なんだろう。役作りとかそういうものではなくて,満島ひかりの見た目をした徹子さんが喋っているような感覚。このひとの,満島ひかりの女優としての幅の広さを今回改めて感じました。
どこまでが台本で,どこまでがアドリブなのかわからないのだけど,トットちゃんのちょっとした一言がものすごく生っぽくて,見ててうぉぉ~ってなりました(語彙力…)。例えば,オーディションが終わった時にぼそっと「まただめだった」みたいな呟きをしたりだとか。トットちゃんは今の診断基準と照らし合わせると,ADHDぽいとかLDぽいとかって言われてますが,そのADHDの素っぽさというか,そういう部分がぽろっとこぼれていて。そこがまた魅力的でした。

(あ。周りのひとも楽しいのでわちゃわちゃした感じで見られるのだけど,今全7話を振り返ると,トットちゃんの内省している部分,心で考えている部分ってドラマではあんまり扱われていなかったな…。いきなりNYに行っちゃったりとか。それは本を読めばわかるのだろうか。この夏の課題図書にしよう…。)

アタマの方でもちょろっと書きましたが,本当に贅沢なキャスティングですよね。これ。
上にばーっと書いたキャスト陣は主要人物で,他にも各回ゲストがいるのだけど…新井浩文,福田彩乃,小松和重,北村有起哉,木野花,田中要次,片桐はいり,松田龍平とか…これだけでもだいぶ豪華なのですが…。あと気づいたらモー娘。OGの高橋愛と田中れいなと久住小春がいるし,昨年夏に放送された『レッドクロス』で素敵な子役だった高村佳偉人くんもトットちゃんのクラスメイトとして出てきているし。す,すごすぎる…。あとFolderのデビュー当時を知っている私としては三浦大知との共演はたまらぬものがありました。(FolderとFolder5のベスト,私のウォークマンに入ってます…。笑)
こういうところからも,NHKの本気度合いが伝わってきました。

職場の先輩から聞いていた向田邦子さんの留守電のエピソードをはじめ,実在する著名人との交流,当時のテレビドラマの作り方なんかは「そうだったんだー!」という感じで,楽しく見られました。同時に,一人のひと(徹子さん)をいろんな角度からじっくり知るということがすんごく面白かったです。ドラマ自体ももちろん面白いのだけど,一人のひとが持っているドラマはものすごく面白いし魅力的だし,人生のべんきょうになる気がします。

ノンフィクションの要素も含んでいるけど,中園ミホの脚本ということも,このふわふわしたファンタジックな世界を作り出せていた要因なのだろうなーと思ったり。2年前の前期の朝ドラ『花子とアン』も私は全編観たのですが,実際とファンタジーをふわりと融合させていたなぁーと思っていたのです。今回だったらトットちゃんの夢とか,途中で商店街が真っ二つになったと思ったら楽しいテレビの世界に繋がってる…とか。最終話のラストシーンも,「今の徹子さん」が3人(子役の藤澤遥ちゃん。彼女も登場シーンは少ないけど徹子さんのエッセンスをちゃんと掴んでて良かった。)も出てきたり,あの世に行ってしまった向田さんとか森重さんとか渥美さんとかがわらわらセットから出てきたりして,私の涙腺がヤられていました。あぁぁ…。

徹子さんの半生,仕事への思い,大切な人達への思い,テレビとは何を伝えるものなのか,女優とは何を表現するものなのか…そういうものがよーく伝わってくる,レトロでキュートで充実したドラマでした。トットちゃんのことがますます好きになったので,本,読みます…!笑

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