Wednesday, December 31, 2014

***わたしの2014ねん~映画編~***

「わたしの20○○ねん」シリーズ,2014年がようやくまとまります…。今回は映画編。

社会人になってホイホイお芝居に出かけることができなくなった分,映画を観ることが増えました。
職場の同僚の方から「映画は映画館で観るもの!」と教わってから,映画館で観て初めて映画になるんだなーということも,なんとなくわかってきたような気がします。舞台を劇場で観るのと一緒。
そしたらば,私の胸を打ったベスト3も,全部映画館で観た作品になりました。

ではでは,myベスト3+αをご紹介!

『STAND BY ME ドラえもん』
監督:八木竜一/山崎貴
脚本:山崎貴
原作:藤子・F・不二雄

ドラえもんって子どものための作品だけど,この作品は大人のための作品のように感じました。
「のび太の結婚前夜」や「帰ってきたドラえもん」なんて王道すぎる作品に,リアルになった表現方法(CG)!もうワクワク感が半端じゃなかったです。

そう。ワクワクしたのです。
これから生きる日本なんて,少子高齢化は進むし消費税は上がるし大きな地震はやってくるし,何に期待して何を楽しみに生きれば良いのかわからない。お先真っ暗!って本当に思うのに,ドラえもんの未来は,ワクワクさせてくれる。それは街の外観だったり,乗り物のような技術だったり。それを見て「うわぁ~」ってなってるのび太くんの表情がまた素敵で,その世界で生きている大人しずかちゃんの生活が素敵で,胸がときめきました。そんなふうに生きていけたら,なんていいんだろう。

見ていて魅力的だったのは,やっぱり表情!「嬉しい」とか「くやしい」とか,ひとつひとつの表情に血が通っていて,キュンとしました。アニメーションなのに,細かい表現に大人のこだわりを感じられて,本当に素敵でした。

大切なひとがいるからがんばれる,大切なひとの成長が日々のしあわせ。
そんなことを感じられる,愛おしい作品でした。


『永遠の0』
永遠の0 Blu-ray通常版
脚本:山崎貴/林民夫
監督・脚本・VFX:山崎貴

これこそ本当に映画館で観る作品!スケールの大きさに圧倒されました。
あと岡田くんの演技ってまともに観たことなかったけど,良かった…。
ラストのあの表情がとても良かった。①の『私の男』もそうだけど,そのワンシーンのためにすべてがあるような気がします。

なんか,最近,時代のうねりに巻かれずに自己を主張するひとを(作品の中で)よく見る気がします。

『花子とアン』の蓮子様だったり,『赤い月』の波子だったり。この宮部もそう。現代で生きる私達だったらとても自然なことなのだけど,その当時にそうすることが,どれだけ勇気と覚悟のいることだったのだろうと思うと,本当に強いひとなのだろうなぁと思います。

「愛することが生きること」だとしたら,私もまだまだ死ねない…。
今年の3月には向井くん主演でテレ東がこのドラマ版を放送するらしいので,それも楽しみです。


『私の男』
監督:熊切和嘉
脚本:宇治田隆史

濃密な蜂蜜を一気飲みしたら見えるような世界観。

『永遠の0』以上に,最後のあの表情のためにあった129分。何があっても,誰と生きていても,深いところでつながっているんだろうなと思いました。

二階堂ふみの化けっぷりが,スゴイ!中学生から大人になるまで演じ切っていますが,自他の未分化のドロドロしたところも,自立して凛としたところも,きちんと見えて。力のある女優さんなんだなと実感しました。

あと,北海道の曇天or雪!という天候も,ふたりの閉鎖的で濃厚な世界観を引き立てていて素敵でした。うまくいえないけど,日本映画っぽい質感の画なのも,ちょっと昔っぽい感じがあってきれいでした。

浅野忠信の不器用さ,三浦貴大の健康っぷり,山田望叶ちゃんと二階堂ふみの妖艶さ…。とても良いキャスティングでした。酔いしれるって,こういう映画のことなのかなと思いました。


☆番外編『秒速5センチメートル』
監督:新海誠
脚本:新海誠

2007年に劇場で観て,そして今年DVDで観返しました。
初めて観た時は鈍行で栃木に行ったこともなければ,豪徳寺や三軒茶屋にも行ったことがなかったのだけど,今は全て果たしました。

主人公のような経験はないけれど,切なくてくるしい思いを抱えて大人になっていくあたりは,少しは似ているかもしれない。
初めてこの作品を観た時は,第二話と三話の間あたりに私がいたような気がするけど,今はもう三話のど真ん中だなーって感じました。観る年齢によって,感じる気持ちや思い返すあれこれが全然違うんだろうなーとも思います。

甘くて切ない,くるしい気持ちをそっとしておいてくれる。それでもそれぞれのスピードで世界がめぐっていくことを教えてくれる。そんな作品です。


+++

これでようやく,2014年を終えられる気がします…。笑

一時期真木よう子作品を制覇しようとがんばってましたが,途中で断念しちゃいました。
2015年はこれを目標のひとつとして,私の心をピピっと打つ作品に出会えたらな~と思います。
おわりー。

Tuesday, December 30, 2014

映画『神様のカルテ』

◇STAFF
監督:深川栄洋
原作:夏川草介「神様のカルテ」(小学館文庫刊)
脚本:後藤法子
音楽:松谷卓

◇CAST
櫻井翔/宮﨑あおい/要潤/吉瀬美智子/岡田義徳/朝倉あき/原田泰造/西岡德馬/池脇千鶴/加賀まりこ/柄本明

(2014.12.30 テレビで鑑賞)

この原作が長野県の松本市が舞台ということはずいぶん前から知っていたのだけど,読んだことも,映画を観たこともこの日までありませんでした。ただ,原作は3まで出ているし,映画も2まで作られているので,人気(?)はあるんだなぁと静かに感じ取っていました。

で,せっかく年末年始で帰省しているし,実家のテレビに録画してあるので,観てみようかな~と思って再生してみました。

特に大きな事件や何かがあるわけではないのだけど,じんわりする,良い作品でした。
一止の心の葛藤が見えて,とてもよかったです。
あと,周囲に頼れる親類がいない中で病気になったときの恐怖や不安,孤独を少し感じることができたように思います。加賀まりこ,よかった…。

そうそう。私あのあたりがリアルに地元なのです。
思春期を信大付近で過ごし,女鳥羽川のあたりも数えきれないくらい歩きました。
そこが風景の一部として写り込んでいると,なんだかくすぐったい,不思議な気分。

あとあと。
はるなさんの一止に対する接し方がうまいな~と思って見てました。
夏目漱石を愛しているがためにあの話し方だと言うけど,あの固さを見ると,多分一止はマイルドなアスペさんだと思うのです。話し方,身体的な接し方含めて,はるなさんだから一止は穏やかに仕事や日々の生活を続けていられるのだろうなと思いました。そういう意味でも良い映画。

思わず続編を観たくなっちゃいました。
池脇千鶴や岡田くんは,私が小学生のときすごい好きだった女優さん・俳優さんだったので,いいポジションで見られてよかったです(笑)。

映画『女帝[エンペラー]』(日本語吹き替え版)

◇STAFF
原作:ウィリアム・シェークスピア『ハムレット』
監督:フォン・シャオガン
アクション監督:ユエン・ウーピン
脚本:フォン・シャオガン
美術:ティム・イップ
音楽:タン・ドゥン

◇CAST
チャン・ツィイー(魏涼子)/グォ・ヨウ(後藤哲夫)/ダニエル・ウー(東地宏樹)/ジョウ・シュン(弓場沙織)/ホァン・シャオミン(加藤康之)

(2014.12.30テレビで鑑賞)

チャン・ツィイーが出てるから観ました。今年は『初恋のきた道』もテレビで観たので,1年間で無垢な少女からアジアンビューティーになった彼女を拝むことができました。笑

『SAYURI』も含めて,ツィイーが出てる作品は3作目なのですが,吹き替えを観るのは初めてでした。
…ので,なんだか違和感!いや,きっとツィイーに限らず,映画は原語がいちばんだなぁ。
でも!吹き替えでよかったことも!ジョウ・シュン演じるチンニー役の吹き替えが,『ゴシップガール』のブレア役の弓場沙織さんじゃありませんか♡ブレア好きな私としては満足…☆ブレアと違ってはっちゃける役じゃなかったのに,ちゃーんと声だけでわかりました。
(というか魏涼子さんも弓場沙織さんも,ツィイーの吹き替えをやられたことがあるんですね…。『初恋のきた道』は弓場さんなのですね…。気になる…。)

ともかく,ツィイーの美しさは痛いほど伝わってくる作品でした!
あと,ジョウ・シュンがきれいでかわいかったです!(ちょっと大島優子に似ている気がする!)

しかしながら!

作品としては「???」になってしまいました…。ぶぇぇ…。『ハムレット』自体,アレンジしたものしか観たことないので人間関係がよくわからず…(´-`)
そこでこの作品観ても,自分の中ではよく深まらず…(´-`)残念…。
もう少し,ツィイーの揺れ動くところを見られたらよかったなー。

あと,中国のこういうアクション映画(に入るの?入れていいの?)ってまともに観たことなかったのですが,(なぜここから!?)っていうところから出てきたり,(そう移動するの!?)っていうふうに動いたりして,何というか…見せたい画の前後の流れはあまり気にしていないつくりになっているんだなーと思いました。エンターテイメントといえばそれまでだけど,こういうところが中国っぽいのかな?とも思ったり。


できればツィイー作品は制覇したい!と思っているので,来年も言語&余裕があれば吹き替えで楽しみたいと思います。

映画『赤い月』

◇STAFF
原作:なかにし礼『赤い月』(新潮社刊)
監督:降旗康男
脚本:井上由美子/降旗康男
音楽:朝川朋之

◇CAST
常盤貴子/伊勢谷友介/香川照之/布袋寅泰/反田孝幸/斉藤千晃/佐藤勇輝/大杉漣/山本太郎/エレーナ・ザハロヴァ/ヴァレリー・ドルジェンコフ/蟹江一平/山中聡/糠信義弘/瀧本武 他

(2014.12.30 テレビで鑑賞)

公開された当時からずーーーーーーっと観たいと思っていた作品。
あっという間に10年経ってしまったけど,今観られてよかった。常盤貴子が好きなので観たかったのですが,当時見たらこの豪華メンバーのすごさには気づけなかったことでしょう。伊勢谷友介とか,2010年代に入ってから知ったので…。

なかにし礼の自叙伝的な作品らしいです。これ。
きっと常盤貴子演ずる波子の次男・公平がなかにしさんなんだろうと思います。公平の,あの緘黙っぷりがいいよね!表出は少ないけれど,目で物語っている!!啓介の禁断症状と波子が闘っているところとか,波子と啓介のセックスシーンを見てしまったところとか(というかここ,あの年齢の子にとって外傷的すぎる。←もちろん作中のキャラクターの話),表情がなんともいえないなぁ。いいなぁ。今どんな子になってるんだろうなぁ。

あと,今よりちょっぴり若い香川照之が見られてよかったなぁ♡笑
「覚悟」とか「正義」とか,魂の見せ方がいかにも当時の人で,見ていて(ギヤーーーッッ)てなりました。小指自分で切り落としちゃうとことか。しかもそれを自社製品(お酒)に漬けちゃうとことかっ!ギャワワワワ心臓に悪すぎるよォォォ。しかも「自分よりひとつ年下の者が働いて自分が働かないとは」っていうあたりも,良くも悪くも日本人らしい。自分の小ささを自覚しているけど,大きなひとでいたい…というようなお芝居が本当に合う役者さんだなーとしみじみ思います。

でもって,エレナ役のエレーナさん(こ,これはたまたまなの!?笑)が美しくてうっとり…(´▽`人)♡♡♡
欧州のひとってどうしてこんなにきれいなんだろう~。
高校生の時に観た『ヒトラー 最期の14日間』に出ていたアレクサンドラ・マリア・ララとかも同じように思いました…。その作品くらいしか日本では知られていないけど,インパクトのある女優さん。…みたいな。

そして!肝心の常盤貴子!
はぁぁ…。(ためいき)
ああいう,我が強い女,合いますね…。
全部通して観てみると,なんだこの女と思ってしまうのですが,その時々で出てくる言葉は(うむ確かに)と思ったり。でもそこに騙されてしまうんだろうな男たちは…とも思ったり。
「公平,子どもだからって母さんに頼ってばかりではだめよ。自分で逃げるの。」とか。はっとしました。

でも「あなたたちの命と母さんの命はつながっているの。ひとつの命なのよ。私が死んだらお前たちも死んでしまう。だから私は生きなければいけない。そして生きるためには愛し合う人が必要なのよ。」は,おいおいまじかと思ったり。さらにそこで母親に対して嫌悪感を抱いていた娘が波子に歩み寄ったりしていて,まじかーと思ったり。きっと,言葉で鼓舞するのがうまい人なんだろうな。

あと,この人を見ていて,『花子とアン』の蓮子様を思い出しました。長男が出征していくときに,「万歳なんてできない」って言ったり。「生きたい」と話していたり。時代に惑わされず,自分で判断して生きていたひとなんだろうと思いました。だから最後のせりふも,「ありがとう満州」だったんだろうな。


2003年の作品なのに画がちょっと昔っぽかったり,スタッフロールの氏名がみなさんの手書きだったりして,そういうところに温かみを感じました。
生きるためには愛し合う人が必要…という言葉がぐぐっとみぞおちを突いてきた,鋭さのある作品でもありました…。

Saturday, December 27, 2014

長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部 自主公演『Nippon, cha cha cha!』

(長野県松本蟻ヶ崎高校webサイトより)

@松本市Mウイング

作:日下部英司・長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部
出演:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部

まさかの!4回目の観劇!
今まで同じ年に同じカンパニーで同じ作品を観た記録は最高3回だったので,更新…!

7月から半年くらい追わせていただきましたが,率直に言って今回が一番良かったです。
この間一巡してまた戻ってきた(ように見えた)ところや,新たに取り入れられたところもあって,これが今の蟻ヶ崎の皆さんが私達に示したいものなんだろうと思いました。ここまでくるのに,これだけの時間が必要だったんだろうとも思います。

今回は自主公演ということで,部員のみなさんが全ての広報を担当しなければならなかったと思うのですが…,ポスターがすごーく良かったです!あれだけ描ける方が部にいるってすごいですね。強みですね。
でも素敵だったからこそ,パンフレットにお名前がないのはもったいないように感じました。←描かれたご本人の意思もあるかと思いますが…。
それにしても,ドラクロワの絵がこんなにもうまく当てはまるものなんですね…。

さて中身の話です…。最近,登場人物が怒(いか)ってるお芝居(ミナモザの『みえない雲』)を観て,ふと気づかされたことがあります。
(そっか,怒るとか,感情を出すって,こんなふうに全身から溢れ出るものだよなー)って。怒りも,喜びもそう。あと,伝えたいという意思があれば,自ずと体が動くものだろうと。思うのです。後付けの,小手先の芝居…という訳ではなく,自ずとついてくるもの。それがこの『Nippon…』にはないなーって!ミナモザ観て気づいたんです!
せりふは出ているのに,伝わってこない(ここまで届かない)気がしちゃうのはなぜ!?って思ったときに,(あ,声と表情しかないからか…)って。後付けする演技と,結果としての表出は全く別物だけど,後付けする演技を過剰に嫌って,表出をセーブしている演出のように感じました。例えば言いたいことがあるのにうまく言葉に出来ないときって,考える前に手とか動いちゃうじゃないですか。ああいうのがなくて,頭で考えて行動をセーブしている感じなのかな~。←反対に,後付けしまくってる(とりあえずノンストップで動く)ものの典型が,今年の中信地区で言うところの美須々なのかなと思います。もちろんどちらが良い悪いではありません。

あとは,やっぱりこのくらいのサイズのハコと床の色がいいですよね。黒い道具が見えますよね。

あと普天間南の部長さんの衣装が赤×白ボーダーじゃなくて安心しました(笑)。でも福島からやってきた安達さんはすっぽり黒タイツになってしまったので(前は7分とか8分丈のレギンスだった),体のライン(下半身?)が消えていました…。残念です…。

はっ!残念と言えば,せっかくの自主公演なのだから,カーテンコールで一言お聞きしたかったです~…。パンフレットにはもちろん書いてあるのですが,生の想いをお聞きしたかったなという気持ちがあります。

さらに残念と言えば,最後の最後の音響はあれで良かったのでしょうか…?なんだかしっくり来なかったです…。それ(オペレーションミス?)によってラストの解釈も違ってくるかなと思います。

反対に「おっ」と思ったのが,蟻高のラスト。前はだらっと見えていたんですが,今回は完全はける方へ行ったので,私は見やすかったです◎
あ,でもせっかくドラクロワポスターがあるから,先生お手製の観光の旗とか作ってパタパタしながらみんなを引率していったら楽しそうだな~。(←遊びたい人。笑)


4回目にして,楽しそうにしてる部分が増えたなーと思いました。微笑ましかったです。(でも本質じゃありません。どちらかというと,こここそ小手先に入るやつ。妄想の観光の旗パタパタもしかりです…!)

これからまた新しい作品に取り組まれると思うのですが,感情を適切に表現していくことが今後の蟻ヶ崎の皆さんの課題になるのかなと勝手に思っています。出せないことがある意味「いい子」と呼ばれる訳なので,一作品の演出としての課題なのかキャストさんご自身の課題なのかは謎ですが,もっと表現できる自由というか,そういうものを体感できると幅が広がるんだろうな~と思います。

この半年,ひとつの作品に丁寧に向き合う皆さんを追わせていただくことができました。成長していく作品を観客のひとりとして見守ることができ光栄でした。
蟻高のみなさん,お疲れ様でした。

Friday, December 26, 2014

***わたしの2014ねん~テレビドラマ編~***

「わたしの20○○ねん」シリーズ,今回はテレビドラマ編です。
もともとは舞台とか出来事とか写真とか,ざっくりした区分で始めたシリーズなので,ここまで細かくするなんて自分でびっくり。

でも,ちゃんと日々の雑記の中だけではなく,きちんとまとめておきたいなーっと思ったので綴りたいと思います。

来年の充実につなげるべく,テレビドラマ編はじまりはじまり~。


⑤NHK『聖女』(8~10月・全7話)

脚本:大森美香
演出:日比野朗/水村秀雄
音楽:吉俣良

デビュー当時から広末涼子は知っていたけど,彼女のちゃんとしたお芝居とか観たことないのです。『おくりびと』とか。
この年齢の彼女でしか出せない魅力に溢れる作品だったなーと思います。
感想の本文でも書いているけど,このひとの表情がとても良いの。とっても。
少し歪んだ,でも必死に笑おうとしてる顔とか,好きだった人に再会できてすんごいキュンキュンしてる瞳とか,表情ひとつで多くのことを物語れる女優なんだな…と実感。

あと,せりふがよかった。
「愛なんて,なんであるんでしょうね。そんなものなければよかったのに。そんなものなかったら,もっと上手に生きられたのに。」
「あなたを愛したこと,それだけがあたしの失敗だった。それだけが,本当のあたしだったのかもしれない。」
“上手に生きる”とか“失敗”とか,言葉のセレクトが秀逸だなぁと思う訳です。

ずいぶんと遠回りしてしまったけれど,純粋に誰かを愛していた。それだけのこと。不器用な肘井基子が,愛おしかったり疎ましかったり。
女の幸せについて考えさせられた作品でした。


④CBC『月に行く舟』(10月)

作:北川悦吏子
演出:堀場正仁

昨年の『月に祈るピエロ』が良くて,今年もこのシリーズに期待していました。
あたり。

舞台は岐阜の,全然栄えていない土地なのだけど,それが作品の中で良く映えていたというか,作品そのものを引き立てていたなぁと感じます。ただの観光的なロケではなく,その土地で生きるひとの空気みたいなものが見えた気がします。

大人のための大人のドラマでした。じわじわきました。
最後に“におい”を託すところとかたまらないし,好きな人を待っていたいし,待っていてほしい。大人でも,そういう夢を見たい。
そうそう,映画『冷静と情熱のあいだ』に似たじわじわを感じました。静かに胸を打つ作品でした。


③テレビ東京『なぞの転校生』(1~3月・全12話)
脚本:岩井俊二
監督:長澤雅彦

岩井俊二さんが脚本だというので,気になって観てました。
この時期は他のドラマも観ていたのですが,気づいたら一番集中して観てました。でも実はまだ最終回を観ていない!だけどそこ抜きでも,印象的な作品。

ショパンの「雨だれ」がとても素敵だった。もうテーマソング。
手ぶれ風カメラワークも良い。映像の質感もすっごい好み。
中村蒼も桜井美南も本当にみずみずしい演技で,キュンとしてしまいました。桜井美南は視線が,目が良い!!そして本郷奏多のサイボーグっぷりがいいなぁ。
あとは杉咲花ちゃんだよね。もう『MOZU』とは全然違うお芝居。幅が広い女優さんだな~と思います。

とにかく,早いところ最終回を観たいです。


②TBS『Nのために』(10~12月・全10話)

脚本:奥寺佐渡子
演出:塚原あゆ子/山本剛義/阿南昭宏
音楽:横山克

もう…最終回を観たとき,本当に胸がいっぱいでした。良いものを観ました。
もっとがっつり語りたいので,早く単体の感想を上げられるように努力します…。

『花子とアン』で共演した賀来賢人と窪田正孝の再共演♡
榮倉奈々×横山克♡♡
あーーーーー,本当によかった。
よかったドラマとは,最終回を観た後にもう一度見返したくなる作品のことなんだろうなーと個人的に思います。観たくなりました。

榮倉奈々が高校生からアラサーまでを演じているのだけど,3年前にやっていた『蜜の味』でも中学?くらいからそれくらいの年までを演じていて,この人ほど自然に年齢を超越できる女優はそういないなーと思っていたのです。高校生姿の榮倉奈々に,何の不自然さも感じられないのだもの!

「守りたいひとのために隠し続ける」という純粋さ,究極の愛が,本当にくるしく,きれいで,ある意味美しいな…と思いました。

OPの色彩も本当に良い…。主題歌も良い…。あぁ,ほんとに,早く単体の記事書きたいです。笑


①TBS・WOWOW『MOZU』(4~8月・Season 1,2計15話)
監督:羽住英一郎
脚本:仁志光佑
音楽:菅野祐悟

2014年で最も私の心を奪ったテレビドラマは,『MOZU』!!!

お芝居を観る私にとって,生以上のものはないと思っていたし,最近のテレビドラマはつまらないと思っていました。

いやぁ…TBSとWOWOWの本気を観た気がしました。
申し分なさすぎる…。
そしてこのコンパクトな部分にこの作品の魅力を書くことは難しいので,単体の記事へどうぞ…。

杉咲花ちゃんが輝きまくっている…。あのドスの効いた声が素敵すぎる…。池松壮亮くんも良すぎる…。

(Season 1が民放→2が有料放送と来たら,次は映画かな!)と思っていたのですが,本当にそうなってびっくり。今から公開が楽しみです。


+++


はぁ。満足。笑

でもドラマって大概連続モノだから,それを短文にまとめるのはとても難しい…。
そして書いているとまた観たくなってくる…。

本当に,ドラマだから出せる世界観とか,ボリュームがあるなぁと改めて感じました。
来年も舞台とは違う魅力で魅せられる作品に出会えるといいなぁ。

Tuesday, December 23, 2014

映画『STAND BY ME ドラえもん』

◇STAFF
監督:八木竜一/山崎貴
脚本:山崎貴
原作:藤子・F・不二雄

◇CAST
水田わさび/大原めぐみ/かかずゆみ/木村昴/関智一/妻夫木聡 他

(2014.12.23 劇場で鑑賞)

この年でドラえもん…。ひとりドラえもん…。

ちょっと葛藤しましたが,でも好きなので観たかったんです。ドラえもん。
祝日とだけあって,大半は親子連れでした。本当に,世代を超えて万人に愛されている作品なんだなーとも思いました。

あぁ…泣けた…。

“ドラ泣き”と言われていたけど,本当にだふだふと涙を流してしまいました。最近泣いてなかったので,一度涙が出るとなかなかとまらなくて大変でした。笑

何がいいって,表情ですよね。
なんて生き生きしていて,愛らしいんだろう。ドラえもんも,のび太くんも,しずかちゃんもみーんな。
本当に,心から嬉しいってああいう表情のことを言うんだろうな。満たされているひとの心に触れることができたような気がしました。それがたとえアニメーションであっても。
あと,大人しずかちゃんがすんごい美しかった!うっとり!あんな女性になりたい!!笑

さらに観ていてワクワクしたのは,タイムマシンと未来の世界!
普通のアニメのドラえもんでは表現していないような,タイムマシンもメカ感(うぃーんとか,がしゃんがしゃんとか,発車?前の準備段階の動き!)があって胸がわぁぁ~☆ってなりました。足元のペダルを踏み込む瞬間のペダルの抵抗とか。ちゃんと質感があって,すごーくリアルでした。
未来の世界も,未来なのに“FUN TO DRIVE”とか今のTOYOTAのキャッチフレーズが街にどーんってあったり…。そうそう。TOYOTAとかPanasonicの広告が街中に溢れていたり,デパートみたいな建物に“KOROSUKE”とか書いてあって,大人の遊び心も溢れていて観ていて楽しかったです。うん。きっとこの映画を作ったひとは,楽しく作っていたんだろうなーということが作中から伝わってきました。ふふ。

しかしこの映画を観るにあたり,我々大人が乗り越えなければいけない問題が,声!!!
キャスト陣の,声!!!

2006年くらいでキャストが総とっかえになって,絵の感じも大幅に変わったと記憶してます。
私がちょうど高校生のときでした。その後も何回かドラえもんを見る機会はあったけれど,絵も違うし,なんだかドラえもんは頼りないキャラクターになってしまったように見えたし,私の知っているドラえもんじゃなくなったなーとしみじみ思ったものでした。
でも,不思議なことに水田わさびの大山のぶよ感が以前より増しているように聞こえました。近づいているのでしょうか…。いや大山さんになってほしいわけじゃないんだけど…。なんでしょうね。CGだから絵が違うもなんもないので,それで比較的観やすかったんでしょうか。でもやっぱりのび太のママがセーラームーンなんて信じられないです…。笑
とにかく,ドラえもんは愛らしく,しずかちゃんはかわいくてよかったです。あと妻夫木くんが大人のび太として出演しているあたりもニクイところです。

私達は時空を超えることはできないけど,「未来は変えられる」というメッセージはしっかり受けとることができたように思います。今やることによって,未来が少しずつ変わっていくことがこの作品の中にもあって(のび太の嫁がジャイ子からしずかちゃんになる…とか),ちょっと勇気をもらった気がします。

またへこんだときとかに観て,元気とピュアな気持ちをもらいたいと思います。そんな作品でした。

Saturday, December 20, 2014

***わたしの2014ねん~舞台編~***

高校演劇編から始まった今年の「わたしの20○○ねん」シリーズ。今回は舞台編です。
このシリーズは,ジャンルごとに一年間を振り返り,来年の充実につなげるものです。

今年,高校演劇を除くと,お芝居は14本観ました。社会人になり観られる本数が本当に減ってしまって切ない限りです。
それでも心揺さぶられる舞台に出会えたので満足!

ではmyベスト5をご紹介~。(作品のタイトルをクリックすると感想の本文に飛べる記事もあったりなかったり。)

5Spinnin Ronin Japan『SKY RUNNER』 (Bキャスト)

演出:加世田剛
脚本:亀山らく
@d-倉庫/10月

出演者の一人,横山真希ちゃんが中学時代の部活の同期なので,彼女が出ている舞台はできるだけ足を運ぶようにしています。
「知り合いが出ている」から観に行ったところが大きいのだけど,それ抜きにしても観てよかった!目の前のひとたちが本当にキラキラしていて,疾走感が半端じゃなかった。あと群舞が超かっこよかった。

身体表現の美しさを改めて実感できたな…。踊れるって素敵だな…。


4tamagoPLIN 『さいあい~シェイクスピア・レシピ~』


作・演出・振付:スズキ拓朗
@シアタートラム/2月

「老若男女楽しめる作品」ってチラシに載ってたんですが,その通りでした。
誰でも楽しめる作品=良い作品ではもちろんないけど,でもこれはきっと,観るひとの年齢によって響く部分が違うんだろうな。

“愛”を知るために純粋に生きていく野菜たちがとてもキュートで,愛らしくて,どこかうらやましくて,きゅうーっと締め付けられるような気持ちになりました。

あと,舞台とともに書き進められていく書がよかったー。既に演劇というパフォーマンスが,お客さんと一緒に完成を目指していくものなのに,ダブルで進んでいく「リアルタイム」があって面白かったです。
なんか,生きていくって踊っていることなんだろうなーとふと思った作品でもあります。


3ミナモザ『みえない雲』













原作:グードルン・パウゼヴァング
訳:高田ゆみ子(小学館文庫)
上演台本・演出:瀬戸山美咲
@シアタートラム/12月

私が中学~高校時代に最もよく観ていたプロの劇団は燐光群。
めちゃくちゃ社会派で,めちゃくちゃ難解でした。でもやっぱり,私こういう作品が好きなんだなと再認できました。初めてミナモザを観た『エモーショナルレイバー』も,すごく印象的だったから。

3.11以降,「それ」を彷彿とさせるようなものや,ダイレクトに描いているものもあったけど,私はなんだかそれが…嫌,というか,(あぁまたですか…)という感じがどこかしていたんです。

この作品は今まで私が観てきたものの何が違ったかというと,ちゃんと「過程」を描いているところかなと思います。動揺だったり,混乱だったり,恐怖だったり,怒りだったり,悲しみだったり。(そっかぁ,3.11後を扱ったものばっか観てたから,なんだかなぁだったんだー)ってことに気づけました。
私はやっぱり心の動きっぷりが観たいので,いくらお芝居の中で回想を語っていても,それはもうライブではないなと。あくまで回想のライブだなと。そう思うので。ちゃんと,ライブで心が動いているところを観られて,感じられて,よかった。それに尽きます。


2現代能楽集Ⅶ 『花子について』 能「葵上」・狂言「花子」・三島由紀夫作「近代能楽集『班女』」より


作・演出:倉持裕
@シアタートラム/2月

「古典作品が今でも上演されているのは,現代にも通じるものがあるから」なんてもう何度も聞いたこと。作品の神髄は,もうみんな知ってる物。
だったらどう魅せるか,どうブラッシュアップしていくかって,古典に取り組むときの永遠の課題になるのかなーなんて,ぼんやり思います。

この作品を観て,(え,これが能や狂言なの?三島由紀夫作なの??)と疑ってしまいました。
なぜならめっちゃ面白かった!

片桐はいりさんの舞台は2度目なのですが,唯一無二の存在感…。スゴイの一言です…。
あと,元Noismの宮河愛一郎さんが出ていたのも素敵ポイント♡いやー,よかった…。お面つけてたからお顔は拝見できなかったけど,おぞましさを存分に感じられました。

“現代能楽集”って企画自体は,やっぱり公共劇場ならではなんだろうな。
改めて,公共の強みを感じた作品でもありました。


1葛河思潮社『背信』










作:ハロルド・ピンター
翻訳:貴志哲雄
演出:長塚圭史
@東京芸術劇場/9月

初めて観たピンター作品。
9月に観た時点で,今年のベスト3だなと思っていましたが,そのままぶっちぎりました。笑

人を人たらしめているものが記憶だとしたら,それに支えられて生きているのだとしたら,私たちはそれを美化したり,良いように解釈して当然なんだろうなと思います。
だから誰かが記憶している(ことになっている)私との思い出や,私が記憶している(ことになっている)あなたとの思い出が真実とは違うものになったとしても,それが生きていることなのだと思えるようになりました。

それから,お芝居の醍醐味をたーっぷり味わえました。
舞台と客席で,空間を共有すること。
これに勝る魅力なんて,ないと思うのです。
ほんとうに,観て良かった。今年のベストに留まらず,私の人生に影響を与えた作品です。


+++


あぁ,こう振り返ると,今年も充実した1年になれたなと思います(笑)。

来年はついに!NODA・MAPの『エッグ』再演!!
未来を連れてきた作品になってしまったよ,『エッグ』…。
オリジナルキャストでの再演,今から胸がときめいております…。
あとは産休明けの松たか子のお芝居のチケットを全力で確保したいと思います。

観劇予定に生かされている,私です…。

来年も素敵なお芝居に出会えますように。

Sunday, December 14, 2014

ミナモザ第16回公演『みえない雲』


@シアタートラム

原作:グードルン・パウゼヴァング
訳:高田ゆみ子(小学館文庫)
上演台本・演出:瀬戸山美咲

出演:上白石萌音/陽月華/塩顕治/中田顕史郎/大原研二/浅倉洋介/橘花梨/石田迪子/つついきえ/佐藤真子/間瀬英正/大森美紀子


(どうしようかな~。行こうかな~…)と思っていたこの舞台。
以前観たミナモザの『エモーショナルレイバー』がとても印象的だったこと,上白石萌歌さんのお姉さんが出るということで,迷っていました…。

よし行こうという決め手になったのは,このフライヤーの表情がとっても素敵だったのと,
『エモーショナルレイバー』に出演されていたハマカワフミエさんが「ミナモザの中で一番良かった」みたいなことをTwitterでつぶやかれていたこと。

あぁ…観てよかった…。
衆議院選挙の当日に観られたのも,偶然じゃないかもしれない。

上演時間が2時間20分(休憩なし)ということで,ちょっとしんどそう…と思ったのですが,一度始まるとガーっと見入ってしまいました。


そう。私上白石姉妹は,妹さんの存在を先に知り,あとからお姉さんのことを知りました(当日受付に妹さんもいらっしゃった…)。
妹さんはドラマで見たりCMで見かけたりということがあったのですが,お姉さんの萌音さんのお芝居は,今回が初めて。



…とっ,透明感が,やばい!!!




まず出演者がばーっと出てきて,(あの人…?)と思っていた人がいたのですが,ちいちゃい人がサッと現れて(あの子だーーーーーっ!)ってなりました。笑
びっくり!ちいちゃい!!Wikipediaで調べたら,152センチだそうです。ちいちゃい…!!

でもって,声の透明感にびっくり。すっごい。あの年齢だから出るの!?すごくきれいな声で,びっくりしました。
あと,感情の爆発っぷりがすごい。“怒っている”ところは,本当にすごくて,思わず涙が出てきました。こらえたけど。
言うことを聞かないウリに対して叱るところとか,
嘘を言った看護師に対して叫ぶところとか,
やり場のない“怒り”がいろんなところで見えて,生身の人間らしさを感じられました。
体がしなやかで,本当に,全身で感情を出せる女優さんなんだな~と思いました。

と同時に,私,今年は長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部の『Nippon, cha cha cha!』を何度か観ていまして。
あの作品に足りなかったのはこういう部分なんじゃないかと…ふと思いました。
『Nippon…』は「私にとって身近なことはあなたにとって遠いこと」というようなテーマで,沖縄の基地のことや,福島の原発のことを織り交ぜながら高校生があれやこれや現実と向き合う話なのですが,せりふありきというか,“感情”が見えなくて。
ひとつひとつのシーンは確かに“きれい”だったり,会話のキャッチボールが見えるのだけど,全体的に一環した感情が見えなくて。シーンが細切れなので仕方ないのかもしれないけど。見える前に次のシーンに行ってしまうのかな。でも,見えなくて。感情が見えることが,お芝居の魅力だと思うのに。もっとあの子たちも怒っていいのに…って,この作品を観て思いました。

はい。脱線脱線…。

あとヤンナの弟のウリがとても魅力的なの。見た目は人形なので表情は全く変わらないのだけど,ちゃんと身振りや声で感情が見える。無邪気さが魅力的。「しゅたっ」とか,本当にかわいくて素敵だった…。
だからこそ喪失感が大きかったです。事故の遭い方も,(おぉ~)っと思いました。カーテンコールでヤンナがぎゅっと抱きしめてあげるところとか,もし一人で観に行ってたら本気で涙腺崩壊したかもしれない…。はぁ。(溜息)

魅力的といえば,アイゼとヤンナのやりとりが良かった。女子女子してて。脱走とか,ボーイフレンドの話とか,10代の女の子という感じたっぷりで,素敵だったなぁ。

素敵といえば,ヘルガおばさん…!(笑)
まさかの男性…!最近,今年観た高校演劇のまとめとして書いた記事の中で,久留米大附設の『女子高生』の「見立て」について語ったばかりだったので,(おぉぉ…!)と思いました。いやー,効果的だったー。「息がつまるおばさん」というのがすんごい出てて良かった…。だけど家から出ていったヤンナを追ってきた&誕生日を祝いにきたヘルガおばさんからは,不器用なりに彼女を愛していることがほんとうによく伝わってきて,胸がくるしくなるシーンでした。
アルムートの家を去った後とか,背中から滲み出てくるものがありました…。はぁぁ…。きっとこれはヤンナにも伝わっているはず…。

あと,これは私だけかもしれないのだけど,アルムート役の大森美紀子さんが,燐光群の中山マリさんを彷彿とさせました…。あのハキハキッとした喋り方とか,声の質なんかが。

舞台の話をすると,照明が効果的だったなぁーって思います。いろんな場面になって,いろんな場所になって,空間がコロコロ変わるのだけど,ついていけたのは照明の効果が大きいと思います。基本的にドアは上手の照明で区切ってたり,場転は暗めの照明が入るのに,一度きちっと暗転にしてたり。繋がっているけれど,切るところは切る。思わず意識して照明を見ちゃいました。
あと,アイゼが亡くなる直前の人のシルエットはどうやったんだろう~。すごく気になる!

音響というか,曲も気になりました。特にヤンナとウリが自転車を漕ぎ始めた時に掛かってた曲は何なのか知りたい~!メインテーマは書下ろしなのだとか…。いやぁ…すごい…。


そうそう。これは現代と東ドイツを行き来している作品で,ときどき「私」が登場しているのですが,最後らへんであんなふうになるとは思わなかった。この問題を語るにあたり,きれいな言葉だけでは表せないのだということが,ひしひしと伝わってきました。ハマカワさんの言ってたような「代弁」とは,このことを言うのだと思います。
「諦めたわけじゃないけど疲れた。」「東京のひとがこんなこと言っててごめんなさい。」というようなニュアンスのせりふは,東京に住む私だから響いた気が…するな。

そんでもって,ミナモザのwebサイトを見てみると,
  「小さな子どもから大人まで、日本に暮らす人から世界の人まで、
    誰もが「自分のこと」として受け止められる作品を目指します。」
と書かれているのだけど,その目標は,きっと達成できたのだろうと感じます。

「未来を連れてくる芝居」にときどき出会いますが,場合によってはこの作品も,未来を連れてきてしまうかもしれない。

3.11そのものを扱ったり,それを思い起こす作品もいくつか観てきましたが,どこかしっくりこない自分がいました。なぜかはわかりません。感覚の問題なので。
でも,「架空の話」だからこそ,今回はすーっと入ってきたように思います。
瀬戸山さんと3.11がぶち当たってるのを舞台の上で観られたことも,要因としてあるかもしれません。劇作家が“言葉は話した途端に腐っていく”なんてフレーズが出てきたのも,衝撃的でした。そうかぁ。消えるんじゃなくて,腐っていくのかぁって。
彼女の書く作品は,やっぱり気になります。


長くてまとまってない文章になりました。

が,ヤンナのほとばしる感情や,生きているひとの姿や,葛藤する瀬戸山さんと,時間や空間を共有できたような気がするので,それで満足です。

久々に,原作を読んでみたいなと思う作品に出会えました。

Wednesday, December 10, 2014

***わたしの2014ねん~高校演劇編~***

さて,師走に入って早10日。
そろそろ今年もこの季節がやって参りました。「わたしの20○○ねん」シリーズ。
これはジャンルごとに一年間を振り返り,来年の充実につなげるものです。

今まで舞台作品はひとくくりに扱ってきましたが,今年は地元の高校演劇を割とがっつり観に行ったので,独立して高校演劇編を書いてみたいと思います。
(まだ観劇予定はあるのだけど,もう新作は観ないのでまとめます。)

ちなみにタイトルをクリックしていただければ,感想の記事にばばーんととべます。

5長野県長野東高校演劇部『銀河鉄道の夜~吉里吉里国ものがたり~』
作:清水信一
@ホクト文化ホール/11月

ひっさびさに,キレイな高校演劇を観たと思いました。
20代半ばのカサハラにとっては,かなりの癒し効果がありました。笑
私が初めて観た高校演劇の作品は,暗転がものすごーくきれいだったのです。きれいというか,美しかった。衝撃でした。高校演劇ってスゴイなと思いました。
でも近年は,魅せる場転というものに長らく出会っていませんでした。暗転自体なくしてしまう作品も増えてきた印象があります。

が,しかし!出会えたのです!!それが長野東!!!

場転も作品の一部なのだと,改めて感じました。場転の時間は,ただ舞台セットや人の配置が換わるものじゃない。暗転する前の場面の余韻を味わう時間なのだなーと,思ったのです。

あと,感想の本文にも書きましたが,『銀河鉄道の夜』っていろんなカンパニーがこれでもかというほど扱っている題材だと思うのですが,登場人物とキャストの年齢にギャップがあるような気がして,いまいちストンと落ちてきたためしがなかったのです。私。

でも!落ちてきたのです!!それが長野東!!!

早替えとか,鮮やかな場面転換も含めて見応えがありました。心が洗われました…。
カンパニーの現状に合わせた作品作りができているあたりも,成功しているなと思います。
そんなわけでピックアップさせていただきました。


4久留米大学附設高校演劇部『女子高生』
作:附設高校演劇部・岡崎賢一郎
Eテレ「青春舞台2014」にて鑑賞/9月

生で観ていないのでこの作品をどう扱うか悩んだのですが,やっぱり面白かったので。
あえてもう一度感想を書かなくとも,9月の記事に十分記したので割愛します。

このお芝居を観てから,長野県の中信地区大会や長野県大会に足を運びましたが,やっぱりカンパニーの実状に合わせた作品作りは戦略のうちに入るのだと,しみじみ思いました。
それが久留米の場合男女の逆転だったのだけど,演劇だからこそ成立してるというか,カンパニーの強みと演劇ならではの表現,どちらもおいしいとこ取りができていて,ストーリーや演技以上に評価できる点が多くあるなーって思うんです。

たとえば,テレビドラマや映画で男の子が女子高生の格好してたら,それはやっぱり女装なんです。『MOZU』の宏美ちゃんとかね!
でも,演劇でそれをやっても,「女装」にはならない。そこにいるのは「女子高生」。“見立てること”が可能な演劇という手法だからこそ成立してると思うんです。

そういう,「戦略勝ち」。ただやりたいものをやるのも大事だけど,カンパニーに合う手段を見つけて深めていくのも大事。それを両立したやつが,これ。なのかな。


3長野県松本蟻ヶ崎演劇部『Nippon, cha cha cha!』
作:日下部英司
@長野県松本蟻ヶ崎高校/7月・8月
@まつもと市民芸術館/9月

ちょっと社会派だったり,せりふがきれいなところはいかにも日下部先生作品なんですが,なんて言えばいいんでしょう…。誤解を恐れず言うと,蟻ヶ崎高校への遺作というか。先生が7年間この学校にいらした証拠というか。やっぱり先生はアタマの良い生徒が好きなんだろうなというか。
この先生は,あえて高校生が出る作品を選択されてこなかったし,ご自身も書かれなかった。それなのに,この作品には「蟻ヶ崎高校の生徒」が出てくる。これはもう,先生は悟りを開いたとしか思えないのです(笑)。
きっとこの作品は,外に出すための作品というよりは,蟻ヶ崎の高校生(演劇部・そうでない人含めて)に投げかけている作品なんだろうなーと思います。部外者から観ると,若干フクザツな気持ちになりますが,でも先生だからいっか,という感じ(笑)。もしかしたらちょっと附設に通じる部分があるのかも。

この作品は小さいスペースでやるのがちょうどいいと思います。3度拝見しましたが,最後に観た地区大会は惜しいところがちょこちょこあって,観客としても不完全燃焼です。タイミングが合えば,年末の公演に足を運べたらなーなんて思います。


2長野県松川高校演劇部『べいべー』
作:青木一也
@ホクト文化ホール/11月

附設の作品がEテレで放送される前には,全国大会のドキュメンタリーが放送されていました。そこには生徒の評議委員みたいなひとが,作品について語り合っている様子も映っていました。
それを観て私は,「高校生らしさ」があることが評価の基準のように思えたし,全国に行く作品は創作が多いなというか,創作だから評価されているんだろうなと感じました。
私もかつて既成作品で関東大会まで出させていただきましたが,それを観ていると元々評価の土俵に乗れていなかったんじゃないかと思いました。実際,今年の長野県大会の評価理由の中で「松川は創作ではありませんが…」といったフレーズがあって,やっぱり純粋に,舞台でのパフォーマンスの結果だけでは評価されていないのかと思いました。教育の一環としての高校演劇だからでしょうか。私にとっては謎の基準です。


だけど,

お芝居で観客の心を動かすのに,既成も創作もない。


それを改めて体感できたのが,松川の『べいべー』です。



1長野県木曽青峰高校演劇部『砂漠の情熱』
作:日下部英司
@まつもと市民芸術館/9月
@ホクト文化ホール/11月

附設の部分で,「見立てる」ということについて述べました。
演劇なら,男が女の役をやっていたら,それは女装なんかじゃなく,ほんとうに女のひとになれる。

もし,お芝居というものの醍醐味をふたつ挙げるとするならば,ひとつは「物を見立てること」,もうひとつは「あなたとわたしで間合いを共有すること」。私はこれを挙げるだろうなと思います。そしてこの醍醐味は,高校演劇とかプロとか,そういったものは関係ないこと。

たーっぷり,味わえました。ひとのこころが動くようすが,見えました。

現代って忙しいから,早くレスポンスしないと罪悪感感じたり,置いてきぼりにされちゃうような気持ちになるけど,ほんとうに言葉や思いを伝え合うなら,主張の結果ばかりを追っていてはだめで,主張という結果に至るまでのプロセスを,もっと大事に扱うべきだと思うんです。
心の動きを見なくちゃいけないし,見たいなぁと思うんです。
それが見えるお芝居。

あと,ずいぶん前からこの作品を舞台化したいという先生のお考えを耳にしていたので,今年それが叶って,純粋に嬉しいです。
今年の蟻ヶ崎みたいにフクザツで難解なお芝居も見応えがあるけど,日下部先生は言葉を大切にされる先生だと思うので,こういった作品の方が,それが映えるように思います。…とか勝手に言ってみます。笑


そして番外編。

ハート長野県屋代高校演劇班『南京の早春賦』
作:小川幸司
@ホクト文化ホール/11月
11年ぶりにこの作品を観て,とても懐かしい気持ちになれました。
同時に,誰かの心に残って,その後の人生のどこかに色をつけていく作品って本当にあるんだなぁと思いました。例えばこの高校の顧問の先生に,とか。
そしてまた,屋代のこの舞台を観たひとが心の奥を揺さぶられていたら。そうやって時代はめぐるし,作品は生きていくし,何かがつながっていくんだなと思います。

スペード長野県木曽青峰高校演劇部『right eye』
作:野田秀樹
@長野県木曽青峰高校/7月
木曽で土砂災害があって,1週間くらいでの公演。3.11直後の東京を思い出しました。
何を優先し,何を選び取るか,考えさせられました。当時三谷幸喜も「公演をやっても中止にしても,どちらも正しい選択だ」というようなことを述べていました。音響がなくても,思うような効果を使えなくても,それでも上演することを選んだことを尊重したいと思います。


以上,myベスト5+αでした。
来月は関東大会に行ってしまう予定です。初めて南にもお邪魔しちゃおうと思ってます。

来年も心ときめくお芝居に出会えますように☆

Sunday, December 7, 2014

第8回塩尻市民演劇フェスティバル 長野県塩尻志学館高校演劇部『ボクのじゆうちょう』

@塩尻市レザンホール

作:てらにしかつえ
出演:長野県塩尻志学館高校演劇部

今回,塩尻市民演劇フェスティバルがあると知っても,
そこに志学館と田川が出ると知っても。
志学館がこの作品をやらなかったら,来場は見送っていたかもかもしれません…☆

何を隠そうこの作品は,私が中1のときに文化祭でやるかやらぬか,最終候補まで来てた作品だったのです。私もこの作品推してました。がっ,多数決に勝てず別作品に。

でも私も姉が演劇部だったので。
というか演劇部に姉がいたので私も入ったようなもんで。
雅ちゃんにすごい感情移入してたなぁ…。(しみじみ)


あ,姉の話は置いておいて,とにかく上演こそなかったものの,思い入れのある作品だったのです。
それを志学館がやるというではありませんか!見なければ…!
…ということで,7時ちょうどのあずさ1号に乗ってやって参りました。笑


そして気づくと,今年度は美須々,木曽青峰,蟻高,田川を複数回拝見したのですが,志学館もそうでした!いやぁ…今年は本当にがんばってしまった…。
ちなみにその複数拝見した中で別作品に取り組まれていたのが木曽青峰,田川,そして志学館。同じカンパニーが別作品をやっていると,複数の作品の出演されているキャストさんの演技が,役作りの上での演技なのか,それともキャストさんご自身のパーソナリティが強い演技なのか,よくわかります…ね☆←

しかし!なんということでしょう!最近,今年の地区のパンフレットが家の中で行方知れずなのです…。さらにフェスのパンフの志学館の欄…役名も何も書かれてない…(むんく…)
なので地区大会の記録と自分の記憶を頼りに書き進めたいと思います。うぅ…。

地区の記事でも書きましたが,私の中で志学館と言えば,ドリーミン☆な印象を持ってるカンパニーでした。私が拝見した過去の志学館の記録も見返すと,2004年の『夏芙蓉』以外に学校が舞台のものがないかも…。今年の地区も一応学校が舞台だけど,登場人物にニンゲンじゃないものが出てきてるので。

それが今回は高校が舞台!出てくるのも一応ニンゲン!ドリーミンなカンパニーがどうこのホンを調理するのか!が,気になってました。

いかんせん私のアタマの中に台本が入ってて,イメージ映像というか(もしやるんだとしたらこんな感じかな…)みたいなプランがあったので,その上で観ると私のイメージが非現実的なのか,良くも悪くも(こうなるのか…!)(・_・)という感じでした。

実際目の前で作品が動いているのを観て気づいたんですが,吹部と生徒会って意外と一人二役でいけるんですね。というより,どっちも演劇部の敵だから,同じキャストで演じることに意味があるのかも…なんて思いました。長野日大のオリジナル版はどう演じたんだろう~と純粋に気になります。

そうそう。確か音響の響ちゃんは三つ子で,照明の照さんとか舞台装置の舞さんがいたような気がするのですが,志学館の現状に合わせて構成しなおしてても,ちゃんと話として成立してたので良かったです。三人の中でも音響を残したのは正解だなぁ…と。

ホンのレベルがもともとあるから,あとはどう味付けするかということになってくるんですが,詰めがあともーちょっと!という感じでした。全体的に。

舞台装置の話をすると,舞台上で見切れているというかパネルとパネルに隙間があって→裏にいる役者さんの姿が見えてしまって→話に集中できなかったのが一番残念でした…。
装置にはすべて効果があって,役割があるはずだと思うのですが,その効果が意図したとおりに働かなかったり,意味をなさないのであれば,差し替えるとかいっそのことなくすとか,改善しなきゃだと思うんです。翻って今回の舞台装置は,本来見せなければならないところに視線が向かなくなってしまったので,段ボールの置き方なりパネルの置き方なりに改善の余地があったのかなーと思います。
(そういえばたまたまですが,段ボールから出入りといえば今年の田川の地区じゃないですか…!段ボールっていうか,洗濯機とかですが。)
でもって,正面のパネルが上手にはなく,空間の境目があいまいになってしまったなーという印象です。ぼんやりというか。もう少しパネルできちっと区切るとか,パネルの数がないのであれば他の方法で空間を仕切ることができればよかったなと思います。

次に照明の話をすると,なーんか…なんだか…全体的にトーンが暗かったような気がします。志学館の10分前に別作品を観ていたので,それと比較すると暗さが目立ったように思います。顔当たりがあったようななかったような…。シューティングのときに客席の遠くの方からも確認するとよかったのかもしれません…。

さらに演出の話をすると,細かい台本の部分は忘れてしまったのですが,冒頭の悲しげな音楽,あれはなくて良いのでは…。
『夏芙蓉』ではないですが,明るく楽しく盛り上げた分,真実がわかったときの落差にこちら(お客)は愕然とする・なれると思うので,そこまで象徴的な曲でなくても良いのかなと思いました。

あと衣装やメイクの話をすると,かりんちゃんとゆかりちゃんが私の中で混ざって混ざって…。せりふをしゃべってくれたらわかるのだけど,ふたりとも上がブラウスで下がジャージになってしまった日にはもう…(´ロ`)たとえばどっちかはブラウスの色を変えるとか,ベストなりカーディガンにするとか,視覚的な工夫がほしかったです。あと髪型を一人がおだんごでもう一人がダウンヘアとか。安易ではありますが,でも効果的だったりします…。
そうそう。あと前髪が目にかかる人が多くて,表情が見えにくかったです。普段稽古してると,演出さんって下からキャストを見上げることが多いと思いますが,前髪って意外と影になっちゃうので…。これもリハなどで,客席から確認できると良いですね◎

肝心のお芝居の話をすると…
役作りというよりは,キャストさんご自身の演技の癖が出ている方が多かったのかな?という印象です。
地区大会のときから,一定の間がある方がいらしたり,小手先のお芝居が目立つ方がいらっしゃいましたが,今回もそんな印象を受けて,んんんー…という感じです。全体的に,聞かせたいせりふと発するせりふの区別がついていなかったり,台本に書かれていることだけを喋るのでは足りない部分があると思うのですが,きっちり台本通りだったり,そこに変にアドリブをつけてしまったりして,ちょっとアンバランスなせりふの出し方だなーというところが率直な感想です。
聞かせたいもの,出さなければいけないもの,出さなくてもいいものを整理すると,もう少しすっきりできるのかなーと思います。


そしてご縁あって(?)終演後に顧問の先生とお話できる機会があったのですが,(もったいない…!)という気持ちが抑えられなかったです。(お話しているときは抑えた)
地区大会で他校と同作品になる可能性があったので,大会作品を変更した…とのことなのですが,だからと言って引く必要って,私はないと思うんです。県大会まで行くと作品がかぶることはよくあることですし,地区でかぶったとしても,ガチで比較されるとは思いますが,良いものはきちんと評価されるし。フィギュアスケートだって,違う選手が同じシーズンに同じ曲を使うこともありますが,その選手にしか出せない世界観があるし!
でも屈せずここで持ってこられたことに拍手したいと思います。


あとは…そうですね,先生のスカートの丈が本気で気になったり(足開いてるときとか,すごいオロオロしちゃいました…),裏に入ってもコツコツとヒールの音がしたのが気になりました。
あとは演劇部の子たちや吹部,生徒会のみなさんがパネル裏で音や声を出してから登場するまでの間をあともーすこし詰められると観やすかったな,と思います。


ほんとに…12年以上前に出会った作品がようやく目の前で展開しているのを観られて,とっても満足でした…☆
塩尻志学館のみなさん,ありがとうございました。

第8回塩尻市民演劇フェスティバル 長野県田川高校演劇部『審査員』

@塩尻市レザンホール

作:池田政之
出演:長野県田川高校演劇部

今年度,田川のお芝居は文化祭地区→そして今回…と結構追って観てしまいました(笑)。
でも今回は文化祭・地区とは別作品だったので,初めて拝見する役者さんも…。

きっと4ヵ月後には,新しく入学した高校生が部員として演劇部に入って,そうしてまた1年お芝居を作っていくのでしょう。そう思うと,高校演劇の公演一回一回ってなんて貴重なんでしょう。このメンバーでお芝居できるのは,次(だと思われる)の新歓までなんだろうなぁとか。そんなことを終演後に思いました。

そうそう。どうして今回わざわざ田川&志学館を観に,性懲りもなく始発のあずさに乗って来てしまったかというと…
田川→ただただ気になった
志学館→演目で!
でした。

この2校は今年度地区大会で大会の発表は終わっています。
当たり前の話ですが,各校一年で何回も公演がある中で,一番気合いを入れて臨むのは地区大会だと思います。それが終わって,一発目の公演(時期的にはクリスマス公演とか12月前後にやる自主公演とか)って,今後のカンパニーの方向性を占う,結構重要な公演だと個人的には思っているのです。

田川を見たかったのは,それをどういう方向に持ってくるかを直に感じたかったというところが大きいです。

そして開演して…
ショーゲキ!(゜ロ゜)

たたた,確かにパンフレットには“舞台装置に凝らないシンプルな作品になりました”とあるけれど,幕開けしてどびっくり!

だってガチのサラ舞台だったんだものー!!!!!

つ,ついに田川もここまで来てしまったのか…(;ω;)と若干ショックまで受けていたのですが,違いました(笑)

ここから舞台のセッティングを始めるというお芝居でした…。面白いな…。
作品の雰囲気が,なんとなく三谷幸喜の『Show must go on』に似ていたと思います。お芝居を作るひとびとの裏っ側。すったもんだ。本気でやってるからなんだかカワイイ。そんな感じが。
あとなんだかんだホンがモノを言うので,良いものをセレクトされたなぁという印象です。


しかし…!

舞台が始まって第一声を聞いて,しょんぼり。声が…サラ舞台に吸収されている…!
そして県大会の屋代高校を連想してしまいました。(→KA・TSU・ZE・TSU☆)

厳しいこと言うようですが,部全体の滑舌の悪さと,部全体のゆるさはある程度関連しているのでは…と思います。舌の構造とか,そういう器質的な部分でどうしても乗り越えられないものを持っている方はどこの部にもいらっしゃるのではと思うのですが,出るひと出るひとみんな悪いと,それはやっぱり自分に対する甘えだったり,それを詰めない部の甘えかな…と。
逆にそこが良ければもっと伝わるのに。すごくもったいない!(><)
明日から!ぜひ頑張ってください!!!(><)(><)全体的に口が縦に開いてない方が多かったので,開け方も意識してみてください!!!お芝居は「1年生だからこれからだよね」って言えるかもしれませんが,滑舌は関係ないと思うので。

あと,これも文化祭のときから気になっていたのですが,音響がイマイチ…ううーん,しっくりこないのです。もちろん好みの問題もありますが,
・選曲
・かけるタイミング(切るタイミング)
・ボリューム
がみーんな気になっちゃって。音響をつける良さが,あんまり感じられなくて。
滑舌のこともそうですが,なんとなくみなさん“雰囲気”でお芝居してるように見えたんです。雰囲気。音響も,“なんとなくかけておくか…”でかけているような気が…しなくもないかも…。例えば吉野牛が舞台上に飛び込んでくるところとか。本当にあれがあのタイミングでかかる必要があるのか,もう一度疑ってみる余地はあるのかなと思いました。

あとあと,これは地区大会で気になったのですが,間。
文化祭で良かったところが地区大会で(あれ?)って思ってしまったところがあったりしたんですよね。制限時間に追われているというよりは,必要な間(リアクション)が流されてしまっている印象。
で,このお芝居は会話を聞かせるお芝居だと思うのですが,今思うと(というか志学館の『ボクのじゆうちょう』を観ているとき感じた)会話が全部だーって流れてたな~と…。例えば,なぜふじの亜虎が一方的に作品を切ったかが暴かれていくときとか,もっとふじのがどういう反応してるか,みんな見て,気にしていいと思うんです。というか気になるはずなんです。あとふじのももっと考えていい。言うか黙るか,言うならなんて言うか。もっと葛藤していいはずなんです。でもそれが見えない。結果「間がない」。…残念!(カサハラさんは心の動きっぷりを見たい人だからー!)
世の中スピードが求められる時代だから,メールにせよSNSにせよ素早いレスポンスが求められるけど,直の会話はそうじゃない。受け取って,味わって,それで返すから,そのプロセスを大切にしてほしいなぁと思います。
…そうそう。部でキャッチボールとかどうですか?野球のキャッチボールが無理なら,ドッヂボールくらいのボールでもいいです。お芝居の稽古とかでも,あえて取り入れてるカンパニーとか,あるらしいです。きっと田川のみなさんなら,効果があるんじゃないかと思います。

“雰囲気”ってちょっと前に言いましたが,それを象徴しているのが多数決のときにふんわり出てくるお姉さんかなーと思います。
(作品の進行上,必要だから出てきてますよね,お姉さん…)と思いながら観てました。笑
このあと出番がなくなるからはけてる!ってところもあって,前後の脈絡(出てくる必然性,いなくなる必然性)が見えなかったです。
あとホワイトボードも,お姉さんとどんかぶりしちゃって見えなかったです。事務の人なのだから,さささっと黒子的な役割が求められるのではと思うのですが,一歩引いて見る人がその場面にはいなかったのかな…という印象です。
あとヒールに履きなれてなさそうで,(お姉さん大変だな…)と変なところで気になってしまいました。舞台のキャラクターとして必要だったというよりは,キャストさんご自身が履きたかったのかなと思います(今年の地区の志学館のマントとか,県の東海大三の衣装のような感じ…)。
もう少し演出さんや舞監さんがチェックできると良かったかもしれません。

というか…
やっぱ男性陣が濃いですね。すごいですね。今年の田川。
高校演劇で,男性役を男性が演じるということがどれだけ大変なことか…!
特に審査員のメンズが良かったです。衣装とか,それっぽいな~って。
個人的に鷲生さんの飄々とした感じが好きです。笑
あと皆さん地の声が良くて,うらやましい…(前述した通り,きちんと出ているかは別として)。
だけど宝の持ち腐れ感も否めなくて,やっぱり発声って重要…。
そして椅子に座っているところがほとんどなのだけど,立ち姿になるととたんに体の使い方がわからなくなってしまう(ように見える)人もいて,ぜひそこは自分の姿を一度録画して観察してほしいな~と思いました。伸びしろはありまくると思うのです!

女性陣で言うと,ふじのさん役の方,ああいう役合いますね…。そしてよくあの衣装と出会えましたね…。見た目だけでやな感じがちゃんと出てて,よかったです。ほめてます。
前回の『ぬけがら』にも出演されていた方が何名かいらしたかと思うのですが,こう別の作品を複数見ると,それがキャラクター作りの結果としての演技だったのか,キャストさんご自身の癖のようなものなのかがわかるのですが,後者で演技されている印象を全体的に持ちました。もっとニュートラルな状態をおひとりおひとりが見つけられると,きっと味付けしやすくなるんだろうなと思います。
あ。あと女の子は前髪下してる人が多くて,それが影になってしまって目がほっとんど見られなかったのがもったいなさすぎる!(森さん役の方は特に厚みのある前髪だったのでさらに!)リハ時などでメイク・ヘアメイクが効果的に出てるかも見られると良いですね◎

実は全体的に(演じているというよりキャストさんが全面に出ている人が多いな…)と思っていたのですが,鳩山さん役の方がすごーく素敵でした!!!
せりふ回しがすごく自然で,必要な間(つまりリアクション)がちゃんとあって,抜群の安定力でした…。役のキャラクターも俯瞰的に見ている人なので,それも相まって。なんか,私それまで若干プルプルしながら見てたんですが,全部持っていかれた感じがしました。次が気になる役者さんだと思います…☆

あとは…吊り物の字がめちゃくちゃキレイで惚れ惚れでした。笑
あと顧問の先生が出てきて笑っちゃいました。笑

田川の「今」を実感することができた60分でした。
部員が17人ということで,部長さんや先生はマネジメントが大変かと思いますが…力がつけば本当に素敵なカンパニーになると思うので,まずは滑舌,がんばってください!応援してます。

田川高校のみなさん,ありがとうございましたー。

Sunday, November 30, 2014

映画『紙の月』



◇STAFF
監督:吉田大八
脚本:早船歌江子
音楽:緑川徹

◇CAST
宮沢りえ/池松壮亮/大島優子/田辺誠一/近藤芳正/石橋蓮司/小林聡美

(2014.11.30 劇場で鑑賞)

『アナ雪』『マーニー』か何かで予告を観て,びびびっと来ていた映画。
この年になってから,「映画は映画館で観るもの」とようやく思えるようになってきたので,おでかけしてみました。
この…ポスターの表情が良いですよね…。うっとり。

監督は『桐島,部活やめるってよ』の方らしいのですが,私まだこの作品チェックできてないのです…。観ます…。


んもーーーーーー,キャスティングが秀逸でした。


宮沢りえは,私にとっては映像より舞台のひとで,映画の中の彼女を初めて観ました。
顔の,表情だとか,しわとか,くすみとかが,恐ろしいほどはっきりばっちりわかって,やっぱり彼女も40代なんだとしみじみ思いました。

私は,顔はその人の人生をよく表しているものだと思ってます。電車に乗ってると本当にそう思います。もちろん人は見た目だけではないけど,それでも眉間に深いしわなんかがあると,(なんかムズカシイことが多いのかな)とか。そんなファンタジーがわくのです。

さて映画の宮沢りえは……う,うつくしいのだけど,幸せそうかと言われると,謎…!!!
仕事もソツなくこなすし,角が立たないように人と接しているのだけど,何のための仕事なのか,誰のための家事なのか,よくわからない。誰かと心が通っているように,見えない。
そこに色を与えてくれたのが,池松くんなんだろうなー。

宮沢りえは,与えたかったし与えられたかった人だと思うのです。中学時代の彼女は「シスターは与える方が幸せと仰いましたよね(みたいな感じのせりふ)」と言っていたけど,やっぱり彼女は与えた人に与えられたかったのかもしれないし,与えてくれた人に与えたかったのかもしれない。きっとあの“プログラム”も,ありがとうの手紙が来なければ,一度の支援で終わっていたんじゃないかなって思います。与えた人に何かを与えられたから,のめりこんでいったのではないかと…。
でも,大人になった宮沢りえのプライベートでは何かが一方的で,双方向にはなれなかった。きっと「夫婦とはこういうものだ」と思うようにしていたんだろうけど,透明な水の中にカラーインクが一滴落ちたら,もう透明には戻れない。そんな感じ。そのカラーインクが田辺さんではなくて,池松くんだった。
だけど,双方向のやりとりってごく当たり前に望むことだよね。

それにしても宮沢りえの考えることと技術がすごかった…。証書?をプリンターで複製したり,プリントゴッコで判をつくるあたりは(おぉぉ…!その手が…!)って思いました。この映画は中学生なら観られることになってますけど,今の子とかプリントゴッコ知らないでしょ…。って思いました。笑
(どうでもいいけど,私は大学1年の時にプリゴを買った。しかし1回しか使用せず,廃棄してしまった…。パソコンでは成し得ない手作り感と重ね技が好きだった…。)
中盤,ピンチハンガーに証書?が干されたりしてるのが映ってるあたりは主婦っぽくて面白かったです。笑


池松くんのことは『MOZU』で知り,以来ファンです♡
先日放送していた「情熱大陸」で,俳優とは思えないほどのフリートークの喋れなさに驚き,(きっとこの人は職人のようなひとなんだろうな~)と思うようになりました。言葉よりその技を見た方が,そのひとの人となりがわかる感じ。

目が…良いですよね…♡そしてすごくピュアなのに,やたら色気も感じる…。そして何より声がいい!怪物だわ,怪物!!笑

しかし,おじいちゃんちで一回会ったっきりなのに,なんで宮沢りえのこと気になっちゃったんだろう~。そのあたりがもう少し見れたらよかったんですが,同年代の女の子にちょっと飽きてた時期だったのかな。今回私と一緒に映画を観に行った人は,「ああいう大学生いるよね」って言ってましたが,なんかほんとにそうなんだろうな。お金を出してくれる年上の女の人と,ちょっと火遊びしたかったっていうか。もちろん,母親役割も兼ねてだと思うけど。
黄緑と黄色の棚があるマンション(池松くん用に借りたとこ)で,宮沢りえが「何か買ってきて作ろっか」って言ったのに対して「言われてみたかった」って言ってたのは,きっと本心なんだろうな。今までちゃんと料理作れるひとと付き合ってこなかったか,ちゃんと家事をしない(できない)母親で育ったか。だろうな。多分。
だからお金で用意したハード(家・パソコン)だけでは耐えられなくて,ソフト(同世代の女の人)を連れ込んだんだろうな。(「あの部屋にいるとときどきたまらなくなる」っていう池松くんのせりふの意味するところは,そういうところなのかと…)
だがしかし,徐々に金銭感覚が狂っていく池松くんも愚かしくて良いですね…。「これちょっとずらして」っていうのなんて,特に。
良い意味で今っぽい大学生で,とてもよかったです。池松くん。


そして私はAKB48で一番好きな子が大島優子でした。2年連続で部屋のカレンダーは大島優子です実は!(いらない情報)
彼女は元々女優志望なので,これから応援していきたいところです。
他の方のレビューにもありましたが,良い意味でAKBの大島優子っぽくてよかった。無邪気というか。周りから見られていることを常に意識して,梨花にとってはかなりの刺激だったんだろうなーと思います。無意識ではあるのだけど,梨花をそそのかすあたりの目が,とってもよかった。
あとは「ありがち」という言葉を使って自分の罪を薄めようとしたり,社会的な立場が危うくなる前に地元に帰るあたりとか,世渡りうまい…ですね…。


あとあと!このひとの存在感半端ない!小林聡美!!!
最後にまともにこの方のお芝居を観たのが,2009年のテレビドラマ『赤鼻のセンセイ』だったので,すんごい久しぶりでした。あぁ,すごいブレーキ。
またまた他の方のレビューにもありましたが,この人の感情を爆発させることはできないのでしょうね…。「一緒に来ますか?」と宮沢りえに言われて,多分すごく動揺しただろうけど,行くことができなかった。それがこの人なんだと思います。
宮沢りえがブラウスの中に書類を隠した瞬間にピシッと「何してるの?」って聞いてくるあたりとか,本当にスリリング。締めてくれるなぁ…。
ラストも,この人で締まってると思うんです。「お金なんてただの紙なんだから,お金で自由にはなれない(みたいなせりふ)」が,ぐっときました。あともっとびびびっときたせりふもあったと思うのだけど,忘れてしまった…。
嫌味なひとと言えば嫌味なひとなんだけど…,ねじれているというよりは…うーん,正論を真正面からぶつけてくるひと,なんだと思います。宮沢りえも真面目なのだけど,小林聡美はまっすぐなままの真面目なんだと思います。そうか。ねじれてる真面目は宮沢りえの方か。
パスコのCMも良いけど,女優としての小林聡美の力をじわじわと感じさせられました。


この作品のキーというか重要小物に,“腕時計”があると思います。
宮沢りえが契約社員記念にペアで買った腕時計
田辺誠一が免税店で買ってきたカルティエの腕時計
宮沢りえが池松壮亮に贈った腕時計…

自論ですが,腕時計は指輪よりも重いものだと思います。
だって時間を贈るんですよ。時間を知らせるもの。その人の腕を縛るもの。
しかも,伴侶でなくても相手に贈ることができる。着けるたび,見るたび,贈ってくれた相手のことを思い出す。

時計にこだわるひとそうでないひともいるけど,ある程度価値を示すものでもあるし…。田辺誠一が「ゴルフの時に着けるよ」と言ったあたりなんて,宮沢りえとの価値観の違いを徹底的に表している!
ペアで買った腕時計に対してカルティエの腕時計が来たときは,私もすんごく苦しくなりました。ペアの時計,いらないって返されるようなものでしょ。あぁつらかった。
だからもう一度,相手を変えて池松くんにプレゼントしたのかな。宮沢りえ。ストレートだけど象徴的な小物だったなと思います。


あとは音楽が効果的だった!
讃美歌が余計,罪深さを浮き立たせてたなって思います。
本来清められるような気持ちになるはずなのに。「今」を知っている分,強いギャップを感じました。
讃美歌以外でも,音楽が!良い!!
心のスイッチが入った時のノイズ音とか,大きなことをしでかしてるときの音楽とか,池松くんと遊んでるときの音楽とか。
宮沢りえの心のON・OFFが音からも直接的に伝わって来て,よかったです。
スローモーションの映像×バンド的な曲とか,もうよかったー。かっちょいいー。サントラが出たらレンタルしたいくらい!
非常に非常に,効果的でした。

効果的といえば,最後宮沢りえががしゃーんってやるときの音とか,びっくりした。画的にもとてもよかった。

最後といえば,青りんご?果物?をかじるとこ。なんでかじるんだと一瞬思いましたが,そうすることで現実を味わっていたんだと思います。夢なのか,そうじゃないのか,確かめるために。


はっ!書く順番が前後しまくって非常に申し訳ないのですが,以前この映画の特集をテレビで観た時に,電車を振り返るシーンが大変だったと宮沢りえが言っていたのですが,あのシーンが拝めてよかった。確かにタイミングがバチッと合っててキレイだった!
以上!(笑)


宮沢りえと池松壮亮の「今」を感じることができて,とても良い作品でした。
良い悪いというより,ただ与え与えられたかったために生きていた女の人の話だったなと思います。私は,これまた良いのか悪いのか,「悪いことはだめ!」っていう感覚があんまりないひとなので(ニュートラルってことです!笑),じっくり味わうことができました。

私も,与える幸せと与えられる幸せを人生の中で感じたいものです。横領以外の方法で。

Saturday, November 22, 2014

Théâtre des Annales vol.3『トーキョー・スラム・エンジェルス』



@青山円形劇場

作・演出:谷賢一

出演:南果歩/山本亨/古河耕史/山崎彬/加治将樹/一色洋平/井上裕朗

先週別件でこどもの城を訪れた際,このフライヤーを見て(あぁもう本当に閉まっちゃうんだな~)と思っていたのです。ご縁があって足を運べることになりました。

…久々に(お先真っ暗!)(゜∇゜)と思うようなお芝居に出会いました…。
「働け」というせりふがちょこちょこ出てきたので,昨年観ていたらよりぐっと私のみぞおちを刺激してきたことでしょう。社会人になってから観た作品で良かった…。

2012年にNODA・MAPの『エッグ』を観たときは,過去の話だと思っていました。
“あったかもしれない過去”を,未来という今から見つめている感じ。
でも2年経った今,『エッグ』は“未来を連れてきた作品”になった。
『トーキョー・スラム…』もまた,“未来を連れてくる作品”になるような気がしてなりません。

ムズカシーことは書けないのですが,この作品は東京に住む・働く我々が観るからこそ苦しくさせる要素があったように思います。きっと地方の方が観たら,なかなかピーンとこないのではないかと思います。
…と,思ってしまう自分になってしまいました。地方出身なのに,私…。かぶれてしまいました,私…。

あと,社会人になったと言っても,利益を追求したりだとかリストラされる危険性があったりだとか,そういうものと無縁のおしごとをしているので,世の中を回す仕事をしているひとってこういうひとたちなのかぁ…なんて思いました。近いようで遠いひとたち。ずいぶん狭いところで縮こまっているんだなぁ自分は。とか思ったりも。それが良いとか悪いとかではないけど。

ハッとすることがたくさんあったはずなのに,もう忘れてしまった…(焦)。
「埋没してしまうデモなんかより,事件を起こした方が君の意見が新聞に載る。世間に伝わる。」という発想は,なるほどなーなんて思って聞いてました。あと,「正当な努力」という言葉が印象に残りました。井上さんのせりふは刺さることばが多かったです。

そうそう。加治将樹さんは今回初めて拝見したのですが,つばシャワーを超えるつばの量がすごくてびびりました(笑)。あと私はGブロックにいたのですが,こっちへの圧力が半端じゃなかったです。途中本気で過呼吸になってんじゃないかと思ったり…。でも次のシーンでめちゃくちゃ静かに,そして変な格好で寝ているから,(あぁ演技だったんだー)と思って安心したり…。すげーパワフルな役者さんでした。目が素敵!

加治さんと古河さんと井上さんの早替えもすごかったです…。メイクまで含めて。
そしてスーツとのギャップもすごい…!一瞬同一人物なのか「???」ってなっちゃいました。

これから日本は確実に増税になるし,少子高齢化は進むし,年金はもらえなくなるだろうし,早く死んだ方が得なんじゃないかと思ったりするのだけど,それでもどうやら生きていかなきゃいけないらしいです。長期的なスパンで見通しを持つことも大事だけど,そればっかり考えてたら目の前の楽しいことをキャッチできなくなっちゃう気がするので,もう少し「here and now」を大事にしていけたらなと思います。
あと,いつもどこかでラーメンの温かみを忘れずにいたいなって思います。


やっぱり,円形劇場って素敵。
なんでもできるし,どこから観たって面白い。
向こうのお客さんの顔までよーく見える。
空間を共有していることが,よーくわかる。

ここに来られてよかった。
ありがとう,こどもの城。

Saturday, November 15, 2014

テレビドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(全11話)




◇STAFF
演出:西谷弘
脚本:井上由美子
音楽:菅野祐悟

◇CAST
上戸彩/吉瀬美智子/斎藤工/北村一輝/伊藤歩/木南晴夏 他

2014年7月~9月にフジテレビ系列で放送

『白い巨塔』コンビの作品ということで,放送前から気になっておりました…。

上戸彩が,とてもよかった…。

せりふがいいよね。上戸彩のモノローグが,じわじわと胸に迫ってきました。
私今までろくに上戸彩の演技を観たことがなかったのだけど,(あぁ,本当に力のある女優さんなんだなぁ)と思いました。


このドラマではいろいろメモっておきたいせりふがたくさんありました。笑
一番は,「喜ばない,期待しない,明日を見ない」でしょうか…。
いや別に,不倫に限らず,ひととつきあっていると知らず知らずのうちに他人に期待を持ったり,(こうならないかなぁ)なんて思ってしまう。と思うんです。
でも実際自分が作り上げた理想と現実にギャップがあると,勝手にかなしくなってしまう。勝手に舞い上がって,勝手に落ち込んでしまう。
だから私のアタマの中も,いつしか(○○じゃなくてあたりまえ)と思うようにしていました。
ひとから名前を覚えてもらえなくてあたりまえ。とか。
そこを基準にしていれば,その通りになっても傷つかずに済む。
反対に,覚えていてもらえたら,ものすごくうれしくなれる。そんな感じ。
でも不倫はもっと,刹那的で「今,ここ」しかないんだろうなと思いました。

「自分を大切にする」って,どういうことなんだろうとも,このドラマを観ていて思いました。
ちょうどプライベートでも,考える機会があって。
きっと自分を大切にするって,2種類あると思うんです。
ひとつは,社会的な地位を守ること。「○○の奥さん」とか「○○で働いてるひと」とか。
もうひとつは,自分のこころに正直になること。「○○したい」に素直になること。「好きな人に会いたい」とか。

どちらも大切にできたらいいのに。
それがどうにもならないから,上戸彩も吉瀬美智子もくるしかったんだろうなぁと思います。
バランスって,何を優先するかって,自分の素直な欲だけでは片づけられなくて,自分の力だけではどうにもできないこともあって,ムズカシイなぁなんて思いました。


上戸彩と斎藤工のきゅんきゅんしてしまうシーンがとてもよかった…。
30代という設定だけど,ああいう気持ちっていくつになっても味わえるんだなぁというか,味わえたらいいなぁと思いました。笑
それにしても,斎藤工ってちゃんと幸せになる役をやってるところを観たことないのだが!

でもって,子役の山口まゆちゃんがなんだか印象的でした。あのムズカシー年頃の子を,きちんと出していたなぁ。『聖女』でも広末涼子の子ども時代を演じていて,思わず見入っちゃいました。葛藤している表情が,とてもいいなって思います。

あと音楽!『MOZU』の菅野祐悟が担当しているとだけあって,インパクトがすごかったー!
OPのボーカル入りの曲とか,一青窈のEDのギター版とか。ギュインギュインいってるのが,パンチ効いてて好きでした。


回を経るごとにドラマドラマしたせりふや展開になってきてしまったところが残念だったけど,画がキレイなのと,カメラワークがよかったのと,せりふが…良かったです。やっぱりいい作品の6割は脚本の出来だと思います。
たとえばここがよかった。

  • オープニングの,上戸彩が夕陽に照らされて自転車を走らせているところがすごくキレイ。焦燥感もあり,切なさもあり。
  • 7話の終わりに,上戸彩と斎藤工がマンションの扉でぎゅっと手ぇつないでるところがたまらなく良かった。
  • 最終回のほんっとに最後のところで,「また不倫しちゃったらゴメンネ神様☆」みたいなモノローグは,エェェェ~ヽ(;▽;)ノと思っちゃいました。笑


もっといろいろ書きたかったけど,いざ書こうとすると11話って長い…。笑
ここまでにしておきたいと思います。
上戸彩の表情や声が,本当によかった…。

Monday, November 3, 2014

まつもと市民芸術館『K.テンペスト』


@まつもと市民芸術館 特設会場

作:W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出+潤色+美術:串田和美
照明:齋籐茂男
音響:市来邦比古
音楽監督:片岡正二郎
演出助手:木内宏昌
芸術監督:串田和美

出演:串田和美/高岡奏輔/門脇麦/大森博史/真那胡敬二/斉藤直樹/藤尾勘太郎/坂本慶介/飯塚直/近藤隼/佐藤卓/細川貴司/下地尚子

一昨年の『K.ファウスト』に引き続き,『K.テンペスト』…。串田さんは,そろそろ何かをまとめようとしていらっしゃるのかもしれないと思いました。
そして,これが今の串田さんの“やりたいこと”なんだろうなぁと思いました。

残ったひと,出ていったひと,出ていっても見守っているひと,いろんなひとがいて,いろんな思いがあって,生きている限り,ひとも思いも考えも,常に動いているんだなぁと思います。

私はもう,ワクワクした気持ちではこの世界にはいられないんだろうな。でも,それが生きてるってことなんだと思います。


芝居は嘘のかたまり。そう思ってます。だからその嘘で酔わせてほしい。

だけど唯一例外があるなら,串田さんのお芝居なんだと思います。

台本からお芝居をつくるのではなく,ニンゲンからお芝居をつくる。
だから嘘がない。そのひとそのものが存在しているように見えるから,嘘には見えない。


「コーカサスに似てる」という事前情報を得ていました。
劇場に入った途端,すごく懐かしい気持ちになりました。
ほんとうにそうだったから!

『コーカサスの白墨の輪』。高校生の時に観た音楽劇。部活帰りに観に行って,松たか子から直接赤い布を受け取った,忘れもしないあの舞台。
あのときめきを思い出させてくれるつくりの舞台でした。はぁ…。
黄緑と黄色の布がかかった椅子も,コーカサスにあった!(ていうかあれに私座った!)
ずいぶん大人になってしまいました。しゅん。


門脇麦の声が,部活の後輩の声にそっっっっっくりすぎてびびりました。
この方のお芝居は今まできちんと観たことなかったのだけど,これから注目してゆきたいです…。


しかし…この前日と前々日,私は長野市で高校演劇の県大会で12本を観ており,おそらく情報過多な状態だったのです…。
ので,聴覚刺激が激しくて激しくて,処理にちょっとたいへんでした。ふたりがちょっとずれたタイミングで同じことばを言ったりするとことか。元気な状態で観に行きたかった…。


そもそもこのお芝居は,タイトなスケジュールだったので観に行く予定がなかったのですが,制作担当の方が私の部活の先輩おふたりと知り,即行くことに決めました。わちゃわちゃ楽しく部活をやっていた時から10年。こうして地元でお芝居をつくることに携わっている先輩方が,なんだかうらやましいし,誇らしいです。
…って先輩に言うと「美化されてる」って言われるに違いないんですが。でもお芝居の世界で生きてくって,簡単じゃないから。すごいなって,思います。


串田さんと,まつもと市民芸術館の「今」を味わうことができた時間でした。

Sunday, November 2, 2014

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県茅野高校演劇部『夜長姫と耳男』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

原作:坂口安吾
構成:長野県茅野高校演劇部・郷原玲
出演:長野県茅野高校演劇部

茅野といえば,2010年代の長野県を引っ張っている学校。の,ようだ…。

というくらいしか情報がなく,何度も申しますように近年県大会と疎遠だったので長野県事情がさっぱりわからなかったのです。
ただ,今年美須々に郷原先生が異動されて,その先生の前任校ということは知ってました。

なので茅野と美須々が県に出場されると知ったときは,

(今年の県大会は郷原先生の軌跡がわかる大会になるんだな…!)と勝手に思ってました。

で,その結果,



よーーーーーーーーく,わかりました…。




いやー,金曜日の仕事帰りに直で東京駅に行き,あさまでぴゅーっと飛んできて,ここまで待った甲斐がありました…。

ほんとに,31日に渋谷駅で乗り換えたとき,街はハロウィンハロウィンで大変だったんですよ!山手線にナースが乗ってて,ホームには大量の白雪姫がいたんですよ!!(笑)



で,何がわかったかというと,


(3月まで郷原先生がいらしたんだな…)ということが…。笑


作というか構成が,演劇部のみなさんと郷原先生の連名なので,ホンからも演出からも,郷原先生の残り香をびびびっと感じ取りました。

時系列からしたら逆なのだけど,開始1分で(あ,美須々っぽーい!)と思いました。
演出は生徒さんが担当されているのだけど,きっと2年間郷原先生とおしごとを共にされているので,やっぱり少なからず影響を受けていらっしゃるのかなと思います。そういう意味で,美須々っぽい。郷原先生っぽい。

でも美須々と比べると,抜群の安定感。きちんと役者がせりふと世界をモノにしているなと思いました。特にアナマロさん…!愛らしい…!講師の先生がべた褒めしていたので,昨年・一昨年と拝見できなかったことが悔やまれます。

あと,耳男役の方,タッパがあるので映えますね!ちゃんと男子が男性役をやるって,世界観が出ていいですね。多分いくら男っぽくても,女子があの役をやってしまったら,ここまでの狂気って出なかったと思うので。
(作品とは全然関係ないですが,キャストの方の名字が素敵ですね。大糸線の駅名と同じ読み方でいいのかな?)

夜長姫も良いですね…。あの甲高い声,素敵です。このキャストさんが「耳男」って発音するのが気持ちよく聞こえたので,私の好きな声帯の持ち主なんだと思います(なんか気持ち悪い表現に聞こえたらごめんなさい。ほめているのです)。あと音としても,“mi mi o”って響きが良いよね。
きっと影アナのひとがアナウンスするまで,「みみおとこ」だと思ってたのは私だけじゃないはず。笑
ただ,(なぜそこへはけていくのだろう…)と思うことが度々ありました。神出鬼没な感じはとても良いのだけど,完全にはけるまでの時間がちょっと長いかなーと思ったり,お客さんの視界に入ってから赤い枠にたどり着くまでに時間がかかったり。もっと時短で登場したり,「出てきてますよ~」っていうのをこちらに見せず,気づいたら後ろにいて「耳男」とか言われたらゾッとするんだろうなぁなんて思いました。
あと,完全に後ろから(正面に顔を見せたまま)出入りできるところがあっても素敵そう…(怖い意味での“素敵”)。

小道具のことで言うと,ロープがへびになるあたりはふんふん!と思いました。
がっ,中盤に赤い枠にへびを数本つるしてから,箱に入ったひとの顔が見えにくくなっちゃうように感じることもあって,なんとかならないかなーとも思っちゃいました。吊るす場所の問題なのかな?ロープの長さの問題なのかな?なんか(邪魔だな~)って思っちゃったんですよね。

結構前の方で観たので,舞台の冒頭から周囲に置いてあった材木?木の棒が,鍬だとすぐ気づけなかったんです。舞台の道具になるとは…。面白かったー。でも人が亡くなるとしゅう~っと収納されていくのだけど,その収納が全部まっすぐすぎて,ちょっとつまらないなとも思ったり。
難しかもしれないですが,差し込む先の鉄パイプ(?)も斜めに設置して,鍬を差し込んでいくと本当にバラバラしたトゲのようになっていく見た目になったら,おどろおどろしさが上がるんじゃないかな!とか,勝手に想像しています。

そうそう。音響が素敵!「劇的ビフォーアフター」も含めて。笑(←音響で笑いが取れるって,すごいですね。)
太鼓とか鐘(?←実物で音出してたやつ。鐘??いや実物じゃないかも)も,世界観がうまく表れててよかったです。

これだけの舞台を,トータル6人で作ったようなので驚きです。
人数がいればやれることは増えるけど,人数が少ないからと言ってやれることが少ないという訳ではないことを,きちんと示してくれたカンパニーだと思います。
あとやっぱり,地の力があるカンパニーだということを実感。

関東大会出場,おめでとうございます。北関東の高校にも,思いっきり狂気をぶちまけてきてください!笑
茅野のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県長野東高校演劇部『銀河鉄道の夜~吉里吉里国ものがたり~』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:清水信一
出演:長野県長野東高校演劇部

伊那西のところでも書きましたが,2000年代の北信と言えば,長野日大か長野清泉が絶対出てました。北信=私立のイメージだったのです。中信地区で私立の演劇部といえば,当時の松本松南くらいしかなく,私立が充実している都会な地域だな…とも思ったものです…。カッチリした制服が,いかにも私立だなァって。

しかし…県大会のパンフレットをめくってみると,ある時期を境に長野東がじゃんじゃか県大会に出てきているじゃありませんか…!常連校ってやつじゃないですか…!私はすっかり時代に取り残されていました。
顧問の清水先生はいくつも創作を書かれているようなのですが,いかんせん私が県に全く足を運ばなくなってしまったので,拝見できる機会がなかったのです。どんな作風の先生なのかな~と,楽しみにしておりました。また,Twitterでこちらの学校の部員さんもフォローさせていただいており,どうやらタイムがギリギリだという情報を得ていたので,私もハラハラしながら60分過ごしました。


いやー…



きれいだったぁー…。




涙出ました。泣かなかったけど。こらえたけど。






暗転がものすごく美しい!


全参加校の中でダントツ美しい!!!!!!!!!


(と言っても,松川木曽青峰松本美須々ヶ丘なんかは暗転自体がなかったのだけど…)


いやでも,暗転がある場合,どう使うかってとっても重要!作品の出来を大きく左右すると思うの!


私はかつての長野県田川高校の“青転”が大好きでした。めっちゃキレイなの。
真っ暗にならないの。青なの。青。2001年・2003年の『神々の国の首都』や2003年の『くじらの墓標』なんかで見られてて,すっごい衝撃を受けたものです。それを思い出しました。

(はっ!!“~なの。”とか言って,取り乱してしまった…!)

青いランタンとか,「赤い目玉のサソリ…」とか…講師の先生方も仰っていたけど,汚れてしまった我々大人の心を浄化するには十分な効果でした…。うぅ…。

というか,「赤い目玉のサソリ…」を歌ってた方(ジョバンニ役の方ですよ…ね?),歌声がめっさキレイ!(また“めっさ”とか言って取り乱している。)
しかもアカペラだから,音を外さないのだろうか…とか心配しちゃったんですが,そんなこともなく。ちゃんと移動もされてて。良い腹筋と喉をお持ちの方ですね…。素敵です。


お芝居の話に移ると,みなさん基本的に一人複数の役をやられているんですが,早替えと演じ分けがものすごい!
ふたばの後に社長が出てきたところなんて(すげぇ…)と素で思っちゃいました。(言葉遣いが若いのは,それだけ心に正直だからです。ということにして。)
ちゃんと,一人ひとりのキャラクターが別モノに見えました。でも,あの役をこの人が兼ねているから意味があったり面白いのかなとも思います。

あとツボだったのが,車掌役の方…。
えっと…,あぁいう車掌さんて,いますよね!?カチカチっとした人。先生役の時は(あのひとカタいな…)と正直思っていたのですが,車掌さんになったとたんに本領発揮したなと思いました(笑)。タッパもあるし,非常にハマリ役でした。

これまで何度も何度も,いろんな形・いろんなモチーフの「銀河鉄道の夜」を観てきたんですが,今まであんまりしっくり…というか,安心して観れたためしがなかったんです。私。
高校生も年齢的には十分若いのだけど,もっと下の年齢の子の話だと思うので,“浮いてる感”がずっとあったんです。いくらハーフパンツをはいても,違和感があるというか。
でも,不思議なことに長野東のジョバンニとカムパネルラは,すごーく自然に観れたんです。私の中ではすごいことなのです。これ。
二人とも,身長差や服装含めて非常に自然で,全然嫌な感じがなかったんです。ふしぎー。

舞台装置の話をすると,(あのホーム下のあれは何なのだろうか…)と謎だったんですが,川だったんですね。
川とか水の塊(海・湖)って舞台で表現するにはホントに難しいことだと思うんですが,うまかったー。撤去もすばやくてよかった!思わず2006年に観たNYLON100℃の『カラフルメリィでオハヨ』の座布団撤去の部分を思い出しちゃいました。今回の長野東とだいたい同じ手法で撤去して,場面換えてたのです。

ホンの中身に移ると,星の王子様(というかサン=テグジュペリ)や小学生の姉妹,社長やお付きのひと…いろんな人生を抱えたひとびとが出てきたのが,素敵でした。キラキラした感じ。一人ひとりはなんでもない人たちかもしれないけど,その一人ひとりが集まると,ひとっていろんな立場があるし考えがあるし,そのひとだけの人生があるんだなぁということをしみじみと感じました。たわいもない会話から,それがかけがえのない時間であることを,なんとなく観ている側に伝えてくる。出会いと別れが本当に刹那的で,でもそれって(事故や震災に関わらず)私達の日常なんだよなぁと思うと,なんだか苦いような,くるしいような気持ちにもなりました。

ちなみに私の目から涙が出たのは,やっぱりラストです。お芝居に限らず,例えば映画『タイタニック』のラストのラストとか,絶対に叶わないことが叶ったり,集まるはずのないひとたちが集まったりすると,なんだか泣けてきちゃうのです。はわわわわ…。

そうそう。「私ホリゾントって薄っぺらくて好きじゃない」って,いろんな記事で書いてますが,これは本当に効果的だった…。“ただなんとなく青空”とかじゃなくて,ちゃんと時間の経過とかが追えてて。ラストの流れ星も,私はそんなに違和感なかったです。流れてくれてよかったです。

キラキラな時間をありがとうございました…。心が潤いました…。
長野東の皆さん,お疲れさまでしたー!関東の運営もよろしくお願いします!

第31回長野県高校演劇合同発表会 伊那西高校演劇クラブ『千年神社』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:伊那西高校演劇クラブ
出演:伊那西高校演劇クラブ

東海大三同様,こちらも2004年以来,10年ぶりの観劇でした。『π』という作品で,当時感想を書きかけのままになってしまいどんな舞台だったか覚えていないのですが,巨大階段とお風呂があったのはすっごい覚えていて,(私立,スケール,違う…!)と思ったものです。今回もそのスケールは健在でした。一体どこでどう保存して,どうバラして持ってくるのでしょう。気になります。

3年間,ずっと震災に関係した作品を上演されているみたいです。
なんか…すごいなぁの一言。
当事者でないと,どうしても記憶や気持ちって薄れていきがちだと思うんです。思い出したくない人や,忘れたい人もいるだろうし。私は東京でこの日を過ごしましたが,そこから3月いっぱいは結構非日常で,あんまり思い出したくないです。大学の卒業式があるのかわからない,バス停にいても,いつバスが来るか検討がつかない,電車も動く予定がない。一人暮らしだったので,友達の家に自主避難させてもらい,しばらく一緒に過ごしました。一人でマンションに戻る日は,怖かったなぁ。

「忘れちゃいけない」と言うけれど,忘れないためには痛みも伴う。
痛みを扱うのは,非常に勇気と覚悟がいることです。
それを3年間続けていることが,本当にすごいです。

しかも,このお芝居…全然若い人が出てこない…。
ほとんど出てこない…。
キャストはピチピチ(!)の女子高生のはずなのに!
高校生がおばあちゃんやおばちゃんやるのって,抵抗ありそうな気がするんですが,すごい…。本当におばあちゃんやおばちゃんになっている…。おみそれしました…。
ただ,おばちゃん役の方(役名がわからない。何かにつけてガハハハ~って笑う人)の笑い方がパターンで,本当に心から面白かったり笑いがこみあげてくるのかな?と,ちょっと疑問に思うときもありました。

ただ,私,いろんなところの感想でも言ってるんですが,シャウト系のお芝居が苦手なんです。(ひぃー!)ってなっちゃう。
伊那西は,決してシャウトはしてないんですが,それに近い感じで,ちょーーーーーっと(うぅ…)と弱ってしまいました。すみません…。

今年の県大会はライトカーテンで始まる舞台が少なくて,伊那西も緞帳が上がり切ってからぱっと照明がついていたのですが,この舞台ならそれで正解なんだろうなぁと思いました。
あれは一気に視界に入るから,より一層圧倒されると思うのです。
あ。でもでも,村人が柱を立てようとしている時の神様の動き?振り?がちょっと気になったんですよね…。
盛り立てようとする感じはわかったんですけど,柱が立とうとしているのを払いのけているようにも見えて。もっとこう…立てるのを応援するような動きだと良かったかなと,個人的に思いました。

あと,小道具にびっくり!野沢菜!布であんなにへなへな感が出せるんですね!
質感がよく出ていて,(おぉ~!)と思いました!
贅沢言うと,せっかく野沢菜が出てきたので,どら焼きもモノとしてほしかったなぁ…と思いました。
さらに贅沢言うと,せっかく水道とホースがあるので水が出てきたらさらに素敵だなぁ…と思いました。でもタクシーの運転手にぶちまけるのか。じゃあだめか…。笑

地域性を大事にする気持ちが素敵でした…。
伊那西のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 東海大学付属第三高校演劇部『桜井家の掟』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:阿部順
潤色:東海大学付属第三高校演劇部
出演:東海大学付属第三高校演劇部

2003年,2004年に続き,3度目の東海大三。顧問の先生のお名前が以前とお変わりなく,私立ってすごいなーと思いました。
私が現役だった頃は,「北信といえば私立」というイメージで,長野日大とか清泉が県大会の常連でした。でも今は顧問の先生が替わられたりして,どうやら公立の時代が来たみたい。きっと私立は,公立とは違う「継承の大変さ」みたいなものがあるんだろうと思います。

さて感想ですが…

狙っているところはわかるのだけど,なんだかでこぼこしている感じ。

特に気になったのは,蘭ちゃんのカツラと杏ちゃんの衣装…でしょうか。いや,衣装は個人の趣味がかなり関係してるかもです…。

ワルな印象を与えるために金髪というのはよくわかるんですが,もっさりというか…。それをヘアピンでぴしーっと落ち着けているので,もっさりなのです…。わざとらしいというか,不自然というか…。
地毛を染めるわけにはいかなかったと思うので致し方ないかなとも思うんですが,例えばスプレーでその日だけ金なり茶にするとか,もう少し長いカツラにするとか,あるいは地毛に金とかポイントのメッシュを付けるとか。ちゃらっちゃらしてるのを自然な見た目で出す工夫が,もう少しほしかったなーと思います。

あと,杏ちゃんの衣装…。
衣装というよりは,きゃぴっとした服(絶対領域出てるし…!)なのにメガネで落ち着いちゃってるので,なんだかイメージがちぐはぐしてしまってるんです。夏実ちゃんみたく,しっかりフレームならカジュアルなんですが,銀フレームのままだとまじめ過ぎに見えて,どちらかというと衣装というより役者さんの趣味なのかな?という印象を持ってしまいました。

お芝居の面だと,真希ちゃんが気になりました…。
どちらかというと真希ちゃんは,自分の思いをためてためてぷちっと来た時に一方的にばばばばーっと放出するタイプの子だと思うんですが,せりふの出が本当に一方的に聞こえてしまって,場で会話している感じが見えなかったのが残念です。せりふの出が一方的…というのは,相手がどんな反応をしているか見ていないというか。一本調子というか。なんだろう。「呼びかけ」に近い感じ…でしょうか。場と会話じゃなくて,投げかけでおしまいになっちゃって。でもまだ1年生の方のようなので,これからぐいぐい伸びることを期待しております…!

夏実ちゃんは3年生の方ということもあり,役柄がお姉ちゃんということもあり,なんとか家庭をまとめようとしているところが見ててかわいらしかったです。まとめようとして,うまくいかなくてテンパってるあたりとか。ただ終始せかせかしている印象も受けたので,落ち着くところは落ち着くとか,緩急があるとさらに良かったなぁなんて思います。

男性キャストは…もう少しリラックスしてお芝居しているところを観てみたいなぁと思います。
特にお父さんは奥さんに接するやな夫ぶりと,電話でのデレデレぶりがもっと極端だと面白くなりそうです。

小道具のことで言うと,最後に超特大ケーキが出てきますが,苺の色がいかにも!という感じでプラスチックプラスチックしてたので,もう少し濃い赤に塗りなおすなど,細かい手直しがほしかったなぁと思いました。
それから,靴下をはいてるひとはどうしてもつるつる床を滑ってる感じで,変に気になってしまいました。滑らない工夫を靴下か床に仕込めると,余計なところに視線が散らずにいいのかなと思います。

「すずらんの里」とか「原村」とか,東海大三のみなさんにとって身近な地名に変更されていて,脚本との距離を地理的(という表現で良いのだろうか…)に縮めようとするところは素敵だなぁと思いました。
ちなみに私もすずらんの里,好きです(笑)。6:14高尾発松本行きの電車に何度も乗ったことがあるのですが,夏にその電車に乗るとすずらんの里あたりの景色がとってもキラキラしていて素敵なのです…!降りたことないですが,降りてみたいといつも思ってます。長野県内で一番かわいい駅名だと思ってます。

肩の力を抜いて,ナチュラルなお芝居をしていくことを意識できたら,もっと良い作品になると思います!3年生の方が抜けても,まだまだ十分な人数がいらっしゃるので,今後に期待です。
東海大三のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県松川高校演劇部『べいべー』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:青山一也
出演:長野県松川高校演劇部

松川高校といえば,個人的に“小川幸司先生が松本深志高校から異動された学校”というイメージと,“松川って言っても,村じゃなくて町の方なのね…”という印象がある学校でした。(というかそれしかないのです…。ご縁がない土地で…。)
その後さらに小川先生は他校へ異動されていますが,今年度の全国大会にこの学校が出場されると知り,とっても驚きでした。(あー,繋がったんだなぁ)と,その時は思いました。

なので。

未知数だったのです。

長野県は,全国大会に出場した場合,その年度の地区大会は自動的にパスできるみたいで,松川は県大会からの参加だったのです。長野県高校演劇連盟のwebサイトには県大会の前に各校の紹介や写真が出てたのですが,松川は本当に情報がなく,謎のベールに包まれていたのです!(笑)

ただ,地区大会の記録を見ると以前にもやっていた演目のようで,松川的に気合いの入っている作品なのかなと思っていました。(Twitterでフォローさせていただいている,松川の現役の方によると,それを部員のみなさんが知ったのは演目を決めてからだったそうで…。偶然?のようです。)




いや…




なんていうか…






全部,持っていかれましたよね…。









はぁー…!本当に,すごかった。

「すごかった」なんて薄っぺらい言葉に集約したくはないけど,うまく表現できる言葉が見つからない。

じゃあ先に,幕間講評について書きたいと思います。

私はこの幕間講評が好きで。
やっぱり上演中は上演中なので,素のお顔が拝見できたり学校の思いが伝わってくるこの時間が,好きでした。
中信地区大会は2004年くらいまではこれがあって,しかも会場内の観客も何か言えたり聞けたりしたんですが,ある年を境に幕間自体がなくなっちゃったんです。いろいろ理由はあるんでしょうけど,ちょっとさびしかったのを覚えています。県大会も,その時期くらいまでは会場内から質問とかができました。確か。

なんですが,私が大人になってしまったのか…知らず知らず多くを求めてしまったのか…松川までの学校は…終演したことでいっぱいいっぱいになってしまい,本当に「今」の感想にとどまってしまうように聞こえることが多く(そうでない高校ももちろんあります),「えっ,これでおしまい!?」と思うことが多かったのです。

しかし!

松川のみなさんは,どんなことを意図してつくってきたのか,芝居の中身・舞台美術について各担当の方からお話しくださり,とっても満足でした…。おそらく昨年度から今年の夏にかけ,関東大会や全国大会を経て,各校の振る舞いや主張に触れて,きちんと伝える内容を精査してこの時間に臨んでくださったのだと思います。こういう面からも,全国に行った学校なんだなぁということをしみじみ感じました。
きちんと話せなければだめという訳ではないけれど,お客さんと素で時間を共有できる貴重な時間なので,有効に活用できたらお互い良いですよね。
ちなみに舞台監督の方からは,六角形のお話がありました。六角形は図形の中で一番強度があるそうで,それをたまごの形に利用しているそうです。(おぉ…!そうなのか…!)と感動しました…!

幕間から少し遡り,ラストの話をすると,舞台のアタマからずーっとあって利用されなかった球体や舞台奥の「何か」はそう使うのかーっと思いました。
私の好みですが,球体からの光もステンドグラスの光もそんなに遠くまで届かないので,ステンドグラスを見ている4人のべいべー達にも,うっすら照明が当たると良いなぁなんて思いました。彼女たちの視線の先を一緒に追いたいなぁと。

さて,お芝居の話をすると,なんかみなさん仰るように…当て書きのようですよね…。
というか,台本を使って自分達を見せる術を知ってますよね…。
コメディだけどせりふの出がものすごく自然で,本当に驚きました。
間とか,表情とか,目とか,そういうノンバーバルなところで笑いを取れるって,本気ですごいです…。

あと,役者の体(体型)の使い方も,ある意味捨て身で…。一番はオムツのところ。(えぇぇぇぇ!!!)と,度肝を抜かれました…。あとはたかしのプロポーションとか。失礼になっちゃうかもしれませんが,かりんちゃんの名前と体型のギャップとか…。そう。体型がちゃんとプラスになってるなぁと思いました。でも「未熟児ギリギリ」って言葉が,全然変に聞こえない。みんな実際の姿じゃなくて,心のイメージだということがよくわかりました。

私の職業柄,そのひとがどうお生まれになったのかを確認させていただくことが多いです。というよりも,それも仕事のうち。
どういう状態(予定日との差,促進剤の有無,正常分娩・帝王切開・吸引など,在胎期間,身長体重,仮死などの異常の有無…)だとか,どういう環境(母親がシングル,一人っ子,5人きょうだいの末っ子,上のきょうだいは異父…)とか,そういうものです。生まれてくるお子さんの数だけ,物語があるなぁと常々思います。
さくらちゃんのへその緒が首に巻き付いてたエピソードは,なんだか聞いていてつらくなりました。

親は選べないし,環境は自分の力ではどうにもできないことがある。小さいうちはなおさら。それでも希望を持ちたいし,この世は生きるに値すると思いたい。
そんなことを思わせてくれた作品です。

でもって,ベッドの装置と衣装が効果的でした!装置は,ちゃんと下の方に要らなくなった小道具を隠せるようになってて(おぉ~)と思いました。
衣装が,カワイイ…。繭のようなシルエット…。赤ちゃんのふくふくした感じが出てるし,色もカワイイ!ひざを見せた方が(おそらく)いい人,隠した方が(おそらく)いい人によって(多分)丈が若干違ったりして,配慮+効果的だな~と思いました。


脚本の選び方,キャスティング,演出,お芝居…。なんだか悔しくなっちゃうくらいうまくいっていて,充実した60分を過ごすことができました。
本当に,松川高校に全部持っていかれた感がして仕方ないです(笑)。
関東大会ものびのびとしたお芝居ができますように。

松川のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県上田東高校演劇班『平成二十六年度のカルメンシータ』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:東出彩伍
出演:長野県上田東高校演劇班

上田東さんは2006年の県大会以来。伊那西や東海大三もそうですが,昔県大会に参加されていた学校が今もこうして出場されているのって,本当にすごいことだなーと思います。学校事情はもちろんそれぞれだと思いますが,全体の生徒数が減ったり,ある学年は人数が極端に少なかったり,廃部になってしまうことって,いくらでもあることだと思うので。

大会中の速報によると,顧問の先生の作だそうです。美須々の『B面セレナーデ』(県大会)でもちょっと書きましたが,先生が書かれる場合,作品に生徒を合わせるのか,生徒に作品を合わせるのかに分けられると思うんです。言い換えれば,自分のために書くのか,生徒のために書くのか。もちろんどちらかだけなんてなくて,「しいて言えばどっち寄りか」みたいな表現になると思うんですが,この作品は「生徒のため」なのかなーと観劇中から思いました。作品を通して,班員のみなさんに“○○を考えるきっかけ”みたいなものを提示しているように感じました。

私も今,一応社会人として働いておりまして,学生時代にはブラックなバイトもしてたりしてなかったり…。
なので(わかる…訴えたい気持ちわかる…。)とか思いながら観てました。笑

自論ですが,中学や高校で一番役に立つ・立たせるべき教科は公民分野だと思っています。世の中のしくみ,お金のしくみ,公的サービスのこと…生きていくにあたり,特に生活に関わる教科・科目だと思うんです。
でも,私が高校生だったとき,現代社会の先生も政治経済の先生も,誰も「雇用先で不当な扱いをされたときどうしたらいいか」とか,「本当にお金がなくなったらどうすればいいのか」について教えてなんてくれなかった。高卒で働くひともいた学校だったのに。
「自分で調べろ」と言われたらそれまでですが,それでも,引き出しの中身まで教えてくれなくていいから,困った時にどの引き出しを開ければヒントが見つかるのかくらい知っておかなければ,社会に搾取されてしまう…!

…そんなことを,学部3年の時に履修した公民指導法を通して考えていました。はい。公民指導法,本当に面白くて,一瞬教職も良いなぁと惑わされたくらいです。笑

奨学金も,進学したい高校生にとってはかなり身近な話題ですよね。私の職場の同僚は,今学部と修士課程の奨学金をダブルで返していて,完済まであと28年かかるらしいので(うぉぉ…)と思いました。生きていくのって,たいへん…。

さてさて脱線したので戻します…。

あ,でもやっぱり,この話は,「長期的なスパンで見通しを立てづらく,優先順位を整理した上での状況判断をしづらい主人公と,その特性によって巻き込まれる周りの人々の話」に見えなくもないな…と思いました。主人公の布施くん,下手したらオレオレ詐欺の実行犯とかやっちゃいそうなタイプだな,と…。(自分で綿密な作戦を立てたり下っぱに命令するタイプではなく,深く考えず,言われたままに行動していくタイプ。)
会社人間というよりは,会社の目標と自分の目標が混同してしまう感じ。他人から「かっこいいね」って言われたら,自分のことを「かっこいい」って思ってしまう感じ…!?例えばルシータさんに対しても,「優しくされたから好き」とか。
なので不当だとわかっていても,じゃあそれに対して対処できるかと言われたらそこまでのスキルがないので,なかなか現状を打破できない人なのかなという印象を持ちました。


あと,これは脚本の問題かな?と思うのですが,キャラクターが揺らぐんですよね…。

美佳は布施くんのことを結局どう思っているの?周りに冷やかされてその気になってるだけなの?って。言葉(せりふ)は出ているけど,常にちょっと“困った顔”で情緒が伴ってない感じがして,その場その場で言葉だけ出ている印象でした。

ルシータさんはバリキャリな感じで,会社のために働くよりも自分のために働くような人(だから会社をすっと辞められる)だなーっという感じで素敵でした。でも最初,仕事じゃなくてダンス衣装で出てくるときはもう少し「いい人」感を見たかったなぁと思いました。店員さんから椅子を出してもらったときに「ありがとう」と言っていたけど,そういうことではなくて,立ち居振る舞いとか,表情とかから,親しみやすさだとか,布施くんが惚れた理由がわかるような何かを見たかったです。あのままだと,布施くんの言葉と実際の姿が解離してるなーという印象です。
また,ラストでルシータさんが布施くんにコロッとなってしまいますが,帳尻合わせというか,(なぜそうなった!?)という気持ちになってしまいました。コロッといくまでのプロセスが見えなくて…。私はひとの心の動きっぷりを見たい人間なので,ここをもう少し丁寧に見たかったなぁと思いました。
あ。そしてスーツのルシータさんが銀行員のように見えてしまったので,もっとおしゃれスーツとか黒ストッキングとか,そういう衣装でも良いのかなと思いました。


講師の先生も仰っていましたが,貧血で倒れたひとをなぜ冷たい床の上に…!
倒れたら動かしちゃまずい場合もありますが,貧血なのでどうか畳の上で休ませてあげてください…。ここらへんは高校生ゆえの生活経験のなさみたいなものも感じちゃいました(身の周りで倒れる人がいないに越したことはないですが…)。


いろいろ書きましたが,ほんとによく高校生が居酒屋を舞台に芝居したなぁ~と率直に思いました。みなさん…行ったこととかあるのでしょうか?以前,知り合いの40代の主婦の方とお話していたときに居酒屋の話になり,「最近息子がよく食べるようになってきたから,ファミレスに行くよりも安上がりなのよね」と聞かされ,ドヒャー!と思ったものです。
あと,これまた個人的な話で,先月居酒屋に行ったら,接客してくださった店員さんが高校生でした。日曜の夜に…。生活のためなのか自由なお金のためなのかはわからないけど,カサハラさんはかなり衝撃を受けました。ちなみに場所は新橋(笑)。
でも,高校生にはあまりなじみのない場所だし(あっちゃ困るし),役作りや動きも含めて大変だったと思います。居酒屋の店員さんってほんとに動きが止まることがないので,ぜひ二十歳になったら観察してみてください。

作りこんだ舞台セット,暗転中の光が素敵でした。みなさん,ブラックな大人や会社に惑わされない大人になってください…。
上田東のみなさん,お疲れ様でしたー!

Saturday, November 1, 2014

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部『B面セレナーデ純情奇譚』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:郷原玲
出演:長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部

木曽青峰に引き続き,こちらも地区大会に続いての観劇です。
(事前に地区大会の感想にもお目通しいただけると嬉しいです…。)

直前が木曽青峰の公演だったので,この時間の客席にいらした方の9割以上は初見の方だったのではと思います。初日のトリだったこともあり,会場ではかなり笑いが起きていて,(高校生に受けてる!今の高校生はこういうのが好きなのか!)とショーゲキでした。

一方私は,地区大会で涼子ちゃんのことが気になっていたので,その疑問に対する答えは見つかるだろうか?と考えていました。
気になっていたこととは,緞帳が上がって60分立ったとき,涼子ちゃんはどう自己理解をしているんだろう…ということ。

結論から言うと,なんだか悲しくなりました。
菅原さんに向かって「私も,女子高生を演じます(みたいなせりふ)」と言っていたのを聴いて。

涼子ちゃんの言う“女子高生”って,大人の顔色を窺って動くような“いい子ちゃん”だったり“損な役回りの子”という意味なのかな,と。だって自分がそういう子だと,涼子ちゃんはわかっているから。

今まで感情を抑圧して社会との関わりを断ってきた晶ちゃんが涼子ちゃんの手を借りて,感情に触れながら少しずつ他者と関わり,社会に適応していこうという成長っぷりを見せてくれたのに,涼子ちゃんは感情を抑圧しながら社会に適応し続ける道を選ぶのかぁ…と。

おうちでは「うっせーなぁ!」みたいなせりふがあって,(あ,こういう主張もできるのねやっぱ)と思ったのと,社会に適応できればいくら家で荒れても(その逆よりは)良しという考えもあるよな~と思いました。
がっ,やっぱり晶ちゃんの成長と比べると,涼子ちゃんはそうでもなくて,吊り合ってないのでは感が否めませんでした。晶ちゃんはどちらかというとポジティブになっていくのに,涼子ちゃんは諦めの方向に行く感じ。「人生って演じることでしょ(みたいなやつ)」ってせりふも,人生よくわかってるなこの子とも思うのだけど。演じ方の方向が,二人は逆方向なんだなーと感じました。

…というか,いつもいい子ちゃんだったら友達いそうなのに,涼子ちゃん。
いい子なのと自己主張できないのはちょっと違うからなぁ…。なんでいないんだろう。
(どうやら友達がいないらしい)ということで先生は涼子ちゃんにおつかいを頼んだらしいけど,不登校の子より,毎日登校しているクラスメイトと繋げてあげた方が涼子ちゃん的には良いのではと思うのですが,そこは新任の先生の優先順位のつけ方ミスだと思うことにします。笑


あと,涼子ちゃん涼子ちゃん言ってて申し訳ないのですが,地区より間近で見られたので,やっぱり皆さんのお顔・表情に注目してました。
そしたら!
涼子ちゃんを見ていたら,フィギュアスケートのはにゅーくんを連想してしまいました…。
先日,はにゅーくんの写真集をじっくり眺める機会があったのです。
ページをめくればすぐにおわかりいただけると思うのですが,彼の表情ってほとんどパターンなんですよね。静止画になるとよくわかります。動画だとそんなに気にならないのに,静止画になると損する(?)タイプ。別のシーズンの別のプログラムなのに,(あれ?この表情さっきもしてなかった?)って思う顔が出てくるんです。そしてあくまで私のとらえ方ですが,彼の笑顔の作り方は,目をくっと上げて口がにっとなる感じ(←わかりにくすぎる)で,まゆが動かないのが特徴だな~と思ってるんです。涼子ちゃんの笑顔は,それに似ていた…。気がする…。

それからやっぱり全体的に過剰な動きもパターンな感じがしてしまって,せっかくホンが面白いのに動きで笑いを取ろうとしていて,浅い感じに見えちゃったんですよね…。
なんかここまで書くと悪口になっちゃってる気がしてものすごく嫌なんですが,多分私にとっては何度も味わう作品というよりは,一度観れば満足なタイプの作品なのかもしれない…。
(私はどちらかと言うと,力動が見える作品が好きなので。ただの好みの問題です。)

そうそう。この作風は何かに似ている…と地区の頃からずっと思っていたんですが,わかりました。
三谷幸喜のコメディ映画に,似ている!!!(マジック・アワーとかTHE有頂天ホテルとか)言葉のしかけとか,シチュエーションで笑わせるところとか。
私,三谷幸喜の芝居は好きなんですけど,映画は一度観たらいっか☆という感じなので,それに似ているのかもなーとふと思いました。

あ!でも,地区大会の時はひやひやしてしまった扉上のパネルは60分間きちんと安定感があったり,涼子ちゃんがレコードを見つけたときに「聖子ちゃんじゃな~い」って言ってたあたりとか,よかったです(笑)。坂城の『158.9』でレコードがあったときは,私もハッ!!と思ってました(笑)。

地区大会の感想で書きそびれてしまったけど,晶ちゃんは着替え後にワンピースが見えないと良いなぁとか,きれいに制服着られると良いなぁとか思いました。
制服については,ブラウスをスカートにインしていないから,縫っていいものだったらドッキングワンピみたいに縫っちゃうとか,それが無理ならスカートにインした状態で何か所か安ピンで留めておいて一気に着られるようにしておくとかの工夫があるともっとスマートだろうなーと思いました。
(あと晶ちゃんの靴ぱかぱかが見ていて気になる…。猫背気味になってしまう原因かも…。)


なんかすごいピンポイントな話になってしまってすみません。
でも本当に,1年生のキャストだけで県大会に行けるってかなりスゴイと思います。伸びる時期ってまだまだこれからだと思うので,いろんな表現手段を吸収できると幅が広がって良いだろうなーと思います。

あとこの作品は,大会の速報によると1年生4人を見て郷原先生が当て書きされたそうで…,さらさら~っと作れてしまうあたりは脱帽です。
創作を書く先生って,作品に生徒を合わせる方と生徒に作品を合わせる方に大別できると思っているんですが,郷原先生は後者なのかな?と思いました。

サマーフェスティバルにも参加が決定しているので,新生美須々に期待していきたいです。
美須々のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県木曽青峰高校演劇部『砂漠の情熱』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:日下部英司
出演:長野県木曽青峰高校演劇部

地区大会に引き続いての観劇です。

文化祭:音響照明なし→地区大会:部員さん2人→県大会:部員さん6人!
…と,公演のたびに,作品や団体が成長していて,すごいなァと思います。
特に地区は3年生おふたりだったので,(この先どうなるんだろう…)と外野のニンゲンながら気になっていたのですが安心しました。
10回口説くより1度作品を観てもらう方が,部員の獲得って近道だったり,より深いところを揺さぶられて入部に至れるのではないかと…ふと思いました。

地区大会(感想はこちら。)では講師の先生より後ろのお席で観たので,どちらかというと全体を観ていたのですが,やっぱりエレーヌの表情が見たいなぁと思って,今回はわりかし近めで拝見しました。
一度観ているので,本当に,ミクロな部分を楽しんだ感じです。

ミクロなところの発見といえば,ラストの,男がエレーヌを撃った直後。
(あ…ふたりって目が合ってるんだ…!)と,感激しました…☆あぁ,切なかった…。

そして特に見たかったのが,赤い布がかかっているのを見つけた時のエレーヌの表情。
「不思議そうな顔」みたいなせりふがあったと思うのですが,本当に,言葉通りそんな感じの表情でした。もっと哀愁というか,不安というか,そういうものが見えるのかと思った…。せりふでまとまってました。

あとあと。身投げのところ。地区大会と違って見えたのですが,どうなのでしょう…。(地区は後ろ姿をこちらに,県は顔をこちらに見せて落ちてるように思いました)
私はこちらの方が好きかもしれない…。死ぬ直前の顔が見えてしまうなんて恐怖すぎるから。(←)

あとあとあと。豹が言葉を纏ってエレーヌになっていくところは相変わらず気持ち悪くて良かった!(ほめてます!ほめているのです!)私は仕事柄,構音が未熟な方にお会いするのですが,(うんうん,あの音って出しづらいよなー)とか納得して聞いてました(笑)。言葉を獲得していく過程が見えますよね…。気持ち悪くて怖くて,好きなシーンです。

…そういえば!冒頭と,緞帳が降り切る直前に,エレーヌ役の方の手がパネルからみょんっと出ちゃってたのがもったいなかったです!おそらくどちらも衣装に袖を通していたのかな?と思ったんですが,やっぱり見えちゃうのは残念でした…。

12本観た中でも,やっぱり異色でした。明らかに。
それが良いと言いたいわけでも,だめと言いたいわけでもないです。
言葉の通り。それだけ。

先月,私のもうひとつのブログで書いた日記「長野県の高校演劇県大会,個人的にここが気になる。の巻。」(←日記のタイトルなのでふざけてますゴメンナサイ…。)でもちょっと書きましたが,この作品を世に出すために,日下部先生は木曽青峰に異動されたんだろうなーと解釈しています。でも,中信地区だけに留めるには,あまりにももったいないホンだった。
ここまで来られてよかっただろうなーと思う反面,これを関東に持っていけたらどんな反応を得られたんだろうとも思ってしまいました。
大会中に発行されていた速報によると,今後の公演予定があるらしいのでよかったです…。

講師の先生も仰っていましたが,役者によってずいぶん変わる作品だと思うので,いろんなパターンで観てみたいなぁなんて妄想しちゃいます。笑
いつかまた別キャストで拝見してみたいと思う作品でした。

今年度の4月から11月で,ここまで来た木曽青峰に拍手です。
木曽青峰のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県上田千曲高校演劇班『ふぁみりあ!』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:吉野由理香+長野県上田千曲高校演劇班
出演:長野県上田千曲高校演劇班

中信地区の人間が最も足を運びづらいエリアは,上田方面だと勝手に思っています。
…のですみません…!上田千曲高校という学校,初めて聞きました。長野県がだだっ広いことを改めて実感しています…。

終演後,とっても温かい気持ちになりました。一緒に観に行ってた2つ年上の先輩も「俺こういうの嫌いじゃないよ」と仰っていました。私もです。

さて,中信地区もほぼ全ての作品を観たんですが,異色なキャラが出てきた学校がありました。南農の『オカマが来たりて笛を吹く』です。
異色なキャラとはマリさん(役名)。マリさんはオカマです。でも!それを!普通に(?)女性が演じていらしたのです!しかもその方,リアルに八頭身の方で,ほんっとにモデル体型だったのです。それで肩に肩パッド入れてるから,パッと見すごく不思議で!!!

…そのマリさんのことを,思い出しました。
それは睦未ねえちゃん…。開始3分くらいで(あれ?)って思って,上演中にも関わらずついパンフレットで確認してしまいました。
幕間講評で出てきた方はおそらく作・演出さんだと思うのですが,その方が「大事にしたかったことは“個性”」と仰っていたのが印象的でした。芝居のキャラクターは芝居のキャラクターであって,それを演じている方の実際はもちろんわかりませんが,もしかしたらGLBTの方なのかなとか考えちゃいました。それがもし,幕間の彼女が仰っていた“個性”だとしたら,そこも含めて本当に素敵な作品だなーと思いました。

ふと思ったんですが,たとえば戸籍上は女性だけど心は男性っていう演劇部のひとって,普通にいそうじゃないですか。でもそういう場合,結構あっさり男性役とかできるんじゃ(やってもお客さんは受け入れやすそう)って思うんですが,逆の場合ってなかなか良い役がないんじゃないでしょうか…。
「じゃあ演劇部に入らなきゃいいじゃん」って話になりますが,そんな単純なものじゃないし…。
…あ。久留米附設の『女子高生』をやれば…!(違う)
なんかそんなことを考えました。脱線しました。

さて,お話ですが,
同じ親から生まれてきたって,きょうだいだって別のニンゲンだよなーってことを改めて感じました。
いや,当然のことなんですが,自分の考え方の癖に気づけました。観劇中,(それにしてもきょうだいなのに興味の方向や性格が似ていなさすぎ!)と思っちゃったんですね。
でも,別なニンゲンなのだから当然じゃないか,と。そのあと思ったわけです。多分親子にも言えることで,「私がこうなのに,どうしてこの子はそうじゃないの」とか,「私がこんなふうだから,この子がこんなになってしまった」なんて必要以上に思わなくて良いんだろうな,とか。そんなことを考えました。

あと,舞台装置がシンプルで素敵。
箱をいくつも組み合わせて場を作るのは,例えば今年の中信地区では松本蟻ヶ崎の『Nippon, cha cha cha!』で見られたんですが,そちらはひとつひとつの箱に“個性”がほとんどなかったんですね。形は不揃いだけど,組み合わせればなんにでもなれる箱の集まり。無機質という言葉が合うでしょうか。
それに対して上田千曲は,形は同じでそれぞれの模様(←絶対,絶対日下部先生演出だったらああいうものは入らない…!と思う)という箱で,ここにも個性というか,高校生の皆さんらしい温かみを感じました。よかったなぁ。

そしてやっぱり睦未ねぇちゃんばっかり目がいってしまった…。
だってかなり身軽なんだもの…!飛び蹴り?みたいなのとか,ダイナミックで。でもドスン!ではなくてシュタッと着地していて。カッコイイ…。
あと包丁振り回しているところとか,目だけで演技ができるってとっても素敵!3年生の方というだけあって,安定しているな~と思いました。

そうそう。私も冒頭のモノローグ,好きです。
渡りたいのに渡れない,気づいてほしいのに気づかれない,透明人間というか空っぽというか,そんな空虚感が伝わってきて。しかも30分渡れない姿を想像すると,本当につらそう…。
きょうだいと比べたときに「自分には何もない」って思ってしまったときの劣等感とか,そういうものも伝わってきました。

本当に,カンパニーの力がある…というか,すんごい楽しそうに演技されているんです。みなさん。
ただの生徒の創作ではなくて,ひとつの作品づくりに一人ひとりがきちんと参加されて出来たものなんだろうなぁという印象を強く受けました。
へたすると,生徒の創作&演出って,そのひとの世界の押し付け!になっちゃうと思うんです。でもそうならず,協力的に創作されているであろう姿が,本番から伝わってきました。
でもやっぱり最終的にまとめたり名前を残すのは作・演出の方なので,その方のセンスが良いから出来たことなんだろうとも思います。

高校生自身がつくる創作とは…について考えさせられましたし,きっと私が同じ高校生だったらうらやましくなっちゃうくらいのカンパニーでした。
上田千曲のみなさん,お疲れ様でしたー!

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県坂城高校演劇部『158.9』(原題「151.8」)

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:安部雅浩
出演:長野県坂城高校演劇部

タイトルはずいぶん大昔から知っていたのですが,作品自体を観るのはこれが初めてでした。こんな話だったのですね!
散り散りになっていく家族と,家族になろうとしているひとたちの対比が面白かったです。

ギャグをギャグとして演じられるのって,結構大変なことなんだろうと思います。思い切りがあって良かったです。

祥子ちゃん役の方の声が,とっても素敵でした…♡
クリアに通るとか,艶っぽいとかではないのですが,印象的なお声!
私は自分の声があまり好きではないので,良い声ってとっても憧れです。おそらく2日目には松川高校の開演前の影アナをされていて,素のお声が聞けたのも嬉しかったです。

お父さん役の方は,講師の先生も仰っていましたが若く見えて若く見えて。見た目も中身も。
ギャグでテンションは上がるものだと思うのですが,もう少し落ち着きがほしかったです。
お父さんのせいなのか脚本のせいなのかはわかりませんが,お芝居の前半はなんだか冗長に見えてしまいました…。爪切りとかそのあたり。

あと新婚夫婦は『クレヨンしんちゃん』のみっちーとよしりんみたいで良かった…(笑)。
知子さん役の方が棒読みぽかったのは気になりましたが,それもせりふの中身と…マグロ?カツオでカバーされていた気が…(笑)。

今時の子なら,写真撮るならデジカメじゃなくて携帯やスマホなのでは?とも思ったんですが,「お父さんとツーショットの写真がない」と聞き,(あぁー,ちゃんと残したかったからデジカメなのかな)と思えました。

はっ!ホリゾントがあるのは私も気になりました!
最後何かあるのかなーって。
でもなくて,期待していた気持ちがしぼみました…。見える・ある以上,意味があるというか,つけなきゃいけないし,それがないのなら隠す,消す作業が必要かなと思います。
あと気になったところつながりで,センターのふすまのすぐ右の…ベニヤ?と,確か下手の壁で使われていたベニヤ?のラインがガッタガタのが気になりました。特にセンターは一番視線が集中するところだと思うので,気を配れると良かったと思います。

でも最後の「158.9!」って壁にぐわぁ~って書くところは圧巻だったのと,ラストの柱にピンポイントで照明が当たるところが,とっても印象に残りました。

“高校演劇といったらこんな感じ!”を観られた気がします。
坂城のみなさん,お疲れ様でしたー!