Wednesday, September 23, 2015

KERA・MAP #006 『グッドバイ』

(キューブ公式webサイトより)

@世田谷パブリックシアター

原作:太宰 治(「グッド・バイ」)
脚本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

出演:仲村トオル/小池栄子/水野美紀/夏帆/門脇麦/町田マリー/緒川たまき/萩原聖人/池谷のぶえ/野間口徹/山崎 一

フライヤーがとっても魅力的で,初めて見た時から(素敵~!)と思っていたKERA・MAPの『グッドバイ』。観たいけどチケットは即予定枚数終了してて,あぁ残念…と思っていました。
がっ,高校演劇の全国大会におでかけしている最中にKERAさんのTwitterでもうちょっと席を出すことを知って,滋賀県でチケットを確保!帰りの新幹線に乗る前にタクシーの運転手さんにコンビニに寄ってもらって発券!というキツキツスケジュールの中手に入れたものだったのでした。

この舞台を観る3日前から前日まで高校演劇の地区大会を地元の長野県や東京で観ていたのですが,ひっさしぶりにプロのエンターテインメントな舞台を観たな!と思いました。
そうそう。この感じこの感じ。オープニングの映像とダンスとか,うひゃーって思いました。さすがKERAさん…!

そして気づいたことが。
今年に入って『エッグ』『お話の森』,そして今回と,私仲村トオルのお芝居3回観てる…!私仲村トオルのことが,好きかもしれない…!(*´艸`*)ていうか,好き…!!!
まるで中学生の初恋のような気持ちになりました。←
最近テレビのCMでも仲村トオルを拝む機会がありましたが,あんな声の抑え方,もったいない…。やっぱり彼は舞台で輝くひとだわ…!なんてことも再認しました。笑

はっ。そうそう。舞台のことを書かねば。

今回はとにかくキャストさんが大物揃いなので皆さんに期待していましたが,期待以上でした。
特に映画『八日目の蝉』で圧倒された小池栄子を生で観られるのが楽しみだったんですが,本当にパワフルで素敵な女優さんだということを体感できました~!!!
小池栄子演じるキヌ子さんは,一見すっごく図太くてガサツで品がなくてという感じなんですが,実はただ真っ直ぐなひと。本人としてはいたってマジメにやっているけど,傍から見るとそれがとってもチャーミングで,魅力的でした。あとやっぱり小池栄子は声が良いよね。ちゃんと舞台で通るよね。ダミ声というか,わざと潰した感じで出しているのにそれがちゃんとクリアに聴こえるんだもの…。なんて女優さんなの…。
緒川たまき演じる大櫛さんから正体も心も見抜かれたあたりから,自分自身に戸惑うキヌ子が見えて…とても素敵でした。だから田島周二が亡くなったと知ったときの,一人でひっそり泣いているところなんかはキヌ子の感情がストレートに出ていて,とっても切なかったです。あぁ…。
パンフレットの小池栄子のインタビューページなんかでも,田島とキヌ子はお互いにないものを埋め合っていけるみたいなことを言っていて,そうなんだろうなぁという感じが二人の空気感から伝わってきました。あぁ,本当に魅力的なキャラクター&女優さんだった…。

そして小池栄子の次に「!!」っとなったのは夏帆。私,テレビも含めて夏帆のお芝居自体あんまり観たことなくて。2008年放送のテレビドラマ『4姉妹探偵団』をちょろっと観たことあったんですが,途中で挫折してしまって。どんな女優さんなのかと思っていたんですが…
腰が,高い!(゜д゜)←そこ
第二部の出だしは田島を忍ぼうというところから始まるので喪服なんですが,帯の位置が…なんか異様に高い!!笑 でも位置としては正しい!! 脚長いんだな…としみじみ感じました(´ `)ていうか超小顔でした。
体型にもびっくりしましたが,お芝居もキレイというかピュアというか,ケイ子さんなりの正義を持っている感じが素敵でした。ケイ子さんもキヌ子さんと多分似たところがあって,一部で世間を知らないところというか,予測が甘いというか,そんなところがあって。あ。それがピュアってことなのかな。うまく言えないけど。そこでしっかり傷つくケイ子ちゃんを見て,私もしっかり苦しくなりました。でも捨て台詞の「グッドバイ」が心地よかったです。笑

あとやっぱり楽しみだったのは門脇麦。昨年『K.テンペスト』を観た時は個人的にはまだあまり注目していなくて。ただ声が,私の部活の後輩ちゃんにそっくりで,その子にしか見えなくなっちゃった(笑)ということがあったんですが,朝ドラの『まれ』とか見ているうちに絶妙な力のある女優さんだということがよーくわかりました。再び生で門脇麦の声が聴けることを楽しみにしていたんですが,やはりこの女優さんは声がスゴイですね…。強く出している訳じゃないのにパーンと通るし,忘れられないインパクトがある。田島とやりとりするところとか,ものすごい贅沢な響きがしました。
パンフレットのインタビューには「青木さん,水原さん,大櫛さん。その三人とは違う形で,田島さんに衝撃を与えなければ,と思っています。」と書かれていたのだけど,ちゃんと衝撃がありました…。みすぼらしい姿というところもそうですが,年齢に見合わない,外れた感じ。そこが大人の田島さんとしては守ってあげたくなるところなのかなと思ったり。でも第二部ではもう世間を一通り知ってますみたいな感じになっていて,4人の愛人の中でもやっぱりベクトルが違うキャラクターだなと思いました。そうそう。パンフレットに門脇麦の人生の転機が書かれてましたが,潔くてこういうひと好きです。私。一瞬真木よう子がよぎりました。またぜひ生で観てみたい女優さんになりました。

そしてそして肝心の仲村トオルなのですが,この,真面目に見えて全く責任がなくて,愛してるように見えて全く大事にできてなくて,ゆるふわな男はなんなんだろう。ゆるふわなんて男の人の表現に使わないと思うんですが,でも超ゆるふわ。田島周二よ。でも仲村トオルが演じるから,それが全うなひとのように見えてしまう。あぁ怖い怖い。笑
本当にツッコミどころ満載な男。お芝居を観てもなんなんだこのひとと思っていたんですが,パンフレットの仲村さんのインタビューに載ってた「愛人たちとの関係でも,親切と愛情の区別がついていない。」って文章を読んで,スッときた気がしました。そうかぁ。だから一瞬一瞬では,目の前の女性に実直な感じがしたのか。って。
でもって,失ってから初めて自分の気持ちに気づく…。妻の静江のことも,愛してしまったキヌ子のことも。なんてベタ!ベタなラブコメ!でもそこが楽しい!!笑 最後らへんの,田島とキヌ子の,記憶が戻ったことを隠して会うところなんか,こそばゆくてこそばゆくて,(んも~!!)と思いながら観ちゃいました。笑 今までのトオルさんのような隙のない感じとは全く違うお芝居が観られて満足でした…。

はっ。そうそう。あと個人的にツボだったのは,池谷のぶえさん演じる幸子ちゃん。やべぇよ幸子ちゃん。カンペキに私の領域のひとだよ幸子ちゃん。でも面白くなっちゃうのは,KERAさんマジックなんだろうな。


プロの舞台だな~と思った要因はいろいろあって,ビジュアルへのこだわりとか,舞台装置とか,映像とか,いろいろ。そう。フライヤーのモノクロ感とかパンフレットの写真の質感とか,たまらなく好きです~。
あと要所要所で入ってくるダンスというか,振付が素敵でした。どこに注目していいかわからないくらい視線があちこちに散る感じで,気づくと次のシーンへつながっているあたりとか,面白いなって感じました。あのあたりはさすが小野寺さん…。


久々に最初から最後までウキウキした気持ちでいられて,観たぞーって満足感があったお芝居でした。12月には10年ぶりにNYLON100℃の『消失』も観るので,今回とまた真逆のKERAさん作品を味わえることを楽しみに生き延びたいと思います。

No comments :

Post a Comment